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相続放棄
更新日:2026/10/20

土地だけ相続放棄はできる?管理義務と手放す方法を比較

監修者
白鳥剛臣
宮城県>名取市
しらとり法律事務所
白鳥剛臣
土地だけ相続放棄はできる?管理義務と手放す方法を比較
「親の預貯金は受け取りたいが、遠方にある使い道のない土地だけは手放したい」と悩んでいませんか。相続放棄では土地だけを放棄できず、放棄後も土地の管理義務が残る場合があります。放棄後の土地の行方と管理義務、相続土地国庫帰属制度や売却など4つの手放し方の違いを、比較表で分かりやすく解説します。
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いらない土地だけを相続放棄することはできない

相続放棄とは財産も借金もまとめて相続しない選択

「いらない土地だけを手放したい」という希望はよく聞きますが、相続放棄でそれをかなえることはできません。まずはその理由を押さえましょう。

相続放棄はプラスもマイナスもすべてを手放す手続き

相続放棄とは、プラスの財産も土地も借金も、いっさい引き継がない手続きをいいます。家庭裁判所に申し出て、はじめから相続人ではなかったことにしてもらう制度です。

相続放棄をすると、その人は被相続人の財産をいっさい受け継ぎません。特定の財産だけを選んで放棄したり、受け取ったりする「いいとこ取り」はできないしくみです。

弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」にも、「近所の土地は相続し、他県にある売れない山林や田畑だけを相続放棄できないか」という相談が寄せられています。

Q
同町内にある敷地の隣接する土地だけ相続して 他県にある 山林田畑のみを相続放棄することはできますか?
相談者の疑問
【相談の背景】 相続になると思われる 不動産の相続放棄についてのご質問 兄は妻子がなく 私と弟が相続になると思われます。 兄は父から相続した土地(現在の居住地)と父の出身地(他県)の山林田畑を所有しています。 私と弟は現在住んでいる土地を相続しました。 私の家は100mほど離れた場所になりますが兄と弟の敷地が隣接しています。 相続が起きた時点で問題になるであろう他県に存在する山林田畑のみを処分するにも売れずにいます。 田舎のため 遠い親戚からも「ただでもいらない。」と言われています。 相続までに処分を考えているようですが ままなりません。 同町内にある敷地の隣接する土地だけ相続して 他県にある 山林田畑のみを相続放棄することはできますか? または 相続前に そのような不動産を県市町村に寄付はできますか? 【質問1】 同町内にある敷地の隣接する土地だけ相続して 他県にある 山林田畑のみを相続放棄することはできますか? または 相続前に そのような不動産を県市町村に寄付はできますか?
弁護士の回答
和田 史郎 弁護士
ある財産だけ相続して、ある財産は相続放棄する、ということはできません。 相続前に、所有者であるお兄さんが処分する分には問題ありません。 県市町村に寄付できるかどうかは、県市町村が寄付を受けるかどうかです。
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遺産分割で「相続しない」と決めるのとは違う

「自分は土地を相続しない」と決めること自体は、相続放棄をしなくても可能です。相続人が複数いる場合、遺産分割協議で「土地は他の相続人が相続し、自分は受け取らない」と話し合って決められます。

ただし、これは相続放棄とは別物です。遺産分割で土地を受け取らないと決めても、あなたは相続人のままなので、借金などのマイナスの財産は法定相続分に応じて引き継ぎます。借金からも逃れたいなら、家庭裁判所での相続放棄が必要です。

整理すると、「土地はいらないが借金もない」なら遺産分割で土地を受け取らないと決める方法で足り、「土地も借金もまとめて手放したい」なら相続放棄、という使い分けになります。どちらを選ぶかで手続きも結果も変わるため、まずは借金の有無を確認することが出発点になります。

土地を相続放棄するとどうなる?放棄した土地の行方

土地を含めて相続放棄をすると、その土地はどうなるのでしょうか。放棄した後の流れを知っておきましょう。

次の順位の相続人に相続権が移る

あなたが相続放棄をすると、相続人ではなくなります。すると、相続権(土地を含む遺産を相続する権利)は次の順位の相続人へ移ります。

法定相続人の順位は、配偶者が常に相続人となり、それ以外は子や孫などの直系卑属(第1順位)、親などの直系尊属(第2順位)、兄弟姉妹(第3順位)の順です。先の順位の人が全員放棄すると、次の順位の人が新たに相続人になり、その土地を相続するかどうかを判断することになります。

たとえば、子が全員相続放棄をすると、次は被相続人の父母へ、父母もいなければ兄弟姉妹へと、土地を含む相続権が移っていきます。自分が放棄しても、その土地が誰にも関係なくなるわけではなく、思わぬ親族のもとへ話が回ることがあります。

あとでトラブルにならないよう、放棄したことは次に相続人になる親族へ伝えておくと安心です。

なお、相続放棄をした人の子が代わりに相続人になる(代襲相続)ことはありません。子が放棄しても孫には移らず、兄弟姉妹が放棄しても甥・姪には移りません。

相続人全員が放棄したとき

相続人になれる人が全員相続放棄をすると、その土地を相続する人がいなくなります。

この場合、利害関係人などが家庭裁判所に申し立てて、相続財産清算人が選ばれます。相続財産清算人とは、相続人がいないときに、被相続人の財産を管理し、債権者への支払いなどの清算を行う人のことです。

最終的に国庫に入るまでの流れ

相続放棄した土地は最後は国庫に入る

相続財産清算人は、土地を含む財産を換価(現金化)したり、債権者へ支払ったりして清算を進めます。

清算してもなお引き取り手のない土地が残った場合、その土地は最終的に国(国庫)に帰属します。ただし、相続財産清算人を選んでもらうには申し立てや費用(予納金)が必要で、国庫に入るまでには時間がかかります。「放棄すればすぐ国が引き取ってくれる」わけではない点に注意しましょう。

申し立てには、収入印紙800円と郵便切手、官報公告料がかかります。さらに財産の内容によっては清算人の活動費用にあてる予納金が必要になり、その額は家庭裁判所が決めます。

清算人を選んでもらう手続きの流れや費用は、次の記事でくわしく解説しています。

相続放棄しても土地の管理義務は残る?

相続放棄でとくに見落とされがちなのが、土地の管理(保存)義務です。「放棄したのだから、もう関係ない」と思い込むと、思わぬ責任を問われることがあります。

民法改正後に管理(保存)義務が残るのはどんな人か

管理(保存)義務が残るのは占有していた人だけ

2023年4月の民法改正で、相続放棄後の義務の範囲が明確になりました。改正後は、放棄したときにその土地を現に占有していた人が、保存義務を負います。

ここでいう「現に占有していた人」とは、たとえばその土地に実際に住んでいた人や、自分で使っていた人を指します。遠方に住んでいて土地にまったく関わっていなかった人は、相続放棄をすればこの義務を負いません。

改正前は、相続放棄をしても「次に相続人になった人が管理を始められるまで管理を続ける」とされ、義務を負う人の範囲があいまいでした。改正後は、義務を負うのが「放棄のときに現に占有していた人」に限られると明確になり、土地に関わっていなかった相続人の負担は軽くなりました。

「みんなの法律相談」にも、買い手のつかない工場跡地について「相続放棄をしても管理義務が残り、固定資産税を払い続けることになるのか」という相談が寄せられています。

Q
土地の相続放棄 管理義務
相談者の疑問
【相談の背景】 田舎の工場跡地の広い土地 相続 固定資産税は高いが、売るにも誰も買い手がおらず困っております。 相続放棄では管理義務が残り実質なんの解決にもならない? 【質問1】 実家の工場跡地の固定資産税が年に30万ほどあります。 借金ならば自己破産など救いがありますが、これは買い手がいなければ死ぬまで払い続けないといけないということですよね?なにか救済措置はないでしょうか 【質問2】 また私だけならいいのですが、これは死んだあとも相続人に呪いのように続きますよね?例え相続人が相続放棄しても土地の管理義務が残り、固定資産税などを払っていかないといけないということですよね
弁護士の回答
杉浦 太一郎 弁護士
質問3 勉強不足でまだいまいち民法について理解できていないのですが、占有とは相続人の誰かが絶対になるものなのでしょうか? 例えば私が一人暮らしで亡くなって相続人たちは全員、別の場所で暮らしている場合は誰が私の土地を占有していることになるのでしょうか 回答3 相続人だから直ちに財産を占有していることにはなりません。相続人が誰も相続財産を占有していない状態もあり得ます。 例えば、相続財産である家屋に現に住んでいたり、相続財産である自動車に乗り続けている場合などの場合に財産を現に占有していることになります。
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義務がいつまで続くのか

保存義務は、ずっと続くわけではありません。他の相続人や、選ばれた相続財産清算人に土地を引き渡すまでの間、自分の財産と同じ程度の注意をもって保存する義務とされています。

引き渡す相手ができれば、義務から解放されます。相続人全員が放棄してしまった場合は、相続財産清算人の選任を申し立て、引き渡すことで義務を終えられます。

逆にいうと、引き渡す相手が決まるまでは保存義務が続きます。「放棄したのに、まだ実家の様子を見に行かないといけないの」と負担に感じるかもしれませんが、引き渡しまでの一時的なものと考え、早めに段取りを進めるとよいでしょう。

管理を怠ったときに問われる責任

保存義務がある人が管理を怠り、たとえば土地の崖が崩れて隣家に被害が出た、建物が倒壊して通行人にけがをさせたといった場合には、損害賠償を求められるおそれがあります。

「相続放棄したから何もしなくてよい」と放置するのは危険です。占有していた土地がある場合は、引き渡しの段取りまで意識しておきましょう。

建物(空き家)がある場合の管理義務と手放し方は、次の記事でまとめています。

相続放棄した土地の固定資産税は誰が払う?

固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に、その年度の分がかかります。1月1日より前に登記上の所有者が亡くなっているときは、その日に実際に所有している相続人などが納めます。

相続放棄をした人は、はじめから相続人でなかったことになるため、亡くなった方が生きていた年度の未払い分も、放棄した後の年度の分も、原則として支払う必要はありません。役所から納税通知書が届いたときは、相続放棄申述受理通知書などを示して、放棄したことを伝えましょう。

実際に、相続人全員が放棄した後、固定資産税の納税通知書が届いたという相談も、「みんなの法律相談」に寄せられています。

Q
放棄後の固定資産税について
相談者の疑問
【相談の背景】 父名義の土地に、元々あった建物につなげた形で、父(持分22分の3)と私(持分22分の19)の共有名義の建物 が建っています。 父が亡くなり、父の税金の滞納により父名義の土地と建物(父の持分)が差押えられていることがわかり、相続人全員放棄しました。 今年度の固定資産税の用紙が届いたのですが、土地については父のみの名前できて、建物は父と私の名前できました。 支払いについてお聞きしたいのですが、 【質問1】 放棄しているので、今の段階では、土地については支払う必要はないという認識で大丈夫でしょうか? 【質問2】 建物分についてなんですが、父の持分が差押えられている中、支払いをしてしまっても問題ないでしょうか? 支払って放棄を取消されるなどないでしょうか?
弁護士の回答
岡田 晃朝 弁護士
【質問1】 放棄しているので、今の段階では、土地については支払う必要はないという認識で大丈夫でしょうか? はい。 【質問2】 建物分についてなんですが、父の持分が差押えられている中、支払いをしてしまっても問題ないでしょうか? 支払って放棄を取消されるなどないでしょうか? 地方税法の規定により共有者全員が連帯して納付する連帯納税義務を負うこととなります。よって、全部を払っても、あなた自身の債務の支払いです。そもそもお父様の財産に手を付けなければ相続放棄が無くなるわけではありません。
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ただし、建物を亡くなった方と共有していたなど、自分自身が共有者になっている不動産の固定資産税は、放棄とは関係なく共有者として納める必要があります。

土地を相続放棄する手続きの流れ

土地を含めて相続放棄をする手続きは、家庭裁判所への申述で行います。流れと費用を確認しましょう。

相続放棄は3か月以内に家庭裁判所へ申述する

相続放棄は、自身が相続人になったことを知った日から3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述します。この3か月の期間を熟慮期間といいます。

期限内に判断できないときは、家庭裁判所に期間の延長を申し立てることもできます。

期限の数え方や延長のしかたは、次の記事でくわしく解説しています。

必要な書類

相続放棄に必要な書類は、申述する人と被相続人の関係によって変わりますが、基本的には次のものです。

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 申述人の戸籍謄本
  • 被相続人の死亡が記載された戸籍(除籍)謄本

続柄によって集める戸籍が変わるため、迷ったときは次の記事を参考にしてください。

かかる費用

費用は、収入印紙800円(申述人1人につき)と、連絡用の郵便切手代がかかります。郵便切手の金額は家庭裁判所によって異なります。戸籍の取得にも1通あたり数百円程度がかかります。

相続放棄そのものにかかる実費は、自分で手続きをすれば数千円程度に収まることが多く、手続きの負担に比べて費用は大きくありません。

弁護士や司法書士に依頼する場合の費用相場は、次の記事を参考にしてください。

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先代名義のままの土地は権利関係の確認に注意

田舎の土地などでは、登記名義が祖父母など先代のままになっていることがあります。

この場合、相続放棄そのものに登記は必要ありませんが、誰が相続人なのかを確認するために、世代をさかのぼって戸籍を集める必要が出てきます。相続関係が複雑になりやすいため、早めに権利関係を整理しておくと安心です。

なお、土地を相続して名義変更(相続登記)をする場合の流れは、次の記事で確認できます。

土地を処分すると相続放棄できなくなる

相続放棄を考えている土地を売ったり、他人に使わせる権利を設定したりすると、相続を認めた(単純承認)とみなされ、相続放棄ができなくなります。

放棄を決めるまでは、次のような行為は控えましょう。

  • 遺産分割にもとづいて、土地を自分の名義に相続登記する
  • 土地を売却する、地上権を設定する
  • 長期間の賃貸借契約を結ぶ

一方で、崩れそうな塀を補修するなど財産の現状を保つための行為(保存行為)や、短期の賃貸は処分にあたりません。迷ったら、手を付ける前に確認しましょう。

放棄の前後でうっかりしやすい行為は、次の記事でまとめて確認できます。

相続放棄せずに土地を手放す方法

「借金はないが土地だけがいらない」という場合、相続放棄をするとプラスの財産まで手放すことになります。そんなときは、相続したうえで土地だけを手放す方法も検討しましょう。

使わない土地を持ち続けると、次のような負担が続きます。

  • 固定資産税が毎年かかる
  • 草刈りや見回りなど、管理の手間と費用がかかる
  • 崖崩れや倒木で他人に損害を与えると、損害賠償を求められるおそれがある

相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう

2023年4月に始まった相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に引き取ってもらえる制度です。

一定の要件を満たし、審査を通ったうえで負担金を納めることで、いらない土地を手放せます。

ただし、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではありません。建物が建っている土地、担保(抵当権など)が設定された土地、境界がはっきりしない土地、土壌が汚染された土地などは対象外です。

費用は、申請時の審査手数料が土地1筆あたり14,000円、承認後の負担金が基本20万円です。市街化区域内の宅地・農地や森林などは、面積に応じて20万円を超えることがあります。

制度の要件や費用は、次の記事でくわしく解説しています。

売却して手放す

買い手がつく土地であれば、売却して手放すのがもっとも分かりやすい方法です。

売却するには、まず相続登記で土地の名義を相続人に変更してから、不動産会社に仲介を依頼するのが一般的です。

値段がつきにくい土地でも、あきらめる必要はありません。たとえば、自分の土地と地続きの隣地の所有者であれば、土地を広げられるメリットがあるため、買い取ってもらえることがあります。空き家付きの土地なら、空き家バンクなどの制度を活用できる地域もあります。

自治体や個人へ寄付・譲渡する

売却が難しい土地は、自治体や近隣の人へ寄付・譲渡する方法もあります。

ただし、自治体は利用予定のない土地の寄付を受け付けないことも多く、必ず引き取ってもらえるとは限りません。受け取る相手が個人や法人の場合は、贈与税などの税金がかかることもあるため、事前の確認が大切です。

相続放棄と国庫帰属・売却のどれを選ぶ?判断のポイント

借金も含めて手放したいなら相続放棄(知った日から3か月以内、預貯金なども含む全財産を手放す)、そうでなければ買い手がつく土地は売却、つかない土地は要件を満たせば審査手数料1筆14,000円と基本20万円の負担金で相続土地国庫帰属制度、満たさなければ寄付や譲渡を相談する、という選び方の図

土地を手放す方法はいくつかあります。自分の状況に合った選び方を整理しましょう。

方法

手放せる範囲

費用・期限の目安

相続放棄

土地を含む全財産(借金も)

収入印紙800円など/知った日から3か月以内

国庫帰属制度

要件を満たす土地だけ

審査手数料1筆14,000円+負担金(基本20万円)

売却

土地だけ(相続登記が先に必要)

登記費用や仲介手数料など

寄付・譲渡

土地だけ(相手が受け入れた場合)

登記費用など

借金を含めて手放したいかどうかで、まず相続放棄か、それ以外かが分かれます。相続放棄だけは3か月の期限があるため、先に判断しましょう。

相続放棄が向いているケース

借金などのマイナスの財産が多く、プラスの財産より上回っているケースでは、相続放棄が向いています。

土地だけでなく借金もまとめて手放せるため、返済義務から解放されます。ただし、預貯金などのプラスの財産も受け取れなくなる点は理解しておきましょう。

国庫帰属制度や売却が向いているケース

借金はなく、プラスの財産は受け取りたいが、土地だけがいらないというケースでは、相続放棄ではなく、相続したうえで国庫帰属制度や売却を選ぶのが向いています。

預貯金などは受け取りつつ、不要な土地だけを手放せるためです。土地に買い手がつきそうなら売却を、つきにくければ国庫帰属制度を検討する、という順で考えると分かりやすいでしょう。

たとえば、「親の預貯金は相続したいが、誰も住まない田舎の実家の土地はいらない」というケースでは、相続放棄をすると預貯金まで失ってしまいます。この場合は相続したうえで、実家を売却するか、売れなければ国庫帰属制度の利用を検討する、という流れが合っています。

借金があるかどうか、土地に値段がつくかどうかで、最適な方法は変わります。

土地を相続したあとの手続き全体は、次の記事も参考にしてください。

迷ったら弁護士に相談するメリット

相続放棄にするか、土地だけ手放すかは、借金の有無や土地の状態によって変わります。判断を迷っているうちに、3か月の期限を過ぎると相続放棄ができなくなることもあるため、早めの検討が大切です。

たとえば、「土地はいらないが借金もなさそう」と思って放置していたら、後から借金が見つかり、すでに期限を過ぎていた、というケースもあります。まずは財産の全体像を調べ、相続放棄が必要かどうかを早めに見極めましょう。

迷ったときは、相続にくわしい弁護士へ相談すると安心です。財産の調査から手続きまで任せられ、自分に合った方法を提案してもらえます。

土地の相続放棄に関するよくある質問

最後に、土地の相続放棄について多い質問にお答えします。

弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」に寄せられた相続の相談30,302件のうち、土地(農地・山林・田畑を含む)の相続放棄に触れた相談は800件でした。

内容別に見ると、放棄した後の管理や責任に関する相談が268件(33.5%)と最も多く、次いで国庫帰属制度・売却・寄付など放棄以外の手放し方が193件(24.1%)、固定資産税が126件(15.8%)でした(2021年4月1日〜2026年7月8日に投稿された相談。当社調べ、n=800)。

相続放棄した後で国庫帰属制度は使える?

使えません。国庫帰属制度を申請できるのは、相続などで土地を取得した人です。相続放棄をした人は、はじめから相続人でなかったことになり、土地を取得していないため申請できません。

国庫帰属制度を使いたい場合は、相続放棄をせずに相続したうえで申請します。どちらを選ぶかは、3か月の期限内に決めておきましょう。

農地や山林を手放すときの注意点は?

農地や山林も、土地だけを選んで相続放棄することはできません。相続したうえで手放す場合は、次の点に注意しましょう。

農地は、売却や宅地などへの転用に農業委員会の許可が必要なケースもあり、ほかの土地より手放しにくいことがあります。山林も買い手がつきにくく、管理の負担が大きい土地です。こうした扱いの難しい土地ほど、相続放棄をするか、相続して国庫帰属制度などで手放すか、早めに方針を決めておくことが大切です。

国庫帰属制度を使う場合も、農用地区域内の農地や森林は、面積に応じて負担金が20万円を超えることがあります。

農地の相続手続きについては、次の記事も参考にしてください。

生前贈与された土地は相続放棄できる?

生前贈与で受け取った土地は、贈与の時点ですでにあなたのものになっています。そのため、相続放棄をしても、生前贈与で受け取った土地を手放すことにはなりません。

相続放棄の対象は、あくまで被相続人が亡くなった時点で持っていた財産です。すでに自分のものになっている土地は、相続放棄をしてもそのまま手元に残ります。

なお、生前贈与の内容によっては、ほかの相続人の遺留分(一定の相続人に保障された最低限の取り分)が問題になることもあります。生前贈与された土地をめぐって相続人どうしで意見が分かれそうなときは、早めに弁護士に確認しておくと安心です。

まとめ

相続放棄は、土地を含むすべての財産を手放す手続きで、土地だけを選んで放棄することはできません。放棄した土地は次の順位の相続人へ移ります。全員が放棄した場合は、申し立てで選ばれた相続財産清算人が清算し、残った土地は最終的に国庫に帰属します。

放棄しても、土地を現に占有していた人には引き渡すまで保存義務が残ります。借金がなく土地だけを手放したいなら、相続したうえで国庫帰属制度・売却・寄付を検討しましょう。

借金があるか分からない、親族が土地を押し付け合っている、3か月の期限が迫っているのに方針が決まらないといったときは、早めに専門家の力を借りることが大切です。

まずは弁護士への初回相談で、相続放棄をするか、相続して土地を手放すかを確認しましょう。放棄後の管理義務への備えや、次の順位の親族への伝え方も、あわせて相談できます。

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