


相続登記の必要書類は、「どうやって不動産を相続したか」によって追加で必要な書類が変わります。まずは自分がどのケースかを確認しましょう。ケースが分かれば、用意すべき追加書類がはっきりします。
不動産の取得方法は、大きく①法定相続分どおり、②遺産分割、③遺言書の3つに分かれます。どのケースでも共通して必要な書類に加えて、ケースごとの追加書類をそろえるのが基本の考え方です。まずは共通書類を集め、次に自分のケースの追加書類を足していくと迷いません。書類は思ったより数が多いので、チェックリストをつくって管理すると安心です。
自分の状況から、必要なケースと主な追加書類を確認しましょう。早見表で大まかに把握し、詳しくは各ケースの章で確認してください。
あなたの状況 | どのケース? | 主な追加書類 |
法定相続分どおり全員で相続(共有) | 法定相続分 | 被相続人の出生〜死亡の戸籍/相続人全員の戸籍・住民票 |
話し合い(遺産分割協議)で決めた | 遺産分割 | 遺産分割協議書/相続人全員の印鑑登録証明書 |
調停・審判で決まった | 遺産分割 | 調停調書/審判書+確定証明書 |
遺言書で取得した | 遺言書 | 遺言書(+検認済証明書)/死亡の記載がある戸籍 |
2024年4月1日から相続登記は義務化されました。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がなければ10万円以下の過料の対象になります。2024年4月より前に発生した相続も対象で、その場合は2027年3月31日までに登記する必要があります。書類集めには時間がかかることもあるため、早めに準備を始めましょう。
相続登記を放置すると、権利関係が複雑になり、不動産の売却や担保設定ができなくなるなど、過料以外の不利益も生じます。期限内に申請するためにも、必要書類は早めにそろえておきましょう。
まず、どのケースでも共通して必要になる書類は次のとおりです。取得先・作成方法もあわせて確認しましょう。これらは相続のしかたにかかわらず必要になる書類です。
必要書類 | 取得先・作成方法 |
登記申請書 | 法務局の様式をダウンロードして作成する |
不動産を取得する人の戸籍謄本(抄本) | 本籍地の市区町村(窓口・郵送・コンビニ) |
被相続人の住民票の除票 または 戸籍の附票 | 最後の住所地・本籍地の市区町村 ※登記上の住所と本籍が一致する場合は不要 |
不動産を取得する人の住民票(本籍記載) | 住所地の市区町村 |
不動産の固定資産評価証明書 | 不動産の所在地の市区町村 |
委任状 | 司法書士などに委任する場合のみ作成 |
このうち登記上の住所と本籍が一致している場合は、被相続人の住民票の除票などは不要です。委任状は、自分で申請する場合は必要ありません。登記申請書は自分で作成し、戸籍や住民票・固定資産評価証明書は役所で取得します。まずはこの共通書類からそろえると、抜け漏れを防ぎやすくなります。
相続登記では戸籍を何通も提出しますが、「法定相続情報一覧図の写し」を使えば、戸籍謄本の束の代わりに1枚で証明できます。法務局に戸籍一式と一覧図を一度提出すると無料で発行され、銀行や年金などほかの相続手続きでも使い回せるため、手続きが多い人ほど便利です。預貯金の解約や相続税の申告でも同じ写しを提出でき、戸籍を何セットも用意する手間が省けます。

共通書類に加えて、相続のしかたに応じた追加書類をそろえます。ケースごとに見ていきましょう。戸籍は複数のケースで重なって必要になるので、一度の請求でまとめて取っておくと効率的です。
遺言も遺産分割協議もせず、法律で定められた割合(法定相続分)どおりに相続人全員の共有で登記するケースです。共通書類に加えて、次の書類が必要です。遺言がなく、すぐに遺産分割の話し合いもしないときに選ばれる方法です。
このケースでは、話し合いをしていないため遺産分割協議書や印鑑登録証明書は不要です。ただし、不動産が相続人全員の共有名義になり、その後の売却などに全員の同意が必要になる点には注意しましょう。
なお、法定相続分での共有を避けたい場合は、先に遺産分割協議で取得者を1人に決めてから登記する方法もあります。将来の売却を考えているなら、こちらを検討するとよいでしょう。
相続人で話し合って分け方を決めた場合です。まず共通して、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍と、相続人全員の戸籍謄本が必要になります。そのうえで、決め方に応じて次の書類を追加します。分け方をどう決めたか(協議・調停・審判)で、必要な書類が変わります。
相続人全員の話し合い(協議)で決めた場合は、遺産分割協議書と、相続人全員の印鑑登録証明書が必要です。協議書には相続人全員が実印で押印します。印鑑登録証明書は、この実印が本人のものであることを証明するために添付します。
家庭裁判所の調停で決まった場合は、調停調書の正本または謄本を提出します。調停調書があれば、戸籍一式や印鑑登録証明書は原則として不要です。裁判所が相続関係を確認済みのためです。
審判で決まった場合は、審判書の正本または謄本に加えて、確定証明書が必要です。確定証明書は、審判が確定したことを示す書類で、審判書とセットで提出します。
遺言書で不動産を取得する場合は、共通書類に加えて遺言書と、被相続人の死亡の記載がある戸籍が必要です。このケースでは、戸籍は出生まで遡らず、死亡の記載があるものでよいのが特徴です。
なお、遺言書で財産を受け取る人が相続人以外(受遺者)の場合は、登記の方法や必要書類が変わることがあるため、法務局や専門家に確認しましょう。
必要書類の多くは市区町村の役所で取得します。2024年3月からは戸籍の「広域交付」が始まり、本籍地以外でもまとめて取得できるようになりました。主な手数料の目安は次のとおりです(住民票などは自治体により異なります)。複数の市区町村にまたがる場合は、それぞれの役所に請求する必要があります。郵送なら一度に複数の役所へ依頼でき、移動の時間を省けます。
書類 | 手数料の目安 | 主な取得先 |
戸籍謄本(全部事項証明書) | 450円 | 本籍地の市区町村 |
除籍謄本・改製原戸籍謄本 | 750円 | 本籍地の市区町村 |
住民票・戸籍の附票 | 約300円 | 住所地・本籍地の市区町村 |
印鑑登録証明書 | 約300円 | 印鑑登録した市区町村 |
固定資産評価証明書 | 約300〜400円 | 不動産の所在地の市区町村 |
手数料は1通あたりの金額です。戸籍は通数が多くなりがちなので、必要な通数を役所で相談しながら取得するとよいでしょう。
戸籍は、次の3つの方法で取得できます。広域交付を使えば、本籍地が遠方でも最寄りの役所で全国の戸籍をまとめて請求できます。これにより、何か所もの役所に請求していた手間が大きく減りました。
広域交付は便利ですが、相続人以外の代理人による請求や、コンピュータ化されていない古い戸籍は対象外です。取れない分は本籍地の役所へ郵送で請求しましょう。
住民票や印鑑登録証明書は、住所地や登録先の市区町村の窓口・郵送・コンビニで取得できます。コンビニ交付にはマイナンバーカードが必要です。窓口や郵送であれば、本人確認書類があれば取得できます。郵送請求なら、平日に役所へ行けない人でも手続きできます。
固定資産評価証明書は、不動産がある市区町村の役所で取得します(東京23区は都税事務所)。登録免許税の計算に使うため、相続登記を申請する年度のものを取得しましょう。年度をまたぐと評価額が変わり、登録免許税の計算が合わなくなることがあるためです。
登記申請書や遺産分割協議書は、役所で取るのではなく自分で作成します。登記申請書は法務局のホームページに様式と記載例があり、それに沿って作成できます。遺産分割協議書は相続人全員で内容を確認し、不動産は登記簿のとおりに正確に記載することが大切です。
提出した戸籍などの原本は、「原本還付」の手続きをすれば返してもらえます。原本のコピーに「原本に相違ありません」と記載して署名・押印し、原本と一緒に提出します。戸籍一式は、相続関係説明図を添付すれば原本還付を受けられるので、ほかの手続きでも使い回せます。書類は申請書・添付書類の順にまとめ、ホチキスでとじて契印します。原本還付を受けておくと、相続税の申告や預貯金の解約など、ほかの手続きでも同じ戸籍を使い回せます。
相続登記の必要書類には、原則として有効期限はありません。いつ取得したものでも使えます。数年前に取った戸籍や住民票でも、内容が正しければそのまま使えます。
ただし例外があります。不動産を取得する人や相続人の戸籍は、被相続人の死亡後に取得したものでなければなりません。遺贈や相続で不動産を取得できるのは、被相続人の死亡時に生きていた人に限られるためです。
また、固定資産評価証明書は登録免許税の計算に使うため、申請する年度の最新のものを用意しましょう。古い年度のものしか手元にない場合は、取り直しが必要になることがあります。
家族構成や事情によっては、追加の書類が必要になる代表的なケースがあります。
相続放棄をした人がいる場合は、その人について家庭裁判所が発行する「相続放棄申述受理証明書」が必要です。相続放棄をした人は最初から相続人でなかった扱いになるため、残りの相続人で登記を進めます。相続放棄をした人の戸籍まではさかのぼって用意する必要はありません。
相続登記をしないうちに相続人の1人が亡くなるなど、相続が二重に発生している(数次相続)場合は、被相続人ごとに戸籍一式が必要になります。途中で亡くなった人(中間の相続人)の出生から死亡までの戸籍もそろえる必要があり、書類が多く手続きも複雑になりやすいため、早めの対応がおすすめです。世代をまたぐほど相続人が増えて連絡や同意が難しくなるので、放置せずに進めましょう。
相続人に海外在住者や外国籍の人がいる場合は、日本の住民票や印鑑登録証明書がないことがあります。その場合は、住民票の代わりに「在留証明書」、印鑑登録証明書の代わりに「サイン(署名)証明書」を、現地の日本大使館・領事館で取得して提出します。取得には時間がかかることがあるので、早めに連絡しておくと安心です。
相続登記は司法書士などに依頼するのが一般的ですが、自分で行うこともできます。自分で手続きすれば、司法書士などへの依頼費用を節約できるのが大きなメリットです。司法書士に依頼した場合の報酬は、不動産の数や評価額によって変わります。
一方で、必要書類の準備に手間がかかり、漏れや誤りがあると手続きをやり直すことになるのがデメリットです。とくに数次相続や相続人が多いケースは難しくなりがちです。費用と手間・安心感を比べて、難しいと感じたら専門家への依頼を検討しましょう。
なお、遺産分割でもめている場合は、弁護士に相談すると司法書士を紹介してもらえることが多いです。遺産分割と相続登記をまとめて任せられるため、手間とミスを減らせます。費用はかかりますが、確実に手続きを終えられる安心感があります。
最後に、相続登記の必要書類について特に多い3つの疑問にお答えします。
法定相続分どおり・遺産分割のケースでは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要です。一方、遺言書のケースでは、死亡の記載がある戸籍があれば足りることが多いです。相続人については、現在の戸籍謄本を用意します。被相続人が何度も転籍している場合は、戸籍の通数が多くなることもあります。
古い戸籍が災害や保存期間の満了で取得できないことがあります。その場合は、市区町村が発行する「廃棄証明書」などで代替できることがあります。判断に迷うときは、法務局や司法書士・弁護士に相談しましょう。書類がそろわないまま放置すると、義務化の期限に間に合わなくなるおそれもあります。
取れます。窓口や郵送なら、運転免許証などの本人確認書類で請求できます。広域交付も窓口で利用できます。ただし、コンビニ交付だけはマイナンバーカードが必須です。マイナンバーカードがなくても、相続登記の書類集めは問題なく進められます。
相続登記の必要書類は、「共通書類+ケース別の追加書類」という考え方でそろえるのが基本です。まずは早見表で自分のケースを確認し、必要な書類を一つずつ集めていきましょう。戸籍は広域交付でまとめて取得し、原本還付を活用すると、ほかの相続手続きでも使い回せて効率的です。落ち着いて一つずつ進めれば、専門家に頼まなくてもそろえられます。
2024年4月から相続登記は義務化され、取得を知った日から3年以内の申請が必要です。書類集めには時間がかかることもあるため、早めに準備を進めましょう。必要書類を早めにそろえることが、スムーズな相続登記の第一歩になります。自分での手続きが難しいと感じたら、司法書士や弁護士などの専門家に相談すると安心です。

兵庫県弁護士会所属。