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成年後見
更新日:2026/10/02

成年後見制度とは?メリット・デメリットと手続き・費用をわかりやすく解説

監修者
田辺晶夫
埼玉県>さいたま市
サンライツ法律事務所
田辺晶夫
成年後見制度とは?メリット・デメリットと手続き・費用をわかりやすく解説
成年後見制度とは、認知症などで判断能力が不十分な人の財産管理や契約を支援する制度です。この記事では、後見・保佐・補助の違いや費用、家族が後見人になれるか等のメリット・デメリットを解説。さらに、2026年の法改正による制度見直しの最新ポイントまで、わかりやすく紹介します。
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成年後見制度とは?判断能力が不十分な人を法律面で支える制度

成年後見制度は、本人がひとりで契約や財産管理をすることが難しくなった場合に、家庭裁判所が選んだ人などが本人を支援する制度です。

認知症になった親の預金管理、介護施設への入所契約、本人名義の不動産売却などで利用が検討されます。

成年後見制度の目的

成年後見制度の目的は、本人の財産や権利を守ることです。

判断能力が低下すると、本人にとって不利な契約をしたり、必要な介護・医療サービスの契約を進められなかったりすることがあります。成年後見制度を利用すると、成年後見人等が本人の状況を見ながら、必要な法律行為を支援できます。

大切なのは、本人の財産を家族の都合で使うための制度ではないという点です。後見人等は本人のために行動する立場であり、家族や相続人の利益を優先することはできません。

成年後見制度が必要になる主なケース

成年後見制度が必要になりやすいのは、本人だけで法律上の手続きを進めることが難しいケースです。

  • 預貯金の引き出しや口座管理が必要
  • 介護施設や医療機関との契約が必要
  • 本人名義の不動産を売却する必要がある
  • 遺産分割協議に本人が参加できない
  • 悪質商法や詐欺被害から本人を守りたい
  • 年金や生活費の管理を継続的に行う必要がある

相続の場面では、相続人の中に認知症の人がいると、本人の利益を守るために成年後見人等の選任が必要になることがあります。

認知症などで判断能力が低下した相続人がいる場合の相続手続きについては、以下の記事でくわしく解説しています。

成年後見制度と「成年後見人」の違い

「成年後見制度」は、認知症や知的障害などによって判断能力が不十分な人を支援する制度全体を指します。一方、「成年後見人」は、現行制度のうち「後見」が開始された場合に家庭裁判所から選ばれる人を指します。保佐では保佐人、補助では補助人が選ばれ、法律上の権限も異なります。

成年後見制度でできること・できないこと

成年後見制度で中心になるのは、財産管理と身上保護です。身上保護とは、生活や療養看護に必要な契約を結ぶなど、生活面を法律行為として支えることです。

財産管理や契約手続きを代わりに行える

成年後見人等は、本人の預貯金を管理し、生活費・医療費・施設利用料などを支払います。年金の受け取り、税金や公共料金の支払い、保険金の請求、本人名義の財産の管理なども職務に含まれます。

また、介護施設への入所契約、福祉サービスの利用契約、医療費の支払いなど、本人の生活に必要な契約手続きも支援できます。

できること

内容

預貯金の管理

生活費・医療費・施設費の支払い

契約手続き

介護施設・医療・福祉サービスの契約

財産管理

不動産・保険・年金などの管理

取消し

本人に不利益な一定の法律行為の取消し

相続手続きや不動産売却で必要になることがある

相続人の中に判断能力が不十分な人がいる場合、その人を除いて遺産分割協議を進めることはできません。本人が協議内容を理解して判断することが難しい場合には、成年後見制度の利用が必要になることがあります。

また、本人名義の自宅を売却して施設費に充てたい場合にも、後見人等の関与が必要になることがあります。特に居住用不動産を処分する場合は、本人の生活基盤に大きく関わるため、家庭裁判所の許可が必要です。

相続登記に必要な書類とその取得方法については、以下の記事でくわしく解説しています。

介護や身の回りの世話そのものは職務ではない

成年後見人等は、本人の生活や医療・介護にも目を配りますが、食事、入浴、排せつ介助などの実際の介護を行う立場ではありません。

後見人等の役割は、介護サービスを契約する、施設費を支払う、本人に必要な支援が受けられているか確認する、といった法律面・財産面の支援です。「介護をしてくれる人」ではなく「介護を受けられるよう契約や支払いを支える人」と考えるとわかりやすいでしょう。

日常生活に関する行為は取り消しの対象外になる

成年後見制度には、本人がした不利益な法律行為を取り消せる仕組みがあります。ただし、日用品の購入など日常生活に関する行為は、原則として取消しの対象外です。

たとえば、本人が食料品や衣類を買うような日常的な買い物まで取り消せるわけではありません。成年後見制度は、本人のすべての行動を制限する制度ではなく、本人の自己決定を尊重しながら必要な法律行為を支える制度です。

成年後見制度の対象者と3つの類型

成年後見制度の対象者と「補助」「保佐」「後見」の3類型

現行の法定後見制度には、本人の判断能力の程度に応じて「補助」「保佐」「後見」の3類型があります。どの類型になるかは、診断書や本人の状況などをもとに家庭裁判所が判断します。

補助|一部の重要な手続きに不安がある人向け

補助は、重要な契約や手続きの一部について、ひとりで判断することに不安がある人を支援する制度です。3類型の中では、本人の判断能力が比較的残っている場合に利用されます。

補助人にどの権限を与えるかは、申立ての内容に応じて家庭裁判所が定めます。本人の自己決定を尊重するため、補助開始や補助人への権限付与には、原則として本人の同意が重要になります。

保佐|重要な契約や財産管理に大きな不安がある人向け

保佐は、判断能力が著しく不十分な人を支援する制度です。借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、不動産の売買など、重要な財産上の行為について保佐人の同意が必要になることがあります。

保佐人に代理権を与える場合には、申立てが必要です。本人の同意が必要になる場面もあるため、どの行為について支援が必要なのかを整理して申し立てることが大切です。

保佐人の権限や後見・補助との違い、選任手続きについては、以下の記事でくわしく解説しています。

後見|多くの法律行為を自分で判断することが難しい人向け

後見は、判断能力を欠く状態が通常である人を対象とする制度です。成年後見人には、本人の財産に関する広い代理権や取消権があります。

一方で、後見は本人の行動や財産管理への影響が大きい制度でもあります。本人の判断能力がどの程度残っているか、どの範囲の支援が必要かを慎重に確認する必要があります。

補助・保佐・後見の違いを一覧で比較

類型

対象者の目安

支援の特徴

補助

一部の重要な手続きに不安がある人

必要な範囲で同意権・代理権を付ける

保佐

重要な契約や財産管理に大きな不安がある人

一定の重要行為に同意が必要

後見

多くの法律行為を判断することが難しい人

広い代理権・取消権がある

補助人ができることや後見人・保佐人との違いについては、以下の記事でくわしく解説しています。

法定後見と任意後見の違い

成年後見制度には「法定後見」と「任意後見」があります。

法定後見は判断能力が低下した後に家庭裁判所へ申し立てる

法定後見は、本人の判断能力がすでに不十分になった後に、本人の親族等が家庭裁判所へ申し立てる制度です。家庭裁判所が、本人の状況に応じて成年後見人・保佐人・補助人を選びます。

家族が候補者を立てることはできますが、必ずその人が選ばれるとは限りません。親族間の対立や財産状況によっては、弁護士・司法書士などの専門職が選ばれることもあります。

任意後見は判断能力があるうちに契約して備える

任意後見は、本人に十分な判断能力があるうちに、将来支援してもらう人や支援内容を本人と支援してもらう人との間の契約で決めておく制度です。本人の判断能力が低下し、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときに効力が生じます。

任意後見のメリットは、将来支援してもらう人を本人が選べることです。ただし、任意後見契約を結んだだけでは効力は発生しません。将来、実際に支援が必要になった段階で、家庭裁判所への申立てが必要です。

任意後見制度の仕組みやデメリット、費用については、以下の記事でくわしく解説しています。

家族信託や日常生活自立支援事業との違い

家族信託は、本人の財産管理を家族などに任せる仕組みです。生前対策として使われることがありますが、本人の身上保護や取消権まではカバーできません。

日常生活自立支援事業は、福祉サービスの利用援助や日常的な金銭管理を支援する制度です。不動産売却や遺産分割協議のような法律行為を広く代行する制度ではありません。

制度

向いている場面

法定後見

判断能力低下後の法律行為・財産管理

任意後見

判断能力があるうちの将来対策

家族信託

財産管理を家族に任せる生前対策

日常生活自立支援事業

日常的な金銭管理や福祉サービス利用

家族信託が必要なケース・必要ないケースについては、以下の記事でくわしく解説しています。

成年後見制度を利用するメリット・デメリット

成年後見制度は、本人の財産や権利を守るために有効な制度です。なお、ここでのメリット・デメリットは、家庭裁判所が後見人等を選ぶ法定後見(後見・保佐・補助)を主に念頭に置いて説明します。一方で、利用を始める前に知っておくべき負担や制約もあります。

メリット|本人の財産や権利を守りやすくなる

成年後見制度を利用すると、本人の預貯金や不動産を適切に管理しやすくなります。必要な介護・医療サービスの契約も進めやすくなり、本人が不利益な契約をしてしまった場合に取り消せる可能性もあります。

相続の場面でも、本人の権利を守りながら遺産分割協議を進められる場合があります。

デメリット|家族が必ず後見人になれるとは限らない

家族が「自分が後見人になりたい」と考えていても、家庭裁判所がその家族を選任するとは限りません。親族間で対立がある場合、財産が多い場合、専門的な手続きが必要な場合などには、専門職が選ばれることがあります。

デメリット|一度始まると原則として簡単にはやめられない

現行制度では、後見等が開始されると、申立てのきっかけとなった手続きが終わった後も、原則として本人の判断能力が回復するか本人が亡くなるまで続きます。

たとえば「預金を下ろしたい」「不動産を売りたい」「相続手続きを進めたい」という一時的な目的で申し立てた場合でも、その目的が終われば当然に終了するわけではありません。成年後見制度はスポット利用がしにくい制度である点を理解しておきましょう。

成年後見制度を使うべきケース・慎重に検討すべきケース

本人の財産管理や契約手続きが継続的に必要で、家族だけでは対応できない場合は、成年後見制度の利用を検討する価値があります。

一方で、本人の判断能力がまだ十分にあり、将来の備えが目的であれば、任意後見や家族信託など別の制度が合うこともあります。相続手続きだけが目的の場合も、利用後の負担まで含めて慎重に判断しましょう。

後見人に家族がなれるのか、選ばれないケースについては、以下の記事でくわしく解説しています。

法定後見(後見・保佐・補助開始の申立て)の手続きの流れと必要書類

成年後見制度の手続きの流れ

法定後見を利用するには、後見・保佐・補助開始の申立てを、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。任意後見は判断能力があるうちに公正証書で契約する制度で、ここで説明する手続きとは異なります。

申立て先は本人の住所地を管轄する家庭裁判所

申立てができるのは、本人、配偶者、4親等内の親族、市町村長などです。本人に身寄りがない場合や親族による申立てが難しい場合には、市町村長申立てが検討されることもあります。

申立てから審判までの流れ

流れは次のとおりです。

  1. 本人の状況を確認する
  2. 医師に診断書を作成してもらう
  3. 必要書類を集める
  4. 家庭裁判所へ申立てをする
  5. 家庭裁判所の調査・審理を受ける
  6. 後見人等が選任される

申立て後、家庭裁判所は本人や親族、候補者の状況を確認します。必要に応じて医師による鑑定が行われることもあります。

診断書・本人情報シート・戸籍など必要書類の例

必要書類には、申立書、本人の戸籍謄本、住民票、診断書、本人情報シート、財産目録、収支予定表、親族関係図などがあります。具体的な書式や必要書類は家庭裁判所によって異なるため、申立先の家庭裁判所で確認しましょう。

手続きにかかる期間の目安

申立てから審判までの期間は、おおむね1〜2か月程度が目安です。ただし、鑑定が必要な場合や親族間に対立がある場合、財産関係が複雑な場合には、さらに時間がかかることがあります。

後見人の選任手続きを自分で行う方法や流れについては、以下の記事でくわしく解説しています。

成年後見制度にかかる費用と後見人の報酬

成年後見制度では、申立て時の費用と、選任後の後見人等の報酬が発生することがあります。

申立手数料・登記手数料・郵便料

申立て時には、申立手数料、登記手数料、郵便料、診断書の作成費用などがかかります。申立手数料は収入印紙で納め、郵便料は家庭裁判所ごとに異なります。

本人の判断能力を医学的に確認するため、鑑定が行われることもあります。

鑑定が必要な場合の費用

鑑定が行われる場合、鑑定料が必要になります。金額は事案によって異なりますが、家庭裁判所の案内では、多くの場合10万円以下とされています。

鑑定が必要かどうかは、提出された診断書や本人の状況だけで判断できるかによって異なります。申立ての段階で、鑑定の可能性も見込んでおくと安心です。

成年後見人等の報酬は誰が払うのか

後見人等の報酬は、家庭裁判所が本人の財産状況や後見事務の内容を考慮して決めます。報酬は原則として本人の財産から支払われます。

家族が個人的に負担するものではありませんが、本人の財産が少ない場合には、本人の生活費との兼ね合いが問題になることがあります。専門職が選任される可能性がある場合は、報酬が継続的に発生する点も踏まえて検討しましょう。

費用を払えない場合に使える支援制度

費用の負担が難しい場合は、法テラスの民事法律扶助や、市区町村の成年後見制度利用支援事業を利用できる可能性があります。対象者や助成内容は自治体によって異なるため、生活保護を受けている人や資力が乏しい人は、市区町村の窓口に相談してみましょう。

成年後見人の報酬を誰が払うのか、払えない場合の対処法については、以下の記事でくわしく解説しています。

成年後見制度の2026年改正・見直しで知っておきたいこと

2026年4月3日、政府は「民法等の一部を改正する法律案」を閣議決定し、国会に提出しました。内閣法制局の資料では、高齢化の進展や単身高齢者世帯の増加などを背景に、成年後見制度と遺言制度を国民がより利用しやすいものにすることが理由とされています。

成年後見制度の見直しが進められている背景

現行制度では、後見・保佐・補助の3類型に分かれています。しかし、後見や保佐は本人への制限が大きく、一度始まると必要な手続きが終わっても継続しやすいという課題が指摘されてきました。

そこで改正案では、本人に必要な範囲で制度を使いやすくする方向で、制度全体の見直しが進められています。

現行制度と改正案を分けて理解する

改正案の大きなポイントは、次の4つです。

改正案のポイント

内容

後見・保佐の廃止

現行の後見・保佐を廃止し、補助に一元化する方向

補助の対象拡大

判断能力が不十分な人全体を補助の対象にする方向

特定補助人の創設

判断能力を欠く常況にある人にも、必要に応じて強い支援を付ける方向

終了しやすい仕組み

必要がなくなった場合に審判を取り消せる仕組みを整える方向

法務省の法律案要綱では、後見開始の審判と保佐開始の審判を廃止し、精神上の理由により事理弁識能力が不十分である人全てについて補助開始の審判をすることができる方向が示されています。

必要な範囲・期間だけ利用できる制度への見直し

改正案では、本人に必要な範囲で同意権・代理権を定める仕組みを中心にすることで、制度をより柔軟に使えるようにすることが目指されています。

また、補助人には本人の意向を把握し、その意向を尊重する義務が明記される方向です。報酬についても、補助事務の内容などを考慮して定めることが予定されています。

ただし、2026年9月時点では、法案が可決され、26年6月24日に公布されており、公布から2年6か月以内(遅くとも2028年12月24日まで) に施行される予定となっています。新制度の開始時期や既存利用者の扱いは、成立後の条文・施行日・裁判所の運用を確認する必要があります。

成年後見制度を検討するときの相談先

成年後見制度を検討するときは、家庭裁判所、地域包括支援センター、市区町村の窓口、社会福祉協議会、弁護士、司法書士などに相談できます。

法律上の問題が絡む場合は、弁護士や司法書士に相談すると、成年後見制度を使うべきか、別の制度を検討すべきかを整理しやすくなります。現行制度と改正案の違いを理解したうえで、本人に必要な支援を選ぶことが大切です。

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この記事の監修者
田辺晶夫
埼玉県>さいたま市
サンライツ法律事務所
田辺晶夫(埼玉弁護士会)
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