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遺留分
更新日:2026/07/13

遺留分とは?請求できる人・期限・割合と計算方法をわかりやすく解説

監修者
今井良輔
京都府>京都市
虎ノ門法律経済事務所京都支店
今井良輔
遺留分とは?請求できる人・期限・割合と計算方法をわかりやすく解説
遺留分は相続人に最低限保障された取り分のことです。遺言書や生前贈与によって自分の取り分が少ない場合、遺留分を請求できる可能性があります。この記事では、遺留分とは何か、請求できる人・できない人、遺留分侵害額請求の流れや期限、割合と計算方法をわかりやすく解説します。

遺留分とは

「遺留分(いりゅうぶん)」とは、家族が亡くなったときに、残された家族が「最低限これだけは受け取れる」と法律で保障されている金額のことです。

遺留分は相続人に最低限保障された取り分

亡くなった人は、本来であれば自分の財産を誰にどう分けるか、生前贈与や遺言書で自由に決めることができます。しかし、例えば「すべての財産を他人に譲る」といった極端な内容が通ってしまうと、残された家族は生活に困ってしまうかもしれません。

そのような事態を防ぎ、家族の生活を守るための「最低限保障された取り分」が遺留分です。

この制度があるおかげで、不公平な内容の遺言などがあったとしても、相続人は後から正当な権利として、自分に本来認められている分を取り戻すことができます。

たとえば、父が亡くなり、相続人が長男と二男の2人であるにもかかわらず、遺言書に「すべての財産を長男に相続させる」と書かれていた場合、二男には遺留分が認められる可能性があります。

遺留分と法定相続分の違い

遺留分は相続などによって取得できる財産の最低保障額であるのに対して、「法定相続分」は民法で定められた相続割合をいいます。

法定相続分は、相続人の構成に応じて以下のとおり決まっています。

相続人

法定相続分

配偶者のみ

1(全部)

子のみ

1(全部)


※子が複数人いる場合は人数割り

直系尊属のみ

1(全部)


※父母が両方とも相続人の場合は2分の1ずつ

兄弟姉妹のみ

1(全部)


※兄弟姉妹が複数人いる場合は人数割り。ただし異父母兄弟姉妹の相続分は同父母兄弟姉妹の2分の1

配偶者と子

配偶者1/2、子1/2


※子が複数人いる場合は人数割り

配偶者と直系尊属

配偶者2/3、直系尊属1/3


※父母が両方とも相続人の場合は6分の1ずつ

配偶者と兄弟姉妹

配偶者3/4、兄弟姉妹1/4


※兄弟姉妹が複数人いる場合は人数割り。ただし異父母兄弟姉妹の相続分は同父母兄弟姉妹の2分の1

家族同士の話し合い(協議)や、裁判所での話し合い(調停)で遺産の分け方を決める場合は、必ずしも法律で決められた基準(法定相続分)通りに分ける必要はありません。全員が納得していれば、自由に割合を決めることができます。

しかし、話し合いがまとまらずに裁判所が最終的な判断(審判)を下す場合は、原則として法律で定められた基準に従って分けることになります。

また後述するように、遺留分割合は法定相続分を基準に計算されます。

遺留分を侵害されたら遺留分侵害額請求で金銭を請求できる

もし、受け取った財産が法律で決まっている「遺留分」に足りなかった場合は、自分の遺留分を侵害している人に対して「足りない分をお金で支払ってください」と求めることができます。これを「遺留分侵害額請求」と呼びます。

ただし、遺留分は自動的に支払われるものではありません。遺留分を侵害された人が、財産を多く受け取った人に対して請求する必要があります。

以前は「遺留分減殺請求」という制度が使われていましたが、2019年7月1日以降に開始した相続では、基本的に「遺留分侵害額請求」の制度が適用されます。

遺留分が認められる人・認められない人

遺留分が認められる人

遺留分が認められているのは、兄弟姉妹以外の相続人です。具体的には、以下の者に遺留分が認められています。

  • 被相続人の配偶者
  • 被相続人の子
  • 代襲相続によって相続権を取得した、被相続人の直系卑属(孫、ひ孫など)
  • 被相続人の直系尊属(相続人である場合に限る)

たとえば、被相続人に配偶者と子どもがいる場合、配偶者と子どもには遺留分が認められます。子どもがすでに亡くなっている場合、その子どもである孫が代襲相続人となり、遺留分を持つことがあります。

兄弟姉妹以外の法定相続人は、遺留分を請求できる可能性があります。

遺留分が認められない人

これに対して、以下の者には遺留分が認められません。

  • 被相続人の兄弟姉妹
  • 代襲相続によって相続権を取得した、被相続人の甥または姪
  • 相続人でない者
  • 相続放棄をした人

また、本来であれば遺留分を有する相続人であっても、相続欠格(民法891条)に該当した場合や相続廃除(民法892条)の審判を受けた場合には、遺留分が失われます。

相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったものとして扱われます。そのため、相続放棄をしたあとに遺留分だけを請求することはできません

遺留分侵害額請求ができるケース

遺留分侵害額請求ができるかどうかは、遺言書や贈与によって、自分の遺留分が侵害されているかで判断します。単に「思ったより取り分が少ない」というだけでは、必ず請求できるとは限りません。

遺言書で自分の取り分が少ない・ない場合

もっとも典型的なのは、遺言書によって自分の取り分が少なくなっているケースです。

たとえば、相続人が配偶者と子ども2人であるにもかかわらず、遺言書に「長男に全財産を相続させる」と書かれていた場合、配偶者やもう一人の子どもは遺留分を侵害されている可能性があります。

この場合、遺言書そのものが当然に無効になるわけではありません。遺言書は有効でも、遺留分を侵害された相続人が、財産を多く受け取った人に金銭を請求するという形になります。

不動産など一部の相続人に財産が偏っている場合

遺留分トラブルでは、不動産が問題になることもあります。相続財産の大半が自宅不動産で、遺言書によってその不動産を特定の相続人が取得する場合、他の相続人の遺留分が侵害される可能性があります。

ただし、遺留分侵害額請求は、原則として金銭請求です。不動産そのものを分けるのではなく、不動産の評価額をもとに金銭で調整することになります。

不動産の評価額が変わると、遺留分侵害額も大きく変わります。評価額に争いがある場合は、資料を集めて慎重に確認しましょう。

生前贈与や特別受益によって取り分が減っている場合

被相続人が亡くなる前に、一部の相続人や第三者へ多額の財産を贈与していた場合も、遺留分が問題になることがあります。

特に、相続人への生前贈与が、婚姻・養子縁組・生計の資本として行われた場合は「特別受益」として扱われることがあります。遺留分の場面では、相続人への特別受益にあたる贈与は、原則として相続開始前10年以内のものが考慮対象になります。

一方、相続人以外への贈与は、原則として相続開始前1年以内のものが対象です。ただし、当事者双方が遺留分を侵害することを知っていた場合など、例外的にそれ以前の贈与が問題になることもあります。

遺留分侵害額請求の流れ

遺留分侵害額請求は、相続人や相続財産の調査、請求額の整理、交渉、調停・訴訟といった流れで進むことが多いです。請求できる期限もあるため、全体の流れを把握しておきましょう。

遺言書・相続人・相続財産を確認する

まず、遺言書の有無と内容を確認します。あわせて、誰が相続人になるのか、どのような相続財産があるのかも調べます。

確認すべき主な資料は、次のとおりです。

確認するもの

主な資料

相続人

戸籍謄本、除籍謄本

遺言書

公正証書遺言、自筆証書遺言

預貯金

通帳、残高証明書

不動産

登記事項証明書、固定資産評価証明書

生前贈与

贈与契約書、通帳履歴

相続財産の全体像がわからないままでは、遺留分侵害額として誰に、いくら請求できるか正しく判断できません。

遺留分を侵害されているか確認する

次に、自分の遺留分が侵害されているかを確認します。確認するポイントは、主に次の3つです。

  • 自分に遺留分があるか
  • 遺留分の割合はどれくらいか
  • 実際に受け取る財産が遺留分を下回っているか

計算には生前贈与や特別受益、不動産評価などが関係することがあります。遺言書の文言だけでは判断できないケースもあるため、少しでも迷う場合は慎重に確認しましょう。

内容証明郵便などで請求の意思を伝える

財産調査の結果、遺留分が侵害されていることがわかった場合は、基礎財産を多く取得した人に対して遺留分侵害額請求を行いましょう。

請求の意思表示は口頭でも可能ですが、後から「請求した・していない」と争いになることを防ぐため、内容証明郵便を使うのが一般的です。

遺留分侵害額請求には期限があるため、請求の意思表示をした証拠を残すことが重要です。

話し合いで解決を目指す

遺留分侵害額請求の方法は、主に協議・調停・訴訟の3通りです。まずは協議による解決を試み、だめなら状況に応じて調停や訴訟に移行します。弁護士に依頼すれば、どの手続きについても代理人として対応してもらえます。

話し合いでは、遺産の範囲、生前贈与の有無、不動産の評価額、支払方法などを確認します。金額に合意できれば、合意書を作成し、支払期限や分割払いの有無などを明確にしましょう。

話し合いがまとまらなければ調停・訴訟を検討する

話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所の調停を利用することがあります。調停では、調停委員を介して、当事者同士が合意できる解決を目指します。

調停でも合意できない場合は、訴訟を検討することになります。訴訟では、裁判所が証拠に基づいて遺留分侵害額などを判断します。

調停を申し立てただけでは、相手に遺留分侵害額請求の意思表示をしたことにはならない点に注意が必要です。調停とは別に、内容証明郵便などで請求の意思表示をしておきましょう。

遺留分侵害額請求の期限・時効

なお遺留分侵害額請求権は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈を知った時から1年、または相続開始の時から10年が経過すると時効消滅します(民法1048条)。遺留分侵害が疑われる場合には、お早めに弁護士へご相談ください。

遺留分侵害額請求では、1年と10年という2つの期限を意識する必要があります。

相続開始と遺留分侵害を知ったときから1年

遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が「相続の開始」と「遺留分を侵害する贈与または遺贈があったこと」を知った時から1年間行使しないと、時効によって消滅します。

相続の開始とは、被相続人が亡くなることです。つまり、被相続人が亡くなったことを知り、さらに自分の遺留分を侵害する遺言や贈与があることを知ったときから、1年の期限が問題になります。

「相続でもめたくない」と迷っているうちに1年が過ぎると、請求できなくなるおそれがあります。

相続開始から10年が経つと請求できない

遺留分侵害額請求権は、相続開始から10年が経過した場合にも行使できなくなります。これは、遺留分侵害の事実を知っていたかどうかにかかわらず問題になる期限です。

期限

起算点

内容

1年

相続開始と侵害を知った時

時効で消滅する

10年

相続開始時

知っていたかどうかにかかわらず請求できなくなる

遺留分の請求を検討している場合は、いつ亡くなったのか、いつ遺言や贈与を知ったのかをメモしておきましょう。

期限が迫っている場合は早めに請求の意思表示をする

期限が迫っている場合は、まず遺留分侵害額請求の意思表示をすることが重要です。遺産の全体像や正確な請求額がまだわからない場合でも、期限内に権利行使をしておかないと、後から請求できなくなるおそれがあります。

内容証明郵便を送る場合は、発送しただけではなく、期限内に相手へ到達したことを確認しましょう。

遺留分の割合と計算方法

遺留分の割合は、以下の要領で決まります(民法1042条1項)。

遺留分の基本割合

  • 直系尊属のみが相続人である場合

    遺留分割合=法定相続分×3分の1

    (例)被相続人の父と母が相続人である場合

    →父・母の遺留分割合は各6分の1(=2分の1×3分の1)

  • それ以外の場合

    遺留分割合=法定相続分×2分の1

    (例)被相続人の配偶者と子2人が相続人である場合

    →配偶者の遺留分割合は4分の1(=2分の1×2分の1)、子2人の遺留分割合は各8分の1(=4分の1×2分の1)

基本的には、遺留分の割合に、それぞれの法定相続分をかけて考えます。

相続人

遺留分全体

相続人ごとの遺留分

直系尊属のみ

1/3

直系尊属1/3

配偶者のみ

1/2

配偶者1/2

配偶者と子

1/2

配偶者1/4、子1/4

配偶者と直系尊属

1/2

配偶者1/3、直系尊属1/6

配偶者と兄弟姉妹

1/2

配偶者1/2、兄弟姉妹なし

子のみ

1/2

子1/2

兄弟姉妹のみ

なし

なし

ケース1:配偶者と子どもが相続人の場合

相続人が配偶者と子どもの場合、遺留分全体の割合は相続財産の2分の1です。

たとえば、相続人が配偶者と子ども2人の場合、法定相続分は配偶者が2分の1、子ども全体で2分の1です。子ども2人の法定相続分はそれぞれ4分の1なので、遺留分は配偶者が4分の1、子ども1人あたり8分の1になります。

相続人

法定相続分

遺留分

配偶者

2分の1

4分の1

子ども1

4分の1

8分の1

子ども2

4分の1

8分の1

相続財産が4000万円で、遺言書に「知人Aに相続させる」と書かれていた場合、配偶者の遺留分は1000万円、子ども1人あたりの遺留分は500万円が目安になります。

ケース2:子どものみが相続人の場合

相続人が子どものみの場合も、遺留分全体の割合は相続財産の2分の1です。

子どもが2人なら、法定相続分はそれぞれ2分の1です。そのため、各自の遺留分は4分の1になります。

相続人

法定相続分

遺留分

子ども1

2分の1

4分の1

子ども2

2分の1

4分の1

たとえば、相続財産が3000万円で、遺言書に「長男にすべて相続させる」と書かれていた場合、二男の遺留分は750万円が目安になります。

生前贈与・特別受益・不動産がある場合の注意点

相続財産の取得額が遺留分を下回る場合は、遺留分侵害額請求を行うことで、不足額に相当する金銭の支払いを受けられます。遺留分侵害が疑われる場合は、まず遺留分を算定するための財産の価額の基礎財産を調査し、漏れなく把握することが重要です。

相続財産である不動産・預貯金・有価証券などに加えて、被相続人口座の入出金履歴や贈与契約書などから生前贈与についても調査を行いましょう。調査の方法がわからない場合は、弁護士へのご依頼をおすすめします。

生前贈与や特別受益、不動産がある場合は、遺留分を算定するための財産の価額を判断しにくくなります。財産の評価額や贈与の時期によって、遺留分侵害額が変わることがあります。

遺留分トラブルで弁護士に相談した方がよいケース

弁護士に依頼すれば、遺留分侵害額請求に必要な手続きを代理してもらえます。遺留分侵害額請求権の消滅時効が完成しないうちに、お早めに弁護士へご相談ください。

特に、次のような場合は早めの相談を検討しましょう。

遺産の全体像がわからない場合

通帳や不動産資料を相手が管理している場合、どのような財産があるのかわからないことがあります。財産の全体像がわからないまま請求すると、本来請求できる金額より少ない金額で合意してしまうおそれがあります。

相手が請求に応じない場合

相手が「遺言書どおりだから払わない」「生前贈与は関係ない」「不動産の評価額が高すぎる」などと主張することもあります。このような場合は、法的な根拠を示しながら交渉する必要があります。

遺留分侵害額請求をされた場合

遺留分侵害額請求は、請求する側だけでなく、請求された側にも対応が必要です。請求されたからといって、相手の主張どおりの金額をすぐに支払う必要があるとは限りません。

まずは、相手の遺留分が侵害されているのか、請求期限を過ぎていないか、計算の前提が正しいかを確認しましょう。

調停や訴訟になりそうな場合

調停や訴訟では、証拠と法律に基づいて主張する必要があります。不動産評価、贈与の有無、遺言書の有効性、時効の成立などが争点になると、専門的な判断が必要です。

遺留分についてよくある質問

最後に、遺留分についてよくある質問を整理します。

遺留分は兄弟姉妹にもありますか?

兄弟姉妹には遺留分はありません。兄弟姉妹は、被相続人に子どもや父母などがいない場合に法定相続人になることがありますが、遺留分侵害額請求はできません。

遺言書があっても遺留分は請求できますか?

遺言書があっても、遺留分を請求できることがあります。遺言書によって自分の取り分が遺留分を下回る場合は、財産を多く受け取った人に対して遺留分侵害額請求を検討できます。

遺留分は生前に放棄できますか?

遺留分は、生前に放棄できますが、家庭裁判所の許可が必要です。単に念書や合意書を書いただけでは、遺留分の生前放棄として有効にはなりません。

遺留分侵害額請求をされたらどうすればよいですか?

遺留分侵害額請求をされた場合は、まず請求の内容を確認しましょう。相手が遺留分を持つ人か、請求期限を過ぎていないか、請求額の計算が正しいか、遺産や生前贈与の評価に誤りがないかを確認することが大切です。

「自分で対応するのは難しそう」「相手と話し合いが進まない」「そもそもいくら払えばいいのか分からない」と少しでも不安に感じたら、すぐに弁護士へ相談してください。

遺留分の請求は弁護士に依頼すべきですか?

遺留分の請求は自分で行うこともできます。ただし、請求期限が迫っている、相手が財産を開示しない、不動産の評価額で争いがある、生前贈与や特別受益がある、相手が支払いに応じないといった場合は、弁護士への相談を検討しましょう。

自分が請求できるのか、いくら請求できるのか、いつまでに何をすべきか迷ったら、早めに弁護士へ相談することが大切です。

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今井良輔
京都府>京都市
虎ノ門法律経済事務所京都支店
今井良輔(京都弁護士会)
京都弁護士会所属。当事務所は東京本店を基軸に全国に30以上のオフィスを展開しており、それぞれが地域に密着した法サービスを提供しています。特に相続の不動産の扱いに幅広いノウハウがあり、最適なリーガルプランを提供します。
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