「相続財産」とは、亡くなった被相続人が死亡時に所有していた一切の権利義務をいいます(民法896条)。
相続財産は、被相続人との続柄によって決まる相続人が承継します。相続人のうち誰が相続財産を承継するかについては、遺産分割協議等を通じて決めることになります。
なお、相続財産のことを「遺産」と呼ぶ場合もありますが、呼称が異なるだけで意味の違いはありません。
相続財産には、亡くなった被相続人が死亡時に所有していた一切の権利義務が含まれます。
たとえば、以下のような財産が相続財産に当たります。
相続財産は原則として、遺産分割の対象となります。ただし、遺言書によって取得者が指定されている場合は、その内容に従って相続財産を分けることになります。
また、相続財産のうち可分である債権・債務については、相続の発生によって法律上当然に分割されるため、遺産分割の対象になりません(債権の当然分割について最高裁昭和29年4月8日判決、債務の当然分割について最高裁昭和34年6月19日判決)。
例えば、被相続人が誰かに貸していたお金や事業で発生した売掛金などです。
ただし例外的に、預貯金については当然分割の対象とならず、遺産分割の対象となります(最高裁平成28年12月19日判決)。
亡くなった被相続人が死亡時に所有していたものでなければ、相続財産には当たりません。
たとえば以下のような財産は、相続財産に該当しません。
ただし後述するように、相続税との関係では、相続財産でないものも課税対象となる場合があります(=みなし相続財産)。
遺産分割を行う際には、あらかじめ相続財産を確定する必要があります。
被相続人が生前に相続財産をリストアップしてくれていればスムーズですが、どのような相続財産があるのかについて、被相続人自身もきちんと把握していなかったケースが非常に多いです。その場合は、相続発生後に相続人が調査を行わなければなりません。
相続財産を調べる方法は、財産の種類によって異なります。代表的な相続財産の調べ方は、下表のとおりです。
相続財産の種類 | 調べ方 |
---|---|
・現金 | 被相続人の遺品を調べる |
・預貯金 | 被相続人の口座がある金融機関に対して照会を行う(全店照会が可能な場合あり) |
・有価証券(株式、投資信託など) | 被相続人の口座がある証券会社に対して照会を行う |
・不動産 | 登記簿謄本を確認する |
・車 | 被相続人の遺品を調べる |
・貴金属類(金、プラチナなど) | 被相続人の遺品を調べる |
・貸付債権 | 契約書を調べる |
どの種類の相続財産についても、まずは被相続人の遺品から手掛かりを探すことになります。細かい手掛かりも見落とさないようにして、相続財産を漏れなく調べましょう。
相続などによって取得した財産は、相続税の課税対象となります。課税対象財産の総額が基礎控除額※を超えた場合は、相続税の申告を行わなければなりません。
基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
※法定相続人の数にカウントできる養子の数は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです。
※相続放棄をした人がいる場合でも、その人は法定相続人の数に含めることができます。
相続財産は、相続税の課税対象となります。
また、遺産分割の場面とは異なり、相続税との関係では、以下の財産も相続税の課税対象となります。これらの財産は「みなし相続財産」と呼ばれています。
詳しくは以下の記事で解説しているので、あわせてお読みください。
関連記事:みなし相続財産とは? 通常の相続財産との違いや相続税の取り扱い、非課税枠などを解説
相続税の申告を行うに当たっては、相続財産だけでなく、みなし相続財産も調査した上で計上しなければなりません。課税対象財産の計上漏れがあると、後に税務調査で指摘を受けて追徴課税が行われるおそれがあるので要注意です。
弁護士および税理士のサポートを受けながら、課税対象財産を漏れなくリストアップし、正しく相続税額を計算しましょう。
相続財産またはみなし相続財産に当たるものであっても、以下の財産については、相続税が非課税とされています。
また、課税対象財産の総額が相続税の基礎控除額以下である場合は、相続税がかかりません。さらに、被相続人の配偶者が相続した財産については、税額軽減の特例を利用できます。
相続財産を漏れなく調査することは、遺産分割を一回で完了するため、および相続税の申告・納付を正しく行うために非常に重要な作業です。
相続財産の内容を正しく把握するためには、弁護士に調査を依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼すれば、さまざまな調査方法を活用して相続財産を確定し、トラブルのないように相続手続きを進めてもらえるでしょう。相続税の申告が必要な場合には、税理士を紹介してもらうこともできます。
相続財産の調査や、その他の相続手続きに関するお悩みは、お早めに弁護士までご相談ください。