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相続手続きの費用はいくら?専門家ごとの費用相場と安く抑える方法を解説

相続手続きの費用は、自分で行う場合と専門家に依頼する場合とで大きく異なります。また、専門家の中でも、弁護士や司法書士、税理士、行政書士の誰に依頼するかによって費用は異なります。この記事では、相続手続きにかかる費用を詳しく解説します。

相続手続きを自分で行った場合の費用

相続手続きは、弁護士などの専門家に依頼しなくても、自分で行えます。相続手続きには、次のような内容があります。

  • 死亡届、火葬許可申請
  • 年金受給停止、健康保険資格喪失、世帯主の名義変更
  • 相続放棄
  • 準確定申告
  • 相続税の申告・納付
  • 遺留分侵害額請求
  • 死亡一時金の受取請求
  • 生命保険金の請求
  • 相続税の還付

相続手続きの流れ

相続手続きにかかる費用には、大きく分けて、手続きそのものにかかる費用と、必要書類を取得するための費用があります。

手続きそのものにかかる費用は、次のとおりです。

  • 遺言書の検認:遺言書1通につき800円分の収入印紙、連絡用郵便切手が数百円分
  • 相続放棄:収入印紙800円分、連絡用郵便切手が数百円分
  • 遺産分割調停:収入印紙1,200円分、連絡用郵便切手が数百円分
  • 相続登記:登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)

必要書類を取得するための費用は、概ね次のとおりです。

  • 戸籍謄本:450円
  • 改製原戸籍謄本、除籍謄本:750円
  • 住民票:200~300円
  • 印鑑登録証明書:200~300円
  • 固定資産評価証明書:200~300円

相続手続きを専門家に依頼した場合の費用

相続手続きは自分でも行えますが、相続人同士で遺産の分け方について争いがある場合や、手続きに時間や手間を割けられない場合などには、弁護士、司法書士、税理士、行政書士などの専門家の力を借りることをおすすめします。以下では、それぞれの費用相場について解説します。

相続に関する相談先 主な対応業務
弁護士 ・遺産分割協議、調停、審判
・遺留分侵害額請求
・遺言書の作成サポート、保管、遺言執行
・相続放棄の代理
・その他相続手続き全般
税理士 ・相続税の申告
・所得税の準確定申告
・生前の相続税対策
司法書士 ・不動産の相続登記
・遺言書の作成サポート、保管、遺言執行
・相続放棄の書類作成(代理は不可)
・その他相続手続き全般(紛争性のないものに限る)

弁護士に依頼する場合の費用

弁護士は、相続に関する紛争解決も含めたほとんどの手続きを任せられます(ただし、相続登記は司法書士に、相続税申告は税理士に依頼することが一般的です)。

弁護士に相続手続きを依頼した場合の費用は、どの手続きを依頼するかによって異なります。

相続放棄の手続きを弁護士に依頼する場合には、相続人1人当たり5万円から10万円程度の費用がかかります。弁護士は、相続放棄の申立てに必要な書類を作成するだけでなく、依頼者の代理人として申述書の代理提出し、裁判所から依頼者へ質問があった際に代理回答を行うことが可能です。

遺産分割調停の申立てを弁護士に依頼する場合には、取得する遺産額に対して2~8%程度の着手金と、4~16%程度の報酬金が発生します。

相続に関する弁護士費用の金額については、以下の記事でくわしく解説しているので、あわせてお読みください。
関連記事:相続手続きを弁護士に任せるメリットは?費用は誰が払う?選び方や税理士・司法書士との違いを解説

司法書士に依頼する場合の費用

司法書士は、登記手続きの専門家として、相続登記を行う資格があります。相続登記の手続きを司法書士に依頼する場合の費用は、不動産1件当たり10万円前後であるケースが一般的です。

また、司法書士の中でも「認定司法書士」という資格がある場合には、請求金額が140万円以下の遺留分侵害額請求について、相続人を代理して交渉や裁判などを行えます。認定司法書士に遺留分侵害額請求を依頼する場合の費用は、司法書士によって異なるので個別に確認しましょう。

税理士に相続手続きを依頼する場合の費用

税理士は、相続手続きにおいて、主に相続税の申告手続きを担当します。税理士に相続税申告を依頼した場合の費用相場は、遺産総額の0.5〜1%程度です。

行政書士に相続手続きを依頼する場合の費用

行政書士は、役所などに提出する公的な書類を作成する専門家として、争いのない遺産分割協議書の作成や、自動車などの遺産の名義変更を行う資格があります。

行政書士に遺産分割協議書の作成を依頼した場合の費用は、数万円程度であることが一般的です。

相続手続きの費用を安く抑えるには

相続手続きの費用を安く抑えたい場合には、手続きを自分で行って、専門家への依頼費用を抑えるとよいでしょう。

自分一人ではなく、他の相続人や親族に代わりにやってもらう方法もあります。手続きを分担して進めてもよいでしょう。

他の相続人に手続きを依頼する場合には「代表相続人」を決める

他の相続人に手続きを依頼する場合には、相続人全員の合意で、相続人の中から代表相続人を決める必要があります。

すべての相続手続きをひとりの代表相続人に任せてもよいですし、複数の代表相続人を決めて、分担して手続きを勧めてもらう形もあります。

遺産分割協議書を作成する際に、遺産の分け方と共に、その手続きを行う代表相続人を記載しておくと、手続きがスムーズです。また、手続きによっては、代表相続人を届け出るための書類がある場合もあります。詳しくは手続きの窓口に問い合わせましょう。

相続人ではない親族に手続きを依頼するには委任状を作成する

相続人ではない親族に手続きを委任する場合には、委任状が必要です。委任状の形式は特に決められていないことが多いですが、手続きの窓口によっては書式が用意されている場合もあるので確認しましょう。

委任状を一から作成する場合には、紙に「委任状」というタイトルと、委任する相手の氏名、委任したい手続きの内容、日付を記載して、署名押印します。手書きでもパソコンで作成しても構いません。委任状の悪用防止のため、委任する内容は「相続に関する一切の手続き」という抽象的な書き方ではなく、「銀行口座の預金解約払戻しの手続き」などと具体的に書くようにしましょう。

法テラスを利用して相続手続きを弁護士に依頼する

経済的な理由で弁護士に依頼することが難しい場合には、法テラスを利用して相続手続きを弁護士に依頼するという方法もあります。

法テラスとは「日本司法支援センター」の通称で、国が設立した法律支援団体のことです。法テラスの「民事法律扶助」を利用することで、弁護士費用を立て替えてもらい、分割払いで返済できるようになります。

「民事法律扶助」を利用するためには、経済的な条件に当てはまる必要があります。また、審査のために手続きに時間がかかる場合があります。詳しくは法テラスの窓口にお問い合わせください。

まとめ

相続手続きを自分で行う場合の費用には、手続きにかかる費用と、必要書類を取得するための費用があります。また、弁護士などの専門家に依頼する場合には、さらに依頼するための費用がかかります。費用を抑えるためには、自分自身で行うだけでなく、他の相続人や親族に依頼したり、法テラスを使用したりする方法があります。ただし、手続きが難しいと感じた場合には、無理せず専門家に相談しましょう。事務所によって費用が異なるので、相見積もりを取って比較検討するとよいでしょう。

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この記事の監修者
監修者の名前
田阪裕章弁護士
監修者の所属事務所
田阪法律事務所

1999年京都大学法学部卒、郵政省・総務省などの勤務を経て、2008年弁護士登録、2024年1月、大阪市北区堂島に「田阪法律事務所」を設立。相続全般について豊富な経験を有し、特に財産の使い込みや遺言無効といった難しい案件に注力している。

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