

「遺言書」とは、作成者の死亡によって相続が発生した際、遺産をどのように分けるかなどを記載した書面です。
被相続人は遺言書を作成することにより、自分の財産を自由に処分できます(民法964条)。与える財産の割合を指定すること(=包括遺贈)も、特定の財産を与えること(=特定遺贈)も可能です。
被相続人が亡くなった時点で遺言書は効力を生じ、その内容に従って財産の所有権が移転します。
そのほか、遺言書には以下の内容を記載することもできます。
遺言書と同じく、自分の死後に向けた意思を表示する書面として「エンディングノート」があります。
エンディングノートは、残される家族などへの連絡事項やメッセージを記載するもので、法的効力がありません。これに対して、遺言書は、遺贈をはじめとする法律行為を内容としており、法的効力があります。
作成方式に関しても、エンディングノートには特にルールがありませんが、遺言書は民法上の方式に従って作成しなければなりません。
遺言書を作ることは必須ではありませんが、相続トラブルを予防する観点からは、作成しておくことが望ましいです。 遺言書によって相続する人が指定された遺産は、遺産分割の対象から除かれます。相続人同士でその遺産を取り合うことがなくなるので、相続トラブルの予防に繋がります。
すべての遺産について遺言書で分割方法を指定すれば、相続トラブルのリスクを最小限に抑えられるでしょう。
一方、遺言書を作成しないと、すべての遺産が遺産分割の対象となります。円満に話し合いが進めば問題ありませんが、誰がどの遺産を相続するかについて揉めてしまうケースも非常に多いです。
遺産について家族に揉めてほしくない場合は、遺言書を作成することをおすすめします。
遺言書は、民法の方式に従って作成しなければなりません(民法960条)。
民法によって認められた遺言書の方式のうち、通常用いられるものは以下の3種類です。
自筆証書遺言は、本人が全文・日付・氏名を自書し、押印して作成する遺言書です(民法968条1項)。ただし、各ページに署名・押印した財産目録を添付するときは、その目録については自書しなくても良いとされています(民法968条2項)。
手軽に作成できますが、形式不備による遺言無効や改ざん・紛失などのリスクがあります。
ただし、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、自筆証書遺言のデメリットの大部分を解決できます。
詳しくは以下の記事で解説しているので、あわせてお読みください。
関連記事:遺言書(自筆証書遺言)の書き方は?自分で作成するための例文・見本付きで詳しく解説
公正証書遺言は、公証人が作成する遺言書です(民法969条)。
公証人は、証人2名の立会いの下で、本人に対して遺言書の内容を読み聞かせて内容が正確であることを確認します。その後、本人・証人・公証人がそれぞれ署名と押印を行い、公正証書遺言を作成します。
公正証書遺言は形式面において遺言無効のリスクがほとんどなく、原本が公証役場で保管されるため、改ざんや紛失などの心配もありません。
詳しくは以下の記事で解説しているので、あわせてお読みください。
関連記事:公正証書遺言とは?メリットや作成手順、自筆証書遺言との違いについても解説
秘密証書遺言は、本人が作成した証書を封印し、その封書に公証人・証人2名・遺言者が署名・押印して作成する遺言書です(民法970条)。実務上はあまり用いられていないようです。
遺言書は、自分だけでも作成できますが、弁護士などの専門家に相談しながら作る場合もあります。
自分だけで遺言書を作成する場合は、自筆証書遺言を選択することが多いと思われます。以下の手順で自筆証書遺言を作成しましょう。
ただし、遺言書の方式に不備があると全体が無効となるほか、意味が不明確な条項なども無効になるおそれがあるので注意が必要です。遺言書の効力を確実なものとしたい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
遺言書は、法律の専門家に相談しながら作成するのが安心です。遺言書の作成サポートを依頼できる専門家としては、弁護士のほか、司法書士・行政書士などが挙げられます。
これらの専門家のうち、遺言の内容について詳しく相談でき、かつ相続トラブル発生時の対応も相談・依頼できるのは弁護士のみです。
自分の希望を適切に反映し、相続トラブルの予防にも役立つ遺言書を作成したい方は、弁護士にご相談ください。
遺言書を作成する際には、特に以下の2点に注意しましょう。
以下のような場合には、遺言書が無効になってしまいます。遺言書が無効になると、すべての遺産について遺産分割を行わなければなりません。
弁護士などのアドバイスを受けながら、適切な内容・方式によって遺言書を作成し、遺言無効のリスクを防ぎましょう。
兄弟姉妹以外の相続人には「遺留分」が認められています(民法1042条1項)。
遺留分とは、相続などによって取得できる財産の最低保障額です。遺言書による遺産の配分に大きな偏りがある場合は、一部の相続人の遺留分が侵害されることがあります。この場合、相続発生後に遺留分侵害額請求(民法1046条1項)が行われ、相続人同士のトラブルに発展しかねません。
関連記事:遺留分侵害額請求とは?
遺言書を作成する際には、相続人の遺留分に配慮する形で遺産の配分を決めることが望ましいです。どうしても一部の相続人だけに多くの財産を与えたいと希望する場合は、遺留分対策について弁護士にご相談ください。
遺言書を作成すると、自分の意思に従って遺産の分け方を決められるとともに、相続トラブルの予防にも繋がります。
遺言書の作成に当たっては、内容・方式に関してさまざまな注意点があります。弁護士に相談しながら、適切な形で遺言書を作成しましょう。
