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成年後見
更新日:2026/08/31

成年被後見人とは?買い物・遺言・選挙権はどこまでできる

監修者
若狹 慶太
福岡県>福岡市
わかさ法律事務所
若狹 慶太
成年被後見人とは?買い物・遺言・選挙権はどこまでできる
成年被後見人とは、認知症などで判断能力を欠く状態になり、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた「本人」のことをいいます。この記事では、読み方や意味、被保佐人・被補助人との違い、単独でできる行為・できない行為、相続での遺産分割の進め方まで、弁護士がわかりやすく解説します。
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成年被後見人とは?読み方と意味

成年被後見人(せいねんひこうけんにん)とは、認知症や知的障害などで判断能力を欠く状態になり、家庭裁判所から「後見開始の審判」を受けた本人のことです。

一人で契約などをすると不利益を受けるおそれがあるため、成年後見人という支援者がつけられます。制度としては「法定後見制度」の一つで、家庭裁判所が関わって本人を守るしくみです。

判断能力を常に欠く状態で後見開始審判を受けた本人のこと

成年被後見人になるのは、判断能力を欠く状態が続いている(常況にある)人です。

たとえば、認知症が進んで自身の財産の管理や契約の意味を理解できない、といった状態が目安になります。このような人について、家庭裁判所が「後見開始の審判」をすると、その本人が成年被後見人となります。判断能力の低下が軽く、ときどきは自身で判断できる段階であれば、後見ではなく保佐や補助が使われます。

「成年後見人」との違いは支援される人か支援する人か

判断能力を欠く本人が成年被後見人で、その財産管理や契約を成年後見人が代理し、家庭裁判所が後見開始の審判と監督を行うという、支援する人と支援される本人の関係を示した図

まぎらわしいのが「成年後見人」との違いです。

  • 成年被後見人=支援を受ける本人(判断能力が不十分な人)
  • 成年後見人=本人を支援する人(財産管理や契約を代わりに行う人)

「被」が付くかどうかで、支援される側か・する側かが逆になります。成年後見人には、家族が選ばれることもあれば、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることもあります。

2026年成立の法改正で今後見直される予定(施行前)

成年後見制度は、令和8年(2026年)6月17日に成立し、同月24日に公布された「民法等の一部を改正する法律」で、大きく見直されることが決まっています。

現在の後見・保佐・補助という3つの類型のうち、後見と保佐を廃止して補助に一本化し、本人に必要な範囲だけ代理権や同意権を定める「オーダーメード型」の支援へと変わる予定です。あわせて、いったん利用すると原則として続く現在のしくみを改め、支援が必要なくなれば制度を終了できるようにする点も盛り込まれています。

ただし、施行は一部を除いて公布から2年6か月以内とされ、現時点ではまだ施行前です。そのため、この記事では現行の制度にもとづいて解説します。将来的に「成年被後見人」という区分そのものが見直される可能性がある点は、頭の片隅に置いておくとよいでしょう。

成年被後見人・被保佐人・被補助人の違い

成年後見制度(法定後見)には、本人の判断能力の程度に応じて3つの類型があります。

判断能力の程度で分かれる3つの類型

3つの類型は、判断能力の低下の度合いで分かれます。

類型

対象になる人の判断能力

本人の呼び方

後見

欠く状態が続いている

成年被後見人

保佐

著しく不十分

被保佐人

補助

不十分

被補助人

もっとも判断能力の低下が大きいのが後見で、その本人が成年被後見人です。保佐・補助は、本人がある程度は自身で判断できる分、支援者(保佐人・補助人)の権限も後見より限定されます。

被保佐人との違い

被保佐人は、判断能力が著しく不十分な人です。

日常の買い物などは自身でできますが、借金や不動産の売買など重要な行為には、保佐人の同意が必要になります。保佐人の権限や手続きは、次の記事でくわしく解説しています。

被補助人との違い

被補助人は、判断能力が不十分な人で、3類型の中では最も程度が軽い区分です。

補助では、本人が同意した特定の行為についてだけ、補助人に同意権や代理権が与えられます。補助人のしくみは、次の記事も参考になります。

成年被後見人が単独でできること

成年被後見人は「何もできない」わけではありません。一人でできる行為もあります。

日用品の購入など日常生活の行為

食料品や日用品の購入など、日常生活に関する行為は、一人でできます

これらは金額も小さく、本人の生活に欠かせないためです。スーパーでの買い物やコンビニでの支払いなど、日々の暮らしに必要な行為まで制限されるわけではありません。

後述するとおり単独の契約は取り消せるのが原則ですが、日用品の購入など日常生活に関する行為は取り消せません。本人の自立した生活を尊重するための例外だと理解しておきましょう。

結婚・離婚・養子縁組などの身分行為

結婚・離婚・養子縁組・認知といった身分に関する行為は、本人に意思能力があれば、本人が行えます

これらは本人の気持ちを尊重すべき行為のため、成年後見人が代わりに決めたり、同意したりするものではありません。たとえば、成年後見人が本人に代わって勝手に離婚届を出す、といったことはできません。

本人が自身の意思で決められる範囲は残されている、ということです。「成年被後見人になると人生のすべてを他人に決められてしまう」というのは、よくある誤解です。

条件を満たせば遺言も作成できる

成年被後見人でも、条件を満たせば遺言を作成できます。

具体的には、一時的に判断能力を回復したときに、医師2人以上の立会いのもとで作成します。立ち会った医師には、作成時に判断能力を欠く状態でなかったことを遺言書に記して署名・押印してもらう必要があります。要件は厳しいものの、成年被後見人でも自身の意思を遺言として残せる道は用意されている、ということです。

選挙権・被選挙権は制限されない

かつては成年被後見人になると選挙権を失いましたが、2013年の法改正で、選挙権・被選挙権は制限されなくなりました

現在は、成年被後見人になっても選挙で投票できます。「後見が始まると権利をすべて失う」わけではない点も知っておきましょう。

成年被後見人が単独ではできないこと

一方で、財産に大きく影響する行為は、成年被後見人が単独ではできません。

不動産の売買や高額な契約

自宅や土地などの不動産の売買、高額な商品やサービスの契約は、単独ではできません。

これらは金額が大きく、本人が不利益を受けるおそれがあるためです。特に自宅を売ってしまうと本人の住まいがなくなるため、こうした契約は成年後見人が代理し、必要なら家庭裁判所の許可も得て慎重に進めます。

ローンや借金

お金を借りる契約(借金・ローン)も、単独ではできません

返済の負担が本人に重くのしかかるため、本人を守る観点から制限されています。たとえば、成年被後見人の名義で消費者金融からお金を借りる、といった契約はできません。連帯保証人になることなども同様です。

遺産分割協議への参加

相続が起きたとき、遺産の分け方を決める遺産分割協議に、成年被後見人が単独で参加することはできません

判断能力を欠く本人が参加した協議は無効になるおそれがあります。かといって、その相続人を外して他の相続人だけで決めることもできません。

この場合は、成年後見人が本人を代理して協議に参加します(くわしくは後述します)。「認知症の親がいるから相続が進められない」というときに、成年後見制度が使われる典型的な場面です。

単独で行った契約は後から取り消せる

成年被後見人が単独でした契約は、あとから取り消すことができます

取り消すと、その契約は初めからなかったことになります。訪問販売などで不要な高額商品を買わされても取り消せるため、これは本人を守る大切なしくみです。取り消したいときは、成年後見人が相手方に取消しを伝えることになります。

判断能力が不十分な人をねらった悪質な勧誘から本人を守る、後見制度の中心的な役割の一つです。

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成年後見人が本人の代わりにすること

成年被後見人が単独でできない行為は、成年後見人が本人を代理して行います。

本人の財産を管理する

成年後見人は、本人の預貯金や不動産などの財産を管理します。

通帳やお金を預かり、生活費や医療費・介護費の支払いを本人に代わって行います。預貯金の引き出しや、施設利用料の支払いなども、後見人の仕事です。

財産を勝手に使うことは許されず、家庭裁判所への報告義務もあります。定期的に財産の状況を報告する必要があり、後見人による使い込みが起きないよう監督されるしくみになっています。

契約の締結や取消しをする

介護サービスや施設入所の契約など、本人に必要な契約を代わりに結んだり、不利な契約を取り消したりします。

本人にとって必要かどうかを判断しながら、生活を支えるのが役割です。

郵便物の管理や行政手続きを代理する

本人あての郵便物を確認したり、役所での行政手続きを代理したりします。

年金や各種給付の手続きなど、生活に必要な事務を本人に代わって進めます。

居住用不動産の処分は家庭裁判所の許可が必要

ただし、成年後見人でも自由にできない行為があります。

本人が住んでいる居住用の不動産を売却・賃貸・処分するときは、家庭裁判所の許可が必要です。住まいは本人の生活の基盤のため、後見人の一存では決められないようになっています。

たとえば、施設費用を捻出するために本人の自宅を売る場合でも、家庭裁判所の許可を得てからでないと売却できません。許可なく処分した場合、その契約は無効になるおそれがあります。

相続人に成年被後見人がいる場合の遺産分割

相続人に判断能力を欠く人がいる場合、後見開始の審判を受けて成年後見人が本人を代理して遺産分割協議に参加し、後見人自身も相続人のときは特別代理人を選任し、本人の法定相続分を確保して協議を成立させる流れを示したフロー図

相続人の中に認知症などで判断能力を欠く人がいると、遺産分割は特別な進め方になります。

本人に代わって成年後見人が遺産分割協議に参加する

判断能力を欠く相続人がいる場合、そのままでは有効な遺産分割協議ができません。

そこで、その相続人について後見開始の審判を受け、成年後見人が本人を代理して協議に参加します。後見人が代理して加わることで、判断能力を欠く相続人がいても、有効な遺産分割を成立させられます。

遺産分割の全体の流れは、次の記事も参考になります。

後見人も相続人のときは特別代理人が必要

注意したいのが、成年後見人自身も同じ相続の相続人になっている場合です。

たとえば、母を成年被後見人とし、その子が成年後見人として母を代理するケースです。この場合、子(後見人)と母(本人)はどちらも相続人で、取り分をめぐって利益が相反する関係になります。そのため、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立て、その特別代理人が本人を代理して協議します。特別代理人には、ほかの親族のほか、弁護士などの専門家が選ばれることもあります。

本人に不利な内容の協議はできない

成年後見人(や特別代理人)は、あくまで本人の利益を守る立場です。

そのため、本人に不利な内容の遺産分割は原則として認められません。実務では、少なくとも本人の法定相続分は確保するよう求められるのが一般的です。たとえば「認知症の母の取り分をゼロにして、子どもだけで分ける」といった協議は、原則として認められません。

ただし、本人の生活状況などによっては、個別の事情に応じた分け方が認められることもあります。本人の利益になるかどうかが判断の基準になるため、進め方に迷うときは専門家に相談すると安心です。

成年被後見人になるための手続きと費用

成年被後見人になるには、家庭裁判所に「後見開始の審判」を申し立てます。

申立てができる人と申立先

申立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、市町村長などです。

申立先は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。後見開始の申立てには本人の同意は不要で、家庭裁判所が判断能力を確認して審判します。

手続きの流れと必要書類

申立てから審判までは、申立書や本人の診断書、戸籍謄本などを提出し、家庭裁判所の調査や面接を経て進みます。面接では、申立てのいきさつや本人の生活状況などが確認されます。

判断能力の確認のため、医師による鑑定が行われることもあります。申立ての具体的な流れや必要書類は、次の記事でくわしく解説しています。

申立てにかかる費用

費用は、収入印紙800円分と登記手数料2,600円分、連絡用の郵便切手が基本です。

これに加えて、鑑定が行われる場合は、その費用(家庭裁判所が命じたときは10万円前後が目安)が別途かかることがあります。成年後見人への報酬など、その後の費用については、次の記事も参考になります。

成年被後見人に関するよくある質問

成年被後見人になるのに本人の同意は必要?

後見開始の審判に、本人の同意は必要ありません

判断能力を欠く状態にあるかどうかを家庭裁判所が確認し、審判します。本人が反対していても、必要と認められれば後見が開始されることがあります。

一方、判断能力の低下が軽い「補助」の開始には、本人の同意が必要です。本人の意思をどこまで尊重するかは、判断能力の程度によって変わるということです。

成年被後見人でもマイナンバーカードは作れる?

成年被後見人でも、マイナンバーカードは作れます

必要に応じて、成年後見人が代理して申請や受け取りを行います。顔写真の撮影や暗証番号の設定などが必要な場面でも、後見人がサポートします。住民票の取得など、生活に必要な手続きも成年後見人が代理できます。

判断能力が回復したら成年被後見人ではなくなる?

判断能力が回復した場合は、家庭裁判所に後見開始の審判の取消しを申し立てます。

取消しが認められれば、成年被後見人ではなくなります。判断能力が回復したかどうかは、医師の診断などをもとに家庭裁判所が判断します。自動で終わるわけではなく、申立てが必要な点に注意しましょう。なお、現行の制度では、判断能力が回復しない限り後見は続きますが、今後の法改正では、必要がなくなれば制度を終了できるようになる予定です。

まとめ

成年被後見人(せいねんひこうけんにん)とは、判断能力を欠く状態で後見開始の審判を受けた本人のことで、支援する人である「成年後見人」とは立場が逆です。日用品の購入や身分行為、条件を満たした遺言などは一人でできますが、不動産の売買や借金、遺産分割協議は単独ではできず、成年後見人が代理します。

相続人に成年被後見人がいる場合は、成年後見人が代理して遺産分割協議に参加し、後見人も相続人なら特別代理人が必要です。なお、成年後見制度は法改正で今後見直される予定ですが、現時点では施行前で、現行制度が続いています。

相続人に判断能力の低下した人がいる遺産分割は、後見開始の申立てや特別代理人の要否など、判断を誤ると手続きが無効になりかねません。迷ったときは、まずは弁護士への初回相談で、あなたのケースでどう進めればよいかを確認しておきましょう。

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