


相続手続きは、専門家に頼まず自分で進めることも十分に可能です。ただし、すべての人に向いているわけではありません。まずは、自分のケースが「自分でできる」タイプか「専門家に頼んだほうがよい」タイプかを見極めることが、遠回りを避ける第一歩になります。
次のような場合は、自分で手続きを進めやすいといえます。
一方、次のような場合は、はじめから専門家に相談したほうが安全です。
どの専門家に頼むかは内容で変わります。費用や選び方は、こちらもあわせてご覧ください。
自分で進める前に、良い点と大変な点の両方を知っておきましょう。
メリット | デメリット |
専門家への報酬を節約できる | 手間と時間が大きくかかる |
財産の内容を自分で把握できる | 平日に役所へ行く必要がある |
手続きの知識が身につく | ミスや漏れでやり直しになるリスク |
相続手続きとひと口にいっても、内容は多岐にわたります。まずは「期限があるもの」と「落ち着いてから進めるもの」に分けて全体像をつかみましょう。
特に注意したいのが、期限が決まっている手続きです。代表的なものは次のとおりです。
手続き | 期限 | 起算点(いつから数えるか) |
相続放棄・限定承認 | 3か月 | 自分のために相続の開始があったことを知った日から |
準確定申告 | 4か月 | 相続の開始を知った日の翌日から |
相続税の申告・納付 | 10か月 | 相続の開始を知った日の翌日から |
相続登記(名義変更) | 3年 | 不動産の取得を知った日から(義務化) |
亡くなった直後は、相続そのものよりも先に済ませる届出があります。
これらは葬儀と並行して進めることが多く、慌ただしい時期です。まずは目の前の届出から片づけましょう。
葬儀などが一段落したら、相続そのものの手続きに入ります。

ここからは、相続手続きを自分で進める場合の流れを、6つのステップで順番に見ていきます。基本的にこの順番どおりに進めれば、大きな抜け漏れを防げます。
最初にすべきは、遺言書があるかどうかの確認です。遺言書があれば、原則としてその内容に沿って分けることになり、その後の流れが変わります。
自筆の遺言書を見つけても、勝手に開封してはいけません。公正証書遺言以外は、家庭裁判所で検認(遺言書の内容や状態を確認してもらう手続き)が必要です(法務局保管の自筆証書遺言を除く)。
次に、誰が相続人なのかを確定させます。そのために、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍をすべて集め、相続人を漏れなく確認します。相続人を1人でも見落とすと、あとで遺産分割をやり直すことになりかねません。
自分が相続人にあたるか、範囲や順位を整理したい場合はこちらが参考になります。
続いて、プラスの財産とマイナスの財産の両方を調べます。預貯金・不動産・有価証券などの資産に加え、借金や保証債務などのマイナスの財産も必ず確認しましょう。借金の有無は、相続放棄を検討するうえで重要な判断材料になります。
財産の全体像が見えたら、そのまま相続するか、放棄するかを判断します。借金が明らかに多いなら、財産も借金もいっさい引き継がない相続放棄という方法があります。
プラスかマイナスかはっきりしない場合は、プラスの財産の範囲内でだけ借金を引き継ぐ限定承認も選べます。ただし、限定承認は相続人全員で共同して申し立てる必要があります。
いずれも3か月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があり、期限が短いのが特徴です。相続放棄の進め方は、こちらで詳しく解説しています。
相続することを決めたら、相続人全員で誰が何を取得するかを話し合います。これを遺産分割協議といい、全員の合意ができたら遺産分割協議書にまとめ、相続人全員が署名・押印(実印)します。1人でも欠けると無効になるため注意しましょう。
協議書の具体的な書き方やひな形は、こちらの記事でくわしく確認できます。
分け方が決まったら、財産ごとに名義変更を進めます。預貯金は解約・払い戻し、不動産は法務局で相続登記を行います。相続税がかかる場合は、税務署への申告・納付も必要です。
不動産の名義変更(相続登記)を自分でやる方法は、こちらが参考になります。
自分で進めるうえで最も怖いのが、期限切れです。期限を過ぎると、選択肢が狭まったり、ペナルティが生じたりします。主な期限を改めて押さえましょう。
相続放棄と限定承認は、自分のために相続の開始があったことを知った日から3か月以内が原則です。この期間を過ぎると、原則として借金も含めて相続したことになります。間に合わないと感じたら、早めに期間の伸長を申し立てる方法もあります。
亡くなった方に一定の所得があった場合、相続人が代わりに確定申告をします。これを準確定申告といい、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内が期限です。
相続財産が基礎控除を超える場合は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告と納付をします。申告には時間がかかるため、早めの準備が大切です。相続税がかかりそうな場合は、この段階で税理士への相談をおすすめします。
2024年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を取得したことを知った日から3年以内の登記が必要になりました。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となる可能性があります。過去の相続も対象です。
義務化の対象範囲や過去の相続への影響、ペナルティの詳しい内容は、次の記事で確認できます。
相続手続きでは、どの手続きでも共通して必要になる書類があります。代表的なものは次のとおりです。
戸籍は、相続関係を一覧にした法定相続情報一覧図を作っておくと、何度も戸籍の束を出さずに済み便利です(取得は無料)。書類の種類や取り寄せ方法は、こちらで詳しく解説しています。
自分で進める場合、専門家への報酬はかかりませんが、書類の取得費用や登記の税金などの実費は必要です。主な目安は次のとおりです(金額は自治体や時期により異なる場合があります)。
項目 | 費用の目安 |
戸籍謄本 | 1通450円 |
除籍・改製原戸籍謄本 | 1通750円 |
住民票・印鑑証明書 | 1通300円程度 |
登記事項証明書 | 1通480〜600円 |
相続登記の登録免許税 | 課税標準額(固定資産税評価額)×0.4% |
数万円程度で収まることが多い一方、専門家に頼むと報酬が加わります。自分でやるか頼むかは、費用と手間のバランスで考えましょう。専門家ごとの費用相場は、こちらが参考になります。
最後に、自分で進めるときにつまずきやすいポイントを押さえておきましょう。
「まず自分でやってみて、難しければ頼もう」と考える方は多いですが、途中まで進めた書類を作り直すことになり、かえって費用や時間がかさむ場合があります。複雑だと感じたら、早い段階で相談するほうが結果的に得なこともあります。
後から相続人や財産が見つかると、遺産分割協議をやり直すことになりかねません。戸籍は出生までさかのぼって集め、財産は借金も含めて漏れなく調べることが、やり直しを防ぐ最大のコツです。
「自分でできそうか判断がつかない」というときは、無料相談を活用しましょう。多くの事務所が初回無料相談を設けており、自分でできる部分と頼むべき部分を切り分けるだけでも、その後の進め方がぐっと楽になります。
ケースによりますが、戸籍集めから名義変更まで、早くても1〜2か月、内容が複雑だと半年以上かかることもあります。特に戸籍の収集に時間がかかりやすいので、早めに着手しましょう。
可能です。戸籍や住民票は郵送請求でき、登記もオンラインや郵送に対応しています。ただし、窓口でしか対応していない手続きもあるため、その分は時間の確保が必要です。
引き継ぎは可能です。ただし、集めた書類の確認やり直しが発生することもあるため、引き継ぐなら早めの判断が望ましいです。どこまで自分でやったかを整理して相談するとスムーズです。
相続手続きは、相続人が少なく財産がシンプルなケースなら自分でも進められます。一方で、相続人が多い・もめている・不動産が複雑・相続税がかかるといった場合は、専門家に頼むほうが安全です。
自分で進める場合は、3か月・4か月・10か月・3年という期限を意識しながら、遺言書の確認から名義変更まで順番に進めましょう。判断に迷ったときは、無理をせず無料相談で「自分でできる範囲」を確かめることが、失敗を防ぐ近道です。
戸籍の収集や相続人・財産の調査が複雑だったり、相続放棄や相続税申告の期限が迫っていたりして、「このまま自分で進めてよいか不安」というときは、早めに専門家の力を借りましょう。
手続きを途中で止めて作り直すと、かえって時間も費用もかさみます。まずは弁護士への初回相談で、自分でできる範囲と任せたほうがよい部分を切り分けてもらうと安心です。

大阪弁護士会所属。元国税職員の弁護士が、法務と税務の両面から相続問題の解決をサポートします。相続税に配慮した遺言書の作成や事業承継にも対応しております。相続問題や事業承継について不安や疑問のある方は、お一人で悩まずに、お気軽にご相談ください。