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遺産分割
更新日:2026/06/12

【無料】遺産分割協議書ひな形と書き方、自分で作成する方法を弁護士が解説

監修者
井上界
兵庫県>尼崎市
園田法律事務所
井上界
【無料】遺産分割協議書ひな形と書き方、自分で作成する方法を弁護士が解説
遺産分割協議書は、相続人全員で決めた遺産の分け方を記録する書面です。不動産の相続登記や預貯金の解約、相続税申告などで提出を求められることがあります。この記事では、無料で使えるひな形、財産別の書き方、押印・契印・割印、必要書類、自分で作成する流れをわかりやすく解説します。法務局や国税庁の記載例を見るときの注意点、相続同意書や遺産分割協議証明書との違いも紹介します。初めて作る方が迷いやすいポイントも確認できます。

【弁護士監修】遺産分割協議書のひな形ダウンロード(Word・PDF)

遺産分割協議書は、ご自身で作成することで弁護士などの専門家に依頼する費用を抑えることが可能です。しかし、自己流の作成は不備が生じやすく、書き直しや再協議のリスクもゼロではありません。

そこで、初めての方でも迷わず作成できるよう、弁護士監修の標準的なフォーマット(ひな形)をご用意しました。

 以下のリンクからひな形をダウンロードし、本記事の書き方の解説と照らし合わせながら、ご自身で作成する際の参考としてお役立てください。

  • Word形式でダウンロードは「こちら
  • PDF形式でダウンロードは「こちら

※ただし、これらのひな形は、遺産分割協議書に関する情報提供を目的としたものであり、内容を保証するものではありません。複雑な相続関係にある場合や、法的な確実性を求められる場合は、弁護士への相談をおすすめいたします。

ひな形を使う場合でも、相続人・財産・提出先によって必要な記載は変わります。特に、不動産、株式、借金、代償分割がある場合は、ひな形をそのまま使うのではなく、この記事の文例を確認しながら修正しましょう。

そもそも遺産分割協議書とは?

遺産分割協議書とは、遺産分割に関する話し合い(遺産分割協議)で合意した内容をまとめた書面です。

遺産分割協議書は、遺産の具体的な分配方法を明確にし、名義変更などの相続手続きを進めたり、将来の紛争を防いだりするために重要な文書です。

遺産分割協議書を作成しないとどうなる?

遺産分割協議書の作成は法的に必須ではありませんが、口頭の合意だけではお互いの認識のずれから後々トラブルになったり、名義変更などの相続手続きが滞ったりするリスクがあります。

将来のトラブルを避けて、名義変更などの相続手続きを円滑に進めるためには、遺産分割協議書を作成した方がよいでしょう。

特に、不動産の相続登記、預貯金の解約、株式の名義変更、相続税申告を行う場合には、遺産分割協議書の提出を求められることがあります。相続人全員の合意内容を証明するためにも、書面で残しておくことが重要です。

遺産分割協議書はどこでもらえる?

遺産分割協議書はどこかで入手するものではなく、相続人のうち誰かが作成する必要があります。

遺産分割協議書の内容は具体的な状況に応じて変わるため、自力で作成するのが難しい場合には、弁護士などの専門家に作成を依頼しましょう。

遺産分割協議書を作成できる人は誰?

遺産分割協議書を誰が作成するかは、相続人同士で話し合って決めるのがよいでしょう。

相続人の1人が下書きを用意し、その内容を他の相続人全員に説明したうえで全員が納得して署名押印すれば、有効な遺産分割協議書として成立します。署名を求める前に内容について合意しておくことが不可欠です。

ただし、相続人の一部だけで内容を決めたり、他の相続人に内容を十分説明しないまま署名を求めたりすると、後からトラブルになることがあります。作成者が誰であっても、最終的には相続人全員が内容を確認し、合意することが必要です。

遺産分割協議書を自分で作成する流れ

遺産分割協議書は、必要事項を押さえれば自分で作成できます。初めて作成する場合は、次の流れで進めると抜け漏れを防ぎやすくなります。

手順

やること

1. 相続人を確認する

戸籍謄本などで相続人全員を確認します

2. 相続財産を調べる

預貯金、不動産、株式、借金などを洗い出します

3. 分け方を話し合う

誰がどの財産を取得するか、代償金を払うかなどを決めます

4. ひな形に沿って記載する

財産を特定できるように正確に書きます

5. 相続人全員が署名・押印する

実印で押印し、印鑑証明書を準備します

6. 提出先に提出する

法務局、銀行、証券会社、税務署などに提出します

遺産分割協議書のひな形

遺産分割協議書に、法的に決められた書き方は特にありません。必要事項が書かれていれば、有効な遺産分割協議書として成立し、相続手続きに使用できます。

とはいえ、遺産分割協議書の内容を1から考えるのは大変なので、ひな形を参考に作成するのがよいでしょう。

以下のひな形には、遺産分割協議書の例として代表的な遺産を記載しています。ご自身の状況に合わせて、必要な内容を加筆修正してください。


遺産分割協議書(ひな形)

被相続人 ◯◯◯◯(0000年00月00日生)
死亡日  0000年00月00日
本籍   ◯◯県◯◯市◯◯区◯◯丁目◯◯番◯◯号

上記の被相続人の相続人である◯◯◯◯と◯◯◯◯は、遺産について協議を行った結果、次のとおり分割することに同意した。

1.相続人◯◯◯◯は次の遺産を取得する。

【土地】
所  在 ◯◯市◯◯区◯◯丁目
地  番 ◯◯番◯◯
地  目 宅地
地  積 000.00㎡

【建物】
所  在 ◯◯市◯◯町◯◯丁目
家屋番号 ◯◯◯番
種  類 居宅
構  造 木造瓦葺2階建
床 面 積 1階 00.00㎡
      2階 00.00㎡

2.相続人◯◯◯◯は次の遺産を取得する。

【預貯金】
◯◯銀行◯◯支店 普通預金 口座番号0000000

【株式】
◯◯株式会社 普通株式 000株


3.◯◯◯◯は、土地と建物の遺産を取得する代償として、◯◯◯◯に0000年00月00日までに、金0000万円を支払う。

4.◯◯◯◯は、被相続人の◯◯銀行◯◯支店に対する借入金債務全額を承継し、弁済する。

5. 本協議書に記載のない財産または債務については、◯◯◯◯が相続する。

以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、本協議書を2通作成し、署名押印の上、各自1通ずつ所持する。

令和◯◯年◯◯月◯◯日

住所 ◯◯県◯◯市◯◯区◯◯丁目◯◯番◯◯号
氏名 ◯◯◯◯             実印

住所 ◯◯県◯◯市◯◯区◯◯丁目◯◯番◯◯号
氏名 ◯◯◯◯             実印


このひな形は、遺産分割協議書に関する情報提供を目的としたものであり、内容を保証するものではありません。遺産分割協議書を作成する際は、弁護士に相談することをおすすめします。

ひな形を使うときは、不要な財産欄を削除し、実際に存在する財産だけを記載します。反対に、預貯金口座が複数ある場合や、不動産が複数ある場合は、財産ごとに記載欄を追加しましょう。

遺産分割協議書の書き方・文例集

遺産分割協議書のひな形をもとに、各項目の書き方と文例を紹介していきます。

遺産分割協議書は、パソコンで作成しても、手書きで作成しても構いません。自分にとってやりやすい方法で作成しましょう。

まずは財産ごとの記載ポイントを一覧で確認しましょう。提出先で財産を特定できるよう、名称や番号は資料どおり正確に書くことが大切です。

財産別の記載例早見表

財産

記載する主な内容

確認する資料

預貯金

金融機関名、支店名、預金種別、口座番号、取得者

通帳、残高証明書

現金

金額、取得者、取得割合

財産目録、保管状況のメモ

不動産

所在、地番、家屋番号、地目、地積など

登記事項証明書

株式

会社名、株式の種類、株数、証券口座

取引残高報告書、株主名簿

債務

債権者、債務額、負担する人

借入契約書、残高証明書

(1)表題

まずは冒頭に「遺産分割協議書」と表題を記載します。

表題はシンプルに「遺産分割協議書」で問題ありません。「相続同意書」など別の名称にすると、提出先で内容確認に時間がかかることがあるため、一般的な表題にしておくと安心です。

(2)被相続人の情報

誰の相続についての遺産分割協議書なのかを特定するために、被相続人の情報を記載します。

具体的には、被相続人の名前、生年月日、死亡日、本籍地などを記載します。

被相続人の情報は、戸籍謄本や住民票の除票、戸籍の附票などを確認しながら記載します。氏名の漢字や本籍地の表記を誤ると、相続登記や金融機関の手続きで修正を求められることがあります。

(3)遺産分割協議の合意

遺産分割協議を行って、各相続人が合意をした旨を記載します。

具体的には、「上記の被相続人の相続人である◯◯◯◯と◯◯◯◯は、遺産について協議を行った結果、次のとおり分割することに同意した。」などと記載します。

相続人の数が多い場合には、相続人の名前を別の場所にまとめて記載する方法もあります。

相続人全員が合意していることが重要です。相続人の一部が署名していない遺産分割協議書は、原則として相続手続きに使えません。

(4)相続財産の分け方

各相続財産について、どの財産を誰が取得するのかを特定するための書き方を紹介します。

「誰が」「どの財産を」「どの割合で取得するか」がわかるように書きます。財産を特定できない書き方だと、提出先で補正や作り直しを求められることがあります。

預貯金

銀行名と支店名、預金の種類(普通預金や定期預金など)、口座番号などを記載します。また、取得する相続人と、割合も記載します。

預貯金の記載例は、次のような形です。

  • 相続人甲は、次の預金を取得する。

    ○○銀行○○支店 普通預金 口座番号1234567

    口座名義人 被相続人○○○○

複数の相続人で分ける場合は、「相続人甲が2分の1、相続人乙が2分の1の割合で取得する」など、割合を明記しましょう。

現金

具体的な金額を記載するパターンと、取得する割合を記載するパターンがあります。現金に相続手続きはないので、相続人同士が理解できれば、どのような書き方でも構いません。

ただし、後日のトラブルを防ぐためには、「現金100万円は相続人甲が取得する」など、金額と取得者を明確にしておくのがおすすめです。

不動産

土地や建物といった不動産を相続する場合、「登記事項証明書」(登記簿謄本)の内容に従って記載します。登記事項証明書は、法務局で取得できます。

不動産は、住所ではなく登記事項証明書に記載された「所在」「地番」「家屋番号」などで特定します。住居表示だけを書くと、相続登記で補正を求められることがあります。

土地の記載事項

土地の場合は、所在、地番、地目、地積を記載します。 共有の場合には、上記に加えて、共有持分も記載します。

土地の記載例は、登記事項証明書の表題部を見ながら、次のように書きます。

  • 【土地】

    所在 ○○市○○区○○町○丁目

    地番 ○番○

    地目 宅地

    地積 123.45㎡

出典:法務省:登記事項証明書(不動産登記)の見本(土地)

建物の記載事項

建物の場合は、所在、家屋番号、種類、構造、床面積を記載します。

出典:法務省:登記事項証明書(不動産登記)の見本(建物)


建物の記載例は、次のような形です。

  • 【建物】

    所在 ○○市○○区○○町○丁目○番地○

    家屋番号 ○番○

    種類 居宅

    構造 木造瓦葺2階建

    床面積 1階 50.00㎡ 2階 45.00㎡

マンション(区分所有建物)

マンションの場合には、一棟の建物、敷地権の目的である土地、専有部分の建物、敷地権についてそれぞれ記載します。

  1. 一棟の建物の表示として、所在、建物の名称を記載します。
  2. 敷地権の目的である土地の表示として、土地の符号、所在及び地番、地目、地積を記載します。
  3. 専有部分の建物の表示として、家屋番号、建物の名称、種類、構造、床面積を記載します。
  4. 敷地権の表示として、敷地権の種類、敷地権の割合を記載します。

出典:法務省:登記事項証明書(不動産登記)の見本(区分建物)

マンションは記載項目が多いため、登記事項証明書をそのまま確認しながら書くことが大切です。敷地権の割合を書き漏らすと、不動産を十分に特定できないことがあります。

借地権の場合

借地権の場合には、賃貸人と、土地の所在、地番、地目、地積を記載します。

借地権は、土地そのものの所有権ではなく、土地を借りて利用する権利です。賃貸借契約書や地主との契約内容を確認し、権利の内容がわかるように記載しましょう。

自動車

自動車を相続する場合には、自動車登録番号や車台番号を記載します。

車検証を確認しながら、自動車登録番号、車台番号、車名、型式などを記載すると特定しやすくなります。

株式

株式を相続する場合には、株式の発行会社、種類、株数を記載します。

上場株式の場合は、証券会社名や口座番号も記載しておくと、名義変更手続きで確認しやすくなります。非上場株式の場合は、会社名、株式の種類、株数のほか、株主名簿の記載も確認しましょう。

  • 相続人甲は、次の株式を取得する。

    ○○株式会社 普通株式 100株

    ○○証券○○支店 口座番号0000000

(5)不動産を特定の相続人が取得し、代わりに代償金を支払う場合(代償分割)

不動産を特定の相続人が取得し、他の相続人に対して代償金を支払う場合には(代償分割)、対象となる不動産の情報に加えて、代償金の支払い方法を記載します。

具体的には、支払日、支払い金額、銀行振込の場合には振込先の銀行口座(銀行名、支店名、口座番号、口座名義人)、振込手数料を負担する人を記載します。

代償分割では、代償金の支払い条件をあいまいにしないことが重要です。「いつまでに」「いくらを」「どの口座へ」「振込手数料は誰が負担するか」まで明記しましょう。

(6)債務

被相続人の借金などの債務を相続する場合には、誰がその債務を弁済するかを記載します。

具体的には、「誰が借金を相続して返済するか」「どこからお金を借りているか(金融機関など)」を記載します。

債務の記載例は、次のような形です。

  • 相続人甲は、被相続人の○○銀行○○支店に対する借入金債務全額を承継し、弁済する。

ただし、遺産分割協議書で相続人間の負担者を決めても、債権者に当然に対抗できるとは限りません。金融機関などの債権者との関係では、別途手続きや同意が必要になることがあります。

(7)後日見つかった財産の取り扱い

遺産分割協議書を作成するまでに、相続財産の調査をする必要があります。しかし、それでも把握していなかった財産が、後日見つかることがあります。

こうした場合に備えて、新たに財産が見つかった場合どう分けるか、あらかじめ遺産分割協議書に記載しておくと良いでしょう。具体的には「特定の相続人が全て取得する」や「再度遺産分割協議をする」などの方法が考えられます。

遺産分割協議書に記載がなかった場合は、後日見つかった財産についてのみ再度協議を行う必要があります。

後日見つかった財産の扱いは、次のように書くことができます。

  • 本協議書に記載のない財産が後日判明した場合は、相続人全員で改めて協議する。

すべて特定の相続人が取得する内容にすることもありますが、財産の金額が大きい場合には不公平感が生じることがあります。迷う場合は「改めて協議する」としておく方が無難です。

(8)遺産分割協議書の日付・署名・住所の書き方と文例

遺産分割協議書には、相続人が署名と押印をすることが一般的です。

押印に使用する印鑑は実印を使用しましょう。預貯金の引き出しや相続登記を行う際に、実印が押印された遺産分割協議書と、印鑑証明書が必要になります。

実印を持っていない場合は、市区町村役場で印鑑登録をしておきましょう。

住所は、印鑑証明書の住所と一致させるのが基本です。住所表記が異なると、提出先で確認を求められることがあります。

実印・印鑑証明書は必要?

遺産分割協議書は、相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付するのが一般的です。特に、法務局で相続登記をする場合や、銀行で預貯金の解約をする場合には、実印と印鑑証明書が求められることがあります。

法務局の相続登記手続きでは、遺産分割協議書に法定相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付する扱いが示されています。印鑑証明書の有効期限については、提出先ごとに確認しましょう。

遺産分割協議書の契印の押し方

遺産分割協議書が2枚以上になる場合は、2枚以上の用紙が1つの連続した文書であることを証明するために「契印」を押します。

遺産分割協議書がホチキス止めされている場合には、全ページの見開き部分に、両ページにまたがるように契印を押します。

遺産分割協議書が袋とじになっている場合には、表紙または裏表紙に、製本テープと用紙にまたがるように契印を押します。

契印を押す場合には、すべての相続人の契印が必要です。

遺産分割協議書の割印の押し方

相続人が複数いる場合などで、同じ内容の遺産分割協議書を複数作成する場合には、すべての遺産分割協議書が同じ内容であることを証明するために割印を押します。

複数の遺産分割協議書を重ねた状態から、縦と横に少しずらし、全ての遺産分割協議書にまたがるように割印を押します。

割印を押す場合には、すべての相続人の割印が必要です。

押印の種類

目的

押す場所

実印

相続人本人の意思確認

署名欄の横

契印

複数ページが1つの文書であることを示す

ページのつなぎ目

割印

複数部が同じ内容であることを示す

複数部を重ねてまたがる位置

書き間違えた場合の訂正方法

遺産分割協議書を書き間違えた場合は、修正液や修正テープを使わないようにしましょう。訂正箇所に二重線を引き、訂正印を押す方法が一般的です。

ただし、財産の内容や取得者など重要な部分を誤った場合は、訂正ではなく作り直した方が安全です。提出先によって訂正方法の扱いが異なることもあるため、不安な場合は事前に確認しましょう。

原本は返してもらえる?原本還付とは

法務局などに遺産分割協議書の原本を提出する場合、原本還付の手続きをすれば、原本を返してもらえることがあります。原本還付を希望する場合は、原本とコピーを用意し、コピーに「原本と相違ありません」などと記載して提出するのが一般的です。

遺産分割協議書は、銀行、証券会社、税務署など複数の提出先で必要になることがあります。原本を1通しか作らない場合は、原本還付の可否を事前に確認しておきましょう。

国税庁と法務局の遺産分割協議書の記載例

国税庁と法務局が、遺産分割協議書の記載例を公開しています。遺産分割協議書の書き方として参考にするのもよいでしょう。

国税庁が公開している遺産分割協議書の記載例は、次のリンクからご覧いただけます。PDFの36枚目です。

法務局が公開している遺産分割協議書の記載例は、次のリンクからご覧いただけます。PDFの3枚目です。

国税庁の記載例は相続税申告、法務局の記載例は相続登記を意識して確認すると理解しやすいです。どちらか一方だけをそのまま使うのではなく、提出先と財産内容に合わせて必要な記載を補いましょう。

遺産分割協議書の提出先

遺産分割協議書の提出先は、相続手続きの種類によって異なります。具体的には以下のようになります。

提出先

主な手続き

一緒に求められやすい書類

法務局

相続登記

戸籍謄本、住民票、印鑑証明書、固定資産評価証明書など

銀行

預貯金の解約・名義変更

戸籍謄本、印鑑証明書、本人確認書類など

証券会社

株式・投資信託の名義変更

残高証明書、相続手続依頼書など

税務署

相続税申告

相続税申告書、財産評価資料、本人確認書類など

詳しくは以下の記事で解説しているので、あわせてお読みください。

関連記事:遺産分割協議書の提出先と期限は?コピーで提出してもOK?

弁護士に相談すべきケース

遺産分割協議書は自分で作成できますが、相続人の中に未成年者、認知症などで判断能力が不十分な人、行方不明の人がいる場合は、通常の流れだけでは進められません。

これらのケースでは、家庭裁判所で代理人を選任してもらうなど、協議に参加するための前提手続きが必要になることがあります。必要な手続きをしないまま作成した遺産分割協議書は、無効になるおそれがあります。

相続人の状況

必要になりやすい手続き

注意点

未成年者がいる

特別代理人の選任

親権者と利益が対立する場合があります

判断能力を欠く人がいる

成年後見人などの選任

家族の代筆だけでは足りません

行方不明者がいる

不在者財産管理人の選任

遺産分割には別途許可が必要です

未成年者と親権者が共同相続人の場合

未成年者は、原則として自分だけで遺産分割協議に参加できません。通常は親権者が法定代理人として手続きをしますが、親権者自身も共同相続人である場合は、親権者と未成年者の利益が対立する可能性があります。

たとえば、父が亡くなり、母と未成年の子が相続人になるケースでは、母は自分の相続分と子の相続分の両方に関わる立場になります。この場合、母が子を代理して遺産分割協議をすることはできず、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要があります(民法826条1項)。

認知症などで意思能力を欠く相続人がいる場合

認知症などにより遺産分割協議の内容を理解して判断することが難しい相続人がいる場合、その人を除外して協議を進めることはできません。また、家族が本人の代わりに署名したり、実印を押したりするだけでも足りません。

このような場合は、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立て、成年後見人が本人を代理して協議に参加するのが基本です(民法7条)。ただし、成年後見人自身も共同相続人である場合は、本人との間で利益相反が生じるため、後見監督人がいれば後見監督人が代理し、後見監督人がいない場合は特別代理人の選任が必要になります(民法851条4号、860条)。

「同居している家族だから代わりに決められる」という扱いにはならないため、判断能力に不安がある相続人がいる場合は、協議書を作る前に弁護士などの専門家へ確認しましょう。

関連記事:認知症の相続人がいる場合の相続手続き、対処法や事前対策を解説

行方不明の相続人がいる場合

相続人の中に連絡が取れない人や行方不明の人がいる場合でも、その人を除いて遺産分割協議を成立させることはできません。相続人全員の合意が必要である以上、行方不明の相続人にも適法に参加してもらう仕組みが必要です。

この場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てます(民法25条)。さらに、不在者財産管理人が本人に代わって遺産分割協議をするには、通常の管理権限を超える行為として、家庭裁判所の権限外行為許可を得る必要があります(民法28条、103条)。

行方不明者の署名押印がないまま作成した遺産分割協議書は、相続登記や預貯金の解約手続きで受け付けてもらえない可能性が高いでしょう。

必要な手続きをしないと協議書が無効になるおそれがある

未成年者、判断能力を欠く相続人、行方不明の相続人がいるのに必要な代理人選任や許可を受けずに作成した遺産分割協議書は、無権代理などとして無効になるおそれがあります。

特に、相続登記や預貯金の解約では、提出先が相続人全員の関与や代理権限を確認します。後から協議書を作り直すことになると、手続き全体が大きく遅れる可能性があります。

次のいずれかに当てはまる場合は、自分だけで判断せず、遺産分割協議書を作成する前に弁護士などの専門家へ相談しましょう。

  • 未成年の相続人がいる
  • 未成年の兄弟姉妹が複数いる
  • 親権者も共同相続人になっている
  • 認知症などで判断能力に不安がある相続人がいる
  • 成年後見人も共同相続人になっている
  • 行方不明の相続人がいる
  • 相続人の一部と長期間連絡が取れない

遺産分割協議書についてよくある質問

Q.遺産分割協議書の作成期限はありますか?

遺産分割協議書の作成自体には期限はありませんが、相続手続きには期限があるものもあるため、計画的に作成する必要があります。

たとえば、相続税が発生する場合には、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告と納税をしなければなりません。この期限を過ぎると、原則として延滞税が課せられます

また、不動産を相続した場合の相続登記については、法改正により2024年4月1日以降は期限が設けられます。相続が発生したことと、不動産の所有権を取得したことを知ったときから3年以内に相続登記をしなければなりません。これらの登記義務に違反すると、10万円以下の過料が課せられる可能性があります。

2024年4月1日より前に開始した相続でも、相続登記をしていない不動産は義務化の対象です。法務省は、原則として2027年3月31日までに相続登記をする必要があると案内しています。

Q.遺産分割協議書を無効にすることはできますか?

遺産分割協議書は、相続人が遺産を分割する際に合意した内容を書面にしたものです。遺産分割協議に合意して遺産分割協議書に署名した場合、その内容を後から変更することは原則としてできません。

しかし、無効事由や取り消し事由がある場合には、遺産分割協議書の無効や取り消しを主張できる場合があります。

詳しくは以下の記事で解説しているので、あわせてお読みください。
関連記事:遺産分割協議書が無効・取り消しとなるケースは?8つのパターンと手続きを解説

Q.遺産分割協議書を作成する際に必要な書類は?

遺産分割協議書を作成する際には、次のような書類が必要です。

  • 被相続人の戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 被相続人の住民票または住民票除票、戸籍附票
  • 相続人の印鑑登録証明書
  • 財産目録
  • 遺言書
  • 検認済み証明書
  • 相続放棄受理証明書
  • 寄与分や特別受益を証明する書類

詳しくは以下の記事で解説しているので、あわせてお読みください。

関連記事:遺産分割協議書の必要書類は?取得方法や用途、有効期限も解説

Q.遺産分割協議証明書との違いは?

「遺産分割協議証明書」とは、各相続人が遺産分割協議の内容を証明する書類です。相続人が遠方にいたり連絡が取りづらかったりする場合に、遺産分割協議書の代わりに作成することができます。

相続人の中に連絡を取りづらい人や遠方にいる人がいる場合でも作成しやすいメリットがありますが、相続手続きの担当者によっては遺産分割協議証明書では対応してもらえない可能性があります。

詳しくは以下の記事で解説しているので、あわせてお読みください。
関連記事:遺産分割協議証明書とは?遺産分割協議書との違いや作成方法を書式付きで解説

Q.相続同意書と遺産分割協議書の違いは?

相続同意書は、金融機関などが相続手続き用に用意している書類を指すことがあります。一方、遺産分割協議書は、相続人全員で決めた遺産の分け方をまとめる書面です。

提出先によっては、相続同意書や相続手続依頼書への記入で足りる場合もありますが、不動産の相続登記や複数の財産をまとめて整理する場合には、遺産分割協議書を作成しておく方が手続きしやすいことがあります。

Q.遺産分割協議書はパソコンで作ってもいい?

パソコンで作成しても問題ありません。本文をパソコンで作成し、最後に相続人全員が署名・実印で押印する方法が一般的です。

ただし、提出先によって求められる形式が異なる場合があります。相続登記や金融機関手続きに使う場合は、事前に提出先へ確認しておくと安心です。

Q.遺産分割協議書は相続人ごとに1通ずつ必要?

必ず相続人ごとに1通ずつ作成しなければならないわけではありません。ただし、相続人それぞれが保管できるよう、相続人の人数分を作成することが多いです。

原本が複数ある場合は、同じ内容であることを示すために割印を押しておくとよいでしょう。

Q.後から財産が見つかったら作り直しが必要?

遺産分割協議書に「後日見つかった財産の取り扱い」を記載していれば、その条項に従って処理できることがあります。記載がない場合は、見つかった財産について改めて遺産分割協議を行う必要があります。

財産調査をしても後から財産が見つかることはあるため、遺産分割協議書には後日判明した財産の扱いを入れておくと安心です。

遺産分割協議書の作成に不安があれば弁護士や司法書士に相談を

遺産分割協議書は相続人が自分で作成できますが、作成方法や内容に不安がある場合には弁護士などの専門家に相談しましょう。

弁護士などの専門家のアドバイスを受けることで、法的に不備のない遺産分割協議書を作成し、名義変更などの相続手続きをスムーズに進めることができます。

遺産分割に争いのない場合でも、遺産分割協議書の作成のみを依頼できる弁護士などの専門家もいます。まずは気軽に相談してみましょう。

特に、不動産がある場合、相続人の人数が多い場合、代償金を支払う場合、相続人の一部と連絡が取りづらい場合、借金や未分割財産がある場合は、専門家に確認してもらうと安心です。

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