

「法定相続人」とは、民法によって相続権が認められた人です。民法で定められたルールに従い、被相続人との続柄に応じて法定相続人が決まります。
法定相続人は、自らの法定相続分に応じて、被相続人が死亡時に有した一切の権利義務(=相続財産)を共有します(民法898条)。共有状態の相続財産については、遺産分割協議などを通じて法定相続人間で分割することになります。
法定相続人には遺産分割に参加する権利があるのと同時に、すべての法定相続人が参加しなければ遺産分割を行うことができません。
法定相続人となった方は、必要に応じて弁護士のサポートを受けながら、希望する遺産の相続を目指しましょう。
法定相続人は、民法で定められた「遺産を受け取る権利を持ちうる人」で、実際に相続手続きを進める場面では「相続人」と呼ばれます。両者は多くの場合で一致しますが、以下のようなケースではズレが生じます。
遺言書がある場合: 法定相続人以外(友人や内縁の妻など)が遺産を受け取れば、その人が「相続人」になります。
相続放棄をした場合:法定相続人であっても、相続放棄をすれば、その相続に関して初めから相続人でなかったものとみなされ、最初から「相続人」ではなかった扱いになります(民法939条)。
相続欠格・廃除をされた場合:法定相続人であっても、相続権を剥奪された場合は法定相続人から除外されます。
つまり、「法律上の候補者」が法定相続人であり、「実際に財産を継ぐ人」が相続人という違いがあります。
また、遺言によって遺産を受け取る人(遺贈を受ける人)を受遺者と呼びます(民法964条)。受遺者は、法定相続人以外の第三者も指定することができますが、法定相続人でない受遺者は、相続税額の2割加算の対象となるなど税負担が重くなる点に注意が必要です(相続税法18条)。
法定相続人になる人は、民法で定められた範囲および相続順位によって決まります。ただし、民法上の法定相続人であっても、相続権を失うケースがある点に注意が必要です。
法定相続人になるのは、被相続人の配偶者および以下の相続順位に従った最上位者です(民法887条、889条、890条)。
第1順位:被相続人の子
第2順位:被相続人の直系尊属(親等が異なる者の間では、被相続人に近い者が上位)
第3順位:被相続人の兄弟姉妹

上記のように被相続人が亡くなった場合は、常に相続人である配偶者と、第1順位である子が法定相続人となります。もし子がいなければ相続順位は第2順位の両親と配偶者となります。子も両親もいない場合は、第3順位である兄弟姉妹に法定相続人は変わります。
配偶者がいない場合は、より上の相続順位がすべてを相続することとなり、同順位が複数いる場合は人数で均等に分けることになります。
ただし、この後、説明する代襲相続が発生する場合では、法定相続人はやや複雑になります。
上記の相続順位に従って法定相続人になった人でも、以下のいずれかに該当した場合には、相続権を失います。
法定相続人である被相続人の子が死亡・相続欠格・廃除によって相続権を失った場合は、その子(=被相続人の孫)が法定相続人になります(民法887条2項)。これを代襲相続といいます。
代襲相続人である被相続人の孫が死亡・相続欠格・廃除によって相続権を失った場合は、さらにその子(=被相続人のひ孫)が法定相続人になります(=再代襲相続。民法887条3項)。玄孫以降、被相続人の直系卑属である限り、同様に代襲相続人となります(民法887条2項ただし書)。

また、法定相続人である被相続人の兄弟姉妹が死亡・相続欠格・廃除によって相続権を失った場合は、その子(=被相続人の甥・姪)が代襲相続によって法定相続人になります(民法889条2項、887条2項)。
ただし、甥・姪の子による再代襲相続は認められません(民法889条2項は887条3項を準用していないため)。

なお、法定相続人が相続放棄によって相続権を失った場合には、代襲相続は発生しません。
被相続人の配偶者・子や孫(直系卑属)・両親や祖父母(直系尊属)・兄弟姉妹、または代襲相続人ではない者は、法定相続人になりません。また、自分より先順位の相続人がいる人も、法定相続人になりません。
法定相続人には、民法のルールに従って法定相続分が認められます。遺産分割の対象となる相続財産に対して、法定相続人は法定相続分に応じた権利を主張可能です。 法定相続人の構成と代襲相続の有無に応じて、法定相続分をパターン別に解説します。
代襲相続が発生していない場合は、法定相続人の構成に応じて、以下の要領で法定相続分が決まります(民法900条)。

配偶者:2分の1
子:2分の1
※子が複数いる場合は、人数に応じて均等に法定相続分を按分します。
配偶者:3分の2
直系尊属:3分の1
※同順位の直系尊属が複数いる場合は、人数に応じて均等に法定相続分を按分します。
配偶者:4分の3
兄弟姉妹:4分の1
※兄弟姉妹が複数いる場合は、人数に応じて均等に法定相続分を按分します。ただし、被相続人と父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹(=異父兄弟姉妹・異母兄弟姉妹)の法定相続分は、被相続人と父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1です。
子:100%
※子が複数いる場合は、人数に応じて均等に法定相続分を按分します。
直系尊属:100%
※同順位の直系尊属が複数いる場合は、人数に応じて均等に法定相続分を按分します。
兄弟姉妹:100%
※兄弟姉妹が複数いる場合は、人数に応じて均等に法定相続分を按分します。ただし、被相続人と父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹(=異父兄弟姉妹・異母兄弟姉妹)の法定相続分は、被相続人と父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1です。
代襲相続が発生した場合、被代襲者(=死亡・相続欠格・廃除によって相続権を失った人)の法定相続分を、代襲相続人が引き継ぎます。
代襲相続人が複数いる場合は、人数に応じて均等に法定相続分を按分します(民法901条)。
(例)配偶者A、子B、子Cの3名が法定相続人であったところ、被相続人が死亡する前にCが死亡し、Cの子であるD・E・Fが代襲相続人となった場合の法定相続分

上図のように配偶者Aは常に相続人となるため、配偶者と子どもはそれぞれ遺産の1/2を相続します。子どもの相続分は人数で等分するため、本来であれば子Bは1/4、子Cも1/4の遺産を相続しますが、この場合は子Cは亡くなっているため、子Cの子であるD、E、F(被相続人からすると孫)に相続権が移ります。
子Cが相続するはずだった1/4の遺産を3人で等分するため、D、E、Fの相続分はそれぞれ1/12となります。
これまで説明してきた「法定相続分」と混同されやすいのが「遺留分」です。この2つは役割も法的効力も全く異なるため、遺言書を作成する際や遺産分割を行う際には正しく理解しておく必要があります。
法定相続分とは、遺言書がない場合に、誰がどのくらいの割合で遺産を分けるかという「法律上の目安(ガイドライン)」です。あくまで目安なので、残された家族全員が話し合って合意すれば、この割合を無視して自由に遺産を分けても法律上まったく問題ありません。
一方の遺留分とは、遺言書などによって不当に遺産を奪われるのを防ぐために、法律で保障された「最低限の取り分(権利)」です。
例えば、「他人にすべての財産を譲る」という極端な遺言書があっても、残された配偶者や子ども、親は遺留分を主張して、最低限の財産を取り戻すことができます。亡くなった本人の意思(遺言)よりも優先される、法律が強力に保護する聖域のようなものです。
遺留分について詳しく確認したい方は下記の記事をご覧ください。
法定相続人は被相続人との続柄に応じて決まるため、法定相続人を確認する際には戸籍謄本類を参照します。
まず被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本を取得し、その中で法定相続人になり得る続柄の人を探します。結婚などによって戸籍から離脱している人がいる場合は、その人の戸籍謄本類も取得して、最終的に法定相続人となる人を確定します。
戸籍謄本を取得する方法は2種類あります。1つは、被相続人の本籍地の市区町村役所へ申請する方法です。窓口へ行くか、郵送で申請できます。被相続人が結婚と離婚を繰り返していたり、転居をしたりなどで本籍地の変更が何度もある場合には、以前の本籍地のある市区町村役場にも戸籍謄本の取得を申請しなければなりません。
こうした戸籍取得の時間や手間を短縮するため、2024年3月1日から、本籍地以外の市区町村役場の窓口でも、全国各地の戸籍謄本・除籍謄本をまとめて請求できるようになりました(広域交付制度)。取得したい戸籍謄本が複数の市区町村役場に存在する場合でも、一つの市区町村役場でまとめて申請できます。
ただし、いくつか注意点があります。広域交付制度で請求できる戸籍の範囲は、本人・配偶者・直系尊属(父母・祖父母など)・直系卑属(子・孫など)に限られます(戸籍法120条の2)。兄弟姉妹の戸籍は対象外のため、被相続人の兄弟姉妹が相続人になるケースでは、依然として本籍地の市区町村役場に請求する必要があります。また、戸籍の附票については、広域交付制度は利用できません。
さらに、取得方法としても郵送はできず、代理申請もできないため、本人が窓口に行く必要があります。自身の取得したい戸籍謄本が広域交付で取得できるか気になる場合は、詳しくは最寄りの市区町村役場に問い合わせましょう。
法定相続人の確定に必要な戸籍謄本類が数通にわたるケースもあるため、法定相続人の確定作業には時間がかかることがあります。遺産分割をスムーズに行うため、戸籍謄本類は早めに取得しましょう。
戸籍謄本の取り方については、以下の記事でくわしく解説しているので、あわせてお読みください。
法定相続人がいない場合は、利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所が相続財産清算人を選任します(民法951条、952条1項)。 相続財産清算人は、法定相続人がいない相続財産を管理し、相続債権者や受遺者(=遺贈を受けた人)に対する弁済を行います(民法957条)。
被相続人と特別の縁故があった者(=特別縁故者)に対しては、相続財産の分与が認められることもあります(民法958条の2)。
上記の弁済・分与を経て、最終的に残った相続財産は国庫へ帰属します(民法959条)。
法定相続人になる人は、民法で定められた範囲および相続順位に従って決まります。
法定相続人には、法定相続分に応じた相続を主張する権利があります。ただし、実際にどの財産を相続するかについては、遺産分割協議等を通じて決める必要があります。
ご自身の権利を適切に実現し、公平な形で遺産分割を完了するためには、弁護士のサポートを受けるのが安心です。遺産分割を行う際には、弁護士にご相談ください。
