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法定相続人とは?範囲や相続順位、法定相続分について解説
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民法では、亡くなった人(=被相続人)の相続について、被相続人との続柄に応じて法定相続人が定められています。法定相続人には、遺産分割協議に参加する権利があります。弁護士のサポートを受けながら、適正かつ公平な遺産分割を目指しましょう。この記事では法定相続人について、範囲や相続順位、法定相続分などのルールを解説します。
目次
法定相続人とは
「法定相続人」とは、民法によって相続権が認められた人です。民法で定められたルールに従い、被相続人との続柄に応じて法定相続人が決まります。
法定相続人は、自らの法定相続分に応じて、被相続人が死亡時に有した一切の権利義務(=相続財産)を共有します(民法898条)。共有状態の相続財産については、遺産分割協議などを通じて法定相続人間で分割することになります。
法定相続人には遺産分割に参加する権利があるのと同時に、すべての法定相続人が参加しなければ遺産分割を行うことができません。
法定相続人となった方は、必要に応じて弁護士のサポートを受けながら、希望する遺産の相続を目指しましょう。
誰が法定相続人になるのか
法定相続人になる人は、民法で定められた範囲および相続順位によって決まります。ただし、民法上の法定相続人であっても、相続権を失うケースがある点に注意が必要です。
法定相続人の範囲・相続順位
法定相続人になるのは、被相続人の配偶者および以下の相続順位に従った最上位者です(民法887条、889条、890条)。
配偶者以外の法定相続人の相続順位
第1順位:被相続人の子
第2順位:被相続人の直系尊属(親等が異なる者の間では、被相続人に近い者が上位)
第3順位:被相続人の兄弟姉妹
法定相続人が相続権を失うケース
上記の相続順位に従って法定相続人になった人でも、以下のいずれかに該当した場合には、相続権を失います。
- 被相続人が死亡する前に死亡した場合
- 相続人の欠格事由に該当した場合(民法891条)
- 推定相続人の廃除の審判を受けた場合(民法892条)
- 相続放棄をした場合(民法939条)
代襲相続によって法定相続人になることがある人
法定相続人である被相続人の子が死亡・相続欠格・廃除によって相続権を失った場合は、その子(=被相続人の孫)が法定相続人になります(民法887条2項)。これを代襲相続といいます。
代襲相続人である被相続人の孫が死亡・相続欠格・廃除によって相続権を失った場合は、さらにその子(=被相続人のひ孫)が法定相続人になります(=再代襲相続。民法887条3項)。玄孫以降も同様です。
また、法定相続人である被相続人の兄弟姉妹が死亡・相続欠格・廃除によって相続権を失った場合は、その子(=被相続人の甥・姪)が代襲相続によって法定相続人になります(民法889条2項、887条2項)。
ただし、甥・姪の子による再代襲相続は認められません。
なお、法定相続人が相続放棄によって相続権を失った場合には、代襲相続は発生しません。
法定相続人にならない人
被相続人の配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹、または代襲相続人ではない者は、法定相続人になりません。また、自分より先順位の相続人がいる人も、法定相続人になりません。
法定相続人にならない人の例
- 内縁の(婚姻届を提出していない)配偶者
- 離婚した元配偶者
- 愛人
- 被相続人と同居していた親族ではない人
- いとこ
- 代襲相続人ではない孫、甥、姪
- 子がいる場合の父母、祖父母、兄弟姉妹
- 父母がいる場合の祖父母、兄弟姉妹
- 祖父母がいる場合の兄弟姉妹
など
法定相続人の法定相続分をパターン別に解説
法定相続人には、民法のルールに従って法定相続分が認められます。遺産分割の対象となる相続財産に対して、法定相続人は法定相続分に応じた権利を主張可能です。
法定相続人の構成と代襲相続の有無に応じて、法定相続分をパターン別に解説します。
代襲相続が発生していない場合の法定相続分
代襲相続が発生していない場合は、法定相続人の構成に応じて、以下の要領で法定相続分が決まります(民法900条)。
配偶者・子が相続人の場合の法定相続分
配偶者:2分の1
子:2分の1
※子が複数いる場合は、人数に応じて均等に法定相続分を按分します。
配偶者・直系尊属が相続人の場合の法定相続分
配偶者:3分の2
直系尊属:3分の1
※同順位の直系尊属が複数いる場合は、人数に応じて均等に法定相続分を按分します。
配偶者・兄弟姉妹が相続人の場合の法定相続分
配偶者:4分の3
兄弟姉妹:4分の1
※兄弟姉妹が複数いる場合は、人数に応じて均等に法定相続分を按分します。ただし、被相続人と父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹(=異父兄弟姉妹・異母兄弟姉妹)の法定相続分は、被相続人と父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1です。
子だけが相続人の場合の法定相続分
子:100%
※子が複数いる場合は、人数に応じて均等に法定相続分を按分します。
直系尊属だけが相続人の場合の法定相続分
直系尊属:100%
※同順位の直系尊属が複数いる場合は、人数に応じて均等に法定相続分を按分します。
兄弟姉妹だけが相続人の場合の法定相続分
兄弟姉妹:100%
※兄弟姉妹が複数いる場合は、人数に応じて均等に法定相続分を按分します。ただし、被相続人と父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹(=異父兄弟姉妹・異母兄弟姉妹)の法定相続分は、被相続人と父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1です。
代襲相続が発生した場合の法定相続分
代襲相続が発生した場合、被代襲者(=死亡・相続欠格・廃除によって相続権を失った人)の法定相続分を、代襲相続人が引き継ぎます。
代襲相続人が複数いる場合は、人数に応じて均等に法定相続分を按分します(民法901条)。
- (例)配偶者A、子B、子Cの3名が法定相続人であったところ、被相続人が死亡する前にCが死亡し、Cの子であるD・E・Fが代襲相続人となった場合の法定相続分
- A:2分の1
- B:4分の1
- D:12分の1
- E:12分の1
- F:12分の1
法定相続人の確認方法
法定相続人は被相続人との続柄に応じて決まるため、法定相続人を確認する際には戸籍謄本類を参照します。
まず被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本を取得し、その中で法定相続人になり得る続柄の人を探します。結婚などによって戸籍から離脱している人がいる場合は、その人の戸籍謄本類も取得して、最終的に法定相続人となる人を確定します。
戸籍謄本を取得する方法は2種類あります。1つは、被相続人の本籍地の市区町村役所へ申請する方法です。窓口へ行くか、郵送で申請できます。被相続人が結婚と離婚を繰り返していたり、転居をしたりなどで本籍地の変更が何度もある場合には、以前の本籍地のある市区町村役場にも戸籍謄本の取得を申請しなければなりません。
こうした戸籍取得の時間や手間を短縮するため、2024年3月1日から、全国どこの市区町村役場でも一括してすべての戸籍謄本を取得できるようになりました(広域交付)。取得したい戸籍謄本が複数の市区町村役場に存在する場合でも、一つの市区町村役場でまとめて申請できます。
ただし、郵送はできず、代理申請もできないため、本人が窓口に行く必要があります。また、戸籍の附票は広域交付の制度は利用できません。自身の取得したい戸籍謄本が広域交付で取得できるか気になる場合は、詳しくは最寄りの市区町村役場に問い合わせましょう。
法定相続人の確定に必要な戸籍謄本類が数通にわたるケースもあるため、法定相続人の確定作業には時間がかかることがあります。遺産分割をスムーズに行うため、戸籍謄本類は早めに取得しましょう。
戸籍謄本の取り方については、以下の記事でくわしく解説しているので、あわせてお読みください。
関連記事:相続手続きに必要な戸籍謄本の取り方は?誰が、どこで請求できるのか、注意点も解説
法定相続人がいない場合はどうなる?
法定相続人がいない場合は、利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所が相続財産清算人を選任します(民法951条、952条1項)。
相続財産清算人は、法定相続人がいない相続財産を管理し、相続債権者や受遺者(=遺贈を受けた人)に対する弁済を行います(民法957条)。
関連記事:相続財産清算人とは?相続財産管理人との違いや選任の流れを解説
被相続人と特別の縁故があった者(=特別縁故者)に対しては、相続財産の分与が認められることもあります(民法958条の2)。
関連記事:特別縁故者とは? 該当する人や相続財産分与請求の手続き・費用などを解説
上記の弁済・分与を経て、最終的に残った相続財産は国庫へ帰属します(民法959条)。
まとめ
法定相続人になる人は、民法で定められた範囲および相続順位に従って決まります。
法定相続人には、法定相続分に応じた相続を主張する権利があります。ただし、実際にどの財産を相続するかについては、遺産分割協議等を通じて決める必要があります。
ご自身の権利を適切に実現し、公平な形で遺産分割を完了するためには、弁護士のサポートを受けるのが安心です。遺産分割を行う際には、弁護士にご相談ください。
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