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更新日:2026/09/11

遺贈寄付とは【相談事例つき】メリットと手続き、注意点

監修者
永原裕也
愛知県>名古屋市
永原法律事務所
永原裕也
遺贈寄付とは【相談事例つき】メリットと手続き、注意点
遺贈寄付とは、遺言によって財産を自治体・学校・NPO法人などへ寄付することです。この記事では、遺贈寄付の主な方法とメリット・デメリット、寄付先の選び方、遺言書の作成から寄付が実行されるまでの流れ、弁護士に相談すべきケースまで、弁護士ドットコムに寄せられた遺贈寄付の相談データもふまえて解説します。
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遺贈寄付とは

遺贈寄付とは、遺言によって、亡くなった後の財産を自治体・学校・NPO法人などの団体や機関へ寄付することです。

遺言によって財産を寄付する方法

遺言書を作成すると、財産を誰に、どのように承継させるかを指定できます。家族や親族だけでなく、友人、お世話になった人、法人や団体などに財産を渡すことも可能です。

遺贈寄付では、たとえば「預貯金のうち○万円をNPO法人に遺贈する」「不動産を自治体に遺贈する」「残った財産の一定割合を公益法人に遺贈する」といった内容を遺言書に記載します。

ただし、遺言書の形式に不備があると、遺贈寄付の内容が実現できない可能性があります。特に金額、財産の特定、寄付先の正式名称、遺言執行者の指定は慎重に確認しましょう。

遺贈そのものの意味や、相続・贈与との違いについては、以下の記事でくわしく解説しています。

遺贈寄付と相続財産からの寄付の違い

遺贈寄付と似た方法として、相続人が相続した財産の中から寄付する方法があります。どちらも社会貢献につながりますが、手続きの主体やタイミングが異なります。

方法

誰が寄付するか

主な特徴

遺贈寄付

遺言者の意思に基づき、遺言執行者などが実行

生前に財産の行き先を指定できる

相続財産からの寄付

相続人など財産を取得した人

相続後に寄付するかどうかを決める

「自分の死後、この団体に財産を役立ててほしい」と明確に決めておきたい場合は、遺言書で遺贈寄付を指定する方法が向いています。一方、相続人に判断を任せたい場合は、相続後に寄付をしてもらう方法も考えられます。

遺贈寄付が注目されている背景と統計データ

遺贈寄付は、近年少しずつ認知が広がっています。一般社団法人日本承継寄付協会 / Will for Japanの2025年度調査によると、遺贈寄付の認知度は2023年が53.3%、2024年が58.6%、2025年が63.8%で、上昇傾向にあります。特に70代では84.5%が遺贈寄付を認知しているとされています。

一方で、2025年調査でも「具体的な内容まで理解している」とされる割合は7.4%にとどまっています。つまり、言葉は知っていても「どうやって行うのか」「どんな注意点があるのか」までは十分に知られていない状況です。

また、同調査では、2023年度に全国で1,142件、約643億円の遺贈寄付が実行されたとされています。日本財団の2025年調査でも、60〜79歳の男女2,000人のうち、「遺贈」という言葉の認知は64.1%、遺贈や寄付への関心層は23.1%とされています。

出典:一般社団法人日本承継寄付協会 / Will for Japan「2025年度『遺贈寄付』に関する実態調査」
日本財団「遺言・遺贈に関する意識・実態把握調査」

遺贈寄付の主な方法

遺贈寄付には、現金を寄付する方法のほか、不動産や株式などを寄付する方法もあります。どの財産を、どの範囲で寄付するかによって、必要な確認事項が変わります。

現金を寄付する

もっともわかりやすいのは、預貯金などの現金を寄付する方法です。遺言書には、寄付する金額や割合、寄付先を明確に記載します。

たとえば「○○銀行○○支店の普通預金のうち300万円を、○○法人へ遺贈する」といった形で、財産と寄付先を特定できるようにします。財産の特定があいまいだと、死後に相続人や遺言執行者が判断に迷う可能性があります。

不動産や株式などを寄付する

土地・建物・株式などを遺贈寄付することも可能です。ただし、不動産や株式は、現金よりも受け入れのハードルが高くなることがあります。

たとえば不動産は、管理費、固定資産税、売却の手間、境界や権利関係の問題などが生じるため、寄付先が受け入れを断るケースもあります。株式も、上場株式か非上場株式かによって扱いが異なります。

また、値上がりした(含み益のある)不動産・株式を「法人」へ遺贈すると、値上がり分に所得税(みなし譲渡所得課税)がかかり、遺族が準確定申告で納税することがあります。 一定の公益法人等への寄付で国税庁長官の承認など要件を満たせば非課税となる特例(租税特別措置法40条)もありますが、手続きに期限があるため、事前に寄付先や税理士に相談しておくと安心です。

財産の一部または全部を寄付する

遺贈寄付は、全財産を寄付しなければならないわけではありません。財産の一部だけを寄付することもできます。

相続人がいる場合は、相続人の生活や遺留分に配慮しながら、無理のない範囲で寄付額を決めることが重要です。財産の大部分を寄付する内容にすると、相続人とのトラブルにつながる可能性があります。

遺贈寄付のメリット

遺贈寄付には、主に以下のメリットがあります。

自分の財産を社会貢献に役立てられる

遺贈寄付をすれば、自分が亡くなった後も、財産を社会的に意義のある活動に役立ててもらえます。

寄付先は、自治体、学校、公益法人、NPO法人、医療・福祉・教育・災害支援などに取り組む団体などさまざまです。生前に支援していた団体や、人生の中で大切にしてきた分野へ財産を残すこともできます。

自分の意思で財産の使い道を決められることは、遺贈寄付の大きなメリットです。

相続人がいない場合でも財産の行き先を決められる

相続人がいない場合、遺産は一定の手続きを経て、最終的に国庫へ帰属することがあります。

しかし、遺言書で遺贈寄付を指定しておけば、自分が支援したい団体や活動に財産を引き継がせることができます。「相続人はいないが、財産の使い道は自分で決めたい」という人にとって、遺贈寄付は有力な選択肢になります。

相続人がいない方が遺贈寄付以外に生前やっておくとよいことは、次の記事でくわしく解説しています。

たとえば、身寄りのない高齢の親族の財産を社会のために役立てたいと考え、寄付先の選定を遺言執行者に任せる書き方ができるのか悩むケースもあります。

Q
寄付する遺言のしかた
相談者の疑問
【相談の背景】 95才の従兄弟ちがいが居ます、一人すまいで相続人はないです。 財産は貯金だけで、借家にすんでいます。亡くなったときの財産をどうするか本人が考えはじめました。役所手続きや火葬納骨のことは私がやることになりましたが、財産については私が遺言執行者になる遺言をしてもらおうかと考えはじめました。本人にはまだ話していません。 【質問1】 全部、遺言で社会のために寄付してはどうかと話してみようと思います。お聞きしたいのは、どこに寄付するか私にまかせてもらう遺言をすることはできるのでしょうか?増えているらしい遺言寄付です。
弁護士の回答
杉浦 太一郎 弁護士
質問1 全部、遺言で社会のために寄付してはどうかと話してみようと思います。お聞きしたいのは、どこに寄付するか私にまかせてもらう遺言をすることはできるのでしょうか?増えているらしい遺言寄付です。 回答1 寄付先が指定されていないと、相続財産を誰が取得するのか被相続人の意思が不明確であるとして、遺言の効力に影響するリスクがあります。相談者様を遺言執行者に指定して、遺言執行者に寄付先を一任するとすることは考えられなくはないですが、上記リスクがある以上あまりお勧めはできません。 どうしても相談者様が寄付先を決めたいなら、①生前に相談者様が寄付先を決めて遺言に書いてもらうか、②相談者様が一度相続財産を遺贈してもらってそれを寄付することになると思います。 質問2 いったん私に遺贈がされると相続税がかかりませんか?もし、相続税がかかるとすると私は相続人じゃないので2割増しになると思います。 回答2 相続財産が相続税の基礎控除額(3000万円+法定相続人の数×600万円)の範囲内なら、そもそも相続税は発生しないと思いますが。 心配なら、税務署または相続税専門の税理士に直接相談してみてください。 質問3 相続税なしに全部を寄付にしたいと思うのです。こんど従兄弟ちがいに話しますが、 地元の市役所やテレビで宣伝の日本財団等の福祉団体への寄付、共通の親戚で軽い精神障害のある者への遺贈等の中から遺言執行者が選んで配分する、というような遺言もやらないほうがいいですか? 回答3 上記の通りです。
すべての回答を見る

税務上のメリットがある場合がある

寄付の方法によっては、相続税の取り扱いでメリットが生じる場合があります。

相続人や受遺者が相続・遺贈で取得した財産を、相続税の申告期限(10か月以内)までに、国・地方公共団体・特定の公益法人・認定NPO法人などへ寄付すると、一定の要件を満たせば、その財産を相続税の対象としない特例があります(租税特別措置法70条)。

ポイントは、これが「相続した人がいったん取得してから寄付する」場合の特例だという点です。遺言で法人へ直接遺贈する場合は扱いが異なり、亡くなった方に所得税(みなし譲渡所得課税)がかかることがあるため、混同しないよう注意しましょう。

出典:国税庁「No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき」

遺贈寄付のデメリット・注意点

遺贈寄付にはメリットがある一方で、注意すべき点もあります。特に、相続人がいる場合や、不動産など現金以外の財産を寄付したい場合は慎重に進める必要があります。

相続人とのトラブルにつながる可能性がある

兄弟姉妹以外の相続人には、相続できる財産の最低限の取り分である「遺留分」が認められています。具体的には配偶者、子や孫などの直系卑属、父母や祖父母などの直系尊属です。

配偶者、子ども、直系尊属など遺留分を持つ相続人がいるにもかかわらず、財産の大部分を遺贈寄付に回すと、相続人が寄付先に対して遺留分侵害額請求をする可能性があります。

実際に、親が「死んだら財産は全部寄付する」と話していて、家族全員が反対しているという声もあります。

Q
遺産を全額寄付することは家族の同意なしで可能か?
相談者の疑問
【相談の背景】 父が死んだ後は遺産を全部寄付すると言っていますが、家族は全員反対しています。 【質問1】 家族の誰からの同意もなく全てを遺贈寄付することは可能なのでしょうか?
弁護士の回答
吉田 英樹 弁護士
お困りかと思いますので、お答えいたします。 遺言を残せば、可能なように思います。「遺留分 寄付」で検索し、参考程度にしてみてください。 一般的なお答えとなり恐縮ですが、ご参考に頂ければと思います。
すべての回答を見る

相続人がいる場合は、遺贈寄付の金額や割合を決める前に、遺留分を侵害しないか確認することが重要です。

遺留分の割合や計算方法については、以下の記事でくわしく解説しています。

寄付先や財産によっては受け入れられないことがある

遺贈を受ける側は、必ず財産を受け取らなければならないわけではありません。寄付先が受け入れを断ることもあります。

特に、不動産、非上場株式、管理コストのかかる財産、権利関係が複雑な財産は、寄付先の方針によって受け入れが難しい場合があります。遺言書に寄付先を書いていても、受け入れを拒否されると、希望どおりの遺贈寄付が実現できない可能性があります。

遺言書を作成する前に、寄付先へ受け入れ可否や必要書類を確認しておくことが大切です。

税金や手続きの確認が必要になる

遺贈寄付では、相続税、所得税、不動産の登記、寄付先の受領書類など、複数の手続きが関係することがあります。

たとえば、相続財産から寄付する場合に相続税の特例を受けるには、相続税の申告期限までに寄付を行い、必要書類を添付して申告する必要があります。また、寄付先や財産の種類によっては、別の税務上の検討が必要になることもあります。

さらに、遺贈寄付を名目に不透明な勧誘をする業者や団体にも注意が必要です。寄付先の活動実績、法人情報、財務情報、寄付金の使い道を確認し、不安がある場合は弁護士などに相談しましょう。

遺贈寄付先の選び方

遺贈寄付の寄付先としては、自治体、学校、NPO法人、公益法人、医療・福祉団体などが考えられます。遺産をどのように活用してほしいかを考えた上で、自分の意向に沿う寄付先を選びましょう。

支援したい分野から選ぶ

まずは、どの分野を支援したいのかを整理しましょう。

分野

寄付先の例

向いている人

教育

学校、奨学金団体

母校や若い世代を支援したい

医療・福祉

病院、福祉団体

病気・障害・介護支援に関心がある

地域貢献

自治体、地域団体

地元やゆかりのある地域に貢献したい

社会課題

NPO法人、公益法人

子ども、貧困、災害、環境などを支援したい

遺贈寄付は、金額の大きさだけでなく「どのような活動に使ってほしいか」を具体化することが重要です。

自治体・学校・NPO法人など寄付先の種類で選ぶ

自治体へ寄付すれば、地域の公共サービスやまちづくりなどに活用されることがあります。学校へ寄付すれば、教育環境の整備や奨学金などに使われる可能性があります。NPO法人や公益法人へ寄付すれば、団体が取り組む社会課題の解決に役立てられます。

ただし、同じ「NPO法人」でも、認定NPO法人かどうか、遺贈寄付を受け入れているか、どの財産を受け入れられるかは団体によって異なります。

寄付金の使い道や活動実績を確認する

寄付先を選ぶときは、団体名や知名度だけで判断せず、活動内容を確認しましょう。

確認したいポイントは、活動実績、寄付金の使途、収支報告、遺贈寄付の受け入れ実績、問い合わせ窓口の有無などです。寄付金の使い道を指定できるかどうかも、事前に確認しておくと安心です。

受け入れ可能な財産の種類を確認する

現金は受け入れ可能でも、不動産や株式は受け入れていない団体もあります。

特に不動産を寄付したい場合は、所在地、評価額、権利関係、賃貸状況、管理費用、売却可能性などを寄付先が確認することがあります。遺言書を作成する前に、寄付先へ相談し、受け入れ条件を書面やメールで確認しておくとよいでしょう。

遺贈寄付の手続きの流れ

遺贈寄付を行う場合は、寄付先を決めて遺言書に書くだけでなく、死後に実行できる状態を整えておくことが大切です。

1. 寄付したい目的と財産を整理する

まず、どのような目的で寄付をしたいのか、どの財産を寄付に充てたいのかを整理します。

預貯金、不動産、株式など、財産の種類ごとに、寄付に向いているかどうかが異なります。相続人に残す財産と、寄付に回す財産のバランスも考えましょう。

2. 寄付先候補を調べる

支援したい分野や地域をもとに、寄付先候補を調べます。自治体、学校、公益法人、認定NPO法人など、複数の候補を比較するとよいでしょう。

寄付先のウェブサイト、活動報告書、決算資料、遺贈寄付の案内ページなどを確認し、信頼できる団体かどうかを見極めます。

3. 寄付先に受け入れ可否を確認する

寄付先が決まったら、遺贈寄付を受け入れているかを確認します。

確認すべき内容は、受け入れ可能な財産の種類、最低金額の有無、寄付金の使途指定の可否、必要書類、担当窓口、正式名称などです。遺言書には寄付先を正確に記載する必要があるため、法人名や住所も確認しておきましょう。

4. 相続人の遺留分や税金を確認する

相続人がいる場合は、遺留分を侵害しないか確認します。相続人との関係性によっては、生前に意思を説明しておくことも検討しましょう。

また、相続税や所得税の扱いは、寄付先や財産の種類によって異なります。税務上の特例を使える可能性がある場合でも、申告期限や添付書類などの要件を満たす必要があります。

遺留分侵害額請求の進め方や期限については、以下の記事でくわしく解説しています。

5. 遺言書を作成する


遺贈寄付を実現するには、遺言書を作成します。主な遺言書の方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。

遺言書の種類

特徴

注意点

自筆証書遺言

自分で作成できる

方式不備に注意

公正証書遺言

公証人が作成する

費用と証人が必要

秘密証書遺言

内容を秘密にできる

実務では利用が少ない

遺贈寄付では、寄付先、財産、金額や割合、寄付の目的をできるだけ明確に書く必要があります。確実性を重視する場合は、公正証書遺言の利用を検討するとよいでしょう。

実際に、宗教法人に預貯金と金貨を遺贈寄付したいが、遺言書の書き方で気をつけるべき点は何か尋ねる相談もあります。

Q
遺贈寄付の遺言書の書き方について
相談者の疑問
【相談の背景】 遺言書についてご相談です。 私の親戚が遺言書による遺贈を考えています。 相続人はいません。 「財産」 1.銀貨、銀貨が購入時の価格で1500万円分 2.預貯金 3.不動産(農地) 4.まだ相続登記をしていない祖父名義の土地(その遺言を書こうとしている親戚に法定相続分あり) 自分の信仰する宗教法人に1と2の財産を遺贈寄付したいそうです。 遺言書の書き方として 「財産リスト記載の預貯金と銀貨、金貨を宗教法人○○に遺贈する」として財産リストをつけるという感じになるかと考えているところです。 【質問1】 財産が増える(金を買い足すなど)事を考慮して 「不動産(3の不動産)と不動産の法定相続分(4の財産)以外の全ての財産を宗教法人○○に遺贈する」という書き方をして財産リストをつけない形も問題無いですか 【質問2】 その他、宗教法人に遺贈寄付をするにあたり、書き方などで気をつけた方が良いことはありますでしょうか。
弁護士の回答
黒岩 英一 弁護士
【質問1】 財産が増える(金を買い足すなど)事を考慮して 「不動産(3の不動産)と不動産の法定相続分(4の財産)以外の全ての財産を宗教法人○○に遺贈する」という書き方をして財産リストをつけない形も問題無いですか 問題ありませんが、この場合遺言執行者の選任が必要になります。 遺言執行者をお願いする人(弁護士が良いと思います。)に確認してもらった方が良いでしょう。 【質問2】 その他、宗教法人に遺贈寄付をするにあたり、書き方などで気をつけた方が良いことはありますでしょうか。 相手方のどこに連絡するかを事前に確認しておいた方が良いでしょう。 また、相手方が受け取ってくれない可能性もありますので、その場合の対応を記載しておいた方が良いかもしれません。
すべての回答を見る

公正証書遺言の作成手順や費用については、以下の記事でくわしく解説しています。

6. 遺言執行者を指定する

遺贈寄付を確実に実行してもらうには、遺言執行者を指定することが重要です。

遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人です。親族を指定することもできますが、相続人との利害対立が予想される場合や、財産の種類が複雑な場合は、弁護士などの専門家を指定することも検討しましょう。

遺言執行者を指定していない場合、相続人が寄付手続きを進めることになります。しかし、相続人が遺贈寄付に納得していない場合や、手続きに不慣れな場合は、寄付の実行が滞る可能性があります。必要に応じて受遺者などの利害関係人が家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることもできます。

遺言執行者の権限や報酬については、以下の記事でくわしく解説しています。

7. 遺言書を保管する

遺言書を作成した後は、死後に発見されるよう適切に保管します。

自筆証書遺言の場合は、自宅で保管するほか、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する方法があります。公正証書遺言は、公証役場で原本が保管されます。

遺言書が見つからなければ、遺贈寄付は実行されません。信頼できる人や遺言執行者に、遺言書の存在や保管場所を伝えておきましょう。

8. 死後、遺言に従って寄付を実行する

遺言者が亡くなった後、遺言執行者や相続人が遺言書の内容に従って寄付を実行します。

現金であれば振り込みなどで受け渡しを行います。不動産の場合は、所有権移転登記などの手続きが必要です。寄付先が受け取りに必要な書類を求めることもあります。

相続税の特例を検討する場合は、相続税の申告期限までに寄付を完了し、必要書類をそろえる必要があります。期限に間に合うよう、死後の手続きまで見据えて準備しておきましょう。

遺贈寄付ができる主な寄付先

では、実際にどのような団体が遺贈寄付を受け入れているのでしょうか。遺贈寄付を受け入れている団体は全国に数多くあり、大学や自治体も含めれば選択肢はさらに広がります。前項で整理した「支援テーマ」「活動地域」「活動の形」という3つの視点を手がかりに、自分の想いに近い分野から候補を絞り込んでみてください。なお、ここに挙げたのはあくまで一例です。

子ども・教育

  • 一般財団法人 あしなが育英会
  • 認定NPO法人 カタリバ
  • 認定NPO法人 キッズドア
  • 認定NPO法人 フローレンス
  • 認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ

国際協力

  • 認定NPO法人 難民を助ける会(AAR Japan)
  • 認定NPO法人 ワールド・ビジョン・ジャパン
  • 認定NPO法人 ウォーターエイドジャパン

災害支援

  • 認定NPO法人 ピースウィンズ・ジャパン(空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”)
  • 公益社団法人 ピースボート災害支援センター

医療・研究

  • 公益財団法人 日本対がん協会
  • 認定NPO法人 ジャパンハート
  • 公益財団法人 京都大学iPS細胞研究財団

環境保全

  • 公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
  • 公益財団法人 日本自然保護協会

動物

  • 公益財団法人 日本盲導犬協会
  • 認定NPO法人 ピースウィンズ・ジャパン(ピースワンコ・ジャパン)

大学

  • 東京大学
  • 京都大学

自治体(ふるさと遺贈)

  • 静岡市

対応は団体によって異なります。財産を遺贈したい場合は、遺言書を作成する前に各団体の窓口へ問い合わせておくと確実です。

遺贈寄付を検討するときに弁護士へ相談すべきケース

遺贈寄付は、自分だけで進められる場合もありますが、相続人との関係や財産の内容によっては、弁護士に相談した方がよいケースがあります。

相続人がいる場合

相続人がいる場合は、遺留分や相続人の生活への影響を考える必要があります。特に、配偶者や子どもがいるのに財産の大部分を寄付する内容にすると、死後に争いが起きる可能性があります。

弁護士に相談すれば、遺留分を踏まえた寄付額の決め方や、相続人とのトラブルを避けるための遺言書の書き方について助言を受けられます。

不動産や株式を寄付したい場合

不動産や株式を遺贈寄付する場合は、名義変更、評価、税金、寄付先の受け入れ条件などを確認する必要があります。

財産の内容が複雑な場合は、弁護士だけでなく、税理士、司法書士、不動産会社などと連携して進めることが望ましいでしょう。

全財産または大部分を寄付したい場合

全財産または大部分を遺贈寄付したい場合は、相続人とのトラブルや遺留分侵害額請求のリスクが高くなります。

相続人がいない場合でも、後から親族や特別縁故者との関係が問題になることがあります。財産の行き先を確実に決めるためにも、遺言書の内容を専門家に確認してもらいましょう

遺言書の無効や相続トラブルを避けたい場合

遺言書に方式不備があると、遺贈寄付そのものが実現できない可能性があります。また、内容があいまいだと、相続人や寄付先の間で解釈が分かれることもあります。

「確実に寄付を実行してほしい」「相続人にできるだけ負担をかけたくない」という場合は、弁護士に遺言書の作成や遺言執行者への就任を依頼することを検討しましょう。

【データで見る】初回相談無料の事務所は6割超

相続弁護士ドットコムに掲載されている681事務所のうち、初回相談を無料としているのは432事務所(63%)でした。

「この財産は寄付できるのか」「遺留分を侵害していないか」を確かめるだけなら、初回相談の範囲で見通しが立つこともあります。遺言書を作る前の段階で相談しておくと安心です。

(集計:相続弁護士ドットコム掲載681事務所の料金表。料金表に「初回相談|無料」等の記載がある事務所を無料として集計。2026年8月時点・当社調べ、n=681)

遺贈寄付に関するよくある質問

遺贈寄付はお金持ちでなくてもできますか?

できます。遺贈寄付は、財産の全部を寄付する方法だけではありません。

預貯金の一部、一定の金額、財産の一定割合など、無理のない範囲で寄付できます。少額の寄付を受け入れている団体もあるため、まずは寄付先候補へ確認するとよいでしょう。

財産の一部だけを遺贈寄付できますか?

できます。たとえば「預貯金のうち100万円を寄付する」「この土地を寄付する」のように、金額や物を指定する方法(特定遺贈)が一般的です。

一方、「遺産の10%」のように遺産全体に対する割合で指定する方法(包括遺贈)は注意が必要です。受け取る側がプラスの財産だけでなく借金などの債務も割合に応じて引き継ぎ、遺産分割協議にも参加することになるため、寄付先が受け入れを断ることもあります。寄付では金額や物を指定するほうが無難で、相続人とのトラブルも避けやすくなります。

包括遺贈と特定遺贈の違いや、受け取る前に注意したい点は、次の記事でくわしく解説しています。

家族に反対されたら遺贈寄付はできませんか?

遺言者本人が有効な遺言書を作成すれば、家族の同意がなくても遺贈寄付を指定できます。

ただし、相続人の遺留分を侵害する内容だと、死後に相続人が寄付先へ遺留分侵害額請求をする可能性があります。家族との関係や生活状況に配慮しながら、寄付額や割合を決めることが大切です。

遺贈寄付をしたら相続税はかかりますか?

遺贈寄付にかかる相続税は、「誰が寄付するか」で扱いが分かれます。

  • 遺言で法人へ直接寄付(遺贈)する場合:相続税は個人にかかる税のため、法人が受け取る分に相続税は原則かかりません。
  • 相続人・受遺者が取得した財産を寄付する場合:相続・遺贈で取得した財産を、相続税の申告期限(相続開始から10か月以内)までに国・地方公共団体・特定の公益法人・認定NPO法人などへ寄付すると、一定の要件のもとその分は相続税の対象になりません(租税特別措置法70条)。

不動産を遺贈寄付できますか?

不動産を遺贈寄付することは可能です。

ただし、不動産は管理や売却に手間がかかるため、寄付先が受け入れを断ることがあります。抵当権が付いている、共有名義になっている、境界が不明確である、老朽化した建物があるといった場合は、特に注意が必要です。

まとめ

遺贈寄付は、亡くなった後の財産を自治体・学校・NPO法人などに寄付し、自分の意思で社会貢献につなげる方法です。相続人がいない場合でも財産の行き先を決められるほか、寄付先や方法によっては税務上のメリットが生じることもあります。

一方で、遺贈寄付には、相続人の遺留分、寄付先の受け入れ可否、不動産などの扱い、税金、遺言書の方式不備といった注意点があります。特に、相続人がいる場合や財産の大部分を寄付したい場合は、死後のトラブルを避けるために慎重な準備が必要です。

遺贈寄付を検討している方は、まず寄付したい目的や財産を整理し、寄付先に受け入れ可否を確認しましょう。そのうえで、弁護士や税理士などの専門家に相談しながら、希望どおりに実現できる遺言書を作成することをおすすめします。

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