

戸籍謄本は、本籍地の市区町村へ請求すれば、窓口へ行かなくても郵送で取り寄せられます。
相続手続きでは、亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの戸籍や、相続人の戸籍が必要になります。ところが本籍地は、いま住んでいる場所とは限りません。
なお、いまの戸籍の多くはコンピュータ化されており、正式には「戸籍全部事項証明書」と呼ばれます。請求書に「戸籍謄本」と書いても同じものを指すので、名称の違いは気にしなくて大丈夫です。
遠くの市区町村が本籍地だと、そのたびに窓口へ出向くのは大変です。そこで役立つのが、郵送による戸籍謄本の請求です。
郵送請求は、大きく次の流れで進みます。全体像をつかんでおくと、準備がスムーズです。
この記事では、それぞれの手順と、つまずきやすい定額小為替・切手・不備対応まで順に説明します。
郵送請求が向いているのは、本籍地が遠方にある人や、平日の日中に役所へ行けない人です。
必要な書類をそろえて封筒に入れ、本籍地の役所へ送れば、戸籍謄本が自宅などに返送されます。窓口に並ぶ必要はありません。
自分で戸籍を取るのがむずかしい場合は、コンビニ交付や、2024年3月から始まった広域交付(戸籍法120条の2)という方法もあります。広域交付を使うと、本籍地以外の役所の窓口でも、まとめて戸籍を請求できます。
ただし広域交付は窓口へ出向く前提の制度で、郵送では利用できません。また、広域交付では兄弟姉妹の戸籍は取得できず、代理人による請求もできません。請求できるのは本人・配偶者・直系尊属(親や祖父母)・直系卑属(子や孫)に限られ、窓口で運転免許証やマイナンバーカードなど顔写真付きの本人確認書類を提示する必要があります。
相続で兄弟姉妹の戸籍まで必要なときは、その分は本籍地への請求(窓口または郵送)で集めることになります。
戸籍全体の取り方の選択肢は、次の記事で整理しています。
郵送請求の送り先は、その戸籍の本籍地の市区町村です。現在の住所地の役所ではありません。
同じ人でも、結婚や転籍で本籍地が変わっていることがあります。相続で古い戸籍までさかのぼるときは、本籍地が複数の市区町村にまたがることも珍しくありません。
本籍地が分からないときは、本籍の記載がある住民票(本籍地入りの住民票)を取ると確認できます。送り先の住所は、各市区町村のホームページで「戸籍 郵送請求」と調べると、担当課の宛先が案内されています。

郵送で戸籍謄本を請求するときは、次の4つを封筒に入れて送ります。
どれか一つでも欠けると、役所で受け付けてもらえず返送されることがあります。順番に見ていきましょう。
交付請求書は、各市区町村のホームページからダウンロードして印刷します。「(市区町村名)戸籍 郵送請求」で検索すると、専用の請求書と記入例が見つかります。
専用の様式が見つからないときは、便箋(びんせん)に必要事項を手書きしても受け付けてもらえます。書く内容は請求書と同じで、本籍・筆頭者・必要な戸籍の種類と通数・請求者の氏名住所などです。
請求できるのは、その戸籍に記載されている本人と、その配偶者・直系尊属(親や祖父母)・直系卑属(子や孫)です(戸籍法10条1項)。除籍謄本・改製原戸籍謄本についても同じ範囲です(同法12条の2)。
兄弟姉妹の戸籍など、これに当たらない戸籍を相続手続きのために請求するときは「第三者請求」(戸籍法10条の2第1項)となり、請求書に「相続手続きのため」と理由を具体的に書いたうえで、自分が相続人であることが分かる戸籍などの資料を求められることがあります。
請求する人が本人であることを確かめるため、本人確認書類のコピーを同封します。
マイナンバーカード(表面)や運転免許証など、顔写真付きのものが1点あれば足ります。顔写真付きの書類がない場合は、資格確認書や年金証書など2点を求められることがあるので、送り先の役所の案内を確認しましょう。
現住所が確認できるよう、書類は今の住所が記載された面をコピーします。返送先も、原則としてこの本人確認書類に記載された住所になります。
戸籍謄本の手数料は、現金ではなく定額小為替(ていがくこがわせ)で支払うのが一般的です。定額小為替とは、郵便局で買える金券のようなもので、現金を郵送する代わりに使います。
現金を郵便で送るときは書留(現金書留)にしなければならないと定められており(郵便法17条)、これに反すると30万円以下の罰金の対象になり得ます(同法84条1項)。現金書留にすると、そのぶん費用もかさみます。そのため、多くの役所が定額小為替での支払いを案内しています。
金額や買い方には少しコツがあるため、このあとの「定額小為替の準備のしかた」でくわしく説明します。
戸籍謄本を返送してもらうため、切手を貼った返信用封筒を同封します。封筒には、自分の住所と氏名(返送先)をあらかじめ書いておきます。
戸籍謄本はA4サイズで、数枚になることもあります。長形3号(定形郵便に使える細長い封筒)に三つ折りで入るのが一般的です。
切手の料金は郵便物の重さで決まります。2024年10月の料金改定で、定形郵便物は50gまで一律110円になりました(2026年8月時点)。取り寄せる通数が多く重くなりそうなときは、少し多めに切手を貼るか、返信用封筒の目安を役所に確認しておくと安心です。

定額小為替は、郵送請求でつまずきやすいポイントです。金額と枚数の考え方を押さえておきましょう。
定額小為替は、郵便局(ゆうちょ銀行)の貯金窓口で購入できます。50円から1,000円まで、12種類の金額が用意されています。
貯金窓口は平日の日中が中心で、土日や夕方以降は取り扱いのない局もあります。買いに行くタイミングにも気をつけましょう。
注意したいのが手数料です。定額小為替は、額面とは別に、1枚につき200円の発行手数料がかかります。
たとえば450円の戸籍を1通取るなら、450円分の定額小為替(1枚)を買うのに、額面450円+手数料200円=650円を窓口で支払います。手数料は枚数に対してかかるので、なるべく少ない枚数で必要額をそろえると無駄がありません。
定額小為替には有効期限があり、発行日から6か月です。買ってから使わずに長く置かないようにしましょう。
手数料は、取り寄せる戸籍の種類で決まっています。「地方公共団体の手数料の標準に関する政令」で標準額が定められており、全国の多くの市区町村で同じ金額です。
ただし、手数料そのものは各市区町村の条例で定められるため、事前にホームページで確認しておくのが良いです。
戸籍の種類 | 1通あたりの手数料 |
|---|---|
戸籍謄本(現在の戸籍) | 450円 |
除籍謄本 | 750円 |
改製原戸籍謄本 | 750円 |
除籍謄本とは、その戸籍にいた人が全員抜けて(死亡・結婚・転籍など)閉じられた戸籍のことです。改製原戸籍(かいせいげんこせき)とは、法改正で戸籍の様式が新しくなる前の、古い様式の戸籍をいいます。
相続で出生までさかのぼると、この除籍謄本や改製原戸籍が何通も必要になります。1通450円で済むとは限らない点に注意しましょう。
郵送請求で困るのが、「その人の戸籍が何通あるか、事前には分からない」ことです。
古い戸籍は、転籍や法改正のたびに新しく作り直されています。一人の出生から死亡までをたどると、2通で足りる人もいれば、5通、6通と続く人もいます。
そこで実務では、手数料を少し多めに同封するのが定番です。多くの役所は、請求書に「不足があれば連絡してほしい」「余った定額小為替は返却してほしい」と書けば対応してくれます。余った定額小為替はそのまま返送されるので、多めに入れても損はしません。
小額の定額小為替(100円など)を数枚まぜて入れておくと、役所が金額を調整しやすくなります。
交付請求書は、役所が「誰の・どの戸籍を・何通」出せばよいか判断するための書類です。次の3つのポイントを正確に書きましょう。
まず、必要な戸籍の本籍と筆頭者を書きます。筆頭者とは、その戸籍のいちばん上に記載されている人のことで、戸籍の見出しにあたります。
本籍と筆頭者は、住所や世帯主とは違います。本籍が分からないときは、本籍入りの住民票で確認しておきましょう。
次に、請求する人(自身)の氏名・住所・生年月日・日中つながる電話番号を書きます。被相続人との続柄(子・孫・兄弟姉妹など)も忘れずに記入します。続柄は、役所が「その戸籍を請求できる人か」を確認するために必要です。
戸籍を請求する理由を書く欄には、「相続手続きのため」と記入します。
自分や配偶者、直系(親・子・祖父母・孫)の戸籍は、理由をくわしく書かなくても請求できます。一方、兄弟姉妹など直系でない人の戸籍を相続のために取るときは、理由の記載が求められます。
「◯◯(被相続人名)の相続手続きに使う」ことが伝わるように書けば十分です。相続関係によっては、あなたが相続人だと分かる戸籍の提示を求められることもあります。
どの戸籍を何通ほしいのかを、具体的に書きます。ここが不明確だと、役所も戸籍を出せません。
相続では、「被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍」という書き方がよく使われます。こう書いておけば、役所がその役所にある範囲の除籍・改製原戸籍もまとめて出してくれます。
たとえば「被相続人 ◯◯ の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍を各1通」と書けば、担当者が該当分をそろえてくれます。相続人自身の現在戸籍が必要なときは、それも同じ請求書に書き足せます。
その役所より前の本籍地の戸籍は、返ってきた戸籍を見て、次の本籍地へあらためて請求します。相続で戸籍をどこまで集めるか全体の流れは、次の記事も参考になります。
書類を送ったあと、どのくらいで届くのか、急ぐときや不備があったときはどうするのかを確認しておきましょう。
戸籍謄本が手元に届くまでの日数は、送り先の役所やその時期の混み具合で変わります。
郵便が往復する日数に、役所での処理日数が加わるため、投函してから1週間から10日ほどを見ておくと安心です。年度替わりの3月〜4月など、役所が混み合う時期はさらにかかることがあります。
相続では、出生から死亡までさかのぼる過程で、本籍地が変わっているたびに請求を繰り返します。前の本籍地の戸籍が届いてから次を請求するため、全部そろうまでに数週間かかることも珍しくありません。
相続放棄(3か月以内。民法915条1項)や相続税の申告(10か月以内。相続税法27条1項)、相続登記(3年以内。不動産登記法76条の2)など、期限のある手続きに使うときは、時間に余裕をもって早めに請求しておきましょう。
少しでも早く受け取りたいときは、速達を使います。
速達にするときは、往復の両方(送る封筒と返信用封筒の両方)を速達にする必要があります。返信用封筒を普通郵便のままにすると、戸籍は通常の速さで返ってきます。
速達にするには、通常の郵便料金に速達料金を追加します。2026年8月時点の速達料金は、250gまでで300円(1kgまでは400円)が基本料金に加算されます。返信用封筒にも、速達分を上乗せした切手を貼っておきましょう。封筒の表に赤い線を引くと、速達だと分かりやすくなります。
同封した定額小為替が足りなかったり、書類に不備があったりすると、戸籍はすぐには発行されません。
多くの役所は、不足や不備があると請求書に書いた電話番号へ連絡してくれます。連絡がつかないと手続きが止まってしまうため、日中つながる電話番号を必ず書いておきましょう。
不足分の定額小為替を追送するか、いったん書類一式が返送されることもあります。二度手間を防ぐには、あらかじめ手数料を多めに入れ、本人確認書類のコピーや返信用封筒の切手もれがないか、投函前にもう一度確認するのが確実です。
返送される戸籍謄本の重さで決まります。数枚程度で定形郵便(長形3号など)に収まるなら、50gまで110円が目安です。
取り寄せる通数が多く、封筒が厚く重くなりそうなときは、定形外郵便になり料金が上がります。重さが読めないときは少し多めに切手を貼るか、送り先の役所に返信用封筒の目安を確認しておくと安心です。
配偶者や直系(親・子・祖父母・孫)が自分で請求するときは、委任状は必要ありません(本人確認書類は必要です)。一方、これらの人に代わって別の人が請求するときは、代理権を明らかにする書面として(戸籍法10条の3第2項)、原則として委任状が必要です。
たとえば、友人や遠い親族に取り寄せを頼む場合は、請求できる本人が署名した委任状を同封します。行政書士や司法書士、弁護士などの専門家に相続人調査ごと依頼する方法もあります。
返信にレターパックを使えるかどうかは、役所によって扱いが分かれます。対応している役所もあれば、封筒+切手を指定する役所もあります。
追跡や到着日数を重視したいときは、送り先の役所のホームページで、返信方法にレターパックが使えるか確認しましょう。使える場合は、宛先を書いたレターパックを同封します。
一度の請求で「出生から死亡まで」と書けば、その役所にある分はまとめて出してもらえます。ただし、本籍地が途中で別の市区町村に変わっている場合、前の本籍地の戸籍は、そちらの役所へあらためて請求が必要です。
窓口へ行ける人であれば、2024年3月に始まった広域交付を使うと、本籍地以外の窓口でも出生から死亡までの戸籍をまとめて請求できます。ただし郵送では使えないため、郵送で集めるときは本籍地ごとに請求を重ねます。
集めた戸籍を相続手続きのたびに提出せずに済ませたいときは、法定相続情報証明制度を使う方法もあります。
戸籍謄本は、本籍地の市区町村へ、交付請求書・本人確認書類のコピー・定額小為替・切手付きの返信用封筒を郵送すれば取り寄せられます。
手数料は戸籍謄本1通450円、除籍・改製原戸籍は1通750円で、定額小為替1枚につき200円の発行手数料がかかります。相続では通数が読めないため、手数料は多めに入れておくと安心です。
届くまでは1週間から10日ほどが目安です。急ぐときは往復とも速達にし、不備の連絡に備えて電話番号を必ず書いておきましょう。
戸籍を集めていくと、「相続人が思っていた人と違う」「兄弟姉妹や甥姪までさかのぼる必要がある」「古い戸籍が読めず、集め切れているか不安」といった場面が出てきます。相続人の範囲を読み違えると、遺産分割をやり直すことにもなりかねません。
そうしたときは、まずは弁護士の初回相談で、誰の戸籍がどこまで必要か、相続人の範囲に見落としがないかを確認しておきましょう。戸籍の収集や相続人調査そのものを依頼することもできます。

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