


相続登記にかかる費用は、大きく分けて次の3種類です。まずはこの全体像をつかんでおくと、自分のケースで何にいくらかかるかが見えてきます。
つまり、自分でやれば①と②だけ、専門家に依頼すると①〜③がかかるという構造です。総額の目安は、不動産の評価額や依頼の有無によって数万円〜数十万円と幅があります。まずは自分のケースがどれに当てはまるかを意識しながら読み進めてください。
相続登記には、亡くなった方の戸籍や相続人の住民票などの書類が必要です。これらを役所で取り寄せる実費で、1通あたり数百円程度ですが、集める通数によっては数千円〜1万円程度になることもあります。具体的にどの書類が必要かは、遺言書の有無や相続のしかた(遺産分割協議・法定相続など)によって変わります。
特に、被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべてさかのぼって集める必要があるため、転籍や結婚を繰り返している場合は通数が増えます。最近は法定相続情報一覧図を作っておくと、銀行や法務局など複数の手続きで戸籍の束を何度も出さずに済み、結果的に手間と費用を抑えられます(一覧図の交付自体は無料)。
登録免許税は、登記の際に国へ納める税金です。相続登記の場合は固定資産税評価額の0.4%で、自分でやっても依頼しても必ずかかる費用です。3種類の費用のなかでも、不動産の評価額が高いほど大きくなりやすい部分です。金額の決まり方は後ほど詳しく説明します。
手続きを司法書士や弁護士に依頼した場合の報酬です。これは依頼したときだけかかる費用で、自分で手続きすれば発生しません。相場は後述します。
3種類のうち、①公的書類の取得費用と②登録免許税は、自分でやっても依頼しても必ずかかる費用です。一方、③専門家費用だけは「依頼するかどうか」で発生の有無が変わります。費用を抑えられるかどうかは、主にこの③をどうするかにかかっています。

まず、「自分でやる」場合と「専門家に依頼する」場合で、費用や手間がどう違うのかを比べてみましょう。
項目 | 自分でやる場合 | 司法書士などに依頼する場合 |
かかる費用 | 公的書類の取得費用+登録免許税 | 左記+専門家報酬(目安5〜15万円) |
手間 | 書類集め・申請を自分で行う | ほぼ任せられる |
ミスのリスク | 書類不備で補正・やり直しの可能性 | 専門家が確認するため低い |
ケースがシンプル(相続人が少ない・不動産が1つ)なら自分でやって費用を抑えやすく、相続人が多い・不動産が複数・遺産分割でもめている場合は専門家に依頼するほうが安全です。自分でやる手順を詳しく知りたい場合は、こちらもご覧ください。
自分でやると報酬5〜15万円を節約できますが、平日に法務局や役所へ行く時間が必要で、書類の不備があれば補正のためにやり直しになります。「節約できる金額」と「かかる手間・ミスのリスク」を天秤にかけて決めるのがポイントです。
目安として、自分でやる場合は実費の数万円程度、依頼する場合はそれに報酬5〜15万円が加わるイメージです(不動産の評価額が高ければ登録免許税も増えます)。まずはこの大枠をつかんでおくと、見積りを見たときに高い・安いの判断がしやすくなります。
自分で手続きをする場合にかかるのは、①公的書類の取得費用と②登録免許税の2つです。専門家への報酬がかからない分、総額を大きく抑えられるのが自分でやる最大のメリットです。それぞれの目安を見ていきましょう。
相続登記には、相続関係を証明する書類が必要です。金額は自治体や時期により異なることがありますが、主な目安は次のとおりです。
書類 | 費用の目安(1通) |
戸籍謄本 | 450円 |
除籍謄本・改製原戸籍謄本 | 750円 |
住民票(除票)・印鑑証明書 | 300円程度 |
登記事項証明書 | 480〜600円 |
固定資産評価証明書 | 300〜400円程度 |
被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべて集めるため、通数が多くなると合計で数千円〜1万円程度になることもあります。郵送で取り寄せる場合は、別途郵送費・定額小為替の手数料もかかります。必要書類の詳細は、こちらが参考になります。
なお、申請書は自分で作成できます。書き方の見本を知りたい場合は、こちらもあわせてご覧ください。

自分でやる場合でも、登録免許税は必ずかかります(専門家に依頼した場合と金額は同じです)。これは税金なので、自分でやっても安くなるわけではない点を押さえておきましょう。
登録免許税は、固定資産税評価額 × 0.4%で計算します。固定資産税評価額は、市区町村から届く固定資産税の課税明細書や、評価証明書で確認できます。購入価格や時価ではなく、あくまで「固定資産税評価額」を使う点に注意しましょう。
土地と建物の両方を相続する場合は、それぞれの評価額を合計してから0.4%を掛けます。また、複数の不動産があるときは全部の評価額を合算して計算します。マンションの場合は、専有部分に加えて敷地権(土地の持分)の評価額も含めるため、見落とさないようにしましょう。
計算の際は、課税価格は1,000円未満を切り捨て、税額は100円未満を切り捨てます(最低1,000円)。たとえば評価額が1,000万円の土地なら、登録免許税は4万円です。評価額別の早見表は次のとおりです。
固定資産税評価額 | 登録免許税(0.4%) |
500万円 | 2万円 |
1,000万円 | 4万円 |
2,000万円 | 8万円 |
3,000万円 | 12万円 |
5,000万円 | 20万円 |
計算例を1つ挙げます。たとえば、土地の評価額が1,200万円、建物が800万円なら、合計2,000万円×0.4%で登録免許税は8万円です。評価額が大きくなるほど登録免許税も増えるため、不動産の評価額をあらかじめ確認しておくと総額の見当がつきます。なお、固定資産税評価額は3年ごとに見直されるため、最新年度の評価額を使う点にも注意しましょう。
納付は、税額分の収入印紙を申請書に貼る方法が一般的です(金融機関での現金納付も可能)。なお、一定の土地は登録免許税が免税になる場合があります(後述)。
手続きを専門家に依頼すると、前述の実費(公的書類・登録免許税)に加えて報酬がかかります。実費は誰がやっても同じ金額なので、依頼するかどうかで変わるのはこの報酬部分だけです。報酬の相場を見ていきましょう。
相続登記を司法書士に依頼した場合の報酬は、おおむね5〜15万円程度が目安です。ただし、不動産の数や相続人の人数、遺産分割協議書の作成を含むかどうかなどによって変わります。書類の取り寄せから申請まで一括で任せられるのが利点です。
この報酬とは別に、登録免許税や書類取得の実費は実費として別途かかります。見積りを見るときは、「報酬」と「実費」が分かれているかを必ず確認しましょう。報酬の中に実費が含まれているのか別なのかで、総額の見え方が変わります。
相続登記そのものは司法書士に依頼するのが一般的ですが、遺産分割でもめている場合は弁護士に依頼することがあります。弁護士なら、遺産分割の交渉や調停と、その後の登記まで一貫して任せられるのが強みです。費用は対応範囲によって変わるため、見積りで確認しましょう。
「誰がどの不動産を相続するか」が決まらないと登記は進みません。もめそう・すでにもめている場合は、まず弁護士に相談するほうが、結果的に早く確実に名義変更まで進められることがあります。
同じ「相続登記」でも、ケースによって作業量が大きく変わるため、報酬にも幅が出ます。次のような場合は、報酬が相場より高くなりやすい傾向があります。
見積りを取るときは、報酬と実費(登録免許税など)を分けて確認すると、総額を把握しやすくなります。
逆に、不動産が1つで相続人も少ないシンプルなケースなら、報酬は相場の下限に近くなりやすく、自分でやることも十分に検討できます。自分の状況がどちらに近いかで、依頼の判断をするとよいでしょう。
費用をできるだけ抑えたい場合は、次のような方法があります。税金(登録免許税)は基本的に下げられませんが、免税措置の活用や、専門家への依頼範囲の工夫で総額を抑えることは可能です。
一定の相続登記には、登録免許税の免税措置があります。代表的なのは、評価額100万円以下の土地の相続登記で、令和9年(2027年)3月31日までは登録免許税が非課税です。また、相続した人が登記しないまま亡くなった場合(数次相続)の登記にも免税措置があります。適用には申請書への記載が必要なので、法務局や専門家に確認しましょう。
地方の山林や持分など、評価額が低い土地が含まれる相続では、この免税で登録免許税を抑えられることがあります。自分の土地が対象になるか分からない場合は、評価証明書を持って法務局の相談窓口で確認するとよいでしょう。なお、数次相続の免税は、祖父名義のまま父も亡くなり、孫がまとめて登記するようなケースで、父名義への登記分の登録免許税が免除される、という仕組みです。
すべてを任せるのではなく、戸籍集めや遺産分割協議書の作成を自分で行い、申請だけ依頼すると、その分の報酬を抑えられることがあります。どこまで自分でやるかを相談してみましょう。「全部おまかせ」より「一部だけ依頼」のほうが報酬は安くなるのが一般的です。
報酬は事務所によって差があるため、複数の司法書士から見積りを取って比較すると、費用を抑えやすくなります。金額だけでなく対応範囲もあわせて確認しましょう。同じ「相続登記一式」でも、どこまで含むかは事務所ごとに違うため、安さだけで選ばず、何をやってくれるかで比べるのがコツです。
相続登記の費用は、不動産を取得する人が負担するのが一般的ですが、相続人全員で分担することも可能です。遺産分割の話し合いの中で、費用の負担についても決めておくとよいでしょう。特に不動産を相続する人だけが費用を負担するのは不公平だと感じる場合は、早めに分担を話し合っておくと、後のトラブルを防げます。実務上は、その不動産を取得して恩恵を受ける人が負担するケースが多いですが、最終的には相続人同士の合意で自由に決められます。
「費用がかかるから」と相続登記を先延ばしにするのは危険です。2024年4月1日から相続登記は義務化され、不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記しないと、正当な理由がなければ10万円以下の過料の対象になる可能性があります。過去の相続も対象です。
また、放置している間に相続人がさらに亡くなって関係者が増える(数次相続)と、戸籍集めや話し合いが複雑になり、かえって費用も手間も大きくなります。早めに手続きするほうが、結果的に安く済みます。
さらに、登記をしないままだとその不動産を売却したり、担保に入れて融資を受けたりすることができません。「費用を節約するつもりが、いざ売りたいときに売れない」という事態を避けるためにも、費用を理由に先延ばしにしないことが大切です。
法律上の決まりはありませんが、その不動産を相続する人が負担するのが一般的です。相続人全員で分担しても構いません。誰がいくら負担するかは、遺産分割の際に決めておくとトラブルを防げます。費用負担を遺産分割協議書に書いておくと、後で「言った・言わない」になりません。
個人が自宅などを相続する場合、相続登記の費用は基本的に経費にはなりません。ただし、相続した不動産を賃貸など事業に使っている場合は、登録免許税や司法書士報酬を必要経費にできることがあります。判断に迷う場合は税理士に確認しましょう。なお、相続登記の費用は相続税の計算上、遺産から差し引ける債務にはあたりません。
一概に高いとはいえません。不動産が多い・相続人が多い・遺産分割協議書の作成を含むなど、作業量が多ければ報酬は上がります。気になる場合は、内訳(報酬と実費の区別)を確認し、他の事務所の見積りと比べるとよいでしょう。なお、見積額の多くが登録免許税(評価額が高い不動産の場合)で占められていることもあり、その場合は報酬自体は相場どおりということもあります。
相続登記の費用は、①公的書類の取得費用、②登録免許税(評価額の0.4%)、③専門家費用の3種類です。自分でやれば①と②だけで済み、司法書士などに依頼すると③(目安5〜15万円)が加わります。①と②は誰がやっても同じで、差が出るのは③だけ、という点を押さえておくと判断しやすくなります。
費用を抑えたいなら、免税措置の活用や部分依頼、相見積もりが有効です。一方で、相続登記の放置は過料のリスクや手続きの複雑化を招くため、費用面でも早めの対応が得策です。自分でやるか依頼するか迷う場合は、無料相談で見積りと方針を確認してから決めましょう。シンプルなケースなら自分で、もめている・複雑なケースなら専門家に、という使い分けが基本です。
まずは、固定資産税の課税明細書で評価額を確認し、登録免許税の概算(評価額×0.4%)を出すところから始めるのがおすすめです。そのうえで、自分でやる手間と、依頼した場合の報酬を比べれば、自分に合った進め方が見えてきます。

京都弁護士会所属。当事務所は東京本店を基軸に全国に30以上のオフィスを展開しており、それぞれが地域に密着した法サービスを提供しています。特に相続の不動産の扱いに幅広いノウハウがあり、最適なリーガルプランを提供します。