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成年後見
更新日:2026/06/10

成年後見人の費用はいくら?相場・誰が払うか・払えない時の対処法

監修者
井上界
兵庫県>尼崎市
園田法律事務所
井上界
成年後見人の費用はいくら?相場・誰が払うか・払えない時の対処法
成年後見制度は、認知症や知的障害などで判断能力が不十分になった方に代わって、お金の管理や契約手続きをサポートする仕組みです。ただし、この制度を利用するには、家庭裁判所へ申し込むための費用や、選任された「後見人」に支払う月々の報酬が必要です。この記事では、実際にかかる費用の目安や、家族が後見人になった場合のお金はどうなるのか、また、費用が払えないときはどうすればいいのかを分かりやすく解説します。

成年後見人の費用は大きく3種類ある

成年後見人に関する費用は、大きく分けると次の3種類です。

費用の種類

主な内容

支払うタイミング

申立て費用

収入印紙、郵便切手、登記手数料、書類取得費など

家庭裁判所へ申し立てるとき

専門家への依頼費用

弁護士・司法書士などに申立てを依頼する費用

依頼時・契約内容に応じて

成年後見人の報酬

選任後、後見事務を行う成年後見人への報酬

選任後、家庭裁判所の審判に基づいて

申立て費用は一時的な支出ですが、成年後見人の報酬は、制度の利用が続く間に継続して発生する可能性があります。そのため、初期費用だけでなく、毎月の報酬まで含めて見通しを立てることが大切です。

なお、2026年4月、成年後見制度の見直しを含む民法等の一部を改正する法律案が国会に提出されています。この記事では、現行制度を前提に説明します。実際に手続きを進める際は、最新の制度状況も確認しましょう。

成年後見人の選任手続きにかかる費用

成年後見人を選任してもらうには、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に、後見開始の審判を申し立てます。

申立て自体にかかる費用は、専門家に依頼しない場合、合計で1万円前後に収まることが多いです。ただし、診断書の取得費用や、戸籍謄本・住民票などの取得費用、鑑定が必要になった場合の費用は別途かかります。

申立て費用・診断書費用の目安

後見開始の申立てに必要な主な費用は、次のとおりです。

費用項目

金額の目安

補足

申立手数料

800円

収入印紙で納付

登記手数料

2600円

収入印紙で納付

連絡用の郵便切手

数千円程度

家庭裁判所ごとに異なる

戸籍謄本・住民票など

1000円〜2000円程度

取得する書類数による

診断書の作成費用

数千円〜1万円程度

医療機関により異なる

申立書類の作成や必要書類の収集を弁護士・司法書士に依頼する場合は、上記とは別に専門家への依頼費用がかかります。費用は依頼内容によって異なりますが、10万円〜30万円程度を目安として見ておくとよいでしょう。

なお、補助開始や保佐開始の申立てで、代理権・同意権の付与もあわせて申立てる場合は、追加の申立手数料が必要になることがあります。

関連記事:成年後見人の選任手続きを自分でやる方法、流れや必要書類を解説

鑑定が必要な場合の費用

成年後見制度では、本人の判断能力の程度を確認するため、医師の診断書を提出します。家庭裁判所が診断書などの資料だけでは判断が難しいと考えた場合には、医師による鑑定が行われることがあります。

鑑定費用は事案によって異なります。厚生労働省の案内では、鑑定料は多くの場合10万円以下とされています。

鑑定が必要になるかどうかは、本人の状態や提出資料の内容によって変わります。申立て前に「必ず鑑定がある」と決まっているわけではありませんが、念のため追加費用が発生する可能性は考えておきましょう。

成年後見人の報酬はいくらかかる?

成年後見人は、本人の財産管理や契約手続きなどを行います。成年後見人が報酬を受け取るには、家庭裁判所に報酬付与の審判を申立て、家庭裁判所に認められる必要があります。

成年後見人が自分で自由に報酬額を決めたり、家庭裁判所の許可なく本人の財産から報酬を受け取ったりすることはできません。

報酬額は家庭裁判所が決める

成年後見人の報酬は、本人の財産額、後見事務の内容、事務の難易度、本人の生活状況などを踏まえて、家庭裁判所が決定します。

一般的な目安は、次のとおりです。

管理財産額

月額報酬の目安

1000万円以下

2万円程度

1000万円超〜5000万円以下

3万円〜4万円程度

5000万円超

5万円〜6万円程度

たとえば月額2万円でも、1年で24万円、5年で120万円になります。成年後見人の費用を考えるときは、「毎月いくらか」だけでなく「何年続く可能性があるか」もあわせて考える必要があります。

また、不動産の売却、遺産分割協議、訴訟対応など、通常より負担の大きい事務が発生した場合には、基本報酬とは別に付加報酬が認められることがあります。

家族・親族・専門職後見人の場合の違い

家族や親族が成年後見人に選ばれた場合でも、家庭裁判所に報酬付与を申し立てれば、報酬が認められる可能性があります。ただし、親族後見人は報酬を請求しないケースもあり、その場合は毎月の報酬負担を抑えられます。

一方で、申立ての際に家族を後見人候補者として記載しても、必ずその人が選ばれるとは限りません。家庭裁判所は、本人の財産状況、親族間の関係、本人が抱えている課題、後見事務の難易度などを踏まえて、本人にとって適任と考えられる人を選任します。

本人の財産が多い場合、親族間で争いがある場合、不動産売却や相続手続きなど専門的な対応が必要な場合には、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職が成年後見人に選ばれることがあります。この場合、月額報酬が継続して発生する可能性があります。

また、後見人の事務を監督する成年後見監督人が選ばれた場合には、後見人とは別に監督人の報酬も発生することがあります。「家族が候補者だから費用はほとんどかからない」とは限らない点に注意しましょう。

関連記事:成年後見人は家族もなれる?なれる人の条件と「選ばれないケース」

成年後見人の費用は誰が払う?

成年後見人に関する費用は、費用の種類によって負担者が異なります。

ざっくり整理すると、申立て時の費用は申立人、成年後見人の報酬は本人の財産から支払うのが基本です。

申立て費用は誰が負担する?

後見開始の申立てにかかる費用は、原則として申立人が負担します。本人が申立てる場合は本人、子どもや配偶者などの親族が申し立てる場合は、その親族が負担します。

ただし、申立書で手続費用を本人負担にすることを希望し、家庭裁判所が認めた場合には、申立手数料・登記手数料・郵便切手代・鑑定費用などの全部または一部を、本人の財産から支払えることがあります。

一方、弁護士や司法書士に申立てを依頼した場合の依頼費用は、原則として契約した人が支払います。本人以外の親族が専門家と契約した場合、当然に本人の財産から支払えるわけではありません。

報酬は本人の財産から支払う

成年後見人が選任された後の報酬は、本人の財産から支払われます。申立人が子どもや配偶者であっても、成年後見人の報酬を申立人が自分の財産から払い続けるわけではありません。

本人の預貯金や収入から支払うのが基本なので、家族が「後見人の報酬を肩代わりしなければならない」と考えすぎる必要はありません。

ただし、本人の財産が少ない場合や、生活費・施設費・医療費などの支出が多い場合は、報酬の支払いが本人の生活を圧迫する可能性があります。そのような場合は、後述する助成制度や法テラスの利用を検討しましょう。

成年後見人の費用はいつまで払う?

成年後見人の報酬は、成年後見人の任務が続く間、継続して発生する可能性があります。現行制度では、成年後見は一度始まると、本人の判断能力が回復する、本人が亡くなる、家庭裁判所が後見開始の審判を取り消すなどの事情がない限り、長期間続くことが少なくありません。

成年後見人の任務が終了する主なケースは、次のとおりです。

  • 本人が亡くなったとき
  • 本人の判断能力が回復し、後見開始の審判が取り消されたとき
  • 成年後見人が死亡したとき
  • 成年後見人が正当な理由により辞任したとき
  • 成年後見人が不正行為などにより解任されたとき

実務上は、本人が亡くなるまで後見が続くケースも多くあります。そのため、成年後見人の費用は「一度払えば終わり」ではなく、本人の生活が続く間の継続費用として考える必要があります。

本人が亡くなった後は、成年後見人がそれまでの財産管理の内容を整理し、相続人に財産を引き継ぐための事務を行います。死亡後の事務や最終報告に関する報酬が認められる場合もあるため、亡くなった時点で直ちに費用がゼロになるとは限りません。

なお、2026年4月に国会提出された民法等改正法案では、成年後見制度をより柔軟に利用できるようにする見直しが予定されています。今後、制度の内容や終了の考え方が変わる可能性があるため、申立て時点の最新情報を確認しましょう。

成年後見人の費用が払えない場合の対処法

成年後見制度が必要でも、本人や家族に十分な資力がない場合があります。費用が払えないときは、まず市区町村の窓口や法テラスに相談し、利用できる支援制度がないか確認しましょう。

特に、本人が生活保護を受けている場合や、本人の預貯金が少ない場合は、成年後見制度利用支援事業の対象になる可能性があります。

成年後見制度利用支援事業を利用する

成年後見制度利用支援事業とは、成年後見制度の利用が必要であるにもかかわらず、費用負担が難しい人に対して、市区町村が申立て費用や成年後見人等の報酬を助成する制度です。

助成の対象になる費用、上限額、申請できる人、生活保護受給者の扱いなどは自治体によって異なります。「成年後見制度利用支援事業」「成年後見 報酬助成」などの名称で案内されていることが多いため、本人の住所地の市区町村に確認しましょう。

相談先としては、次のような窓口があります。

  • 市区町村の高齢福祉・障害福祉担当窓口
  • 地域包括支援センター
  • 社会福祉協議会
  • 成年後見制度の中核機関

助成を受けるには、申立て前の相談や事前申請が必要になることがあります。費用を立て替えた後に必ず助成されるとは限らないため、早めに確認することが重要です。

生活保護や法テラスを利用する

本人が生活保護を受けている場合でも、成年後見制度を利用できる可能性があります。申立て費用や報酬の助成を受けられるかどうかは自治体の制度によるため、ケースワーカーや福祉担当窓口に相談しましょう。

弁護士や司法書士に申立書類の作成を依頼したいものの、費用をすぐに用意できない場合は、法テラスの民事法律扶助を利用できる可能性があります。民事法律扶助では、収入・資産などの要件を満たす場合に、無料法律相談や弁護士・司法書士費用の立替えを受けられます。

ただし、法テラスの立替えは、主に弁護士・司法書士の費用が対象です。成年後見人の毎月の報酬そのものを法テラスが支払ってくれる制度ではありません。

費用が不安な場合は、次の順番で確認するとよいでしょう。

  1. 市区町村に成年後見制度利用支援事業の有無を確認する
  2. 生活保護受給中の場合はケースワーカーに相談する
  3. 専門家費用が不安な場合は法テラスに相談する
  4. 家庭裁判所や地域包括支援センターにも相談する

成年後見人の費用を抑えるためにできること

成年後見人の報酬は家庭裁判所が決めるため、自由に値下げ交渉できるものではありません。それでも、申立て前の準備や制度選択によって、結果的に負担を抑えられる場合があります。

申立てを自分で行う

申立書類の作成や必要書類の収集を自分で行えば、弁護士・司法書士への依頼費用を抑えられます。家庭裁判所のウェブサイトには申立書式や記載例が掲載されていることがあり、窓口で手続き案内を受けられる場合もあります。

ただし、本人の財産が多い、相続手続きが絡む、親族間で対立がある、不動産の売却が必要であるといったケースでは、専門家に依頼した方が安全なこともあります。費用を抑えることだけを優先せず、手続きの難しさとリスクを見て判断しましょう。

申立て前に準備しておきたい資料は、次のとおりです。

  • 本人の預貯金・有価証券の資料
  • 不動産の資料
  • 収入・支出が分かる資料
  • 親族関係を示す戸籍資料
  • 本人の診断書や本人情報シート

資料が整理されているほど、家庭裁判所や専門家とのやり取りがスムーズになり、追加対応にかかる時間や費用を抑えやすくなります。

任意後見や家族信託も比較する

本人にまだ十分な判断能力がある場合は、法定後見だけでなく、任意後見や家族信託も比較できます。

任意後見は、将来判断能力が低下したときに備えて、本人があらかじめ任意後見人を選んで契約しておく制度です。家族信託は、本人の財産管理を信頼できる家族などに任せる仕組みです。

制度

向いているケース

注意点

法定後見

すでに判断能力が低下している

家庭裁判所が後見人を選ぶ

任意後見

判断能力があるうちに備えたい

任意後見監督人の報酬が発生する

家族信託

財産管理を柔軟に設計したい

身上保護には対応しにくい

すでに本人の判断能力が低下している場合、任意後見契約や家族信託契約を新たに結ぶことは難しくなります。制度を選べるのは、本人が契約内容を理解して判断できる段階です。

関連記事:任意後見制度のデメリットとは?成年後見との違いや費用などをわかりやすく解説
関連記事:家族信託にかかる費用は?手続きの流れや自分でやる場合についても解説

まとめ

成年後見人に関する費用は、申立て費用、専門家への依頼費用、成年後見人の報酬に分けて考える必要があります。申立て自体の費用は1万円前後で済むこともありますが、弁護士・司法書士に依頼する場合や、鑑定が必要な場合には追加費用がかかります。

成年後見人の報酬は、家庭裁判所が本人の財産や後見事務の内容を踏まえて決めます。目安は月額2万円〜6万円程度ですが、成年後見が長く続くと、総額は大きくなる可能性があります。

費用負担が不安な場合は、市区町村の成年後見制度利用支援事業や、法テラスの民事法律扶助を利用できるか確認しましょう。本人に判断能力が残っている段階であれば、任意後見や家族信託など、他の制度と比較することも大切です。

成年後見制度は、本人の財産と生活を守るための制度です。費用だけで判断せず、本人に必要な支援の内容、家族の負担、今後の財産管理の見通しを踏まえて、家庭裁判所・自治体・弁護士などに相談しながら進めましょう。

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井上界
兵庫県>尼崎市
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井上界(兵庫県弁護士会)
兵庫県弁護士会所属。
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