

遺言書の作成費用は、自分で作るか、専門家に頼むかで大きく変わります。まずは全体の目安を確認しておきましょう。
作り方 | 費用の目安 | 主な内訳 |
|---|---|---|
自筆証書遺言を自宅で保管 | ほぼ0円 | 紙・ペン代のみ |
自筆証書遺言を法務局に預ける | 3,900円+書類の取得費 | 保管の手数料、住民票の写しなど |
公正証書遺言を自分で手配 | 数万円程度 | 公証人手数料(財産額で変わる)、正本・謄本代 |
弁護士に依頼 | 11万円〜+公証人手数料 | 掲載事務所259件の中央値は11万円 |
司法書士・行政書士に依頼 | 事務所ごとに異なる | 弁護士より安い傾向。業務範囲に限りあり |
信託銀行(遺言信託) | 高額になりやすい | 契約時の手数料・保管料・執行報酬 |
自分で作れば費用はほとんどかかりませんが、形式の不備で無効になるリスクや、相続人どうしのもめごとを防げるかは別の問題です。費用だけでなく、何を任せたいかで依頼先を選びましょう。

相続弁護士ドットコム掲載事務所の料金表681件のうち、遺言書作成の料金を確認できた259件を集計しました。料金表に書かれた金額の中央値は11万円で、11万円ちょうどとしている事務所が144件(56%)と半数を超えます。
金額帯で見ると、10万円超〜20万円以下が158件(61%)と最も多く、20万円超〜30万円以下が53件(20%)、10万円以下が30件(12%)、30万円超が18件(7%)でした。259件のうち136件は「11万円〜」のように下限額で示しており、遺産の額や内容によって加算されることがあります。
(当社調べ・2026年7月時点の料金表を2026年10月に集計、n=259。公証人手数料などの実費は含まない)
遺言書とは、亡くなったあとの遺産の分け方などを書き残しておく書面です。
遺言書は、民法の方式に従って作成しなければなりません。方式を守らずに作成された遺言書は、無効となってしまいます。
実務上は、自筆証書遺言と公正証書遺言のうちいずれかを作成するのが一般的です。
遺言書でできること(遺言執行者の指定や子の認知など)や種類の違いは、次の記事でまとめて確認できます。
遺言者が全文・日付・氏名を自書し、押印して作成する遺言書です。手軽に作成できるメリットがあります。
紙とペンがあれば作れるため、作成そのものに費用はかかりません。財産目録はパソコンで作ったり通帳のコピーを付けたりでき、その場合は目録の各ページに署名・押印が必要です。
ただ、方式の不備によって無効になってしまうことが非常に多いです。また、第三者による判断能力の確認なども通常行われないので、遺言能力がないことを理由に無効となってしまうこともよくあります。
また、自宅で保管する場合は、偽造・変造・紛失のリスクがある点にも注意が必要です。
法務局の自筆証書遺言書保管制度を使えば、紛失や書き換えの心配がなくなり、相続が始まったあとの家庭裁判所の検認(遺言書の状態を確認する手続き)も不要になります。ただし、法務局は内容が有効かどうかまでは確認しません。
預ける手続きの流れや必要書類は、次の記事でくわしく解説しています。
書き方は、次の記事でくわしく解説しているので、あわせてお読みください。
証人2人の立会いの下、公証人が内容を遺言者に読み聞かせた上で作成する遺言書です。公証人が作成するため無効になりにくく、変造(改ざん)や紛失などを防止できるメリットがあります。
ただ、公正証書遺言は、作成時に公証人手数料などを支払う必要があります。遺産の金額によりますが、数万円程度の費用がかかるケースが多いです。
公証人手数料は2025年10月1日から改定されています。財産を受け取る人ごとに、その人が受け取る財産の額で手数料を計算し、合計します。改定後の手数料は次のとおりです。
受け取る財産の額 | 手数料 |
|---|---|
50万円以下 | 3,000円 |
50万円超〜100万円以下 | 5,000円 |
100万円超〜200万円以下 | 7,000円 |
200万円超〜500万円以下 | 1万3,000円 |
500万円超〜1,000万円以下 | 2万円 |
1,000万円超〜3,000万円以下 | 2万6,000円 |
3,000万円超〜5,000万円以下 | 3万3,000円 |
5,000万円超〜1億円以下 | 4万9,000円 |
1億円超〜3億円以下 | 4万9,000円+5,000万円ごとに1万5,000円 |
3億円超〜10億円以下 | 10万9,000円+5,000万円ごとに1万3,000円 |
10億円超 | 29万1,000円+5,000万円ごとに9,000円 |
このほか、次の費用がかかります。
たとえば、4,000万円の財産をすべて配偶者1人に相続させる場合は、3万3,000円+遺言加算1万3,000円=4万6,000円に、正本・謄本代が加わります。
証人は2人必要で、未成年者や、相続人になる予定の人・財産を受け取る人と、その配偶者・直系血族(子や親など)は証人になれません。知人に頼めないときは公証役場で紹介を受けられますが、その場合は証人への謝礼が別にかかります(金額は公証役場に確認しましょう)。
公正証書遺言の作成に必要な書類や流れについては、次の記事でくわしく解説しているので、あわせてお読みください。
遺言書の作成サポートを依頼できる専門家としては、主に弁護士・司法書士・行政書士が挙げられます。
このほか、信託銀行の遺言信託という選択肢もあります。どこに頼んでも、公正証書にするなら公証人手数料は別にかかります。
法律事務全般を取り扱う専門家です。遺言書の作成サポートも行っており、相続トラブルのリスクを踏まえた効果的な相続対策のアドバイスを受けられます。
相続弁護士ドットコム掲載事務所の料金表で遺言書作成の料金を確認できた259件のうち、中央値は11万円でした。料金帯の分布は冒頭のデータのとおりで、10万円超〜20万円以下が6割を占めます。
半数以上の事務所が「11万円〜」のように下限額で示しており、財産が多い場合や内容が複雑な場合は加算されることがあります。公正証書にする手続きの代行や証人の手配まで料金に含まれるかも、あわせて確かめておきましょう。
参考として、2008年に実施された日本弁護士連合会のアンケート調査では、不動産・預金・株券の総額が5,000万円のケースにおける定型的な公正証書遺言の作成サポート費用につき、以下のとおり回答が分布しています。10万円から20万円で作成できるケースが多いようです。
報酬額 | 回答数 | 割合 |
|---|---|---|
10万円前後 | 492 | 50.7% |
20万円前後 | 293 | 30.2% |
30万円前後 | 123 | 12.7% |
40万円前後 | 8 | 0.8% |
50万円前後 | 20 | 2.1% |
その他 | 34 | 3.5% |
法律事務の中でも、登記手続きを中心に取り扱う専門家です。不動産の相続や遺贈を内容とする遺言書の作成について依頼できます(行政書士資格を併有する司法書士には、それ以外の遺言書の作成も依頼可能です)。
なお司法書士には、高度な法律的判断が含まれる遺言書の作成のための相談をすることはできません。
日本司法書士会連合会の報酬アンケート(2024年3月実施)では、遺言公正証書の原案づくりから公証役場への同行、証人までを引き受けた場合の報酬は、平均6万2,193円でした(有効回答738件)。金額帯ごとの回答数は次のとおりです。
報酬の金額 | 回答数(割合) |
|---|---|
5万円未満 | 256件(35%) |
5万円台 | 168件(23%) |
6万〜9万円台 | 193件(26%) |
10万円以上 | 121件(16%) |
10万円未満が8割を超え、弁護士の掲載事務所の中央値11万円より低い水準です。公証人手数料は別にかかります。不動産を相続させる遺言なら、相続が始まったあとの登記もまとめて頼めるかを含めて確認しておきましょう。
法律文書の作成を取り扱う専門家です。あらかじめ決めた遺産の分け方を反映して、遺言書の案文を作成してもらえます。なお行政書士にも、高度な法律的判断が含まれる遺言書の作成のための相談をすることはできません。
日本行政書士会連合会の報酬額統計調査(2026年1月実施、消費税込み)では、遺言書の起案と作成指導の報酬は平均7万6,855円で、最も多かった金額は5万円でした(回答459件)。金額帯ごとの回答数は次のとおりです。
報酬の金額 | 回答数(割合) |
|---|---|
4万円未満 | 118件(26%) |
4万〜6万円未満 | 105件(23%) |
6万〜10万円未満 | 90件(20%) |
10万〜20万円未満 | 129件(28%) |
20万円以上 | 17件(4%) |
2つの調査は、対象にしている業務の範囲が違います(司法書士は公証役場への同行や証人まで、行政書士は文案の作成と指導)。金額だけで単純に比べず、どこまで任せられるかをあわせて確認しましょう。割合は四捨五入しているため、合計が100%にならないことがあります。
行政書士への依頼は、決まった分け方を文案にしてもらうことが中心です。ただし、相続人どうしで争いが起きたときの交渉や代理は依頼できません。
信託銀行などの遺言信託では、契約時の基本手数料、遺言書を預けている間の保管料、相続が始まったあとの遺言執行報酬がかかります。執行報酬に最低額を定めている信託銀行もあり、財産が少ない場合は割高になりやすい点に注意しましょう。
遺言信託の費用の内訳や、向いている人は次の記事でくわしく解説しています。
遺言執行者とは、遺言の内容を実際に実現する人です。
弁護士を遺言執行者に指定する場合は、相続発生時に別途遺産から遺言執行者報酬を支払う必要があります。
「日本弁護士連合会弁護士報酬基準」(現在は廃止)によると、遺言執行者報酬の金額は以下のとおりです(実際には弁護士が自由に決めています)。
対象財産額 | 弁護士報酬 |
|---|---|
300万円以下 | 33万円 |
300万円超〜3,000万円以下 | 対象財産額の2.2%+26万4,000円 |
3,000万円超〜3億円以下 | 対象財産額の1.1%+59万4,000円 |
3億円超 | 対象財産額の0.55%+224万4,000円 |
遺言書の作成サポートを依頼する弁護士を選ぶ際には、作成自体の弁護士費用だけでなく、遺言執行者報酬についても考慮しましょう。
遺言執行者の報酬の相場や決め方、誰が支払うのかは、次の記事でくわしく解説しています。
迷ったときは、何を任せたいかで選ぶと決めやすくなります。
依頼先 | 向いているケース |
|---|---|
弁護士 | 相続人どうしでもめそう、相続後の交渉まで任せたい |
司法書士 | 不動産が中心で、相続後の登記まで頼みたい |
行政書士 | 分け方が決まっていて、文案づくりを手伝ってほしい |
信託銀行 | 保管から執行まで、金融機関にまとめて任せたい |
司法書士や行政書士に遺言書作成を依頼する場合の費用は、弁護士に依頼する場合よりも安くなる傾向にあります。ただし、司法書士や行政書士によるサポートの範囲は、弁護士よりも狭く限定されている点に注意が必要です。
また、実際の依頼費用は依頼先によって異なるので、一概に弁護士よりも司法書士・行政書士が安いとは言い切れません。正式に依頼する前に見積もりを取得し、複数の専門家を比較することをおすすめします。
4,000万円の財産をすべて配偶者1人に相続させる遺言を作る場合で、総額を比べてみます(2025年10月改定後の公証人手数料で計算)。
作り方 | 総額の目安 | 内訳 |
|---|---|---|
自筆証書遺言を法務局に預ける | 約4,000円 | 保管の手数料3,900円+住民票の写しの取得費 |
公正証書遺言を自分で手配 | 約5万円 | 公証人手数料3万3,000円+遺言加算1万3,000円+正本・謄本代 |
弁護士に依頼して公正証書にする | 約16万円〜 | 弁護士費用(掲載事務所の中央値11万円)+上記の公証人手数料 |
弁護士に頼んで公正証書にすると、総額は約16万円からが目安です。このほか、戸籍謄本や固定資産評価証明書などの書類代がかかり、公正証書で証人の紹介を受ける場合は謝礼も加わります。
弁護士費用は財産の額や内容で変わるため、見積もりで総額を確認してから依頼しましょう。
費用を抑えながら、無効やもめごとのリスクも下げるには、次の3つが役立ちます。
弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」には、「自筆で書き上げた遺言書を、法律的に有効なものになるよう弁護士に確認・修正してもらいたいが、相場はいくらか」という相談が寄せられています。
回答では、弁護士費用は自由化されており、事務所ごとに異なるとされています。
見積もりを比べるときは、金額だけでなく、公正証書にする手続きの代行、証人の手配、戸籍などの取り寄せ、遺言執行者への就任が含まれるかを確認しましょう。下限額だけで比べると、あとから加算されて総額が逆転することがあります。
遺言書によって起こりやすい相続トラブルは以下の2点です。
以下のような場合には、遺言書が無効になってしまいます。遺言書が無効になると、原則として、相続人全員で遺産の分け方を話し合う(遺産分割協議)必要があります。
弁護士などの専門家に依頼することで、アドバイスを受けながら、適切な内容・方式によって遺言書を作成することができます。せっかく作った遺言書が無効になるリスクを防ぎましょう。
遺留分とは、相続などによって取得できる財産の最低保障額です。兄弟姉妹以外の相続人には「遺留分」が認められています(民法1042条1項)。
遺言書による遺産の配分に大きな偏りがある場合は、一部の相続人の遺留分が侵害されることがあります。
たとえば、遺言書で1人に全財産を相続させることは可能ですが、他の相続人が不満を持った場合、遺産を多く取得した者に対して遺留分侵害額請求を行い、金銭の支払いを請求できます(民法1046条1項)。
こうした請求が行われると、相続人どうしのトラブルに発展しやすくなります。
そのため、遺言書を作成する際には、相続人の遺留分に配慮する形で遺産の配分を決めることが望ましいです。どうしても一部の相続人だけに多くの財産を与えたいと希望する場合は、遺留分対策について弁護士にご相談ください。
遺留分を請求された側・請求する側の流れは、次の記事が参考になります。
遺言書の作成費用は、自筆証書遺言ならほぼ0円、法務局に預けても3,900円程度です。公正証書遺言は財産の額に応じた公証人手数料がかかり、4,000万円を1人に相続させるなら約5万円が目安です。
弁護士に頼む場合、相続弁護士ドットコム掲載事務所の中央値は11万円で、遺言執行者報酬が別にかかることもあります。料金に含まれる範囲を見積もりで比べ、総額で判断しましょう。
財産の分け方で家族がもめそうなとき、特定の人に多く遺したいとき、自筆の遺言書が有効か不安なときは、自己流で進めると、かえって相続人の負担が増えることがあります。まずは弁護士への初回相談で、自身のケースに合う遺言の形と、作成費用の総額を確認しましょう。
費用が見えたら、次は中身です。自分で書くか公証役場で作るか、書いたものを法務局に預けるか、だれにいくら渡すか、書いた内容を動かす人を決めておくか。お金と同時に決めることは、次の記事であわせて確認してください。

地元密着型の弁護士です。生前整理アドバイザーの資格を有しており、終活のカウンセリングも行っています。相続問題に25年以上携わってきました。元家事調停委員です。司法書士や税理士などの専門家と連携し、ワンストップで対応が可能です。