


まずは、自身がどの状況に当たるかを確認しましょう。
あなたの状況 | 次にすること |
遺言書がある | 遺言書に沿って手続きする |
遺言書がなく、話し合いがまとまりそう | 全員で協議し、協議書を作って名義変更へ |
話し合いがまとまらない | 遺産分割調停を申し立て、不成立なら審判へ |
行方が分からない・認知症の相続人がいる | 不在者財産管理人や成年後見人を選んでから協議する |
遺産を使い込まれた・独り占めされた | 証拠を集めて返還を求める |

遺産分割とは、亡くなった人(被相続人)の遺産を相続人の間で分けることです。被相続人の死後、その財産は法律上、相続人全員の共有物となります。その共有物を、相続人間の合意または家庭裁判所の手続きによって分けるのが遺産分割です。
遺産分割の対象 | 説明 |
対象になる財産 | 現金・預貯金、不動産(土地・建物)、株式・投資信託、自動車、家具・家財など |
対象にならない財産 | 生命保険金(受取人の指定あり)、遺族年金、一身専属権、借金などの債務 |
生命保険金は、保険金受取人が指定されている場合、指定された受取人固有の財産となるため、遺産分割の対象にはなりません。ただし、生命保険金が遺産総額と比べて著しく過大な場合は、特別受益(生前に特定の相続人が受けた多額の贈与など)に準じて、持ち戻しの対象となる場合があります。
借金などの債務は、話し合いを待たずに法定相続分に応じて各相続人に分かれます。1人が全額引き受けると合意しても、債権者の同意がなければ請求は拒めません。
相続手続き全体の流れは、次の記事で確認できます。
遺産分割そのものには直接的な「期限」がありません。しかし、放置するとさまざまなリスクが生じます。遺産分割と関わりの深い3つの期限を、表にまとめました。
何の期限か | いつまでか | 過ぎるとどうなるか |
相続税の申告・納税 | 相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内 | 加算税や延滞税がかかることがある |
相続登記の申請 | 不動産を相続で取得したと知った日から3年以内 | 正当な理由がないと10万円以下の過料の対象 |
特別受益・寄与分の主張 | 相続開始から10年以内の遺産分割 | 原則として法定相続分で分けることになる |
相続税の申告は、遺産分割がまとまっていなくても期限までに必要です。2024年4月1日より前の相続で、同日までに取得を知っていた場合の相続登記は2027年3月31日までです。
特別受益や寄与分(介護などで財産の維持や増加に貢献した分)は、相続開始から10年を過ぎると原則として主張できなくなります。10年を過ぎる前に家庭裁判所へ申し立てていた場合などの例外や、2023年4月1日より前の相続には経過措置があります。
相続手続き全体の期限は、次の記事に一覧があります。
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相続登記の義務化と、期限を過ぎたときのペナルティはこちらで確認できます。

遺言書がない場合、遺産分割は相続人同士で協議(遺産分割協議)をして分割内容を決めます。話し合いの目安になるのが法定相続分です。
配偶者は常に相続人となり、子ども(第1順位)、親や祖父母(第2順位)、兄弟姉妹(第3順位)の順で、配偶者と一緒に相続人になります。先の順位の人が1人でもいれば、後ろの順位の人には相続権が回りません。
相続人の組み合わせ | 配偶者の取り分 | 配偶者以外の取り分 |
配偶者と子ども | 2分の1 | 子ども全員で2分の1 |
配偶者と親 | 3分の2 | 親全員で3分の1 |
配偶者と兄弟姉妹 | 4分の3 | 兄弟姉妹全員で4分の1 |
配偶者だけ、子どもだけのように相続人が1種類のときは、その人たちで全部を分けます。同じ立場の人が複数いれば、原則として人数で等分します。
異母・異父の兄弟姉妹がいる場合などの取り分は、次の記事の早見表で確認できます。
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自身が相続人になるのか、順位から確かめたい方はこちらをご覧ください。
法定相続人の範囲は、こちらで整理できます。

まず初めに確認すべきことは、被相続人が遺言書を残しているかどうかです。公正証書遺言の場合は、公証役場で遺言書の有無を照会できます。
自宅などで見つかった自筆の遺言書(自筆証書遺言)は、すぐに開封せず、家庭裁判所で検認(遺言書の状態を確認して偽造などを防ぐ手続きで、有効かどうかを判断するものではない)を受けます。公正証書遺言と、法務局で保管されている自筆証書遺言は検認が不要です。
遺言書がある場合は、原則として遺言書の内容に従って名義変更や預貯金の解約を進め、遺産分割協議は必要ありません。ただし、相続人全員が合意すれば遺言と異なる分け方もでき、受遺者(遺言で財産を受け取る人)や遺言執行者がいればその同意も必要です。
自筆の遺言書が見つかったら、開封する前に次の記事で検認の流れを確認しておきましょう。
遺言書がない場合、次に相続人が誰であるかを確定する必要があります。被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を取得し、隠し子や前婚の子などがいないか確認してください。
同時に、預金口座、不動産、株式、借金など、プラスの財産もマイナスの財産も調査します。相続放棄や限定承認を検討している場合は、この段階で判断する必要があります(期限は相続の開始があったことを知った時から3か月)。
戸籍集めでつまずきやすい点は、次の記事で手順を追って確認できます。
遺産分割協議とは、相続人全員が集まり、遺産をどのように分けるかについて話し合うことです。すべての相続人が参加する必要があります。1人でも欠けていると協議は無効になります。
事前に相続財産の一覧表を作り、各相続人に共有しておくと話がスムーズです。全員が1か所に集まれなくても、電話や郵送で内容を確認し合い、全員が合意すれば協議は成立します。
遺産分割協議でまとまった内容を記録するのが遺産分割協議書です。これがないと、相続人間での約束が曖昧になり、後々トラブルになる可能性があります。
協議そのものは相続人全員の合意で成立します。相続登記を法務局に申請するときは、相続人全員が実印を押した協議書と印鑑証明書を添付します。預貯金の解約で必要な書類は、各金融機関の案内を確認しましょう。
協議書を自身で作るなら、次の記事の文例とひな形から始めると書き漏れを防ぎやすくなります。
協議書と一緒に用意する戸籍や印鑑証明書は、こちらで確認できます。
協議書をどこに出すのか、コピーでもよいのかは次の記事で解説しています。
遺産分割協議書が完成したら、不動産の相続登記(名義変更)や相続税の申告を進めます。預貯金は、各金融機関に遺産分割協議書や印鑑証明書などを出して手続きを行います。
相続登記と相続税の申告の期限は、前の「遺産分割に期限はある?」の表で確認しましょう。相続人自身で対応できない場合は、司法書士や税理士に依頼することをお勧めします。
相続税の申告が必要かどうかは、次の記事で確認できます。

分け方 | 向いているケース | 気をつけたい点 |
現物分割 | 預貯金と不動産など、種類の違う財産がそろっている | きっちり等分するのは難しい |
代償分割 | 実家など1つの財産を特定の人が引き継ぎたい | 代償金を払うお金が必要 |
換価分割 | 誰も使わない不動産を売って公平に分けたい | 仲介手数料や税金がかかる |
共有分割 | とりあえず決めておきたい | 売却などに共有者全員の同意がいる |
迷ったときは、表の「向いているケース」から選び、共有分割はできるだけ避けるのが基本です。
現物分割とは、不動産は長男が取得、預金は次男が取得するというように、財産をそのままの形で相続人に分ける方法です。ただし、遺産がきれいに等分できない場合は、この方法だけでは分けにくくなります。
代償分割は、1人の相続人が不動産などの主要資産を取得し、その他の相続人に対して現金を支払う方法です。長男が実家を引き継ぎたい場合によく使われます。
注意点として、代償金を支払う側に十分な現金がなければ、実行が困難になります。代償金の支払い期限や方法を明確に遺産分割協議書に記載することが重要です。
代償金の額や払い方で揉めないよう、決め方の目安を次の記事で確認しておきましょう。
換価分割は、不動産や株式などを売却し、その売却代金を相続人間で分ける方法です。この方法の利点は、各相続人が公平に現金を受け取れることです。
詳しくは次の記事で解説しています。
共有分割は、複数の相続人が同じ財産を共有する方法です。例えば、実家の土地を兄弟で2分の1ずつ共有する場合です。
共有者が亡くなると、その相続人がさらに共有者に加わり、関係者が増えて決定が困難になります。可能な限り、現物分割や換価分割を選択するのがよいでしょう。
被相続人の死後、複数の相続人がいるにもかかわらず、一部の相続人が無断で遺産を使用・処分することがあります。例えば、預金を無断で引き出すなどの行為です。
立証に時間がかかるため、早期に証拠を集めましょう。当事者間で合意に至らないケースも多くあるため、早い段階で弁護士と相談し、返還請求を進める必要があります。
通帳の履歴や医療記録など、使い込みを示す証拠の集め方は次の記事にまとめています。
相手が話し合いに応じず遺産を抱え込んでいるときの対処法は、こちらも参考になります。
被相続人の借金が後から発覚することがあります。相続はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐので、借金があった場合、相続人は借金を返済する義務を負う可能性があります。
この場合、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述すれば、相続放棄や、プラスの財産の範囲で借金を返す限定承認を選べます。その期限を過ぎてしまうと原則として「単純承認」(借金も含めてすべて引き継ぐこと)となります。
ただし、借金はないと信じたことに相当な理由があれば、借金を知った時から3か月以内なら放棄が認められることもあります。
期限がいつから始まるのか、延ばせないのかが気になる方は、次の記事で確認できます。
相続放棄を自身で申し立てる手順と必要書類は、こちらで解説しています。
被相続人が生前に特定の相続人に多く財産を与えていた場合(特別受益)、遺産分割時にその分を考慮して取り分を調整する仕組みがあります。
一方、介護などで被相続人の財産の維持や増加に特別に貢献した相続人は、寄与分として相続分を上乗せできることがあります。ただし、寄与分の認定は難しく、一般的な親子間の扶養の範囲では認められません。
住宅資金や学費の援助がどこまで特別受益になるかは、次の記事で具体例とあわせて解説しています。
介護の貢献を寄与分として主張するときの要件と金額の目安は、こちらで確認できます。
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるため、判断能力のない相続人や、行方が分からない相続人がいると、そのままでは協議を進められません。
認知症などで判断能力がない相続人がいる場合は、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立て、成年後見人がその人に代わって協議に参加します。成年後見人も相続人の1人のときは、代わりに特別代理人を選びます。
行方不明の相続人がいる場合は、不在者財産管理人を選び、家庭裁判所の許可を得て協議に参加してもらいます。
認知症の相続人がいるときの具体的な進め方は、次の記事でくわしく解説しています。
遺産の多くが実家などの不動産だと、「住み続けたい」人と「売ってお金で分けたい」人の意見がぶつかりがちです。住み続けたい人に代償金を払う資力があれば代償分割、なければ換価分割が現実的です。共有のままにしておくと、後で売却などのたびに全員の同意が必要になります。
弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」にも、「実家に住み続けたい相続人が遺産分割を拒み続けている。申し立てても共有のまま住み続けられてしまうのか」という相談が寄せられています。
実家などの不動産の分け方と売却の注意点は、次の記事にまとめています。

協議がまとまらない場合、相続人の1人が家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。調停では、裁判官1名と調停委員2名で構成する調停委員会が相続人双方の意見を聞き、中立的な立場から解決策を提案します。
調停は非公開で行われ、合意した内容を記載した調停調書は、確定した審判と同じ効力を持ちます。しかし、調停がまとまるまでに数か月から数年の時間がかかることもあります。
調停に進んだら結局どう分けることになるのか、という疑問もあり、「兄が遺産はすべて自分が相続すると主張しているが、調停になれば法定相続分で分けるのか」という相談が「みんなの法律相談」に寄せられています。
調停の申立書の書き方や、1回の期日で何をするかは次の記事で確認できます。
調停中の言動で不利にならないための注意点は、こちらにまとめています。
調停で合意に至らない場合、家庭裁判所の審判に進みます。審判では、裁判官が遺産分割の内容を決定します。
審判では、法定相続分を基本としながら、寄与分や特別受益などの事情を考慮して、具体的な遺産分割を決定します。裁判官の決定に不服がある場合は、即時抗告することができますが(審判の告知を受けた日から2週間以内)、時間と費用がさらにかかります。
【データで見る】遺産分割の解決の8割超は「協議」か「調停」
弁護士ドットコムが保有する解決事例(相続弁護士ドットコムの掲載事務所が公開したもの)のうち、遺産分割の事例522件の解決方法を集計しました。協議で解決したのが233件(44.6%)、調停が199件(38.1%)で、あわせて8割を超えます。
審判は49件(9.4%)、訴訟は38件(7.3%)、その他が3件でした。遺産分割そのものは訴訟では決まらないため、訴訟は遺言の有効性や使い込みの返還など、関連する争いの事例です(集計:タイトルに「遺産分割」を含む解決事例522件、2026年9月時点・当社調べ)。
「親の介護を長く担当した」「兄弟姉妹と仲が悪い」「相続人の1人が行方不明」といった事情がある場合、協議がスムーズに進まない可能性があります。
弁護士に遺産分割の代理交渉を依頼する最大のメリットは、親族間での直接的なトラブルを避けやすくなることです。弁護士が相続人間の交渉を代わって行うため、感情的な対立を防ぎやすくなります。特別受益や寄与分の計算、調停や審判の手続きも、弁護士の代理があるとスムーズです。
弁護士費用は事務所によって異なります。まずは無料相談を活用し、自身のケースの費用の見通しを確認しましょう。
報酬金も含めた総額がいくらになるかは、次の記事で事務所の料金データとあわせて確認できます。
【データで見る】遺産分割の着手金は22万円が最多、中央値も22万円
相続弁護士ドットコムの掲載事務所のうち、遺産分割の着手金を載せている276事務所の中央値は22万円でした(最低額ベース)。22万円が98事務所(36%)で最も多く、33万円が74事務所(27%)、11万円が42事務所(15%)と続きます。
また、初回相談料を載せている677事務所のうち、64%が初回相談を無料にしていました(集計:相続弁護士ドットコムの掲載事務所の料金表681件、2026年9月時点・当社調べ)。
【データで見る】遺産分割の相談で多いのは「不動産の分け方」

弁護士ドットコムが保有する「みんなの法律相談」には、遺産分割に関する相談が5,157件寄せられています。内容を分けると、不動産の分け方が1,101件と最も多く、次いで調停・審判が922件、話し合いがまとまらない・連絡がつかないが791件でした。
生前贈与や介護の取り分(特別受益・寄与分)が669件、遺産の使い込み・独り占めが643件、協議書が412件、その他が619件と続きます(2021年4月1日〜2026年7月8日に投稿された相談。当社調べ、n=5,157)。
A. 相続人全員が合意すれば、成立した協議をいったん解除してやり直すことはできます。ただし、やり直しで財産が移ると贈与税などが課されるおそれがあるため、税理士にも確認しましょう。
また、だまされたり、脅されたり、重要な点を勘違いしたりして合意した場合は、協議を取り消せることがあります。くわしくは弁護士に相談してください。
前年に成立した遺産分割協議をやり直して名義を変えられないか、という相談も「みんなの法律相談」に寄せられています。
協議書が無効や取り消しになりうるのはどんなときか、次の記事で8つのパターンを確認できます。
A. 原則として遺言の内容が優先され、遺言と食い違う遺産分割は無効になるおそれがあります。自筆の遺言書なら、まず家庭裁判所で検認を受けましょう。
ただし、相続人全員と受遺者(遺言執行者がいればその人も含む)が遺言の内容を知ったうえで合意すれば、成立した遺産分割を生かせることもあります。
A. 遺産分割がまとまる前でも、一定の額までは相続人が単独で払い戻しを受けられます。金融機関ごとに「預貯金の額×3分の1×自身の法定相続分」までで、1つの金融機関につき150万円が上限です。
払い戻した分は、その後の遺産分割で自身が受け取ったものとして扱われます。相続放棄を考えている人が引き出して使うと、単純承認とみなされるおそれがあります。
銀行口座が凍結され協議もまとまらない中で、自身の法定相続分だけでも引き出せないかと尋ねる相談も「みんなの法律相談」に寄せられています。
遺産分割は、遺言書があればその内容に沿って、なければ相続人全員の協議で分け方を決めます。話し合いがまとまれば協議書を作って名義変更へ、まとまらなければ調停、それでも決まらなければ審判へ進みます。
分け方は現物・代償・換価・共有の4つで、共有はできるだけ避けるのが基本です。相続税の申告や特別受益・寄与分の主張には期限があるため、放置せず早めに動きましょう。
相続人同士の意見が対立しているとき、遺産の使い込みが疑われるとき、期限が迫っているのに話し合いが進まないときは、弁護士に相談しましょう。まずは弁護士への初回相談で、自身のケースでの取り分の見込みと、協議・調停のどちらで進めるべきかを確認しておくと安心です。

鳥取県出身。明治大学法学部を卒業後、中央大学法科大学院を修了し、2018年に弁護士登録。上級相続診断士の資格を有し、専門的知見から高度な支援を行うほか、裁判所から成年後見人や相続財産清算人に選任されて裁判所案件の業務も行う。相続分野では遺産分割協議をはじめ、遺留分侵害額請求、遺言書作成、事業承継など様々な事案に対応。依頼者の気持ちに寄り添い、丁寧なヒアリングを通して最善の解決策を提案する。趣味はクロスバイクと猫カフェ巡り。