

一親等とは、自分から世代が1つ離れた、もっとも近い血族のことです。具体的には自分の父母と子が一親等にあたります。親等(しんとう)とは、親族どうしの近さを世代の数で表したもので、数字が小さいほど関係が近いことを意味します(民法726条)。
相続や戸籍、税金の手続きで「一親等の親族」という言葉が出てきたときは、まず「自分の親と子のこと」と考えれば大きく外しません。
一親等は、相続では最優先の相続人になる、相続税では2割加算の対象から外れる、戸籍も取りやすいなど、法律上いろいろな場面で有利・特別に扱われる関係です。だからこそ、自分や家族が一親等にあたるかどうかを正しく押さえておくことが大切です。
一親等にあたるのは、実の父母と子(実子)です。世代が1つだけ離れた、もっとも近い関係になります。祖父母や孫は世代が2つ離れるため一親等ではありません。
なお、養子縁組をした養子・養親も、実の親子と同じ一親等として扱われます(くわしくは後半の「迷いやすいケース」で説明します)。
夫や妻などの配偶者は、血のつながりがないため親等では数えません。配偶者は「一親等」ではなく、親等のない特別な存在です。関係が近いことを示すため便宜的に「0親等」と呼ばれることもありますが、これは正式な法律用語ではありません。
間違えやすいのが兄弟姉妹です。兄弟姉妹は、いったん共通の親までさかのぼってから数えるため、二親等になります。自分→親(一親等)→兄弟姉妹(二親等)と数えるとわかりやすいでしょう。
親等は、世代を1つたどるごとに1つずつ増えると考えると整理できます。父母や子のように直系で世代がまっすぐつながる関係は、その世代の数がそのまま親等です。親は一親等、祖父母は二親等、ひ孫は三親等になります。
兄弟姉妹やおじ・おばのような横に広がる関係(傍系)は、いったん共通の祖先までさかのぼってから数えます。兄弟姉妹なら自分→親→兄弟姉妹で二親等、おじ・おばなら自分→親→祖父母→おじ・おばで三親等です。一親等は直系の1世代だけなので、もっともシンプルに数えられます。
血族(血のつながりのある親族)を、一親等から六親等まで一覧にすると次のとおりです。
親等 | 主な血族 |
一親等 | 父母、子 |
二親等 | 祖父母、孫、兄弟姉妹 |
三親等 | 曾祖父母、ひ孫、おじ・おば、甥・姪 |
四親等 | 高祖父母、玄孫、いとこ、大おじ・大おば、甥姪の子 |
五親等 | いとこの子、おじ・おばの孫 など |
六親等 | はとこ、いとこの孫 など |
民法が定める親族は、六親等内の血族・配偶者・三親等内の姻族です(民法725条)。このうち、血のつながりがある「血族」と、結婚によってつながる「姻族(いんぞく)」の2種類があり、一親等にもそれぞれ別の人が当てはまります。
血族の一親等は、これまで見てきた実の父母と子です。血のつながりがある、もっとも近い関係で、相続でも税金でも特別に扱われる中心的な親族です。
姻族の一親等は、配偶者の父母(義父母)や、子の配偶者(嫁・婿)です。自分と血のつながりはありませんが、結婚によって生じる一親等の関係になります。
たとえば自分から見た妻の父母、夫の父母は一親等の姻族です。同じ「一親等」でも、血族(実の父母・子)か姻族(義理の父母・子の配偶者)かで、相続をはじめ法律上の扱いが大きく変わります。
ここが重要です。姻族には相続権がありません。法定相続人になれるのは配偶者と血族(子・直系尊属・兄弟姉妹)だけだからです。
そのため、義理の父母や子の配偶者は、どれだけ近くで支えてきても、当然には遺産を相続する立場にはなりません。
たとえば、義理の親を長年介護してきた嫁・婿でも、相続人にはなれないのが原則です。ただし、こうした人は特別寄与料(民法1050条)として、相続人に金銭を請求できる場合があります。介護や看病で貢献したぶんを、別の制度で一定程度カバーするしくみです。
ただし、特別寄与料の請求には期限があります。家庭裁判所に申し立てられるのは、相続の開始および相続人を知った時から6か月、または相続開始の時から1年のいずれか早いほうを経過するまでです(民法1050条2項ただし書)。
一親等の父母と子は、相続では立場が大きく異なります。子は最優先で相続人になりますが、父母は子がいないときにだけ相続人になるからです。
法定相続人になる順位は、民法で次のように決まっています。
子は第1順位で、配偶者とともに最優先で相続人になります。(民法887条1項)。父母などの直系尊属は第2順位で(民法889条1項1号)、第1順位の子がいない場合にはじめて相続人になります。
つまり同じ一親等でも、子がいれば父母は相続人になりません。一親等だから必ず相続人になる、というわけではない点に注意しましょう。相続順位の全体像は、次の記事でくわしく解説しています。
配偶者は順位の枠の外にいて、常に相続人になります(民法890条)。配偶者と子がいれば「配偶者と子」、子がいなければ「配偶者と父母」というように、配偶者は必ず加わったうえで、血族側は順位の高い人が相続人になります。
法定相続分(遺産を分ける割合の目安)も、誰と組み合わさるかで変わります。配偶者と子なら配偶者2分の1・子2分の1(子が複数なら等分)、配偶者と父母なら配偶者3分の2・父母3分の1、配偶者と兄弟姉妹なら配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1が基本です(民法900条)。
同じ一親等の父母でも、子がいるかどうかで相続人になるか・割合が変わることがわかります。
一親等であっても、相続人にならない・なれないケースがあります。
特に相続放棄をすると、その人は最初から相続人でなかったものとして扱われます(民法939条)。家庭裁判所に申述して受理された相続放棄は、熟慮期間内であっても撤回することができません(民法919条1項)。借金の有無などをよく確認してから判断することが大切です。

相続税には、一親等の血族と配偶者以外の人が財産を受け取ると、税額が2割増しになるしくみがあります(相続税法18条)。これを「2割加算」といいます。自分が加算の対象になるかどうかを確認しておきましょう。
たとえば本来100万円の相続税で済む人でも、2割加算の対象だと120万円になるイメージです。受け取る人が誰かによって、納める税額が変わってきます。
2割加算の対象にならない(加算されない)のは、配偶者と一親等の血族(父母・子)です。逆に言うと、それ以外の人——たとえば兄弟姉妹や孫、いとこ、親族以外の人などが相続や遺贈で財産を受け取ると、相続税が2割増しになります。
孫は二親等のため、原則として2割加算の対象です。たとえば祖父母が遺言で孫に財産を遺贈した場合、その孫の相続税は2割加算されます。
本来、財産は祖父母→子→孫と順に受け継がれ、その都度相続税がかかります。孫が直接受け取ると、この「子の世代の相続税」を1回飛ばせてしまうため、そのぶんを調整する意味で2割加算が設けられています。
ただし例外があります。子がすでに亡くなっていて、孫が子の代わりに相続人になった(代襲相続)場合は、その孫も「一親等の血族」に含まれるため(相続税法18条1項かっこ書)、一親等の血族と同じ扱いになり、2割加算の対象になりません。代襲相続のしくみは、次の記事が参考になります。
孫を養子にすると、その孫は一親等の血族になります。ただし、孫養子は代襲相続人である場合を除き、税法上は「一親等の血族」に含まれず、2割加算の対象です。
これは、親から子・子から孫へと順に相続すれば2回かかる相続税を、孫を養子にして一代飛ばすことで1回で済ませる——という負担の偏りを調整するための決まりです。税額が有利になるか不利になるかは家族構成や財産で変わるため、孫養子を検討するときは税理士に相談しましょう。
養子と相続の関係は、次の記事でくわしく解説しています。
血のつながり方が少し複雑なケースでは、一親等かどうかで迷いがちです。代表的なものを整理します。
養子縁組をすると、養子と養親は縁組の日から実の親子と同じ一親等の血族になります(民法727条)。養子は実子と同じく第1順位の相続人になり、相続分も実子と変わりません。
養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組があります。一般的な普通養子縁組では、養親との親子関係に加えて実の親との親子関係も残るため、養子は養親・実親の両方の相続人になり得ます。いっぽう特別養子縁組では実親との親族関係が原則として終了するため(民法817条の9)、相続人になるのは養親側だけになります。
離婚で解消されるのは配偶者どうしの関係だけで、親子の血縁は離婚しても消えません。そのため、離婚して離れて暮らす親や子も一親等のままで、相続権も残ります。「もう何年も会っていない親子でも相続人になる」のはこのためです。
親権を父母のどちらがもつかも、相続には関係しません。2026年4月1日からは離婚後も父母双方を親権者に定められるようになりましたが(令和6年法律第33号による改正民法819条)、親権の有無と相続権はもともと切り離されており、親権をもたない側の親が亡くなっても、子は一親等の相続人です。前の結婚でできた子(前妻・前夫の子)も同じで、相続のときに見落とすとトラブルになりやすいので注意しましょう。
結婚していない男女の間に生まれた子は、父が民法779条にもとづき認知することではじめて法律上の親子関係が生じ、一親等の血族として相続権を持ちます。認知されていない子は、父との法律上の親子関係がないため相続人になりません。
認知は、生前に届け出る方法のほか、遺言で認知する方法もあります(民法781条2項)。父が亡くなったあとでも、父の死亡の日から3年以内であれば、検察官を相手方として子の側から認知を求める裁判(認知の訴え)を起こすことができます(民法787条ただし書、人事訴訟法12条3項)。この3年を過ぎると請求できなくなるため、早めの確認が必要です。なお、母と子の関係は出産の事実によって当然に生じるため、認知がなくても母の相続では一親等の子として扱われます。
再婚した相手の連れ子は、養子縁組をすれば一親等の血族となり相続権を持ちますが、養子縁組をしなければ一親等の姻族にとどまり、相続権はありません。連れ子に財産を残したい場合は、養子縁組をするか、遺言で遺贈するなどの準備が必要です。
一親等は、相続以外の手続きでも基準になることがあります。
戸籍謄本は、本人のほか配偶者・直系尊属(父母・祖父母)・直系卑属(子・孫)であれば、委任状なしで請求できます(戸籍法10条)。一親等の父母・子の戸籍は、この範囲で取得できます。
いっぽう、二親等の兄弟姉妹の戸籍を取るときは、第三者請求として原則的に「正当な理由」の説明を求められます(戸籍法10条の2第1項)。相続手続きで必要なときなどは取得できますが、一親等の直系の親子に比べると取得のハードルが上がる点は知っておくとよいでしょう。
父母や祖父母など直系尊属から子・孫への贈与には、住宅取得等資金の贈与の特例(租税特別措置法70条の2)のように、一親等を含む直系の親子・祖父母孫の間でだけ使える制度があります。ただし、この特例は、令和8年(2026年)12月31日までの贈与が対象とされています。なお、教育資金の一括贈与の非課税特例(租税特別措置法70条の2の2)は、令和8年(2026年)3月31日をもって新たな拠出ができなくなりました。
また、父母と子は法律上、互いに扶養する義務を負います(民法877条1項)。そのため、扶養義務者どうしで生活費や教育費にあてるために必要なつど渡す財産には、通常必要と認められる範囲であれば贈与税がかかりません(相続税法21条の3第1項2号)。
ただし、特例が使えるか・非課税の範囲に収まるかは金額や状況で変わるため、まとまった額を渡すときや特例を使うときは、事前に税理士に確認しておきましょう。
会社の忌引き休暇は、一親等(父母・子)が亡くなったときに長めに設定されていることが多いです。親が亡くなったときと、おじ・おばが亡くなったときとで日数が違うのは、親等の近さが目安になっているためです。
ただし忌引きは法律ではなく会社ごとの慣習・規定で決まるため、具体的な日数は勤務先の就業規則を確認してください。
いいえ、孫は二親等です。自分→子(一親等)→孫(二親等)と、世代が2つ離れます。ただし子が亡くなっている場合、孫が代襲相続人として相続に加わることはあります。
意味はほぼ同じものとして使われますが、民法などの法令で使われる正式な表記は「一親等」です。「一等親」は俗な言い方で、書類や手続きでは「一親等」と書くのが無難です。会社の慶弔規定などで「一等親」と書かれていることもありますが、その場合も指している範囲は父母・子と考えてかまいません。
いいえ。内縁(事実婚)の相手は法律上の配偶者ではなく、親等もなく相続権もありません。離婚した元配偶者も、離婚により配偶者でなくなっているため相続人にはなりません。
ただし、内縁の相手や元配偶者との間に生まれた子は、認知や実親子関係があれば一親等の子として相続人になります。「親の相手」と「親との子」は分けて考える点に注意しましょう。
子も父母もいない場合は、第3順位の兄弟姉妹(二親等)が相続人になります。配偶者がいれば配偶者とともに相続します。兄弟姉妹も亡くなっている場合は、その子である甥・姪(三親等)が代襲相続人になることもあります(民法889条2項・887条2項)。
ただし兄弟姉妹側の代襲は1代限りで、甥・姪の子は相続人になりません。身近な血族がいないケースは、次の記事も参考になります。
一親等とは、自分から世代が1つ離れた父母と子のことです。配偶者は親等で数えず常に相続人になり、兄弟姉妹は二親等です。
同じ一親等でも、相続では子が第1順位、父母は第2順位で、子がいれば父母は相続人になりません。相続税では配偶者と一親等の血族は2割加算の対象外ですが、孫や孫養子は原則加算される点に注意が必要です。
養子・連れ子・認知など、血のつながり方によって扱いが変わるケースもあります。
「自分は相続人になるのか」「孫に財産を残すと税金はどうなるか」「連れ子に遺産を渡したい」など、一親等が関わる相続は判断を誤ると損をしかねません。迷ったときは、まずは初回相談で自分のケースを確認しておくと安心です。
早い段階で弁護士に相談しておくと、相続の見通しが立ち、家族間のトラブルも防ぎやすくなります。

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