


遺言書の「検認」とは、相続人に対して遺言の存在と内容を知らせるとともに、遺言書の内容を明確化して偽造・変造を防止するための手続きです。
遺言書の検認の目的は、以下の2点です。
検認の申立てを受理した家庭裁判所は、すべての相続人に対して検認期日を通知します。
申立人以外の相続人の出席は任意ですが、少なくとも検認期日の通知によって遺言書の存在を知ることができ、出席すればその内容も確認できます。
検認期日においては、遺言書の形状・加除訂正の状態・日付・署名など、その時点における遺言書の内容が確認されます。万が一、後から偽造や変造が行われても、検認された遺言書と内容が異なる場合は、偽造・変造の事実が明らかになります。
なお検認手続きにおいては、遺言書の有効性についての判断は行われません。検認が完了したとしても、訴訟などを通じて遺言無効を主張することはできます。
弁護士ドットコム「みんなの法律相談」に寄せられた相続の相談30,302件のうち、検認関連の相談は400件でした。、「検認をしても遺言の効力は別問題ではないか」「検認後に遺言無効を争えるか」といった有効性に関する相談は31件(約8%)ありました。検認は“遺言書の存在と形状を確認する手続き”であって、“遺言が有効だとお墨付きを与える手続きではない”という点は、誤解されやすいポイントです。
(2021年4月1日~2026年7月8日に投稿された相談。当社調べ、n=30,302)

遺言書の検認手続きについて正しく理解するためには、まず、法律で認められている遺言書にはどのような種類があるのかを知っておく必要があります。
日本の民法では主に「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類が規定されており、それぞれ作成の方法や保管の仕組みが大きく異なります。どの種類の遺言書であるかによって、後に必要となる家庭裁判所の検認手続きの要否が変わってきます。
遺言書については、家庭裁判所の検認が必要です(民法1004条1項)。
ただし、遺言書保管所で保管されている自筆証書遺言と公正証書遺言については、検認が不要とされています(法務局における遺言書の保管等に関する法律11条、民法1004条2項)。
<検認が必要な遺言書> 遺言書保管所で保管されていない自筆証書遺言 / 秘密証書遺言 / 特別の方式によって作成された遺言(危急時遺言、伝染病隔離者の遺言、在船者の遺言、船舶遭難者の遺言)
<検認が不要な遺言書> 遺言書保管所で保管されている自筆証書遺言 / 公正証書遺言
この「検認が必要か・不要か」の線引きは、実際に迷う人が多いテーマです。「みんなの法律相談」の検認関連の相談400件のうち、「公正証書遺言でも検認はいるのか」「法務局の保管制度を使えば検認は不要か」といった要否に関する相談は35件(約9%)を占めました。ご自身の遺言書がどちらに当たるか分からない場合は、上記の分類を確認したうえで、家庭裁判所または弁護士に確認するのが良いでしょう。
(2021年4月1日~2026年7月8日に投稿された相談。当社調べ、n=30,302)
自筆証書遺言は、遺言者がその全文、日付、氏名を自筆し、押印することで作成する最も簡便な遺言書です。証人を立てる必要がなく、誰にも知られずに作成できる手軽さがある一方で、形式の不備で無効になったり、死後に発見されなかったりするリスクもあります。
自筆証書遺言において検認の要否を分けるポイントは、その「保管場所」にあります。自宅の金庫や仏壇、あるいは信頼できる知人に預けていたような場合には、家庭裁判所での検認が必須となります。ただし、近年始まった法務局の「遺言書保管制度」を利用して保管されている場合には、検認が不要となります。
公正証書遺言は、遺言者本人が、公証人と証人2名の前で、遺言の内容を口頭で告げ、公証人が、それが遺言者の真意であることを確認した上、これを文章にまとめたものを、遺言者および証人2名に読み聞かせ、または閲覧させて、内容に間違いがないことを確認してもらって、作成される遺言書です。完成した遺言書の原本は公証役場に保管されます。
この形式の最大の特徴は、公的機関が作成と保管に関与しているため、偽造や変造、隠匿のリスクが極めて低い点にあります。法的な有効性についても公証人が確認しているため、内容が不明確で無効になるおそれもほとんどありません。そのため、家庭裁判所での検認は不要です。
秘密証書遺言は、遺言の内容を誰にも知られたくない場合に利用される特殊な形式です。遺言者が署名・押印した遺言書を封印し、公証役場に持ち込んで、公証人と証人の前で「自分の遺言書である」ことを証明してもらう形で作成します。
この形式は、遺言書の「存在」が公証役場で証明されますが、中身については公証人も確認しないため、内容の不備といったリスクは自筆証書遺言と同様に残ります。また、遺言書は遺言者本人が持ち帰って保管するため、家庭裁判所での検認が必要です。

遺言書の検認手続きは、以下の流れで進行します。
遺言書の保管者または遺言書を発見した相続人が、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に対して、遺言書の検認を申し立てます。
検認の申立てには、申立書のほかに、遺言者と相続人の関係を証明する戸籍謄本をそろえます。どこまでの戸籍が必要かは、相続人が誰か(配偶者・子・親・兄弟姉妹のどこまで及ぶか)で変わります。
まず、どのケースでも共通して必要な書類は次のとおりです。
これに加えて、相続人のパターンごとに必要な戸籍が増えます。自分がどのケースに当てはまるかを、次の表で確認してください。
あなたのケース | 共通書類に加えて必要な戸籍 |
|---|---|
配偶者のみ/配偶者と子が相続人 | 原則なし(子が先に亡くなり孫が継ぐ場合は、その子の出生~死亡の戸籍) |
配偶者と親(直系尊属)が相続人 | 先に亡くなった親・祖父母がいれば、その死亡がわかる戸籍 |
配偶者と兄弟姉妹・甥姪が相続人/相続人がいない | 父母の出生~死亡の戸籍、直系尊属の死亡がわかる戸籍、先に亡くなった兄弟姉妹の出生~死亡の戸籍など |
兄弟姉妹が相続人になるケースは、集める戸籍の通数が多くなり、取り寄せの手間も費用もかかります。
2024年3月1日に始まった戸籍の広域交付制度を使うと、本籍地が遠くても、最寄りの市区町村の窓口でまとめて戸籍謄本を請求できます。
ただし請求できるのは本人・配偶者・父母や子などの直系親族に限られ、兄弟姉妹の戸籍は広域交付では取れません。また窓口へ本人が出向いて顔写真付きの身分証を示す必要があり、郵送や代理人による請求はできません。
兄弟姉妹の戸籍謄本については、これまでどおり本籍地の役所へ個別に請求することになります。
検認そのものにかかる費用は、それほど高くありません。おもな内訳は次のとおりです。
かかるもの | 金額 |
|---|---|
検認の申立て(収入印紙) | 遺言書1通につき 800円 |
検認済証明書(収入印紙) | 遺言書1通につき 150円 |
連絡用の郵便切手 | 数百円程度(金額は家庭裁判所ごとに異なる) |
戸籍謄本 | 1通 450円 |
除籍謄本・改製原戸籍謄本 | 1通 750円 |
申立てそのものの実費は、収入印紙800円と連絡用の郵便切手を合わせて1,000円前後です。検認済証明書は、検認が終わったあとに名義変更などで遺言を実現するときに使う書類で、申請時に遺言書1通につき150円分の収入印紙が必要となります。
費用に大きく差が出るのは、相続人を確定するための戸籍集めです。遺言者の生まれてから亡くなるまでの戸籍をすべてそろえるため、本籍を何度も移していたり、相続人が兄弟姉妹に及んだりすると、戸籍の通数が増えて数千円~1万円程度かかることもあります。
弁護士など専門家に手続きを依頼する場合は、これらの実費とは別に報酬がかかります。
裁判所が相続人に対して、検認期日を通知します。
裁判所において遺言書の検認が行われます。
申立人の出席は必須ですが、それ以外の相続人の出席は任意です。申立人は遺言書と印鑑、さらに担当者から指示されたものを持参します。
申立人は遺言書を提出し、出席した相続人の立会いの下、裁判官が遺言書を検認します。封印がある遺言書については、開封した上で検認が行われます。
実際に、弁護士ドットコムにも「自筆証書遺言の相続人が自分一人だが、検認は自分だけで申し立てられるのか、亡くなった兄弟の甥・姪の戸籍まで必要か」という相談が寄せられています。
封印のある遺言書については、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いがなければ開封できません(民法1004条3項)。
封印が必須である秘密証書遺言だけでなく、自筆証書遺言が任意に封印されている場合にも、家庭裁判所における開封が必要になります。
なお「みんなの法律相談」には、「検認前にうっかり封を開けて読んでしまった」という相談も実際に寄せられています。
検認の終了後、家庭裁判所に検認済証明書の発行を申請します。遺言書1通につき150円分の収入印紙と、申立人の印鑑が必要です。
検認済証明書は、遺言執行に当たって名義変更等の手続きを行う際に必要となります。
遺言書の検認の申立てから検認期日までの期間は、おおむね1か月から2か月程度が標準的です。検認期日自体は1回で終了します。
申立て前の準備(戸籍謄本類の取得など)の期間を合わせると、遺言書を発見してから検認が完了するまでには、2か月から3か月程度の期間を要することが多いです。
遺言書の検認に明確な期限はありませんが、遺言書の保管者または遺言書を発見した相続人は「遅滞なく」検認を請求しなければならないとされています(民法1004条1項)。
また、検認が必要な遺言書は、検認が完了しなければ執行できません。相続財産の活用の側面からも、遺言書の検認は速やかに申し立てなければなりません。
家庭裁判所における検認・開封が必要な遺言書について、以下の違反行為をした者は「5万円以下の過料」に処されることがあります(民法1005条)。
・遺言書の保管者(いない場合は、遺言書を発見した相続人)が、相続の開始を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して検認を請求しなかった場合
・検認を経ずに遺言書を執行した場合
・家庭裁判所外において遺言書を開封した場合
遺言書の検認が終わった後は、遺言執行の手続きに移ります。
実は、「みんなの法律相談」で寄せられた検認関連の相談400件を分析すると、最も多かったのは「検認が終わった後、次に何をすればよいか」という検認後の手続き(名義変更・遺言執行・証明書など)に関する相談で、121件(約30%)を占めました。検認はゴールではなく、相続手続きのスタート地点です。
(2021年4月1日~2026年7月8日に投稿された相談。当社調べ、n=30,302)
遺言執行は、遺言書で指定された遺言執行者が行います。遺言書で遺言執行者が指定されていない場合は、家庭裁判所に遺言執行者を選任するよう申し立てることができます。なお、遺言執行者がいない場合でも、遺産の名義変更や相続手続については、相続人全員の協力により行うことができます。
具体的には、遺言書の内容に従い、以下の手続きを行うことになります。
・遺産の名義変更・相続手続き / 認知の届出 / 推定相続人の廃除・取消しの申立て
また、遺言書により未成年後見人が指定されている場合は、指定された者本人が未成年後見人の届出をする必要があります。
各遺産を、遺言書に記載された相続人または受遺者に移転します。
現金や一般的な動産については相続人または受遺者に交付すればよいですが、財産の種類によっては名義変更等の手続きが必要となります。
たとえば不動産については相続登記、預貯金や有価証券については金融機関での相続手続きが必要です。
遺言では、婚姻外で生まれた子(=非嫡出子)を認知することができます(民法781条2項)。
遺言による認知が行われた場合、遺言者もしくは認知される子の本籍地、または遺言執行者の住所地の市区町村役場に認知届を提出しなければなりません。
遺言者が生前に親権を行っていた未成年者については、他に親権者がいない場合、遺言によって未成年後見人を指定できます(民法839条1項)。
遺言によって未成年後見人の指定が行われた場合、指定された者本人が、未成年者の本籍地または後見人の住所地の市区町村役場に未成年者の後見届を提出しなければなりません。
被相続人に対する虐待・重大な侮辱その他の著しい非行があった推定相続人については、遺言によって廃除(=相続権を失わせること)の意思表示ができます(民法893条)。
また、すでに廃除となった者につき、遺言によって廃除の取消しの意思表示をすることも可能です(民法894条2項)。
遺言で推定相続人の廃除または廃除の取消しの意思表示がなされた場合は、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に対して、意思表示の内容に従った申立てをしなければなりません。
検認は遺言の有効性を判断する手続きではないため、検認が済んだ後に「その遺言は無効だ」「分け方に納得できない」ともめるケースがあります。相続弁護士ドットコムに掲載された公開解決事例のうち、遺言に関係する事例420件を集計すると、解決までにたどった手段は次のとおりでした。
遺言をめぐる紛争の解決手段 | 件数・割合 |
|---|---|
話し合い(協議) | 214件(51%) |
訴訟 | 80件(19%) |
調停 | 58件(14%) |
その他 | 51件(12%) |
審判 | 17件(4%) |
遺言があっても、約半数(51%)は話し合い(協議)で解決している一方で、訴訟に至った事例も19%あります。
検認の段階から遺言の内容や進め方に不安がある場合は、早めに弁護士へ相談しておくと安心です。なお、これらの事例は成果を保証するものではなく、実際の結果は事案により異なります。
(2021年4月1日~2026年7月8日に投稿された相談。当社調べ、n=30,302)
弁護士ドットコムには、遺言書の検認を済ませて不動産の名義変更まで行った後に、他の相続人から「遺言書は無効だ」と無効確認の訴えを起こされたらどうなるのか、という相談も寄せられています。検認が済んでも有効性の争いは残りうることの一例です。
遺言書の検認について、弁護士ドットコム「みんなの法律相談」に実際に多く寄せられた疑問を、テーマ別の件数とともにまとめました。
よくある疑問のテーマ | 触れていた相談件数 |
|---|---|
検認が終わった後の手続き(名義変更・執行・証明書) | 121件(30%) |
検認の手続き・必要書類・費用・期間 | 109件(27%) |
公正証書・保管制度なら検認は不要か(要否) | 35件(9%) |
検認しても遺言が有効になるわけではないのか | 31件(8%) |
検認しないとどうなるか・期限 | 24件(6%) |
うっかり開封してしまった | 7件(2%) |
(2021年4月1日~2026年7月8日に投稿された相談の中から、相続の検認関連相談400件を分析。1件が複数テーマに触れる場合を含む、言及ベースの件数・2026年8月時点・当社調べ)。
検認の申立てにかかる費用は、申立てをした人(遺言書の保管者や発見した相続人)が負担するのが原則です。手続きの費用は申し立てた人が支払うのが基本で、相続財産から自動的に支払われるわけではありません。
ただし、戸籍謄本の取得費など相続手続き全体で共通して使う書類の費用は、あとで相続人どうしの話し合いで分担することもあります。
見つかった遺言書は、日付の新しい・古いにかかわらずすべて検認を受ける必要があります。検認は遺言が有効か無効かを判断する手続きではないため、家庭裁判所がどれか1通を選ぶわけではありません。
内容が食い違う部分は、原則としてあとの日付の遺言が優先されますが、それは検認とは別に判断される問題です。まずは見つかった遺言書をすべて提出しましょう。
検認の期日に立ち会うかどうかは、相続人それぞれの自由で、欠席してもかまいません。相続人全員がそろわなくても検認は行われ、手続きが無効になることもありません。
欠席した相続人は、あとから家庭裁判所へ検認調書(謄本)の交付を申請すれば、遺言書の内容を確認できます。
遺言書の保管者または発見者は、遺言書の検認を請求しなければなりません。遺言書保管所で保管されている自筆証書遺言と、公正証書遺言については検認不要とされています。
検認が必要な遺言書は、検認が完了しないと執行できません。相続財産の活用が遅れないようにするためにも、速やかに遺言書の検認を申し立てましょう。
遺言書の検認手続きについて分からないことがあれば、家庭裁判所に確認するか、または弁護士にご相談ください。

東京弁護士会所属。相続問題は複雑な法理論を必要とし、また、事実関係が複雑であり、収集すべき証拠も多くなる傾向にあります。当事務所では、手間を惜しまず綿密な計画を事前に立て、迅速に行動することをモットーとしています。