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遺言
更新日:2026/09/02

【ケース別】遺言書の書き方|そのまま使える見本と例文

監修者
田中伸明
愛知県>名古屋市
旭合同法律事務所
田中伸明
【ケース別】遺言書の書き方|そのまま使える見本と例文
「自分で遺言書を書きたいけれど、無効にならないか心配」という方へ。自筆証書遺言とは、本文・日付・氏名を手書きし、押印して作る遺言書です。書き方を5つのステップで説明し、ケース別にそのまま使える見本と例文、無効になりやすい書き方を解説します。書き方の相談1,759件から実際の失敗例も紹介します。


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遺言書とは?自筆証書遺言と公正証書遺言の違い

自筆証書遺言と公正証書遺言の特徴とメリット・デメリットを比較した図

遺言書とは、遺言者が亡くなった後に、財産を誰にどのように引き継がせるかなどを記載する書面です。遺言書を作成しておくと、遺産の分け方を自分の意思で指定できるため、相続人同士の話し合いである遺産分割協議を避けられる場合があります。

ただし、遺言書は法律で定められた方式に従って作成しなければなりません。方式に不備があると、遺言書が無効になるおそれがあります。

代表的な遺言書の方式には、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。

種類

特徴

向いている人

自筆証書遺言

自分で手書きして作る

費用を抑えて作りたい人

公正証書遺言

公証人が関与して作る

無効リスクを下げたい人

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは、遺言者本人が、遺言書の本文、日付、氏名を自書し、押印して作成する遺言書です。自分だけで作成できるため手軽ですが、書き方のルールを守らないと無効になりやすいという注意点があります。

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、公証役場で、公証人が関与して作成する遺言書です。証人2人の立会いが必要で、作成費用もかかりますが、方式不備によって無効になるリスクは自筆証書遺言より低いといえます。

自分で書くことが難しい場合や、相続人同士のトラブルが予想される場合は、公正証書遺言も検討しましょう。

自筆証書遺言の書き方・例文をステップで紹介

自筆証書遺言を作成する5つのステップを示すフローチャート

自筆証書遺言は、いきなり清書するのではなく、まず財産や相続させたい相手を整理し、文案を作ってから手書きするのがおすすめです。

ここでは、自分で自筆証書遺言を作成する流れをステップ方式で解説します。

ステップ1|財産と相続させたい人を整理する

まず、遺言書に書きたい財産と、その財産を誰に引き継がせたいのかを整理します。たとえば、次のような財産をリストアップします。預貯金不動産株式・投資信託自動車現金貴金属・骨董品借金・債務

財産の内容があいまいだと、相続発生後に「どの財産を指しているのか」が争いになることがあります。金融機関名、支店名、口座番号、不動産の所在や地番など、財産を特定できる情報を確認しましょう。

ステップ2|遺言書の文案を作る

次に、遺言書の文案を作成します。自筆証書遺言は最終的に本文を手書きする必要がありますが、下書きの段階ではパソコンやスマートフォンで文案を作ってもかまいません。

文案では、「誰に」「何を」「どの割合で」相続させるのかを明確にしましょう。基本的な例文は次のとおりです。ケース別の例文などは、次の章で解説します。

遺言書

遺言者〇〇〇〇は、次のとおり遺言する。

第1条 遺言者は、遺言者名義の〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇を、長男〇〇〇〇に相続させる。

第2条 遺言者は、下記の不動産を、長女〇〇〇〇に相続させる。

所在 〇〇県〇〇市〇〇町

地番 〇番〇

地目 宅地

地積 〇〇平方メートル

第3条 本遺言書に記載のない財産は、すべて長男〇〇〇〇に相続させる。

令和〇年〇月〇日

住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇番地

遺言者 〇〇〇〇 印

ステップ3|全文・日付・氏名を自書して押印する

自筆証書遺言では、原則として、本文・日付・氏名を遺言者本人が自書し、押印する必要があります。本文をパソコンで作成して印刷しただけでは、自筆証書遺言として無効となります


日付は「令和〇年〇月吉日」のように日付を特定できない書き方にしないよう注意しましょう。

ステップ4|財産目録を添付する場合は署名押印する

財産目録とは、遺言書で対象にする財産を一覧にした書類です。財産目録については、本文とは異なり、パソコンで作成したり、通帳や登記事項証明書のコピーを添付したりすることができます。ただし、自書しない財産目録を添付する場合は、各ページに署名押印が必要です。

ステップ5|封筒に入れて保管方法を決める

遺言書を書き終えたら、封筒に入れて保管方法を決めます。封筒に入れること自体は自筆証書遺言の成立要件ではありませんが、紛失や改ざんを防ぐためには、保管方法を慎重に決めることが大切です。
自宅で保管する場合は、信頼できる人に保管場所を伝えておくか、法務局の自筆証書遺言書保管制度の利用を検討しましょう。

【ケース別】そのまま使える遺言書の例文・ひな形

ここでは、ニーズの多いケースに絞って、遺言書の文例をコンパクトに紹介します。実際に使う場合は、財産の表示や相続人の氏名を正確に記載しましょう。

配偶者に全財産を残す(子がいる場合/いない場合=予備的遺言)

妻・夫・子どもなど、特定の相続人に全財産を相続させたい場合は、次のように記載します。

遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、妻〇〇〇〇に相続させる。

ただし、全財産を一人に相続させる内容にすると、他の相続人の遺留分を侵害する可能性があります。

配偶者が遺言者より先に亡くなる可能性に備え、「予備的遺言(補充遺言)」を添えておくと安心です。『相続させる』とした相続人が先に亡くなった場合、その部分は原則として効力を生じません(最高裁平成23年2月22日)。あらかじめ次の受取人を決めておきましょう。

遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、妻〇〇〇〇に相続させる。

妻〇〇〇〇が遺言者より先に、又は遺言者と同時に死亡した場合には、当該財産を長男〇〇〇〇に相続させる。

子どもで取り分に差をつける

子どもの間で取り分に差をつける遺言も作成できます。ただし、子には遺留分(原則として法定相続分の2分の1)があります。極端に差をつけると、取り分の少ない子から遺留分侵害額請求を受けることがあります

遺言者は、長男〇〇〇〇に、遺言者名義の〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇を相続させる。

遺言者は、二男〇〇〇〇に、遺言者の有するその他一切の財産を相続させる。

内縁の相手・連れ子など相続人以外に遺贈する

内縁の妻、孫、友人、団体など、相続人ではない人に財産を渡したい場合は、「相続させる」ではなく「遺贈する」と書くのが一般的です。

遺言者は、遺言者の有する現金300万円を、〇〇〇〇に遺贈する。

相続人以外へ遺贈する場合は、相続人とのトラブルや遺留分侵害額請求の可能性も考慮しましょう。

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財産の種類別の書き方【記載例つき】

財産は、種類ごとに「どの財産か」を特定できる情報を入れて書きます。表示があいまいだと、名義変更や相続登記で受け付けてもらえないことがあります。

預貯金

金融機関名・支店名・預金の種別・口座番号まで書いて特定します。

遺言者は、遺言者名義の〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇を、長男〇〇〇〇に相続させる。

不動産

登記事項証明書のとおり、所在・地番・地目・地積(建物は家屋番号・種類・構造・床面積)を書きます。住所(住居表示)ではなく、登記上の表示で特定します。

遺言者は、下記の土地を、長女〇〇〇〇に相続させる。

所在 〇〇県〇〇市〇〇町

地番 〇番〇

地目 宅地

地積 〇〇・〇〇平方メートル

株式・投資信託

証券会社名・銘柄・数量・口座番号で特定します。

遺言者は、〇〇証券〇〇支店の口座(口座番号〇〇〇〇〇〇)にある〇〇株式会社の株式〇〇株を、長男〇〇〇〇に相続させる。

生命保険金・現金・自動車・その他

生命保険金は、受取人が指定されていれば受取人固有の財産となり、原則として遺言書で分け方を指定する対象になりません。現金は金額を、自動車は登録番号・車台番号を書きます。ゴルフ会員権や貴金属なども、名称や記号番号で特定します。

割合で指定する場合・「その他一切の財産」の書き方

個別に書ききれない財産は、割合や包括的な書き方でカバーします。

遺言者は、遺言者の有するその他一切の財産を、妻〇〇〇〇に相続させる。

書き漏れを防ぐため、最後にこの一文を入れておくと安心です。

【実例】遺言書でよくあるトラブルと実際の相談

遺言書は「誰に・何を」の書き方ひとつで、相続手続きが止まってしまうことがあります。

渡す相手や財産があいまいで、手続きが止まる

実際に、弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」にも「自筆の遺言書で、実家の土地・建物を渡す相手を『◯◯(娘の夫)御一家に』と書いていたところ、『御一家』というあいまいな書き方のために相続登記ができず、実家が父名義のまま空き家になってしまった」という相談が寄せられています。

Q
自筆遺言書の相続人が「○○御一家」の場合の有効性と 相続登記可能か教えてください。
相談者の疑問
5年前に父が他界しました。母は亡くなっており嫁いだ娘が3人。A(私),B,C。 自筆の遺言書があり(死後検認済み)3等分ではないけれど3つの不動産を各々に相続させるとの内容でした。 割合は6:3:1ぐらいでしょうか。 他にも事細かに父の想いが書いてあるので遺志は明確なのですが 相続人を【主人の氏名御一家】にしてあるのです。 私の主人を長い間、単身赴任をさせてしまい申し訳ないという父の想いで 書いてくれたのだと思いますが姉達はココを指摘し承諾してくれません。 遺言書 ○○住所に被相続人(父)と相続人A(私)、孫氏名が住んでいます。 右の土地・建物を△△△△(Aの夫)御一家に贈与致します。日付、署名、捺印。 姉達へ遺した不動産についても其々のご主人の名前で相続させると書いてありました。 私は5年前に分割協議書に捺印し姉達は姉名義で不動産相続したのですが 「実家の売却禁止。全財産の3分の1の法的権利分を貰えないなら実家の相続をAにさせない」との事で 実家は姉達の遺産分割承諾が得られず 現在も父の名義のまま空家です。 このままではいけないと今年、家庭裁判所に遺産分割調停の申し立てをしましたが 「既に遺言書どおりB,Cは相続しているから遺産分割調停に馴染まない。裁判官もそう言っているし申し立てを続行しても調停に馴染まなく結果が出ないので却下の可能性大です」 と言われ取り下げる事になりました。 途方に暮れ司法書士さんにも相談しましたが相続人が【主人御一家】という書き方だと「遺言書登記は難しい」との事でした。 ●B,Cが承諾、捺印しなくても実家の名義を私に変更(相続)する方法はありますでしょうか? ●姉は法的判断なら従うと言っています。裁判するしか決着方法はないのでしょうか? ●裁判の場合どのような申し立てをすれば良いのでしょうか。 ●父の遺言はどのくらい認めてもらえるでしょうか? ●姉達への遺留分の時効は成立しているでしょうか? 書面でのやりとりはないですが当初から遺留分請求について知っていたと思います。 夫(転勤族)に単身赴任してもらい金銭的にもかなり援助し父を看取ったのが相続割合に関係ないのは承知しておりますが 自筆遺言書があり父の遺志は明確なのに 法的権利ばかり訴えてくる姉達の言いなりにはなりたくないのです。 ご教示お願い致します。
弁護士の回答
八坂 玄功 弁護士
裁判するしか方法はなさそうです。 自筆証書遺言に基づいて当該不動産の登記名義をAに移転せよという趣旨で、他の相続人全員を被告にして提訴するのだと思います。 遺言の文言解釈についてはできるだけ遺言者の本意に沿って有効とするような解釈をしている裁判例があります。私は、Aに相続させる趣旨と認めてもらえる可能性は十分あると思います。
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このケースのように、財産を渡す相手や財産の内容があいまいだと、遺言書自体は有効でも、相続登記や名義変更の手続きが進まなくなることがあります。

渡す相手は、氏名や続柄で一人に特定できるように書き、相続人以外に渡すときは『遺贈する』と書きます。財産も、不動産は登記のとおり、預貯金は金融機関名・口座番号まで書いて特定しましょう。

遺言書が複数あり、内容が食い違う

また、「叔母の自筆の遺言書が2通見つかり、内容が食い違ううえ、財産を渡すはずの相続人の1人が先に亡くなっていて、誰がどのように相続できるのか分からない」という相談も寄せられています。

Q
複数の遺言書について、亡くなっている相続人がいる場合
相談者の疑問
【相談の背景】 叔母の自筆の遺言書が2通あります。検認済みです。 1通は10年前に書かれたもので、全部の財産をAとBに相続してもらうと書いてあります。 もう1通は4年前に書かれたもので、全部の財産をAとBとCに相続してもらうと書いてあります。 昨年叔母が亡くなったときに、既にCは亡くなっていました。 【質問1】 この場合にAとBだけで遺産を分ける事ができるでしょうか?
弁護士の回答
松原 脩雄 弁護士
1 民法994条1項により、先に死亡したCは何も受け取れません。 A,Bで分ければよいです。
すべての回答を見る

遺言書が複数あって内容が矛盾するときは、日付の新しい遺言が優先します。作り直すときは、前の遺言を撤回する旨を書いておくと混乱を防げます。また、財産を渡す相手が自分より先に亡くなることもあります。その場合に備えて、次の受取人を決めておく『予備的遺言』を添えておくと安心です。

全財産を一人に渡すとき、どこまで書けばいい?

「すべての財産を特定の兄弟一人に相続させたいが、『すべての財産を◯◯へ相続させる』と一言で済ませてよいのか、財産を一つずつ書き出すべきか分からない」という相談も寄せられています。

Q
特定の一人に相続させる遺言書の書き方
相談者の疑問
相談いたします。 法的に有効な遺言書を準備したいと考えています。 主な高額財産は、複数の不動産と複数の銀行預金です。 これらを特定の一人(兄弟)へ相続させたいのですが、 わかりやすく単純に、「すべての財産を○○へ相続する」 と一言だけの文言で済ませても良いのでしょうか? (○○は相続させる兄弟の名前) これで良いのであれば遺言書も行政書士に依頼せず自作できそうなので助かります。 それとも、高額財産は一つ一つ明記しておいたほうが良いのでしょうか?
弁護士の回答
三本 章 弁護士
財産目録を作成し、財産を明記した方が良いでしょう。 また、他の相続人に対する遺留分も考慮して多少預貯金を分散させた方が、遺贈を受ける相続人に後々負担を掛けずに済むかと思われますので、そういったことも検討されてはどうでしょうか。 一度、法律相談に行かれることを進めます。
すべての回答を見る

誰に何を渡すかを財産ごとに特定して書いておくと、協議なしで名義変更でき、争いも防げます。書き方に不安があるときは、弁護士に確認するか、公正証書遺言も検討すると安心です。

自筆証書遺言のメリット・デメリット

自筆証書遺言の大きなメリットは、自分で比較的簡単に作成できることです。公正証書遺言のように公証役場で作成する必要がなく、証人も不要です。紙とペン、印鑑があれば作成できるため、思い立ったタイミングで準備しやすい遺言書といえます。

主なメリットは、次のとおりです。

メリット

内容

費用を抑えやすい

自分で作れば公証人手数料がかからない

すぐに作れる

公証役場の手続きを待たずに作成できる

内容を変更しやすい

新しい遺言書を作り直しやすい

内容を知られにくい

自分だけで作成・保管できる

費用や手軽さを重視する場合には、自筆証書遺言が選択肢になります。自筆証書遺言には、手軽に作れる反面、無効・偽造・変造・紛失のリスクがあります。特に、日付や氏名の記載漏れ、押印漏れ、本文をパソコンで作成してしまうなどの不備があると、遺言書としての効力が認められない可能性があります。

自筆証書遺言は「書けばよい」ものではなく、法律上の書き方を守る必要があります。

自筆証書遺言が無効になる書き方・注意点

自筆証書遺言を作成する際には、遺言無効などのトラブルを避けるため、書き方のルールを守る必要があります。

特に、次のような不備があると、遺言書が無効になったり、相続人同士のトラブルにつながったりする可能性があります。

書式に関するルールを守る

自筆証書遺言では、本文、日付、氏名を自書し、押印することが基本です。また、内容を訂正・追加する場合は、法律で定められた方式に従って行う必要があります。1つの不備で遺言書全体の効力が争われることもあるため、清書前に必ず確認しましょう。

パソコン作成や代筆が認められない部分がある

自筆証書遺言の本文は、遺言者本人が手書きする必要があります。そのため、本文をパソコンで作成して印刷したり、家族に代筆してもらったりすると、自筆証書遺言として無効となります。一方で、財産目録はパソコン作成や資料のコピー添付が認められます。

ただし、自書しない財産目録には署名押印が必要です。

訂正・追加・複数枚・別紙のルールを守る

遺言書を書き間違えた場合、単に二重線を引くだけでは不十分です。訂正場所を示し、変更した旨を記載し、署名と押印をする必要があります。また、遺言書が複数枚になる場合や、別紙の財産目録を付ける場合は、ページのつながりや署名押印の有無が問題になりやすいです。

訂正が多くなる場合は、無理に直すより、新しく書き直す方が安全です。

遺留分を侵害するとトラブルになる可能性がある

遺言書で特定の人に多くの財産を渡すことはできますが、一定の相続人には「遺留分」が認められています。遺留分を侵害する内容の遺言書を作成すると、相続開始後に遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。

全財産を一人に相続させる場合や、相続人以外に多額の遺贈をする場合は、遺留分にも注意しましょう。

本人に遺言能力があることを確認する

自筆証書遺言を作成するためには、遺言能力が必要です。遺言能力とは、遺言の内容とその結果を理解して判断できる能力のことです。認知症などで判断能力が低下している場合には、遺言能力がないとして、遺言書の効力が争われる可能性があります。

相続発生後のトラブルを避けるため、遺言書の作成時点で判断能力に問題がなかったことを示す資料を残しておくとよいでしょう。たとえば、医師の診断書、作成時の録音・録画、弁護士への相談記録などが考えられます。

自筆証書遺言書保管制度とは?法務局で保管するメリット

自筆証書遺言書保管制度のメリットと申請の流れを示す図

自筆証書遺言書保管制度とは、自分で作成した自筆証書遺言を、法務局の遺言書保管所で保管してもらえる制度です。自宅で保管する場合に比べて、紛失や改ざんのリスクを抑えやすく、相続開始後の手続きも進めやすくなります。

保管制度を利用すると検認が不要になる

自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所の検認が必要です。一方で、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用して保管されている遺言書は、家庭裁判所の検認が不要です。検認が不要になる点は、保管制度を利用する大きなメリットです。

偽造・変造・紛失のリスクを防ぎやすい

法務局で保管されるため、自宅保管に比べて、遺言書が見つからない、誰かに破棄される、内容を改ざんされるといったリスクを防ぎやすくなります。また、保管申請時には、自筆証書遺言の方式に適合しているかについて、外形的な確認を受けられます。

ただし、遺言の内容が法律的に有効かどうかまで保証されるわけではありません。遺留分や財産の書き方など、内容面に不安がある場合は専門家に相談しましょう。

保管申請の流れ・必要書類・費用

自筆証書遺言書保管制度を利用する場合は、遺言者本人が法務局の遺言書保管所に申請します。

項目

内容

申請先

住所地・本籍地・所有不動産所在地などを管轄する遺言書保管所

主な必要書類

遺言書、申請書、本人確認書類など

手数料

遺言書1件につき3900円

注意点

本人が出向く必要がある

保管制度を利用する場合の注意点

保管制度を利用しても、遺言書の内容が相続人間のトラブルを完全に防ぐとは限りません。たとえば、遺留分を侵害する内容や、財産の特定が不十分な内容の場合、相続開始後に争いになる可能性があります。

法務局では遺言の内容について相談に応じてもらえるわけではないため、内容面まで確実にしたい場合は、弁護士などの専門家に確認してもらうことが大切です。

自筆証書遺言を作成した後の手続き

自筆証書遺言を作成した後は、遺言書を紛失しないように保管し、必要に応じて内容の変更や撤回を検討します。

自宅で保管する場合

自宅で保管する場合は、遺言書が相続開始後に発見されるよう、信頼できる人に保管場所を伝えておくことが重要です。ただし、自宅保管には、紛失、破棄、隠匿、改ざんのリスクがあります。

内容を変更・撤回する場合

遺言書の内容を変更したい場合は、法律上の訂正方法に従って修正するか、新しい遺言書を作成します。新しい遺言書を作成する場合は、変更後の内容が明確になるように記載し、必要に応じて『以前作成した遺言書を撤回する』旨を明記しておきましょう。

相続発生後は検認や名義変更を行う

遺言者が亡くなった後、自宅で保管されていた自筆証書遺言が見つかった場合は、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。検認後は、遺言書の内容に従って、預貯金の払い戻し、不動産の相続登記、有価証券の名義変更などを行います。

遺言執行者を指定しておくと、相続開始後の手続きを進めやすくなる場合があります。

遺言書の書き方を相談できる専門家・相談先

遺言書は自分で作成できますが、相続人関係が複雑な場合や、財産が多い場合、特定の人に多く財産を渡したい場合は、専門家に相談することも検討しましょう。

弁護士・司法書士・行政書士・公証役場それぞれの費用の目安や選び方は、次の記事でくわしく解説しています。

遺言書の書き方についてよくある質問

遺言書はパソコンで作成できる?

自筆証書遺言の本文は、遺言者本人が自書する必要があります。そのため、本文をパソコンで作成して印刷しただけでは、自筆証書遺言として無効となります。

ただし、財産目録については、パソコンで作成したものや資料のコピーを添付できます。自書しない財産目録には署名押印が必要です。

自筆証書遺言に使う用紙や封筒に決まりはある?

自筆証書遺言そのものについて、用紙や封筒の種類に厳密な決まりがあるわけではありません。ただし、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する場合は、余白や用紙サイズなどの様式に注意が必要です。制度を利用する前に、法務省や法務局の案内を確認しましょう。

印鑑は実印でないといけない?

自筆証書遺言の押印は、必ず実印でなければならないわけではありません。ただし、後から本人が作成したものか争われるリスクを下げるためには、実印を使い、印鑑証明書などとあわせて保管しておくことも検討できます。

遺言書を訂正・追加するにはどうすればいい?

遺言書を訂正・追加する場合は、訂正場所を示し、変更した旨を記載し、署名押印する必要があります。訂正方法に不備があると、訂正部分が無効になる可能性があります。訂正箇所が多い場合は、新しい遺言書を作成し直す方がわかりやすいでしょう。

自筆できない場合はどうすればいい?

病気や障害などで自筆が難しい場合、自筆証書遺言を作成することは難しくなります。その場合は、公正証書遺言を検討しましょう。公正証書遺言であれば、公証人が関与して作成するため、自分で全文を手書きする必要はありません。

公正証書遺言の作成手順や費用は、次の記事でくわしく解説しています。

遺言書を書けば遺留分を無視できる?

遺言書を書いても、遺留分を当然に無視できるわけではありません。兄弟姉妹以外の一定の相続人には遺留分が認められています。遺留分を侵害する内容の遺言書を作成すると、相続開始後に遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。

まとめ|遺言書は書き方のルールを守って無効にならないように作成しよう

自筆証書遺言は、費用を抑えて自分で作成できる遺言書です。一方で、本文・日付・氏名の自書、押印、財産目録の署名押印など、書き方のルールを守らなければ無効になるおそれがあります。

遺言書の内容に不安がある場合や、遺留分・相続人同士のトラブルが心配な場合は、弁護士に相談しながら作成しましょう。遺言書は、作ること自体よりも「無効にならず、相続開始後に使える内容にすること」が重要です。

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