

異母兄弟(いぼきょうだい)とは、父親が同じで、母親が異なるきょうだいのことです。父の再婚や、婚姻外で生まれた子などによって生じます。
※「きょうだい」は「兄弟姉妹」をまとめて意味する表記ではあり、民法上も「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹」といった定めをしています。この記事では読みやすさのために、漢字表記については「(異母・異父)兄弟姉妹」ではなく、姉妹も含み「(異母・異父)兄弟」と表記する場合があることをご了承ください。相続では、性別によって取り分が変わることはありません。
まずは言葉の意味と、似た言葉との違いを整理しておきましょう。
異母兄弟は、父親を同じくし、母親が違うきょうだいです。たとえば、父が前妻との間にもうけた子と、後妻との間にもうけた子は、たがいに異母兄弟の関係になります。父が妻(子にとっての母)とは別の相手との間にもうけ、認知した子も、同じく異母兄弟にあたります。
反対に、母親が同じで、父親が異なるきょうだいを異父兄弟(いふきょうだい)といいます。母の再婚などで生じます。
異母兄弟も異父兄弟も、「父母の一方だけが同じきょうだい」という点では共通です。これを法律では半血(はんけつ)の兄弟と呼びます。父母の両方が同じきょうだい(全血の兄弟)と区別され、後で説明するとおり、きょうだい同士の相続で取り分に差が出ます。
異母か異父かで法律上の扱いが変わるわけではありません。どちらも半血の兄弟として同じルールが適用されます。この記事では異母兄弟を中心に説明しますが、異父兄弟でも考え方は同じだと読み替えていただけます。
日常では、異母兄弟を「腹違いのきょうだい」、異父兄弟を「種違いのきょうだい」と呼ぶこともあります。
いずれも半血の兄弟を指す言い方で、法律上の扱いは呼び方によって変わりません。呼び方にとらわれず、「父母のどちらが共通しているか」で整理すると混乱しません。
「会ったこともない異母兄弟に相続権があるのか」と気になる方は多いですが、異母兄弟にも相続権があります。ただし、いくつかの条件と、相続順位の理解が必要です。
異母兄弟が父の相続人になるには、父とその子の間に法律上の親子関係があることが前提です。
例えば、父が再婚して後妻がその婚姻中に懐胎して出生した子や、父が認知した子であれば、父の子として相続権があります。認知とは、父親が「自分の子である」と法律上認めることをいいます。非嫡出子(法律上の婚姻関係にない男女の間に出生した子。一般には婚外子とも呼ばれる。)でも、認知されていれば父の子として相続上は同じ立場になります。
つまり、異母兄弟に父の相続に関する相続権があるかどうかは、「父と法律上の親子関係があるか」で決まります。ここを確認することが、相続人を正しく把握する第一歩です。
法定相続人の範囲や順位の全体像は、次の記事で確認できます。
一方で、相続権がないケースもあります。
父に認知されていない婚外子は、法律上は父の子ではないため、そのままでは父の相続人になりません。また、父の再婚相手が連れてきた連れ子は、父と養子縁組をしていなければ、父の相続人にはなりません。長く一緒に暮らした連れ子でも、養子縁組という手続きを踏んでいなければ相続権はない、という点は見落とされがちです。
血のつながりや同居の有無ではなく、「法律上の親子関係があるか」で決まる、と覚えておきましょう。連れ子に財産を残したい場合は、養子縁組をするか、遺言で渡す方法などを検討することになります。

異母兄弟の相続で最も大切なのが、「誰の相続か」で立場と取り分が変わるという点です。
相続には順位があり、配偶者は常に相続人、血族は第1順位=子、第2順位=直系尊属(父母や祖父母、さらにその上の直系世代)、第3順位=兄弟姉妹の順です(なお、この記事では代襲相続をする場合や先順位者が相続放棄をした場合などの例外的ケースは考えないこととします)。
異母兄弟は、父の相続では「子」として第1順位、きょうだい同士の相続では「兄弟姉妹」として第3順位にあたります。同じ人でも、誰の相続かで順位が変わるわけです。この違いが、次に説明する取り分の差につながります。
まず、共通の父が亡くなったケースです。ここでは、異母兄弟も自分も、同じ「子」として扱われます。
父の相続では、異母兄弟の取り分はまったく同じです。
前妻の子でも後妻の子でも、認知された婚外子でも、父の子である以上、相続分に差はありません。かつては婚外子の相続分を半分とする規定がありましたが、2013年の民法改正で廃止され、今はすべての子が均等です。子が複数いれば、子の取り分を頭数で等しく分けます。
父の死亡時に配偶者(多くは後妻)がいる場合は、配偶者が2分の1、子全員で2分の1です。
たとえば、後妻と、前妻の子1人・後妻の子1人が相続人なら、後妻が2分の1、子はそれぞれ4分の1ずつになります。前妻の子だからといって取り分が減ることはありません。
金額に置きかえてみましょう。遺産が4,000万円で、相続人が後妻・前妻の子1人・後妻の子1人なら、後妻が2,000万円、子はそれぞれ1,000万円ずつです。異母兄弟という関係でも、父の子である以上は対等に扱われる、と押さえておきましょう。
父の配偶者がすでに亡くなっている、または離婚していて配偶者がいない場合は、子だけで全部を均等に分けます。
子が2人なら2分の1ずつ、3人なら3分の1ずつです。この場合も、異母兄弟となる子同士でも同じです。
父が離婚している場合、前妻はすでに配偶者ではないため相続人になりませんが、前妻との子は父の子として相続人であり続けます。「前妻は相続人でないが、前妻との子は相続人」という点を混同しないようにしましょう。
父の相続のケース | 配偶者(後妻) | 子(異母兄弟でも同じ) |
配偶者あり・子2人 | 2分の1 | 1人あたり4分の1 |
配偶者なし・子2人 | — | 1人あたり2分の1 |

次に、きょうだい同士の相続です。自分か異母兄弟が亡くなり、その人に子・直系尊属がいない場合、残されたきょうだいが第3順位の相続人になります(亡くなった人に配偶者がいる場合にはその配偶者とともに相続人となります)。ここでは父の相続と違い、半血の兄弟姉妹の取り分は半分になります。
きょうだいが相続人になる場合、父母の一方だけが同じ半血の兄弟姉妹の相続分は、父母の両方が同じ全血の兄弟姉妹の2分の1になります(民法900条4号ただし書)。
たとえば、亡くなったきょうだいに、全血の弟1人と半血(異母)の妹1人がいるとします。この場合、全血の弟と半血の妹の取り分は「2対1」になり、半血の妹は全血の弟の半分です。
金額でみると、遺産が1,200万円で相続人が全血の弟と半血の妹だけなら、全血の弟が800万円、半血の妹が400万円になります。父の相続では平等だった取り分が、きょうだいの相続では差がつく、という点が最大の注意点です。
亡くなったきょうだいに配偶者がいる場合は、配偶者が4分の3、きょうだい全員で4分の1を分けます。この4分の1を、全血と半血で「2対1」の割合に分けます。
配偶者がいない場合は、きょうだいだけで全部を分け、やはり全血と半血で「2対1」に配分します。全血の兄弟姉妹が複数いるときは、その全血の取り分をさらに人数で均等に分けますし、半血の兄弟姉妹が複数いるときも同様にその半血の取り分をさらに人数で均等に分けます。
きょうだいの相続のケース | 配偶者 | 兄弟姉妹側 |
配偶者あり | 4分の3 | 全員で4分の1(全血:半血=2:1) |
配偶者なし | — | 全員で全部(全血:半血=2:1) |
半血の取り分が半分になるのは、共通の親が1人(父だけ)だからと理解するとわかりやすいでしょう。
全血の兄弟姉妹は父母の両方が共通するのに対し、半血の兄弟姉妹は父だけが共通となります。つながりの重なりの違いを相続分に反映させたのが、このルールです。
なお、この2分の1ルールが働くのは、あくまで「きょうだい同士の相続」に限った話です。全血でも半血でもいずれでも共通することになる父の相続では、半血でも全血でも子として平等に扱われ、差はつきません。「(半血の兄弟姉妹は)父の相続なら平等、きょうだいの相続なら半分」と、2つの場面を分けて覚えておくと混同しません。
異母兄弟がいる相続は、感情面もからんで揉めやすいのが実情です。トラブルを避けるための注意点を確認しておきましょう。
遺産分割は、相続人全員でしなければ無効です。
「一度も会ったことがない」「連絡先も知らない」という異母兄弟でも、相続人である以上、その人を外して遺産分割協議を進めることはできません。存在を無視して手続きしても、後でやり直しになります。まずは戸籍で相続人を正確に確定することが出発点です。
なお、基本的には相続人全員の合意があれば、法定相続分と異なる割合で分けることもできます。異母兄弟が相続放棄をすることもありますし、異母兄弟に事情を説明し、法定相続分と異なる割合での分け方が相続分の譲渡や放棄をお願いすること自体は可能です。ただし、このようなお願いを受けるかどうかは本人が判断することで、他の相続人が強制することはできません。相続放棄の手続きは次の記事で解説しています。
「前妻の子には遺産を渡したくない」という配偶者の方の相談は少なくありません。とはいえ、法律上の相続人を一方的に外すことはできず、取れる方法には限りがあります。
実際に、弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」にも「再婚した夫の財産を、自分と自分の子だけに残し、前妻の子(夫の子)には渡さずに済む方法はないか」という相談が寄せられています。
方法としては、遺言書で取り分を調整する、生前贈与を活用する、といったものがあります。生前贈与は、やり方によって贈与税や他の相続人の遺留分が問題になることもあるため、進め方は税理士や弁護士に相談すると安心です。ただし、父の相続では前妻の子(後妻の子から見たら異母兄弟となる)も「子」として遺留分(最低限の取り分)を持つため、遺言でゼロにすることは原則としてできません。遺留分については次の記事で解説しています。
異母兄弟がいる相続では、取り分の主張や相続放棄の求めをめぐって対立が生じがちです。
「みんなの法律相談」にも、「亡くなった異母兄弟の相続で、もう一方の異母兄弟から相続放棄を求められ、自分の取り分を主張できるか」という相談が寄せられています。
相続放棄をするかどうかは本人の自由で、求められても応じる義務はありません。求めに応じないからといって、不利益を受けるわけでもありません。
異母兄弟がいる相続は、これまで交流のなかった相手と、お金や不動産の分け方を話し合うことになるため、どうしても対立が長引きやすくなります。感情的な対立に発展しそうなときや、法的な取り分に迷うときは、早めに弁護士へ相談することで、冷静に手続きを進められます。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を利用する方法もあります。
父の相続では、被相続人(父)の出生から死亡までの連続した戸籍を取り寄せることで、前妻の子や認知した子が判明します。
認知した子や前妻との子は、父の戸籍にその事実が記載されるため、戸籍を正確にさかのぼって確認することができれば通常は把握することができます。住所がわからない場合は、戸籍の附票を取得すると、相手の現住所を確認できることが多いです。連絡はいきなり訪問せず、まず手紙を送るなど、相手に配慮した進め方が望ましいでしょう。相続人調査の進め方は、次の記事にまとまっています。
遺留分があるかどうかは、「誰の相続か」で変わります。
父の相続で異母兄弟が「子」として相続する場合は、遺留分があります。この場合、遺言で異母兄弟の取り分をゼロにしても、異母兄弟は自らの遺留分を侵害された分の金銭を原則として請求できます。一方、きょうだい同士の相続で「兄弟姉妹」として相続する場合は、兄弟姉妹に遺留分はありません。この場合は、例えば遺言で「特定の人に全部」と決めておけば、半血の兄弟姉妹に渡さずに済みます。兄弟姉妹に遺留分がない点は、次の記事でくわしく解説しています。
異母兄弟が亡くなり、その人に子も直系尊属(親など)もいない場合は、きょうだいである自分が第3順位の相続人になります。亡くなった人に配偶者がいれば、配偶者と一緒に相続人となり、配偶者が4分の3、きょうだい全員で4分の1を分けます。配偶者もいなければ、きょうだいだけで分けます。
このとき自分は半血の兄弟姉妹にあたるため、全血の兄弟姉妹がいれば、その2分の1の相続分になります。
ただし、亡くなった人に子や直系尊属(親など)がいる場合は、そちらが優先されるため、きょうだいには相続権が回りません。きょうだいの順番が来るのは、原則として亡くなった人に子・直系尊属(親など)がいないときだと押さえておきましょう。
異母兄弟にも相続権はあります。ただし取り分は「誰の相続か」で変わり、共通の父の相続では異母兄弟間は均等に、きょうだい同士の相続では半血として全血の2分の1になります。認知されていない子や、養子縁組していない連れ子には相続権がない点も押さえておきましょう。
異母兄弟がいる相続は、会ったことのない相手との遺産分割や、取り分・相続放棄をめぐる対立など、当事者だけでは進めにくい場面が多くあります。
自分や異母兄弟が相続人になるのか、取り分はどれだけかで迷ったとき、相手と話し合いが難しいときは、まずは弁護士に相談し、自分のケースを整理してもらいましょう。早めに弁護士へ相談しておくと、感情的な対立を避け、必要な手続きを見通しよく進められます。

慶應義塾大学卒業後、約10年間の会社勤務・経営を経て弁護士に転身。弁護士として約20年のキャリアを持つ傍ら、調停官(非常勤裁判官)を4年間務めた経歴を有する。豊富な経験に基づき、特別受益や使い込み、遺留分など一筋縄ではいかない相続問題の解決に注力。遺産相続における「弁護士ドットコム」の弁護士ランキングで、全国1位を獲得した実績も。依頼者ファーストの姿勢を貫き、分かりやすい説明や丁寧かつ迅速な対応を信条とする。