

配偶者の連れ子には、原則として相続権がありません。 被相続人の子には相続権がありますが(民法887条1項)、被相続人が連れ子の親と再婚しても、被相続人と連れ子との間に法律上の親子関係が生じるわけではありません。法律上の親子関係を生じさせるためには、別途養子縁組の手続きを行う必要があります。
したがって、養子縁組をしていない配偶者の連れ子は、ご自身の遺産を相続することができません。
弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」にも、母の再婚相手を長年支えて通帳の管理までしていたのに、養子縁組をしていなかったために、亡くなった後の手続きに関われるのかわからず困っている方から相談が寄せられています。
【データで見る】連れ子の相続で最も相談が多いのは「養子縁組」

弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」には相続分野の相談が30,302件寄せられており、そのうち連れ子に触れる相談が183件、再婚に触れる相談が963件、あわせて1,061件ありました。
テーマ別に見ると、養子縁組に関する相談が310件、相続権があるかどうかの相談が215件、遺言・遺贈が200件、遺留分が96件、生前贈与が93件、生命保険が71件、相続税・贈与税が36件、離縁が21件でした(言及ベース・複数該当あり)。
相談の多くは「養子縁組をしているかどうか」と「結局この子に相続権があるのか」に集中しています。まずは戸籍で養子縁組の有無を確認するところから始めましょう。
(集計:弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」相続分野30,302件のうち、連れ子・再婚に触れる相談1,061件。2026年8月時点・当社調べ)
配偶者の連れ子に遺産(財産)を与えるためには、主に以下の方法が考えられます。
配偶者の連れ子と養子縁組をすれば、ご自身の「子」になることに伴い、連れ子はご自身の相続に関して相続人となります。この場合、連れ子も遺産分割に参加することができます。 養子縁組をする際には、養親・養子いずれかの本籍地または届出人の所在地の区市町村役場に養子縁組届を提出しましょう。
たとえば、お互いに子どもを連れて再婚するとき、双方の子と養子縁組をする必要があるのか迷うケースもあります。
遺言書を作成すれば、ご自身の財産を自由に譲り渡すことができます(民法964条)。 配偶者の連れ子に対しても、遺言書によって包括遺贈または特定遺贈を行えば、遺産を与えることが可能です。
遺言書は、民法の方式に従って作成する必要があります。また、内容が不明確な場合や、遺言当時において遺言能力がない場合などには、遺言書が無効となってしまうおそれがあるので注意が必要です。
養子縁組と遺言書のどちらを選ぶか迷う方も少なくありません。亡くなった父の連れ子である兄にも自分と同じだけ母の財産を残したい、という相談も寄せられています。
配偶者の連れ子へ確実に遺産を与えるため、適切な内容・方式により遺言書を作成するためには、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
遺言書の作成方法については、以下の記事でくわしく解説しているので、あわせてお読みください。
相続弁護士ドットコムに掲載されている681事務所の料金表のうち、遺言書作成の料金を掲載しているのは273事務所でした。各事務所が記載した最低額を集計すると、中央値は11万円で、11万円としている事務所が158件(58%)と最も多く、次いで22万円が49件(18%)でした。
(集計:相続弁護士ドットコム掲載681事務所の料金表のうち、遺言書作成の記載がある273事務所。各事務所が料金表に記載した最低額ベース・税込表記。2026年8月時点・当社調べ。事案の内容により実際の費用は異なります)
配偶者の連れ子に対して生前贈与を行えば、早い段階から財産を活用してもらうことができます。特に連れ子が結婚や住宅の購入を控えている場合や、子育てにお金がかかる時期の場合などには、生前贈与が有力な選択肢となるでしょう。
生前贈与を行う際には、連れ子との間で贈与契約書を締結しましょう。贈与の内容を明確化することでトラブル防止に役立つほか、将来的に税務調査が行われた際にも、贈与の事実と内容を説明しやすくなります。
配偶者の連れ子に財産を与える方法としては、家族信託(民事信託)も選択肢の一つとなります。家族信託とは、委託者の家族などが受託者となって、委託者の財産を代わりに管理する仕組みです。
家族信託では、信託契約において財産の活用方法を細かく指定できます。そのため家族信託は、認知症対策や相続対策として広く活用されています。
特に配偶者の連れ子が幼い場合は、連れ子に財産を与える方法として家族信託が有用です。
たとえば配偶者を受託者として、連れ子が成人するまで財産を運用させ、成人したら連れ子に財産を交付させるなど、将来にわたる財産の活用方法を詳細に決められます。
家族信託を設定する際には、信託契約において想定を実現できる条項を過不足なく定めることが重要です。弁護士のアドバイスを受けながら、適切な内容の信託契約を作成・締結しましょう。
家族信託の仕組みやメリット・デメリットについては、以下の記事でくわしく解説しています。
生命保険に加入した上で、連れ子を保険金の受取人に指定すれば、ご自身の死後に連れ子に対して保険金が支払われます。
ただし、養子縁組をしていない連れ子は法定相続人でないため、保険会社によっては受取人に指定できないことがあるので注意が必要です。連れ子を受取人に指定できるかどうかは、あらかじめ保険会社の担当者に確認しましょう。

再婚した相手の連れ子に、財産を相続させたくないと考える方もいます。まず確認したいのは、その連れ子と養子縁組をしているかどうかです。ここで対処法は大きく変わります。
じつは、連れ子に相続権が生じるのは養子縁組をした場合だけです。養子縁組をしていなければ、連れ子はそもそも相続人ではありません。
連れ子とは、結婚相手(配偶者)の子で、自身とは血のつながりがない子をいいます。血のつながりがなく養子縁組もしていない連れ子は、法律上の「子」にあたらず、法定相続人になりません。
つまり、特別な手続きをしなくても、連れ子に遺産は渡りません。養子縁組をしていなければ、相続させたくない場合でも基本的に追加の対処は不要です。
ただし、遺言で連れ子に財産を渡す内容を書いていると、その分は連れ子に渡ります。相続させたくないなら、連れ子に財産を渡す遺言を作らないことだけ確認しておきましょう。
すでに連れ子と養子縁組している場合、その連れ子は実子と同じ相続権を持ちます。相続させたくないなら、養子縁組を解消する「離縁」という方法があります。離縁とは、養子縁組を法律上解消する手続きのことです。離縁が成立すると、連れ子(養子)の相続権はなくなります。
離縁には、主に次の2つの方法があります。
離縁は身分にかかわる重い手続きで、相手の気持ちにも大きく影響します。相続対策だけを理由に進めると関係が壊れることもあるため、慎重に検討しましょう。
養子縁組を解消しない場合でも、遺言で「財産は実子に相続させる」と指定すれば、連れ子(養子)に渡る財産を抑えられます。ただし、ここで気をつけたいのが遺留分です。
遺留分とは、配偶者や子など一定の相続人に法律で保障された、最低限の取り分をいいます。養子にも遺留分があるため、遺言で連れ子に相続させない内容にしても、遺留分にあたる分まで完全に渡さないようにはできません。
遺留分侵害額請求とは、遺留分にあたる分のお金を取り戻すよう求めることをいいます。
連れ子(養子)が遺留分侵害額請求をすると、ほかの相続人はその分のお金を支払うことになります。遺言を作るときは、遺留分を踏まえた配分にしておくと、後のトラブルを減らせます。
たとえば、弟の妻の連れ子(養子縁組済み)に自分の貯蓄や実家の土地を渡したくないと考え、遺言書の書き分け方に悩むケースもあります。
養子の相続分や相続税の取り扱いについては、以下の記事でくわしく解説しています。
配偶者の連れ子に遺産(財産)を与える際には、特に以下の2点に十分ご注意ください。
連れ子に相続させたくない場合の対処法でも説明しましたが、兄弟姉妹以外の法定相続人およびその代襲相続人には「遺留分」が認められています(民法1042条1項)。
遺留分とは、相続などによって取得できる財産の最低保障額です。実際に取得した財産の額が遺留分を下回った相続人は、財産を多く取得した人に対して遺留分侵害額請求(民法1046条1項)を行い、不足額に相当する金銭の支払いを受けられます。
配偶者の連れ子に多くの遺産を与えると、相続人の遺留分を侵害してしまうことがあります。この場合、ご自身の死後に連れ子が遺留分侵害額請求を受け、相続人との間でトラブルに発展するおそれがあるので注意が必要です。
遺留分を侵害された場合の請求方法や期限については、以下の記事でくわしく解説しています。
遺留分に関するトラブルを避けるためには、相続人の遺留分に配慮して遺産の分け方を決めることが望ましいでしょう。
弁護士ドットコムが保有する公開解決事例1,212件のうち、遺留分に言及のある事例は260件(21%)ありました。
この260件を解決手段で見ると、協議が128件(49%)と最も多く、次いで訴訟54件(21%)、調停48件(18%)、その他26件(10%)、審判4件(2%)です。
また、遺言に言及のある事例420件で見ると、協議で解決したものが214件(51%)ある一方、訴訟まで進んだものも80件(19%)ありました。
遺言書を作れば必ず円満に終わるわけではなく、5件に1件程度は訴訟まで進んでいます。連れ子に多くの財産を渡す遺言を作る場合ほど、実子や配偶者の遺留分に配慮した配分にしておくことが大切です。
(集計:弁護士ドットコムが保有する公開解決事例1,212件のうち、遺留分に言及のある260件・遺言に言及のある420件。2026年8月時点・当社調べ)
連れ子に遺産(財産)を与える際には、贈与税または相続税が課されることがあります。
贈与税と相続税のどちらが課されるかは、連れ子に財産を譲渡する方法やタイミングなどによって異なります。課される税金の金額等について、あらかじめシミュレーションを行いましょう。 贈与税や相続税の取り扱いについては、税理士にアドバイスを受けることをおすすめします。弁護士に相談すれば、連携のある税理士の紹介を受けられるでしょう。
配偶者の連れ子には原則として相続権がないので、何もしなければ遺産を相続させることができません。連れ子に財産を与えたい場合は、生前の段階から何らかの対策を行いましょう。
養子縁組・遺言書の作成・生前贈与・家族信託・生命保険など、連れ子に財産を残すためにはさまざまな方法があります。各方法のメリット・デメリットを検討した上で、どの方法が最適であるかを検討しましょう。
弁護士に相談すれば、家庭の事情や希望に応じた効果的な相続対策を提案してもらえます。配偶者の連れ子に財産を残すため、相続対策を検討している方は、一度弁護士にご相談ください。

愛知県弁護士会所属。遺言書作成から遺留分・遺産分割まで幅広く相続の対応をしている。相談者に「安心」を提供することをモットーに、司法書士・税理士や不動産・保険等の専門家とも連携し、相談者一人一人の事情に沿ったオーダーメイドの解決をしている。