

まずは、戸籍謄本がどんな書類なのかを押さえましょう。
戸籍とは、夫婦とその子どもを単位に、出生・結婚・死亡などの身分関係を記録した公的な帳簿です。
いつ生まれ、誰と結婚し、誰の子どもか、といった家族関係が、市区町村ごとに管理されています。
相続では、この戸籍をたどって「誰が相続人なのか」を確定します。だからこそ、戸籍謄本が欠かせません。
なお、戸籍が置かれている場所を「本籍」といいます。住所とは別の概念で、引っ越しても本籍は自動では変わりません。戸籍を取るときは、この本籍がある市区町村に請求します。
いまの戸籍はコンピュータで管理されており、その写しは正式には「戸籍全部事項証明書」と呼ばれます。
これが、いわゆる戸籍謄本(こせきとうほん)です。役所や銀行では「戸籍謄本」と言えば通じるので、呼び方の違いを気にしすぎる必要はありません。
「謄本(とうほん)」とは、原本の内容をすべて写したもの、という意味です。
戸籍謄本には、おおむね次のような内容が記載されています。これらから、家族関係のつながりが読み取れます。
以下は名古屋市名東区が見本として公開している資料です。

出典:「戸籍ってどんなことが載っているの?(名東区公式ウェブサイト)」

戸籍には「謄本」と「抄本」があり、写す範囲が違います。相続では取り違えに注意が必要です。
戸籍謄本と戸籍抄本の違いは、写す範囲にあります。
戸籍謄本は、その戸籍に入っている全員分を写したものです。これに対して戸籍抄本は、そのうちの一人分だけを写したものです。
たとえば、父・母・子の3人が入った戸籍なら、謄本は3人全員、抄本は指定した1人だけが記載されます。
戸籍抄本は、コンピュータ化された戸籍では正式には「戸籍個人事項証明書」と呼ばれます。
「抄本(しょうほん)」とは、原本の一部を抜き書きしたもの、という意味です。
パスポートの申請など、本人一人分だけを示せばよい手続きでは、抄本で足りることがあります。
相続では、戸籍謄本だけでなく「除籍謄本」「改製原戸籍」もよく出てきます。違いを整理しておきましょう。
除籍謄本(じょせきとうほん)とは、結婚・死亡・転籍などで、その戸籍に入っていた全員が抜けて、閉じられた戸籍の写しです。
戸籍は、全員がいなくなると「除籍」として保管に切り替わります。亡くなった人が最後に入っていた戸籍が、除籍になっていることもよくあります。
たとえば、子どもが全員結婚して別の戸籍に移り、最後に残った親も亡くなると、その戸籍は誰もいなくなって除籍になります。相続ではこの除籍謄本をさかのぼりの起点にすることが多いです。
弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」には、「相続手続きでは除籍謄本が必要と言われたが、その戸籍にまだ生存している家族がいる場合は、除籍の記載がある戸籍謄本が代わりになるのか」という相談が寄せられています。
必要なのは「除籍謄本という名前の書類」ではなく、被相続人の出生から死亡までのつながりと、相続人の現在の戸籍です。一部が除籍になっていても、生存している人については現在の戸籍で足りるのが一般的です。
改製原戸籍(かいせいげんこせき)とは、法律の改正で戸籍の様式を作り直す前の、古い様式の戸籍のことです。
戸籍は過去に何度か様式が変わっており、そのたびに新しい戸籍へ作り替えられています。作り替え前の古い戸籍が改製原戸籍です。
読み方から「原戸籍(はらこせき)」と呼ばれることもあります。「現戸籍(げんこせき)」と音が紛らわしいため、区別のためにこう呼ばれます。
近いところでは、戸籍をコンピュータ化したとき(多くの自治体で平成の頃)に改製が行われています。そのため、被相続人が高齢だった場合ほど、改製原戸籍をさかのぼる必要が出てきます。
戸籍に関する主な証明書を、正式名称とあわせて整理すると次のとおりです。
呼び名 | 正式名称・内容 | 相続での位置づけ |
戸籍謄本 | 戸籍全部事項証明書(全員分) | 相続人の確認に必須 |
戸籍抄本 | 戸籍個人事項証明書(一人分) | 相続では原則使わない |
除籍謄本 | 全員が抜けて閉じた戸籍 | さかのぼりで必要 |
改製原戸籍 | 様式を作り直す前の古い戸籍 | さかのぼりで必要 |
戸籍謄本と戸籍抄本の関係は、さきほどの「謄本=全員分・抄本=一人分」がそのまま当てはまります。

戸籍謄本の主な取り方は、窓口・郵送・コンビニ・広域交付の4つです。順に見ていきましょう。
もっとも確実なのは、本籍地の市区町村の窓口で取る方法です。現在の戸籍も、除籍謄本も改製原戸籍も、その市区町村のものならまとめて取れます。
窓口では、本人確認書類が必要です。本籍地が現住所と違う人も多いので、事前に本籍を確認しておきましょう。
本籍地が遠くて窓口へ行けないときは、郵送で取り寄せることができます。
請求書・本人確認書類のコピー・手数料分の定額小為替・返信用封筒を、本籍地の市区町村へ送るのが基本の流れです。
郵送での取り寄せは手順や同封物が少し細かいため、くわしい手順は、このあとの関連記事でも確認できます。
マイナンバーカードがあれば、コンビニのマルチコピー機でも戸籍謄本を取得できます。早朝や夜間でも取れて便利です。
ただし、除籍謄本や改製原戸籍は、コンビニでは取れないことが多い点に注意が必要です(自治体によって扱いが異なります)。
本籍地と住んでいる市区町村が違う場合は、事前に利用登録が必要なこともあります。相続でさかのぼって集めるときは、コンビニだけで完結しないことが多いと考えておきましょう。
なお、コンビニ交付の手数料は、窓口より数十円ほど安く設定されている自治体もあります。現在の戸籍を1通だけ取りたいときには便利な方法です。
2024年3月1日から、広域交付という制度が始まりました。本籍地が遠くても、最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できるしくみです。
相続で全国に散らばった戸籍を集めるとき、この制度を使えば、あちこちの役所に請求する手間が大きく減ります。
ただし、広域交付は郵送や代理人による請求はできず、本人が窓口へ行く必要があります。その際、マイナンバーカードや運転免許証など顔写真付きの本人確認書類が必要です。
また、広域交付を使えるのは本人・配偶者と、親や子など直系の親族に限られます。兄弟姉妹の戸籍は広域交付では取れないため、本籍地の市区町村へ請求します。
また、戸籍の附票や、コンピュータ化されていない一部の古い戸籍は対象外で、従来どおり本籍地への請求が必要です。「みんなの法律相談」にも、「広域交付で集められるのはコンピュータ化されたあとの戸籍だけで、昭和生まれの人の古い戸籍は1通ずつさかのぼるしかないのか」という相談が寄せられています。
昭和生まれの人の戸籍は、コンピュータ化される前の様式で残っていることが多く、その分だけ本籍地への個別請求が残ります。広域交付で取れた範囲を一覧にして、抜けている年代を洗い出してから請求すると、二度手間になりにくいでしょう。
広域交付の詳しい注意点は、次の記事も参考になります。
戸籍謄本を請求できるのは、本人・配偶者・直系血族(親子・祖父母と孫など)が基本です。
兄弟姉妹やその他の第三者が取るときは、正当な理由の説明と、それを裏づける資料が必要になります。だれでも自由に取れるわけではありません。
「みんなの法律相談」には、「父母が亡くなり相続手続きのために兄弟の戸籍が必要になったが、役所で『直系ではないので取れない』と言われた」という相談が寄せられています。
本人・配偶者・直系血族以外でも、自身の権利を行使するために戸籍の記載事項を確認する必要があると明らかにすれば、戸籍謄本を請求できる場合があります(戸籍法第10条の2)。窓口で断られたときは、どの相続手続きのために必要なのかを具体的に伝えて、あらためて相談してみましょう。
料金は、戸籍謄本が1通450円、除籍謄本・改製原戸籍が1通750円が一般的です。相続では何通も必要になることが多いので、まとめて取ると窓口に何度も行かずにすみます。
「みんなの法律相談」には、「22年前に取得した祖父の出生から死亡までの戸籍を、いまの相続手続きにそのまま使えるのか」という相談が寄せられています。
戸籍謄本そのものに、法律上の有効期限はありません。発行された時点の戸籍の内容を証明する書類だからです。
一方で、提出先が「発行後3か月以内」「6か月以内」などの期限を独自に設けることがあります。事前に規定を確認しましょう。

戸籍謄本は、相続のさまざまな場面で必要になります。なぜ必要なのかを押さえておきましょう。
相続の第一歩は、誰が相続人なのかを確定することです。
戸籍をたどることで、子どもの人数や、前の結婚での子ども、認知した子どもの有無などを確認できます。思わぬ相続人が見つかることもあります。
相続人を正しく確定しないまま遺産分割を進めると、あとでやり直しになりかねません。だからこそ戸籍謄本が欠かせないのです。
とくに、子どもがおらず兄弟姉妹が相続人になるケースでは、被相続人の親の代までさかのぼって戸籍を集めるため、必要な戸籍が一気に増えます。早めの着手が大切です。
「みんなの法律相談」にも、「配偶者も子もいない親戚が亡くなり兄弟5人が相続人になったが、父母の戸籍だけでなく、明治生まれの祖父母より上の代まで死亡を証明する必要があるのか」という相談が寄せられています。
兄弟姉妹が相続人になるのは、子も直系尊属もいない場合です。そのため父母だけでなく、祖父母が亡くなっていることも戸籍で示すのが原則です。
ただし、死亡が明らかな古い代については省略を認める運用もあります。まずは兄弟姉妹を確定できるところまで集め、足りない分は提出先に確認しながら追加していくとよいでしょう。
戸籍をどの順番でたどれば相続人を確定できるのか、手順を先に押さえておくと迷いにくくなります。
相続では、亡くなった被相続人について、出生から死亡までの連続した戸籍を集めるのが原則です。
死亡が記載された最後の戸籍から、結婚・転籍・様式の改製をさかのぼり、出生まで切れ目なくつなげます。除籍謄本や改製原戸籍もこの過程で必要になります。
疎遠だった人の相続では、本籍や過去の住所がわからず、戸籍を集めにくいこともあります。
「みんなの法律相談」には、「長年音信不通だった親の死亡を役所から知らされ、相続放棄の手続きを進めたいが、死亡時の住所もわからず必要書類をどう集めればよいか困っている」という相談が寄せられています。
住所がわからなくても、本籍さえたどれれば戸籍は請求できます。役所から届いた通知に本籍の記載がないか確認し、そこを起点に出生までさかのぼりましょう。本籍も不明なときは、自身の戸籍から親をたどる方法があります。
集めた戸籍の束は、法定相続情報一覧図にまとめておくと、その後の手続きで戸籍の代わりに使えて便利です。作り方は次の記事で解説しています。
集めた戸籍謄本は、次のような相続手続きで使います。
提出先ごとに原本が必要になることもあります。何通いるかを、手続きの一覧とあわせて考えておきましょう。
提出した戸籍謄本は、原本還付の手続きをすれば返してもらえることが多く、次の手続きに使い回せます。取得する通数を減らす工夫として覚えておきましょう。
不動産の名義変更では、戸籍のほかに登記申請書や遺産分割協議書もそろえます。相続登記で必要な書類は、次の記事でくわしく解説しています。
よくある質問に入る前に、戸籍についてどんな相談が多いのかをデータで確認しておきましょう。
【データで見る】戸籍のつまずきは「どこまで集めるか」と「誰が取れるか」に集中している

弁護士ドットコムが保有する「みんなの法律相談」の相続相談30,302件のうち、戸籍を主題とする相談は201件でした。
このうち相続手続きでの戸籍の取得・確認に関する111件を内容ごとに分けると、相続手続きで必要な戸籍の範囲・通数が42件ともっとも多く、次いで誰が請求できるか(相続人以外・代理)が30件でした。以下、取り方・取り寄せの手順が18件、戸籍の種類・記載の読み方が16件、有効期限・使い回しが5件と続きます。
取り方そのものより、「どこまで集めればよいか」「自身が請求できるのか」で迷う人が多いことがわかります。
(2021年4月1日~2026年7月8日に投稿された弁護士ドットコムが保有する「みんなの法律相談」の相続相談30,302件のうち、戸籍を主題とする相談201件を分類。うち相続手続きでの戸籍の取得・確認に関する111件(n=111))
戸籍謄本は家族の身分関係(出生・結婚・親子関係など)を示す書類、住民票は今どこに住んでいるかを示す書類です。
相続人が誰かを確認するには戸籍謄本、住所を証明するには住民票、と役割が分かれています。相続手続きでは両方を求められることもあります。
また、戸籍に記載された人の住所の移り変わりを示す「戸籍の附票(ふひょう)」という書類もあり、被相続人の住所の証明が必要な相続登記などで使います。
本籍地がわからないときは、本籍の記載を省略せずに住民票を取ると、本籍が確認できます。
亡くなった人の本籍がわからない場合も、住民票の除票を本籍入りで取ると手がかりになります。そこを起点に、戸籍をさかのぼって集めていきます。
「みんなの法律相談」には、「叔父の相続で相続放棄をしたいが、10数年前に離婚して疎遠だった父の本籍地がわからず、父の死亡が記載された戸籍謄本の取り方がわからない」という相談が寄せられています。
こうした場合、自身の戸籍を起点にさかのぼるのが早道です。出生時は親を筆頭者とする戸籍に入っているため、いまの戸籍をさかのぼれば、親の本籍にたどり着けます。
必要な通数は、相続財産の種類や提出先の数によって変わります。まずは、どの手続きが必要かを洗い出し、そのうえで通数を見積もると、取りすぎ・取り足りないを防げます。
目安として、被相続人の出生から死亡までの戸籍は一式そろえ、相続人それぞれの現在の戸籍謄本を1通ずつ用意すると、多くの手続きの入口に対応できます。足りない分は後から追加で取れます。
複数の金融機関や不動産の手続きを同時に進めるなら、原本を返してもらいながら順番に回すか、法定相続情報一覧図を複数枚用意しておくと、戸籍そのものを何通も取らずにすみます。
戸籍謄本とは、その戸籍に入っている全員分を写した証明書で、正式には戸籍全部事項証明書といいます。
一人分だけの戸籍抄本とは範囲が違い、相続では原則として戸籍謄本が必要です。
相続では、現在の戸籍に加えて除籍謄本・改製原戸籍もたどり、被相続人の出生から死亡までを連続してそろえます。
取り方は窓口・郵送・コンビニ・広域交付の4つで、コンビニや広域交付は取れない範囲がある点に注意しましょう。
戸籍が集まらない、相続人が思ったより多い、疎遠な親の戸籍をたどれない——こうしたときは、一人で抱え込む必要はありません。
相続人の確定を誤ると、遺産分割のやり直しなど大きな手戻りにつながることもあります。
戸籍集めや相続人の範囲に迷ったら、まずは一度、弁護士への初回相談で、自身のケースに合った進め方を確認してみましょう。

地元密着型の弁護士です。生前整理アドバイザーの資格を有しており、終活のカウンセリングも行っています。相続問題に25年以上携わってきました。元家事調停委員です。司法書士や税理士などの専門家と連携し、ワンストップで対応が可能です。