相続手続きを行うに当たっては、戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本(以下「戸籍謄本等」と総称します)の提出が必要となることがあります。
戸籍簿の記載事項の全部を証明する書類。正式名称は「戸籍全部事項証明書」。
除籍簿(=全員が除籍となった戸籍の情報が登録された公簿)の記載事項の全部を証明する書類。正式名称は「除籍全部事項証明書」。
コンピュータ化より前の戸籍簿の記載事項の全部を証明する書類。
相続手続きにおいて戸籍謄本等の提出を求められるのは、相続人が誰であるかを確認するためです。
遺産相続における相続人は、被相続人との続柄によって決まります。たとえば、被相続人の配偶者と子は常に相続人となります。被相続人に子がいなければ、両親などの直系尊属が相続人となり、直系尊属もいなければ兄弟姉妹が相続人となります。
戸籍謄本等には、被相続人の家族関係が記載されているため、戸籍謄本等を確認すれば相続人が誰かであるかを特定可能です。
相続手続きを受理する会社や行政機関においては、相続人が誰であるかを確認するため、戸籍謄本等の提出を求めています。
戸籍謄本等が必要な相続手続きとしては、以下の例が挙げられます。
相続手続きにおいて取得すべき戸籍謄本等の種類には、おおむね以下の4つのパターンがあります。実際に必要となる戸籍謄本等の種類については、相続手続きを受理する会社や行政機関にご確認ください。
相続関係の全体像を確認するため、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等の提出を求められることがあります。
相続関係の全体像の確認までは不要で、被相続人が死亡したことだけを確認できればよい場合は、被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本等の提出を求められます。
相続人が生存していること(=相続権があること)を確認するために、提出を求められることがあります。
先順位相続人が死亡したために相続権を得た場合や、親が死亡して代襲相続により相続権を得た場合には、死亡した親族の戸籍謄本等の提出を求められることがあります。
被相続人(または他の親族)の出生から死亡までの戸籍謄本等が必要な場合は、請求先の市区町村役場にその旨を伝えましょう。戸籍情報を調べた上で、必要な証明書を交付してもらえます。
戸籍謄本の取り方には、本籍地のある市区町村役場に請求する方法と、本籍地以外の市区町村の窓口で請求する方法(広域交付)とがあります。
戸籍謄本等を請求できるのは、以下のいずれかに該当する人です。
弁護士に依頼すれば、職務上請求によって、必要な戸籍謄本等をすべて揃えてもらえます。
戸籍謄本等の請求先は、戸籍簿(または除籍簿・改製原戸籍)が保存されている市区町村役場です。
窓口での請求のほか、郵送による請求も認められています。戸籍に記載されている本人であれば、マイナンバーカードを利用してコンビニで戸籍謄本の交付を受けられる自治体も増えています。
戸籍謄本等を請求できるのは、以下のいずれかに該当する人です。
本籍地のある市区町村役場に申請する場合と異なり、郵送や代理人による請求はできません。請求できる人が市区町村の戸籍担当窓口に行って申請する必要があります。
広域交付の場合は、全国の市区町村役場で請求できます。自宅や勤務先の最寄りの市区町村役場など、利用しやすい場所を選びましょう。
戸籍謄本等を請求する際の必要書類と手数料は、下表のとおりです。
※戸籍謄本のみ
戸籍謄本等の種類 | 手数料 |
---|---|
戸籍謄本 | 450円 |
除籍謄本 | 750円 |
改製原戸籍謄本 | 750円 |
※コンビニ交付の場合は割り引かれる場合あり
戸籍謄本等に有効期限はありませんが、相続手続きによっては、発行から一定期間内の戸籍謄本等の提出を求められることがあります(例:発行から3か月以内など)。
相続手続きを行う会社や行政機関に、受理してもらえる戸籍謄本等の発行時期を確認しておきましょう。
相続手続きのために戸籍謄本等を取得する際には、特に以下の2点にご注意ください。
必要な戸籍謄本等に漏れがあると、相続手続きを受理してもらえません。この場合、改めて戸籍謄本等を取得し直さなければならず、二度手間になってしまいます。
スムーズに相続手続きを進めるため、必要な戸籍謄本等の種類はあらかじめ確認しておきましょう。
相続手続きに必要な戸籍謄本等を揃えるには、複数の市区町村役場へ請求しなければならないケースが多いです。そのため、すべての戸籍謄本等が揃うまでには、思いのほか時間がかかることがあります。
特に相続放棄・限定承認や相続税の申告など、期限が設けられている手続きを行う際には、スケジュールを立てて計画的に戸籍謄本等を取得しましょう。
相続手続きに必要な戸籍謄本等が揃っても、その束を金融機関や法務局などへ何度も提出するのは面倒です。提出した戸籍謄本等の束が戻ってきてから、次の手続きを行うことを繰り返していては、相続手続きに時間がかかってしまいます。
このような手間や時間を省くためには、法務局の「法定相続情報証明制度」を利用するのが便利です。登記官が発行する「法定相続情報一覧図」の写しを、戸籍謄本等の束の代わりに提出できるので、スムーズに相続手続きを進めることができます。
詳しくは以下の記事で解説しているので、あわせてお読みください。
関連記事:法定相続情報証明制度とは?メリットや手続きの流れ、かかる費用を解説
相続手続きをスムーズに進めるためには、必要書類を漏れなく揃えなければなりません。特に戸籍謄本等については、取得に時間がかかるケースが多いので、余裕をもって準備を進めましょう。
弁護士に依頼すれば、職務上請求によって必要な戸籍謄本等を揃えてもらえます。ご自身で戸籍謄本等を揃えるのが難しい方は、弁護士にご相談ください。