


死亡届は、亡くなったことを知った日から7日以内に提出しなければなりません(戸籍法86条)。
死亡届とは、人が亡くなった事実を役所に届け出る手続きです。この届け出をもとに戸籍に死亡が記録され、火葬や年金、そして相続の手続きへと進んでいきます。
まずは、いつからいつまでに出せばよいのか、その数え方を正確に押さえておきましょう。
期限のスタート(起算日)は、亡くなった日そのものではなく、「死亡の事実を知った日」です。
そして戸籍の届け出では、知った当日を1日目として数えます。たとえば月曜日に死亡を知ったら、その週の日曜日が7日目(期限)という数え方です。
多くの場合、家族はその場で死亡を知るため、亡くなった日が起算日になります。離れて暮らしていて後日知ったようなときは、知った日から数えます。
7日目が役所の閉庁日(土日・祝日・年末年始)に当たることもあります。
その場合は、次に役所が開く日まで期限が延びます。あわてて夜間窓口に駆け込む必要はありません。
ただし、死亡届の受付は多くの役所で24時間対応していますので、火葬の日程が決まっているときは早めに出しておくと安心です。
被相続人(亡くなった方)が海外で亡くなった場合は、期限が異なります。
国外で死亡したときは、その事実を知った日から3か月以内に届け出ます。現地の日本大使館・領事館でも手続きできます。
日本国内で亡くなった場合の7日以内とは大きく違うので、混同しないようにしましょう。
期限は7日以内ですが、実際にはもっと早く提出するのが一般的です。
なぜなら、死亡届を出さないと火葬に必要な許可証が受け取れないからです。火葬・葬儀は亡くなってから1〜2日で行われることが多く、その前に死亡届を出すことになります。
つまり「7日ぎりぎりまで待つ」ケースはまれで、多くは葬儀の準備と並行して、亡くなった翌日ごろまでに提出します。
病院で亡くなった場合は、その場で死亡診断書を受け取り、葬儀社と日程を決めながら死亡届を出す流れが一般的です。期限を気にしすぎるより、落ち着いて葬儀の段取りとあわせて進めれば大丈夫です。
次に、誰が・どこに・何を持って死亡届を出すのかを確認しましょう。ここを知っておくと、いざというときに迷いません。
死亡届に署名する人を届出人(とどけでにん)といいます。届出人になれるのは、次のような人です。
配偶者や子など、亡くなった方と近い親族が届出人になるのが一般的です。同居していない親族でも届出人になれるので、離れて暮らす子でも問題ありません。
戸籍法では、同居の親族、その他の同居者、家主・地主・家屋管理人などの順に届け出る義務があるとされています。身近な親族が対応できないときは、こうした人が届け出ることもあります。
届出人として署名するのは親族などですが、書類を役所の窓口へ持参するのは葬儀社が代行してくれることが多くあります。
実際、葬儀の依頼をすると、葬儀社が死亡届の提出を代わりに行ってくれるのが一般的です。届出人の署名さえしておけば、提出は任せられます。
そのため、悲しみのなかで自身が役所へ走らなければならない、と気負う必要はありません。
死亡届は、次のいずれかの市区町村の役所に提出できます。
亡くなった方の本籍地が遠くても、死亡した病院の近くや、届出人が住む市区町村で提出できます。本籍地までわざわざ行く必要はありません。
死亡届を出すときは、医師が作成した死亡診断書を添えます。病気などで亡くなった場合は死亡診断書、事故などで警察が関わった場合は死体検案書になります。
死亡届の用紙は、多くの場合この死亡診断書と1枚でつながっています(左が死亡届、右が死亡診断書)。病院で受け取ったら、左側の死亡届に記入します。
このほか、届出人の印鑑を求められることもあります。事前に役所のホームページで持ち物を確認しておきましょう。
意外と見落としがちですが、提出前に死亡届(死亡診断書)のコピーを取っておくことをおすすめします。
死亡診断書は、生命保険金の請求や年金の手続きなど、あとからいろいろな場面で提出を求められます。原本は役所に出してしまうため、手元にコピーがあると再取得の手間を省けます。
コピーは数枚取っておくと安心です。原本の再発行は、医師や病院に有料で依頼することになります。
死亡届を提出すると、役所から火葬許可証が交付されます。この許可証がないと火葬ができません。
火葬許可証は火葬の当日に火葬場へ提出し、火葬後は「埋葬許可証」として返されます。納骨のときに必要になるため、大切に保管しましょう。
死亡届は葬儀の前に出すのが通常ですが、まれに提出が遅れることもあります。期限を過ぎるとどうなるのかを見ておきましょう。
まず知っておきたいのは、7日を過ぎても死亡届自体は受理されるということです。
期限を過ぎたからといって、受け付けてもらえなくなるわけではありません。ただし、遅れた理由を書いた書面(届出期間の経過に関する理由書)を、提出先の役所から求められることがあります。
ただし、期限は法律上の義務です。正当な理由なく届け出が遅れると、5万円以下の過料に処されることがあります(戸籍法137条)。
過料は刑罰ではなく行政上のペナルティですが、余計な負担になります。特別な事情がない限り、期限内に出しましょう。
死亡届が遅れると、その後の手続きも連鎖して遅れます。
たとえば年金は、受給を止める手続きをしないと、受け取り続けた分を後で返す必要が生じます。年金の受給停止は、国民年金で14日以内、厚生年金で10日以内です。
なお、日本年金機構に亡くなった方のマイナンバーが収録(登録)されている場合、市区町村に死亡届を出すと、原則として年金の受給停止手続き(年金受給権者死亡届)は不要になります。
介護保険や健康保険の資格喪失届にも期限があります。
死亡直後に必要な主な届け出と期限の目安は、次のとおりです。
手続き | 期限の目安 |
|---|---|
死亡届 | 死亡を知った日から7日以内 |
年金の受給停止 | 国民年金14日/厚生年金10日以内 |
健康保険の資格喪失 | 5日以内など |
世帯主変更届 | 14日以内 |
死亡届はこうした手続きの起点になるため、早く出すほどその後がスムーズです。期限は制度や状況で変わることがあるため、詳しくは役所の案内を確認しましょう。
前述のとおり、死亡届を出さないと火葬許可証が交付されません。
つまり、死亡届の提出は火葬・葬儀を行うための大前提です。この意味でも、実際には期限を待たず、葬儀までに提出することになります。
ここからは、死亡届が相続とどうつながるのかを見ていきます。死亡届は、単なる行政手続きではなく、相続手続きの出発点です。
死亡届を出すと、その情報が戸籍に反映され、亡くなった方は戸籍から除かれます(除籍)。
戸籍に死亡が記載されるまでには、届け出から1週間から2週間ほどかかることがあります。本籍地と違う役所に提出した場合は、情報が本籍地へ送られるため、さらに日数がかかります。
相続手続きで戸籍が必要になるときは、この反映を待つ必要がある点を覚えておきましょう。急いで手続きを進めたいときは、まず本籍地の役所に戸籍への反映状況を確認すると無駄足を防げます。
相続では、まず「誰が相続人か」を確定させる相続人調査を行います。これには、亡くなった方の出生から死亡までの一連の戸籍が必要です。
死亡が記載された戸籍(除籍謄本など)は、その出発点になります。ここから過去へさかのぼって戸籍を集め、配偶者や子など相続人を確定していきます。
相続に必要な戸籍の集め方は、次の記事でくわしく解説しています。
銀行は、口座の名義人が亡くなったことを知ると、その口座を凍結します。凍結された口座からお金を引き出したり、名義を変えたりするには、相続の手続きが必要です。
その際にも、死亡が記載された戸籍を金融機関へ提出します。死亡届が戸籍に反映されて初めて、こうした相続手続きを進められます。
戸籍一式を銀行や法務局へ何度も出すのが大変なときは、法定相続情報証明制度を使う方法もあります。戸籍の束の代わりに、1枚の証明書で相続手続きを進められます。

死亡(相続の開始)を起点に、期限のある相続手続きが動き出します。死亡届と違って数か月単位ですが、過ぎると不利になるものが多いので、早めに把握しておきましょう。
借金など負債が多いときに検討するのが相続放棄です。相続放棄とは、プラスの財産も借金も、いっさい引き継がない手続きをいいます。限定承認とは、受け継いだプラスの財産の範囲内でだけ借金を引き継ぐ手続きです。
相続放棄・限定承認は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てます。この期間を過ぎると、原則としてすべてを引き継ぐ(単純承認)扱いになります。なお、遺産調査などに時間がかかり、3か月以内に相続放棄をするかどうか決められないときは、家庭裁判所に期間延長の申し立てを行うことで期間を延ばせます。
亡くなった方に一定の収入があった場合は、代わりに所得税の申告をします。これを準確定申告といいます。
準確定申告の期限は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です。個人事業主や、不動産・年金収入が多かった方などが対象になります。
遺産が基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超えると、相続税がかかります。
相続税の申告・納付の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。配偶者の税額軽減などで税額がゼロになる場合でも、特例を使うには申告が必要です。
10か月というと余裕があるように見えますが、実際は相続人の確定や遺産分割の話し合いに時間がかかります。分割がまとまらないと使えない特例もあるため、早めに動き出すのが安心です。
これらの期限を過ぎると、相続放棄ができなくなったり、加算税・延滞税がかかったりと、不利益が生じます。
死亡届の遅れは、こうした相続の期限にも影響します。相続手続き全体の期限とスケジュールは、次の記事で一覧にまとめています。
「死亡届を出したら、相続を認めたことになって放棄できないのでは」と心配する方がいますが、その必要はありません。
死亡届は、戸籍法にもとづく届け出であって、遺産を受け取る手続きではありません。死亡届を出しても、相続を承認した(単純承認)ことにはなりません。
葬儀を行うことや、火葬許可証を受け取ることも同じで、これらをしても相続放棄はできます。安心して必要な手続きを進めて大丈夫です。
一方で、注意したいこともあります。相続放棄をするなら、亡くなった方の預貯金を使ったり、財産を処分したりしてはいけません。これらは「相続を認めた」とみなされ、放棄できなくなるおそれがあります。
相続放棄は、死亡届とは別に、家庭裁判所へ申し立てる手続きです。放棄する意思があるなら、遺産に手をつけないまま、3か月以内に手続きを進めましょう。
相続放棄の具体的な進め方は、次の記事でくわしく解説しています。
負債があるか分からない、放棄すべきか迷う、といったときは、3か月の期限を意識しつつ早めに専門家へ相談しましょう。
期限を過ぎてからでは取り返せない判断もあります。弁護士に相談すれば、負債を含めた財産の調査や、相続放棄・限定承認の見通し、期限に間に合わせる進め方まで相談できます。迷ったら、まずは初回相談で状況を整理しておくと安心です。
死亡届の提出自体に手数料はかかりません。無料で届け出できます。
ただし、医師に作成してもらう死亡診断書には文書料がかかります。金額は医療機関によって異なり、数千円から1万円程度が目安です。あとで生命保険金の請求などに使うことも多いので、必要な枚数を確認しておくとよいでしょう。
提出した死亡届の原本は、そのまま役所(本籍地)で保管されるため、原本を返してもらうことはできません。
必要なときは、「死亡届の記載事項証明書」を請求できる場合がありますが、請求できる人や理由は限られます。だからこそ、提出前にコピーを取っておくことが大切です。
提出後に誤りに気づいたときは、提出先または本籍地の役所に相談します。訂正の方法は誤りの内容によって異なります。
自己判断で書き直さず、まず役所に問い合わせましょう。戸籍に関わる訂正は、役所の指示に従って進めるのが確実です。すでに火葬許可証が出ているときや戸籍に反映されているときは、訂正の手順が変わることもあるため、早めに連絡するとスムーズです。
死亡届は、亡くなったことを知った日から7日以内(国外は3か月以内)に、本籍地・死亡地・届出人の住所地のいずれかの役所へ提出します。実際には火葬許可証を受け取るため、葬儀までに出すのが一般的です。
死亡届は相続手続きのスタート地点でもあります。死亡が戸籍に反映されて相続人調査や口座の手続きが進み、相続放棄(3か月)・準確定申告(4か月)・相続税(10か月)といった期限が動き出します。
死亡届を出しても相続放棄はできますが、遺産に手をつけると放棄できなくなることがあります。
負債があるかもしれない、相続放棄すべきか分からない、期限に間に合うか不安、といったときは、判断を誤ると後戻りできないことがあります。まずは弁護士の初回相談で、放棄すべきかや手続きの進め方を確認しておきましょう。

関東エリアを中心に、個人だけでなく企業の顧問弁護士や法務トラブルにも広く対応する。裁判所から破産管財人に選任された実績を多数持ち、自己破産や任意整理で200件以上、刑事事件で300件以上の取扱経験を有する。相続分野においては、遺産分割や遺言書作成、相続放棄など様々な案件に取り組み、遺言執行者の業務にも対応可能。複雑な問題に対しても状況に応じた迅速かつ丁寧な対応を心掛け、依頼者の権利と今後の生活を守るために尽力する。登録番号39331(東京弁護士会)