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相続放棄
更新日:2026/10/22

相続放棄と生命保険【相談実例あり】受け取りの注意点

監修者
相続放棄と生命保険【相談実例あり】受け取りの注意点
「相続放棄をしたら、生命保険金までもらえなくなるの?」と不安な方へ。受取人に指定された保険金は、相続放棄をしても原則として受け取れます。この記事では、受け取ると困るお金や税金、手続きの順番を、弁護士ドットコムに寄せられた相続放棄と保険の相談386件もふまえて解説します。
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相続放棄をしても生命保険金は受け取れる

「相続放棄をしたら、生命保険金ももらえなくなるのでは」と心配になるかもしれませんが、受取人に指定された生命保険金であれば、原則としてその心配はありません。

先に結論をまとめると、次のとおりです。

  • 受取人に指定された生命保険金は、相続放棄をしても受け取れる
  • 受け取った後でも、相続放棄はできる
  • ただし、相続放棄をした人は生命保険金の非課税枠を使えない

相続放棄とは、プラスの財産も借金も、いっさい引き継がない手続きをいいます。

生命保険金は受取人固有の財産だから

受取人が指定された生命保険金は、保険会社から受取人へ直接支払われるお金です。亡くなった人(被相続人)の財産をいったん通るわけではないため、相続財産ではなく、受取人自身の固有の財産として扱われます。

相続放棄で手放すのは、あくまで被相続人の財産です。もともと受取人のものとされる生命保険金は、その対象になりません。

たとえば、夫が自身を被保険者として保険に入り、妻を受取人にしていたとします。夫が亡くなって妻が受け取る生命保険金は、妻自身の財産です。妻は相続放棄をしても、この保険金を受け取れます。

借金を相続放棄しても保険金は残せる

被相続人に多額の借金があるとき、相続放棄をすれば返済義務を引き継がずに済みます。そのうえで、受取人になっている生命保険金は手元に残せるのです。

たとえば、父が1,000万円の借金を残して亡くなり、母を受取人とする生命保険金500万円があったとします。母が相続放棄をすれば、1,000万円の借金を返す義務は負いません。それでいて、受取人である母は500万円の保険金を受け取れます。

ただし、自身が連帯保証人になっている借金は、相続放棄をしても返済義務が残ります。

相続放棄そのもののメリット・デメリットや、放棄した借金を最終的に誰が引き継ぐのかは、次の記事でくわしく解説しています。

自身が連帯保証人になっている場合の扱いは、こちらの記事で確認できます。

債権者から保険金で返済するよう求められたときの対応

相続放棄をした後に、被相続人の債権者から「受け取った保険金で返してほしい」と言われることがあります。弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」にも、「相続放棄をして生命保険金を受け取った場合、債権者に対して支払う義務を負うのか」という相談が寄せられています。

Q
相続放棄後の生命保険金の受け取りは可能ですか?
相談者の疑問
【相談の背景】 仮定の話ですがご質問させてください。 生命保険金の受け取りは相続財産に含まれないと聞きました。 被相続人に多額の負債があり 相続放棄したとします。 相続放棄した 相続人(配偶者 子)は被相続人の生命保険金は受け取れますか? 相続放棄でも 被相続人の生命保険は受け取れますか? 相続放棄して生命保険金を受け取った場合 債権者に対して法的債務を負いますか? 【質問1】 相続放棄でも 被相続人の生命保険は受け取れますか? 【質問2】 相続放棄して生命保険金を受け取った場合 債権者に対して法的債務を負いますか? 相続と保険金の受け取りは別だと 法的に債務の支払いを拒否できますか
弁護士の回答
中島 繁樹 弁護士
<相続放棄でも 被相続人の生命保険は受け取れますか?>  被相続人が生前に結んでいた生命保険契約の内容によることなのです。生命保険契約では、本人死亡のとき保険金を受け取るのが誰かということについて、受取人を指定しています。その指定された受取人が配偶者であれば、その契約の効果としてその配偶者が保険金を受け取ります。それは相続の効果として受け取るのではなく、保険契約の効果として受け取るのです。そういう保険契約の効果にしたがって受け取ることは、その受け取る人が相続を放棄した場合であっても、できるのです。 <相続放棄して生命保険金を受け取った場合 債権者に対して法的債務を負いますか?>  その受け取った人が保険契約上の「指定された受取人」であれば、被相続人の債務を引き継ぐことはありません。 <相続と保険金の受け取りは別だと法的に債務の支払いを拒否できますか>  上記の場合は、できます。  保険契約の内容として、死亡保険金の受取人が指定されていなかったり、あるいはそに契約した本人が受取人になっていたりすることがあります。そういう場合は、その死亡保険金は相続財産の一部になりますから、法定相続人の相続放棄があれば、その法定相続人は死亡保険金を受け取ることはできませんし、また、あえてそれを受け取れば、相続放棄はしなかったこととして扱われます。
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相続放棄をした人は、初めから相続人とならなかったものとみなされるため(民法939条)、被相続人の借金を返す義務はありません。受取人として受け取った生命保険金も受取人自身の財産なので、これを借金の返済に充てる必要もありません。

請求を受けたら、家庭裁判所から届いた相続放棄申述受理通知書の写しなどを示して、相続放棄をしたことを伝えましょう。その場で保険金から一部でも支払うのは避けましょう。いったん支払ったお金を後から取り戻すのは難しくなります。しつこく請求される場合は、弁護士に相談しましょう。

亡くなった親の借金を誰が払うのか、請求が来たときにすぐ払ってはいけない理由は、次の記事で解説しています。

生命保険金を受け取れるかは受取人で決まる

生命保険金を受け取れるかどうかは、保険契約で誰が受取人に指定されているかを基本に、約款(保険契約の細かなルールを定めた書面)の内容もふまえて判断します。「みんなの法律相談」に寄せられた相続放棄と保険の相談でも、「受け取れるか」「受取人は誰か」に触れたものが半数を超えます。

パターンごとに結論をまとめると、次のとおりです。

受取人の指定

相続放棄後に受け取れるか

相続放棄した本人や特定の相続人

受け取れる

「法定相続人」(人を特定せず)

受け取れる

被相続人本人

受け取れない(相続財産になる)

受取人が本人や特定の相続人なら受け取れる

多くの保険契約は、契約時に「死亡保険金の受取人:長男〇〇」のように、受取人を1人に指定しています。この場合、保険金はその人の固有の財産です。指定された人が相続放棄をしても、生命保険金は原則として受け取れます。

受取人が「法定相続人」でも受け取れる

受取人が個人名ではなく、「法定相続人」とだけ指定されているケースもあります。「みんなの法律相談」でも、兄弟3人で相続放棄をする予定の人から、受取人が「法定相続人」となっている父の生命保険金を受け取れるのかという相談が寄せられています。

Q
相続放棄後の生命保険受取人と解約手続きについて
相談者の疑問
【相談の背景】 父の財産が負債の方が多いため兄弟3人とも相続放棄する予定です。 父は生命保険と医療保険に入っていました。 【質問1】 父の生命保険の受取人が法定相続人となっています。その場合受け取りはできるのでしょうか? 医療保険は死亡保険金は無いです。 生命保険、医療保険は解約手続きをしない方が良いのでしょうか?
弁護士の回答
成田 康宏 弁護士
受取人が法定相続人となっている生命保険金を受け取ることは,相続放棄をしても可能です。これは遺産でなく受取人の固有の権利と法的には評価されるからです。  他方,相続放棄をすると,生命保険や医療保険の解約手続をする権限もなくなりますので(相続人ではないから),しない方がよい(してしまうと単純承認したとして相続放棄の無効を主張されるリスクが生じる)ということになります。
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この場合も、保険金は相続財産ではなく受取人(法定相続人)の固有の財産として扱われ、相続放棄をしても受け取れます。

受取人を単に「法定相続人」と指定した場合、特段の事情がない限り、各受取人は相続分の割合で保険金を取得するとした最高裁判例があります(最判平成6年7月18日)。ただし、契約によっては異なる扱いが定められていることもあるため、具体的な割合や請求の方法は、契約内容や約款で確認してください。

受取人が被相続人本人の場合などは相続財産になる

注意したいのは、受取人が被相続人本人に指定されているケースです。この場合の給付は、原則として被相続人の財産、つまり相続財産になります。相続放棄をした人は、この給付を相続によって受け取ることはできません。

また、受取人が指定されていない場合は、約款や法令に従って受取人・権利帰属を判断します。名称だけで決めず、契約内容を確認しましょう。

生命保険金を受け取った後でも相続放棄はできる

結論として、受取人に指定された生命保険金なら、受け取った後でも相続放棄はできます。ただし、何を受け取ったかによって結論が変わるため、ここは正確に押さえておきましょう。

保険金の受け取りは処分行為にあたらない

相続放棄では、相続財産を処分すると、相続を単純承認したものとみなされ、相続放棄が認められなくなるおそれがあります。これを法定単純承認といいます。

たとえば「みんなの法律相談」には、受取人として受け取った保険金の一部を、葬儀代などを立て替えてくれた叔父への返済に充ててしまい、相続放棄ができるか心配になった人の相談もあります。

Q
生命保険を使った場合、相続放棄ができるかについて
相談者の疑問
【相談の背景】 父が亡くなり、受取人が自分指定の生命保険が支払われました。 父の預金には一切手をつけていません。 しかし、保険金は生活費、葬儀代を立て替えてくれていた叔父にその返済の一部として50万ほど渡しています。 【質問1】 この場合相続放棄はもうできなくなりますか? それとも、生命保険の消費は相続放棄のうえでは問題ないものでしょうか?
弁護士の回答
吉田 英樹 弁護士
お困りかと思いますので、お答えいたします。 基本的に,生命保険の受取人が,こちらであった場合には,被相続人の固有財産で,相続財産ではないと考えられると思いますので,一般的に,相続放棄ができるようにも思います。念のため,保険会社にも確認しておきましょう。 一般的なお答えとなり恐縮ですが、ご参考に頂ければと思います。
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しかし、受取人固有の財産である生命保険金は、被相続人の財産ではありません。そのため、保険金を受け取っても法定単純承認にはあたらないため、原則として相続放棄ができなくなることはありません。受け取った保険金を自身の生活費などに使うことも、原則として相続放棄には影響しません。

どんな行為が単純承認とみなされるのかは、次の記事でくわしく解説しています。

相続財産を処分すると相続放棄できなくなるおそれがある

一方で、被相続人の財産を売却したり、自己のために使ったりすると、法定単純承認にあたり、相続放棄が認められなくなるおそれがあります。生命保険に関係するお金では、次のものに注意しましょう。

  • 被相続人が受け取るはずだった入院給付金など(受取人が被相続人本人の給付)
  • 被相続人が契約者の保険を解約して受け取る解約返戻金
  • 被相続人に帰属する満期保険金

たとえば、父が保険契約者・保険料負担者で、子を被保険者とする生命保険契約を継続中に父が亡くなった場合、その契約に関する権利は相続財産となることがあります。相続放棄を検討している人が勝手に契約を解約し、解約返戻金を受け取ると、法定単純承認にあたるおそれがあります。

保険会社から受け取りの手続きを案内されても、相続放棄をするなら、被相続人のお金には手をつけないことが大切です。

「みんなの法律相談」にも、相続放棄が受理された後に保険会社から医療保険の払い戻しがあると言われ、受け取らなくてよいのか迷う相談が寄せられています。

Q
相続放棄後の医療保険払い戻しの受け取りは問題ない?
相談者の疑問
【相談の背景】 去年父親が死亡し財産を調べると不確かな部分があり不安なので相続人(長男次男、父親の姉達)全員相続放棄をし受理されました。 先日保険会社から医療保険の払い戻しが僅か(3000円前後)にあると言われました。 受取る場合は書類(受取人は次男と聞きました)を書いて欲しいと言われました。 【質問1】 医療保険の払い戻しを受取る事により万が一単純承認とみなされてもいけないと思い受け取らないでおこうと思っていますが受け取らなくても問題は無いでしょうか? 【質問2】 受け取らない事によりマイナスな事はありますか。
弁護士の回答
杉浦 太一郎 弁護士
質問1 医療保険の払い戻しを受取る事により万が一単純承認とみなされてもいけないと思い受け取らないでおこうと思っていますが受け取らなくても問題は無いでしょうか? 質問2 受け取らない事によりマイナスな事はありますか。 回答1.2 受け取る義務はありません。 逆に、医療保険の返戻金は相続財産に当たる可能性があります。その場合、受け取ってしまうと、相続財産を処分したことになり、相続放棄ができなくなる危険があります(民法921条)。 (法定単純承認) 第921条次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。 一相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。 二相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。 三相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
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相続放棄の前後にやってしまうと、放棄が認められなくなる行為は、次の記事でまとめて確認できます。

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受け取った生命保険金にかかる税金

保険料を払った人が亡くなった人なら相続税で相続放棄した人は非課税枠を使えない、保険料を払った人が受取人本人なら所得税、保険料を払った人と被保険者と受取人が全員違うなら贈与税になることを示した早見の図

相続放棄をしても生命保険金を受け取れますが、「相続放棄したのだから税金もかからない」と考えるのは誤解です。民法と税法ではルールが別で、税法上は保険料を負担した人などに応じて、相続税・所得税・贈与税の対象になります。

どの税金がかかるかは、次の組み合わせで決まります。

保険料を負担した人

被保険者・受取人

かかる税金

亡くなった人

被保険者も亡くなった人

相続税

受取人本人

被保険者が亡くなった人

所得税

被保険者・受取人以外の人

3者がそれぞれ異なる

贈与税

死亡保険金はみなし相続財産として相続税の対象になる

被相続人の死亡によって取得する死亡保険金のうち、被相続人が負担した保険料に対応する部分は、税法上、みなし相続財産として相続税の対象になります。みなし相続財産とは、民法上は相続財産でなくても、相続税の計算では相続または遺贈により取得したものとみなされる財産をいいます。

そのため、相続放棄をして相続人でなくなった人でも、受け取った死亡保険金には相続税がかかることがあります。ただし、みなし相続財産を含む課税価格の合計額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下であれば、原則として相続税はかかりません。

みなし相続財産の考え方や、相続税での非課税枠の扱いは、次の記事でくわしく解説しています。

相続放棄すると非課税枠は使えない

生命保険金には、残された家族の生活を守るための非課税枠があります。金額は「500万円×法定相続人の数」で計算します。

ただし、非課税枠を使えるのは相続人が受け取った保険金だけで、相続放棄した人が受け取った保険金には適用されません。なお、枠の金額を計算するときの「法定相続人の数」には、相続放棄した人も含めます。

具体例で見てみましょう。法定相続人が子2人で、そのうち1人が相続放棄したとします。非課税枠は「500万円×2人=1,000万円」ですが、この枠を使えるのは相続人として保険金を受け取る残りの1人だけです。

相続人が受け取った保険金のうち非課税枠を超えた部分と、相続放棄した人が受け取った保険金の全額は相続税の課税対象に含めて計算します。相続税の申告が必要な場合の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。

申告期限の数え方や、過ぎたときのペナルティは、次の記事で確認できます。

所得税や贈与税がかかるケース

たとえば、妻が自身で保険料を払い、夫を被保険者、受取人も妻にしていた場合は、妻が受け取る保険金は所得税の対象です(一時金で受け取る場合は一時所得、年金形式で受け取る場合は雑所得)。一方、父が保険料を払い、母を被保険者、子を受取人にしていた場合は、3者が異なるため贈与税の対象になります。

どの税金がいくらかかるかは、契約内容や金額によって変わります。判断に迷うときや税額を正確に知りたいときは、相続にくわしい税理士に相談することをおすすめします。

相続放棄と保険金請求の進め方

保険証券で契約者と受取人を確認し、相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ相続放棄を申述し、支払事由の発生から3年で時効になる前に保険会社へ保険金を請求する3ステップを示したフロー図

相続放棄と保険金の請求は、別々の手続きです。相続放棄には3か月、保険金の請求には3年の期限があるため、次の順番で進めると取りこぼしを防げます。

保険証券で契約者と受取人を確認する

まず、保険証券で契約者(保険契約を結んだ人。通常は保険料を払う人)・被保険者(その人が亡くなると保険金が支払われる人)・受取人の3つを確認します。受取人が誰かで、受け取れるかどうかが決まり、保険料を負担した人・被保険者・受取人の組み合わせで、かかる税金が決まるためです。なお、税金は契約者の名義ではなく、実際に保険料を負担した人を基準に判断されます。

証券が見当たらないときは、契約していた保険会社に問い合わせて契約内容を確認しましょう。過去に受取人を変更していないかも、あわせて見ておくと安心です。

家庭裁判所に相続放棄を申述する

相続放棄は、原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述(書面で申し出ること)しなければなりません。保険金を受け取るかどうかとは別に、この期限は過ぎないよう気をつけましょう。

期限の数え方や、調査が間に合わないときの延ばし方は、次の記事で解説しています。

家庭裁判所に出す申述書の書き方は、記入例つきの次の記事で確認できます。

保険会社に保険金を請求する

生命保険金の請求には期限があります。保険金を請求する権利は、原則として支払事由が発生した日(被相続人の死亡など)から3年で時効により消滅します(保険法95条1項)。

「相続放棄の手続きで忙しく、保険金の請求をうっかり忘れていた」とならないよう、早めに保険会社へ連絡しましょう。

生命保険金のほかに相続放棄しても受け取れる財産

相続放棄をしても受け取れるのは、生命保険金だけではありません。受取人や受給者の固有の財産とされるものは、ほかにもあります。

相続放棄をすると何を失い、何が残るのかという全体像は、次の記事にまとめています。

死亡退職金

勤務先の就業規則や退職金規程で「遺族に支払う」と定められている場合、死亡退職金は遺族固有の財産になります。そのため、受取人に指定された人なら、相続放棄をしても受け取れます。

一方で、受取人を定めた規程がない場合は、死亡退職金が被相続人の財産(相続財産)とされ、相続放棄をすると受け取れないことがあります。勤務先の規程を確認しておきましょう。

遺族年金などの公的給付

遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)は、国の法律にもとづいて遺族の生活を守るために支給されるお金です。被相続人の財産ではないため、相続放棄をしても受給資格に影響はありません。

このほか、未支給年金や、健康保険から支給される葬祭費・埋葬料なども遺族固有の給付なので、相続放棄をしたかどうかに関係なく、要件を満たす遺族が受け取れます。

相続放棄と生命保険のよくある質問

【データで見る】相続放棄と保険の相談は「受け取れるか」が過半数

弁護士ドットコムが保有する「みんなの法律相談」に寄せられた相談のうち、相続放棄と保険の両方に触れた相談は386件ありました。このうち受取人や受け取れるかに触れた相談が201件(52%)と最も多く、税金に触れた相談は23件(6%)

弁護士ドットコムが保有する「みんなの法律相談」に寄せられた相談のうち、相続放棄と保険の両方に触れた相談は386件ありました。このうち受取人や受け取れるかに触れた相談が201件(52%)と最も多く、税金に触れた相談は23件(6%)でした。

残る162件(42%)は、保険の解約や名義変更、請求の手続きなどに関する相談です。相続放棄を考える人の多くが、まず「保険金を受け取れるか」で悩んでいることがわかります(2021年4月1日〜2026年7月8日に投稿された相談。当社調べ、n=386。割合は四捨五入)。

保険会社に相続放棄したことを伝える必要はある?

受取人が指定されている契約なら、保険会社は受取人へ保険金を支払う義務があります。そのため、相続放棄の事実をわざわざ伝える必要は、基本的にありません。

ただし、受取人が「法定相続人」とだけ指定されているなど、取り扱いに迷うケースもあります。不安があるときは、保険会社の担当者や弁護士に確認してから手続きを進めると安心です。請求に必要な書類は契約内容によって異なるため、事前に保険会社に確認しておきましょう。

保険金を受け取りたくないときはどうすればいい?

受取人として指定されていても、保険金を請求するかどうかは受取人自身が決められます。請求しなかったとしても、そのことで相続放棄に影響が出たり、被相続人の借金を負ったりすることは、原則としてありません。

ただし、保険金の請求権は原則3年で時効により消滅し、その後は受け取れなくなります。受け取らない判断は、保険会社に扱いを確認してから落ち着いて決めましょう。

受取人がすでに亡くなっているときは誰が受け取る?

指定されていた受取人が被保険者より先に亡くなり、その後に受取人の変更がされていない場合は、原則として、亡くなった受取人の相続人が新たな受取人になります(保険法46条)。受取人となる相続人が複数いるときは、その相続人らが人数で等しく分けて受け取るのが原則です(最判平成5年9月7日)。

受取人が誰になるか判断が難しいときは、保険会社や弁護士に確認しましょう。

まとめ

相続放棄をしても、受取人に指定された生命保険金は受取人固有の財産として受け取れます。受け取っても法定単純承認にはあたらないため、受け取った後でも相続放棄はできます。

ただし、受取人が被相続人本人の保険金や、被相続人名義の解約返戻金などに手をつけると、相続放棄が認められなくなるおそれがあります。また、死亡保険金はみなし相続財産として相続税の対象になり、相続放棄した人には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が使えない点にも注意が必要です。

受取人の指定があいまいで保険金を受け取れるか判断がつかないとき、債権者から保険金での返済を求められたとき、相続放棄の3か月の期限が迫っているときは、対応を誤ると受け取れるはずのお金を失ったり、放棄できなくなったりするおそれがあります。

迷ったときは、まずは弁護士への初回相談で、あなたのケースで生命保険金を受け取れるか、相続放棄をどの順番で進めるべきかを確認しましょう。

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この記事の監修者
長瀬佑志
東京都>千代田区
弁護士法人長瀬総合法律事務所東京支所
長瀬佑志(第二東京弁護士会)
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