


相続手続きは、弁護士などの専門家に依頼しなくても、自分で行えます。相続手続きには、次のような内容があります。
相続手続きにかかる費用には、大きく分けて、手続きそのものにかかる費用と、必要書類を取得するための費用があります。
相続手続きは自分でも行えますが、相続人同士で遺産の分け方について争いがある場合や、手続きに時間や手間を割けられない場合などには、弁護士、司法書士、税理士、行政書士などの専門家の力を借りることをおすすめします。以下では、それぞれの費用相場について解説します。
相続に関する相談先 | 主な対応業務 |
弁護士 | ・遺産分割協議、調停、審判の代理 |
税理士 | ・相続税の申告 |
司法書士 | ・不動産の相続登記 |
弁護士は、相続に関する紛争解決も含めたほとんどの手続きを任せられます(ただし、相続登記は司法書士に、相続税申告は税理士に依頼することが一般的です)。
弁護士に相続手続きを依頼した場合の費用は、どの手続きを依頼するかによって異なります。
相続放棄の手続きを弁護士に依頼する場合には、相続人1人当たり5万円から10万円程度の費用がかかります。弁護士は、相続放棄の申立てに必要な書類を作成するだけでなく、依頼者の代理人として申述書の提出をし、裁判所から依頼者へ質問があった際に代理回答を行うことが可能です。
遺産分割調停の申立てを弁護士に依頼する場合には、取得する遺産額に対して2~8%程度の着手金と、4~16%程度の報酬金が発生します。
相続に関する弁護士費用の金額については、以下の記事でくわしく解説しているので、あわせてお読みください。
司法書士は、登記手続きの専門家として、相続登記を行う資格があります。相続登記の手続きを司法書士に依頼する場合の費用は、不動産1件当たり10万円前後であるケースが一般的です。
また、司法書士の中でも「認定司法書士」という資格がある場合には、請求金額が140万円以下の遺留分侵害額請求について、相続人を代理して交渉や裁判などを行えます。認定司法書士に遺留分侵害額請求を依頼する場合の費用は、司法書士によって異なるので個別に確認しましょう。
税理士は、相続手続きにおいて、主に相続税の申告手続きを担当します。税理士に相続税申告を依頼した場合の費用相場は、遺産総額の0.5〜1%程度です。
行政書士は、役所などに提出する公的な書類を作成する専門家として、争いのない遺産分割協議書の作成や、自動車などの遺産の名義変更を行う資格があります。
行政書士に遺産分割協議書の作成を依頼した場合の費用は、数万円程度であることが一般的です。
相続手続きの費用は、すべてを一人の相続人が負担しなければならないわけではありません。費用の性質によって、相続人全員で分担するもの、依頼した相続人が負担するものに分けて考えると整理しやすくなります。
ただし、相続人の間で明確なルールを決めないまま費用を立て替えると、後から「誰が払うのか」「遺産から精算してよいのか」で揉めることがあります。支払う前に、何の費用を誰が負担するのかを相続人間で共有しておくことが大切です。
費用の種類 | 負担しやすい人 |
相続登記費用 | 不動産を取得する相続人 |
相続税申告費用 | 申告が必要な相続人、または相続人間で分担 |
弁護士費用 | 依頼した相続人 |
相続人全員のために必要な費用は、相続人間で合意すれば、遺産から支払ったり、立て替えた相続人に遺産から精算したりすることがあります。たとえば、相続人調査のための戸籍取得費、財産調査に必要な残高証明書の取得費、遺産分割協議書の作成費用などは、相続人全員に共通する手続きのための費用と考えやすいものです。
もっとも、遺産から支払えるかどうかは、相続人間の合意によって変わります。亡くなった人の預貯金を勝手に引き出して支払うことは避け、誰が立て替えるのか、後でどのように精算するのかを確認してから進めましょう。
相続税の計算では、亡くなった人の債務や葬式費用など、一定のものは遺産総額から差し引くことが可能です。一方で、相続人が自分のために依頼した専門家費用まで、当然に相続税の計算上控除できるわけではありません。税務上の扱いは費用の性質で変わるため、相続税申告がある場合は税理士に確認すると安心です。
相続人全員の利益になる費用は、相続人同士で話し合って分担することがあります。分担方法は、法定相続分に応じて分ける、取得する遺産の割合に応じて分ける、相続人全員で均等に分けるなどが考えられます。
たとえば、相続人全員で遺産分割協議を進めるために必要な書類取得費や、全員が合意して依頼した専門家費用は、相続人間で分担しやすい費用です。一方で、特定の相続人だけの希望で依頼した調査や相談の費用は、相続人同士で話し合って分担することは難しいでしょう。
費用を分担する場合は、領収書や見積書を残す、誰がいくら立て替えたかを一覧にする、遺産分割協議書や合意書で精算方法を明記するといった対応をしておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。
弁護士や司法書士、税理士などへ個別に相談・依頼した費用は、原則として依頼した相続人が負担すると考えるのが基本です。たとえば、特定の相続人が自分の取り分を守るために弁護士へ相談した場合、その費用を他の相続人に当然に請求できるわけではありません。
一方で、相続人全員の合意により、代表者が専門家へ依頼するケースもあります。この場合は、依頼前に費用の負担方法を決めておくことが重要です。誰のための依頼なのか、どこまでの業務を依頼するのか、見積もりに何が含まれているのかを共有しておきましょう。
相続手続きの費用を安く抑えたい場合には、手続きを自分で行って、専門家への依頼費用を抑えるとよいでしょう。
自分一人ではなく、他の相続人や親族に代わりにやってもらう方法もあります。手続きを分担して進めてもよいでしょう。
他の相続人に手続きを依頼する場合には、相続人全員の合意で、相続人の中から代表相続人を決める必要があります。
すべての相続手続きをひとりの代表相続人に任せてもよいですし、複数の代表相続人を決めて、分担して手続きを進めてもらう形もあります。
遺産分割協議書を作成する際に、遺産の分け方と共に、その手続きを行う代表相続人を記載しておくと、手続きがスムーズです。また、手続きによっては、代表相続人を届け出るための書類がある場合もあります。詳しくは手続きの窓口に問い合わせましょう。
相続人ではない親族に手続きを委任する場合には、委任状が必要です。委任状の形式は特に決められていないことが多いですが、手続きによっては書式が用意されている場合もあるので確認しましょう。
委任状を一から作成する場合には、紙に「委任状」というタイトルと、委任する相手の住所・氏名、委任したい手続きの内容、日付を記載して、署名し、実印を押印します。手書きでもパソコンで作成しても構いません。委任状の悪用防止のため、委任する内容は「相続に関する一切の手続き」という抽象的な書き方ではなく、「銀行口座の預金解約払戻しの手続き」などと具体的に書くようにしましょう。
経済的な理由で弁護士に依頼することが難しい場合には、法テラスを利用して相続手続きを弁護士に依頼するという方法もあります。
法テラスとは「日本司法支援センター」の通称で、国が設立した法律支援団体のことです。法テラスの「民事法律扶助」を利用することで、弁護士費用を立て替えてもらい、分割払いで返済できるようになります。
「民事法律扶助」を利用するためには、経済的な条件に当てはまる必要があります。また、審査のために手続きに時間がかかる場合があります。詳しくは法テラスの窓口にお問い合わせください。
相続手続きを自分で行う場合の費用には、手続きにかかる費用と、必要書類を取得するための費用などがあります。また、弁護士などの専門家に依頼する場合には、さらに依頼するための費用がかかります。費用を抑えるためには、自分自身で行うだけでなく、他の相続人や親族に依頼したり、法テラスを使用したりするなどの方法があります。
ただし、手続きが難しいと感じた場合には、無理せず専門家に相談しましょう。事務所によって費用が異なるので、相見積もりを取って比較検討するとよいでしょう。

1999年京都大学法学部卒、郵政省・総務省などの勤務を経て、2008年弁護士登録、2024年1月、大阪市北区堂島に「田阪法律事務所」を設立。相続全般について豊富な経験を有し、特に財産の使い込みや遺言無効といった難しい案件に注力している。