

非嫡出子(ひちゃくしゅつし)とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子どものことです。婚外子(こんがいし)とも呼ばれます。
結婚している夫婦の間に生まれた子(嫡出子:ちゃくしゅつし)と対になる言葉です。非嫡出子であっても、要件を満たせば嫡出子と変わらない相続権を持ちます。
非嫡出子と嫡出子の大きな違いは、父親との親子関係が出生だけで生じるかどうかにあります。
比べること | 嫡出子 | 非嫡出子 |
|---|---|---|
母との親子関係はいつ生じる? | 出生で当然に生じる | 出生で当然に生じる |
父との親子関係はいつ生じる? | 出生で当然に生じる(嫡出推定) | 認知によって生じる |
父の遺産の相続分は? | 子としての相続分 | 認知されれば嫡出子と同じ |
親権は誰が持つ? | 婚姻中は父母が共同で持つ | 原則は母(協議で父母双方・父にもできる) |
名字と戸籍はどうなる? | 父母の氏で、父母の戸籍に入る | 母の氏で、母の戸籍に入る |
認知された後の相続分に差はなく、違いが出るのは認知の有無と、名字・戸籍・親権の扱いです。
非嫡出子と母親との親子関係は、出産(分娩)の事実によって当然に生じます。
母親は子どもを産んだ時点で法律上の母となるため、特別な手続きは要りません。
一方、父親との親子関係は、出生だけでは当然には生じません。
父親との法律上の親子関係を生じさせるには、認知という手続きが必要です。認知とは、父親が「この子は自分の子である」と法律上認めることをいいます。この認知があるかどうかが、父親の相続で決定的に重要になります。

結婚している夫婦の子が、手続きなしで「夫の子」として扱われるのは、嫡出推定というルールがあるためです。嫡出推定とは、妻が産んだ子を、一定の条件のもとで夫の子と推定するしくみをいいます。
このルールは、2024年(令和6年)4月1日施行の民法改正で見直されました。主な変更点は次のとおりです。
非嫡出子として生まれても、あとから嫡出子の身分を得ることがあります。これを準正(じゅんせい)といい、次の2つがあります。
結婚と認知の順序は問わず、「認知+婚姻」がそろえば嫡出子として扱われます。相続の場面では、嫡出子でも認知された非嫡出子でも取り分は同じなので、準正によって相続分が増減するわけではありません。
状況に近いところから読んでください。
非嫡出子の相続で最初に押さえるべきは、父親の遺産を相続できるかどうかは「認知」で決まるという点です。
非嫡出子が父親の遺産を相続するには、父親に認知されていることが必要です。
認知されれば、その子は法律上の父の子として、嫡出子と同じく第1順位の相続人になります。第1順位の子がいる以上、父の親や兄弟姉妹は相続人になりません。
逆に、認知されていない子は、たとえ血のつながりがあっても、法律上は父の相続人になれません。「実の子だから当然に相続できる」と思い込むと、認知の有無というハードルを見落としてしまいます。
法定相続人の範囲や順位の全体像は、次の記事で確認できます。

一方で、母親の遺産については、認知は関係ありません。
母子関係は出産によって当然に生じているため、非嫡出子は認知の有無にかかわらず母親の相続人になります。
父親が子を認知する方法は、主に次の4つです。生前でも死後でも、認知の道は用意されています。
任意認知や胎児認知は、市区町村に認知届を提出して行います。いったんした認知を、父親の側から取り消すことは原則できません。また、父親が亡くなった後に子どもが認知を求める死後認知は、検察官を相手方として家庭裁判所に訴えを起こす手続きで、父の死亡から3年以内に限られます。
認知は、子どもの出生時にさかのぼって効力が生じます。そのため、認知が認められれば、その子は初めから父の子だったものとして相続にも加わります。
遺言書の作り方は、次の記事でくわしく解説しています。
認知の効果は相続だけではありません。認知によって法律上の親子になると、父親は子を扶養する義務を負うため、子ども(未成年の間は親権者の母など)は父親に養育費を請求できます。
認知されていないうちは、養育費を法的に求めることはできません。金額は父母の話し合いで決め、まとまらなければ家庭裁判所の調停(不成立なら審判)で決めます。
2つめのポイントは相続分です。結論から言うと、認知された非嫡出子の相続分は、嫡出子とまったく同じです。
現在(2013年(平成25年)9月5日以降に開始した相続)では、非嫡出子の相続分は嫡出子と同じです。
かつては「非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1」と定められていました。しかし、2013年に最高裁がこの区別を法の下の平等に反し憲法違反であると判断し、これを受けて民法が改正されて、差がなくなりました。今では、嫡出子でも非嫡出子でも、同じ「子」として扱われます。
なお、2013年9月4日以前に開始した古い相続については、当時のルール(原則2分の1)が問題になりえますが、現在の相続では嫡出子と同じ、と押さえておけば十分です。

子どもが複数いれば、頭数で均等に分けます。
たとえば遺産が4,000万円で、相続人が配偶者・嫡出子1人・非嫡出子1人の場合、配偶者が2,000万円、嫡出子と非嫡出子がそれぞれ1,000万円ずつです。「非嫡出子だから少ない」ということはありません。
ほかの家族構成での取り分は、次の記事の早見表で確認できます。
相続分と合わせて知っておきたいのが遺留分です。遺留分とは、一定の相続人に法律で保障された、最低限の取り分をいいます。
認知された非嫡出子にも、嫡出子と同じ遺留分があります。「特定の子にすべて相続させる」という遺言があっても、非嫡出子は遺留分にあたる金銭を請求できます。
弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」には、「過去のいさかいから婚外子には一切相続させたくないので、遺言書をどう書けばよいか知りたい」という相談が寄せられています。
遺留分のしくみは、次の記事でくわしく解説しています。
相続税の扱いも、嫡出子と非嫡出子で違いはありません。
非嫡出子も、相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)の「法定相続人の数」に含まれます。
また、認知された子は相続税額の2割加算(配偶者・子・父母以外が相続すると税額が2割増える制度)の対象外なので、非嫡出子だからといって税額が増えることもありません。具体的な税額は税理士に確認すると安心です。
3つめのポイントは、非嫡出子がいる相続で起こりやすいトラブルと、その備え方です。特に、あとから存在がわかるケースで揉めやすくなります。

非嫡出子の存在が相続人にわかるかどうかは、認知の有無で変わります。
認知された子は、父親の戸籍に認知の事実が記載されます。そのため、相続手続きで父の出生から死亡までの戸籍をたどると、認知した子の存在が判明します。
逆に、認知されていない子は父の戸籍には出てこないため、戸籍からはわかりません。
また、戸籍の続柄欄は、2004年(平成16年)11月1日から非嫡出子も嫡出子と同じ形式で「長男」「長女」などと記載されるようになりました。それ以前に「男」「女」と記載された人は、申出によって記載を改められます。
たとえば、父の戸籍に入っていない非嫡出子が、相続手続きのために父の出生から死亡までの戸籍を取り寄せられるのか迷う方もいます(弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」より)。
相続手続きで集める戸籍の取り方は、次の記事にまとまっています。
相続手続きで戸籍を取り寄せて初めて、認知された子(非嫡出子)の存在を知る、というケースは少なくありません。
しかし、認知されている以上、その子は正当な相続人です。存在を認めたくない気持ちがあっても、その子を除いて相続手続きを進めることはできません。
相続弁護士ドットコム掲載事務所の解決事例1,212件のうち、非嫡出子(婚外子)が関わる事例は4件で、うち3件は父親が亡くなった後に存在がわかったケースでした。
きっかけは、相続手続きで取り寄せた戸籍が1件、子の側から起こされた死後認知の訴えが2件です。残る1件は、生前に遺言書を作って備えた事例でした(2026年7月時点。当社調べ、n=1,212)。
異母きょうだいの相続権や取り分は、次の記事でも確認できます。
ここで特に注意したいのが、認知された非嫡出子を外して行った遺産分割協議は無効になるという点です。
遺産分割協議は、相続人全員でしなければ効力が生じません。存在を知りながら(あるいは見落として)一部の相続人を除いて話し合っても、やり直しになります。
認知された子の親からも、「自分の子が、異母きょうだいの相続で外されてしまわないか心配」という声が「みんなの法律相談」に寄せられています。
相続人を正確に確定してから協議を始めることが大切です。
面識のない相続人どうしでは、連絡が取れなかったり、取り分をめぐって感情的に対立したりして、遺産分割協議が進まないことがあります。
当事者だけで難しいときは弁護士など第三者を介し、まとまらなければ家庭裁判所の遺産分割調停に進みます。
面識のない異母きょうだいへの連絡の取り方や、遺産分割の進め方は、次の記事でくわしく解説しています。
こうしたトラブルは、財産を残す親世代が生前に備えることで、大きく減らせます。
「婚外子には相続させたくない」と考える方もいますが、前述のとおり認知された子には遺留分があるため、遺言だけで取り分をなくすことはできません。
相続権を失わせる相続廃除(はいじょ)は、虐待や重大な侮辱などがあった場合に家庭裁判所が認めるもので、「婚外子だから」という理由だけでは認められません。遺留分の生前放棄にも、家庭裁判所の許可が必要です。
遺留分の生前放棄の手続きは、次の記事でくわしく解説しています。
そのうえで、次のような備えをしておくと、トラブルを減らせます。
生命保険金が相続でどう扱われるかは、次の記事でくわしく解説しています。
認知した事実を家族に話せていないケースもあります。「みんなの法律相談」にも、「夫が認知した子がいることを、自分たちの子にまだ話していない。夫の死後に初めて知って動揺しないよう、いずれ伝えたい」という相談が寄せられています。

弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」に寄せられた相続の相談30,302件のうち、非嫡出子(婚外子・隠し子などを含む)に関する相談は110件でした。
内容を見ると、「認知」に触れた相談が65件(59%)と最も多く、次いで「遺言」と「連絡・面識」がそれぞれ32件(29%)、「相続分・遺留分」が24件(22%)、「戸籍」が21件(19%)でした。
認知の有無や、面識のない相手との連絡に悩む人が多いことがわかります(1件の相談が複数の内容に当たる場合は重複して数えています。2021年4月1日〜2026年7月8日に投稿された相談。当社調べ、n=110)。
認知されても、それだけでは父親の戸籍には入らず、名字(氏)も自動的には変わりません。
認知は父子関係を生じさせる手続きであって、戸籍の異動や氏の変更とは別だからです。認知された子は、母の戸籍に入ったまま、父の欄に認知の事実が記載される形になります。
父の氏を名乗り、父の戸籍に入りたい場合は、家庭裁判所の許可を得て「子の氏の変更」などの手続きをする必要があります。なお、氏や戸籍がどうであっても、認知されていれば相続権には影響しません。
すでに他の相続人で遺産分割が終わっていた場合でも、非嫡出子は救済されます。
この場合、あらためて遺産の現物を分け直すのではなく、非嫡出子は他の相続人に対して、自身の相続分に相当する金銭の支払いを請求できます。すでに不動産の名義変更などが済んでいても、その価額に応じたお金を受け取れる、というイメージです。「先に分けてしまえば関係ない」とはならない点を押さえておきましょう。
非嫡出子とは、結婚していない男女の間に生まれた子のことです。母との親子関係は出生で、父との親子関係は認知で生じます。相続で押さえるべきは次の3つです。
1つめは、父親の遺産を相続できるかは「認知」で決まること。2つめは、認知されれば相続分・遺留分・相続税の扱いは嫡出子とまったく同じになること。3つめは、あとから存在が発覚して揉めやすく、認知された子を外した遺産分割協議は無効になることです。
父の遺産を相続できるか知りたいとき、父の死後に非嫡出子の存在がわかったとき、遺言で財産の残し方を考えているときは、判断を誤ると手続きのやり直しや深刻な対立につながりかねません。
まずは弁護士への初回相談で、相続人の確定や死後認知への対応、遺留分をふまえた分け方など、あなたのケースで必要な手続きを確認しましょう。

中央大学法学部、慶應義塾大学法科大学院を卒業後、LINEヤフー株式会社の法務部や都内法律事務所での勤務を経て、2023年に地元である静岡で同事務所を開設した。女性ならではの柔軟な視点を活かして問題解決に取り組む。相続では、遺産分割や遺留分減殺といった典型的な案件に加え、寄与分や遺言無効確認などの複雑な案件の実績も豊富。依頼者との信頼関係を重視し、丁寧かつ迅速な対応で解決をサポートしている。登録番号55919(静岡県弁護士会)