


不動産の相続手続きは、大まかに以下の流れで進行します。
不動産が相続財産に含まれる場合は、まず「誰が不動産を取得するのか」「売却して代金を分けるのか」「共有にするのか」などを遺産分割で決める必要があります。
手続き | 主な内容 |
|---|---|
1. 遺言書の有無を確認する | 遺言で不動産の取得者が指定されているか確認する |
2. 相続人・相続財産を確定する | 戸籍や財産資料を集め、不動産を含む遺産全体を把握する |
3. 不動産の分け方を話し合う | 現物分割・代償分割・換価分割・共有分割(※)を検討する |
4. 遺産分割協議・調停・審判で決める | 話し合いでまとまらない場合は家庭裁判所を利用する |
5. 相続登記の手続きをする | 不動産を取得した人の名義に変更する |
6. 相続税の申告・納付をする | 必要に応じて10か月以内に申告・納付する |
※本記事では、不動産を複数の相続人による共有とする方法を、便宜上、「共有分割」と表記します。
遺言書がある場合は、原則としてその内容に従って不動産を相続します。そのため、まずは遺言書があるかどうかを確認しましょう。
遺言書は、被相続人が自ら保管していることもありますが、公証役場や法務局で保管されている場合もあります。公証役場や法務局にも照会を行い、遺言書を見落とさないようにしましょう。
なお、公正証書遺言および法務局で保管されている自筆証書遺言を除き、遺言書を発見した際には家庭裁判所の検認を受けなければなりません(民法1004条1項)。
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遺言書によって相続する人が指定されていない不動産については、遺産分割によって相続する人を決めます。
遺産分割に先立ち、相続人と相続財産を確定しなければなりません。相続人については戸籍謄本などから、相続財産については遺品などを手掛かりとした調査を行って確定します。
相続人または相続財産の把握漏れがあると、遺産分割がやり直しになるおそれがあるので、慎重に調査を行いましょう。
不動産については、固定資産税の納税通知書、名寄帳、登記事項証明書などを確認すると、被相続人名義の土地・建物を把握しやすくなります。
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不動産は預貯金のようにそのまま1円単位で分けることが難しい財産です。そのため、遺産分割では「不動産を誰が取得するか」「取得しない相続人に代償金を支払うか」「売却して代金を分けるか」などを話し合います。
不動産の分け方には、現物分割・代償分割・換価分割・共有分割があります。どの方法が適しているかは、不動産の種類、相続人の希望、代償金の支払能力、売却可能性などによって異なります。
詳しくは後述します。
遺産分割の方法は、相続人全員の協議によるのが原則です。遺産分割の方法について合意できたら、その内容をまとめた遺産分割協議書を締結しましょう。
遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停・審判によって遺産分割の方法を決めます。調停は話し合いの手続き、審判は家庭裁判所が遺産分割の方法を決定する手続きです。
調停が成立した場合は調停調書、審判がなされた場合は審判書によって、それぞれ遺産分割の方法が示されます。
不動産の遺産分割では、評価額や分け方をめぐって相続人間の意見が対立しやすいです。協議が長引く場合は、早めに弁護士へ相談し、調停も見据えて資料を整理しておくとよいでしょう。
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遺言書または遺産分割によって相続する人が決まった不動産については、その所在地を管轄する法務局または地方法務局において、相続登記の手続きを行う必要があります。
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相続登記によって不動産の所有者として公示されると、第三者に対して所有権を対抗できるようになります。たとえば不動産を売却または賃貸する際には、あらかじめ所有権移転登記を得ることが必要です。
相続登記は、2024年4月1日から義務化されています。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。
また、遺産分割によって不動産を取得した場合は、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた相続登記を申請する必要があります。正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料の対象となることがあります。
2024年3月31日以前に開始した相続についても、相続登記の義務化の対象です。すでに相続した不動産を登記していない場合は、期限を確認して早めに対応しましょう。
関連記事:相続登記の義務化、過去の相続も対象になる?期限やペナルティも解説
相続によって不動産を取得したら、早めに相続登記の手続きを行いましょう。
場面 | 相続登記の期限 |
|---|---|
相続で不動産を取得したことを知った場合 | 知った日から3年以内 |
遺産分割で不動産を取得した場合 | 遺産分割成立日から3年以内 |
2024年4月1日より前に開始した相続 | 経過措置により期限が定められているため要確認 |
相続した不動産を含めて、課税対象財産(相続財産など)の総額が基礎控除額を超える場合は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告・納付を行う必要があります。
不動産のうち、土地については「小規模宅地等の特例」の適用を受けられることがあります。小規模宅地等の特例の適用を受ける場合は、相続税額がゼロになる場合でも、相続税の申告が必要となる点にご注意ください。

相続した不動産の分け方(分割方法)には、以下の4種類があります。
分割方法 | 内容 | 向いているケース |
|---|---|---|
現物分割 | 不動産などの財産をそのまま分ける | 土地を分筆できる場合など |
代償分割 | 一部の相続人が不動産を取得し、他の相続人へ代償金を払う | 誰か1人が自宅を取得したい場合 |
換価分割 | 不動産を売却し、代金を分ける | 誰も住まない、現金で公平に分けたい場合 |
共有分割 | 複数の相続人で共有名義にする | 代償金を用意することがきない場合 |
「現物分割」は、相続財産を物理的に分ける方法です。
不動産のうち、土地については分筆した上で現物分割をすることができます。面積に応じて公平に分けやすいメリットがある反面、土地が細分化しすぎて使いにくくなる場合があります。
建物については、原則として現物分割はできません。
現物分割は、複数の土地がある場合や、1つの土地を分筆しても利用価値が大きく下がらない場合に向いています。一方で、土地の形状や接道状況によっては、分筆後に使いにくい土地が生じることがあります。
メリット | 注意点 |
|---|---|
不動産を売却せずに分けられる | 土地が細分化して使いにくくなることがある |
代償金を用意しなくてよい場合がある | 建物は現物分割しにくい |
各相続人が単独名義で取得しやすい | 土地ごとの価値差を調整する必要がある |
「代償分割」は、一部の相続人が不動産を取得する代わりに、他の相続人に対して代償金を支払う方法です。
一部の相続人だけが不動産の相続を希望している場合は、代償分割によってすべての相続人のニーズを満たせる可能性があります。ただし代償金が準備できない場合は、代償分割を行うことは困難です。
たとえば、長男が実家を取得し、長女には法定相続分に応じた代償金を支払うケースが代償分割です。被相続人と同居していた相続人が自宅に住み続けたい場合などに選ばれやすい方法です。
代償分割では、不動産の評価額をいくらと見るか、代償金をいつ・どのように支払うかが重要です。後日のトラブルを避けるため、遺産分割協議書には代償金の金額、支払期限、支払方法を明記しましょう。
メリット | 注意点 |
|---|---|
相続人の1人が不動産を取得できる | 代償金を準備する資力が必要 |
不動産を売却せずに済む | 評価額をめぐって争いになりやすい |
共有を避けられる | 支払条件を協議書に明記する必要がある |
「換価分割」は、不動産を売却して代金を分ける方法です。1円単位で公平に不動産を分割することができますが、物件の立地などによっては買い手が付かないこともあります。
相続人の誰も不動産を利用しない場合や、代償金を支払える相続人がいない場合には、換価分割が選択肢になります。
ただし、不動産を売却する際には、仲介手数料、測量費、譲渡所得税などが発生することがあります。売却価格だけでなく、売却にかかる費用や税金を差し引いた後の手取り額を確認しましょう。
メリット | 注意点 |
|---|---|
現金で公平に分けやすい | 買い手が見つからないことがある |
不動産管理の負担をなくせる | 売却費用や税金がかかる |
共有トラブルを避けやすい | 売却価格に相続人全員の納得が必要 |
「共有分割」とは、不動産を複数の相続人による共有とする方法です。
複数の相続人が不動産の相続を希望する場合や代償金を用意することができない場合などに選択されることがありますが、共有者間におけるトラブル発生のリスクが高いのが難点です。
共有分割は、一見すると公平に見えますが、将来の売却・賃貸・修繕・建替えなどで共有者全員の意見調整が必要になり、トラブルが長期化することがあります。
また、共有者の1人が亡くなると、その共有持分がさらに相続され、権利関係が複雑になることもあります。そのため、共有分割は安易に選ばず、将来の管理・売却まで見据えて検討しましょう。
メリット | 注意点 |
|---|---|
一時的に公平な形を作りやすい | 売却や賃貸で意見が割れやすい |
代償金を用意しなくてもよい | 次の相続で共有者が増えることがある |
不動産をすぐに売らずに済む | 管理費や固定資産税の負担で揉めやすい |
相続財産である不動産は、遺産分割および相続税の申告を行う際に、その価値を評価する必要が生じることがあります。
関連記事:土地の相続税評価額はどう調べる? 計算方法を分かりやすく解説
遺産分割の場面では、相続する遺産について相続人間の公平を図るため、預貯金などとは異なり、額面が明確でない不動産の価値評価を行う場合があります。この場合は実勢価格を基準とするのが適切であるため、不動産業者の見積もりや不動産鑑定士の評価などを用いることが多いです。
相続税の申告を行う際には、税法の規定に従って不動産の価値を評価します。具体的な評価方法については、税理士などのアドバイスを受けましょう。
遺産分割と相続税申告では、同じ不動産でも評価の目的が異なります。遺産分割では相続人間の公平を図るために実勢価格が重視されやすく、相続税では路線価や固定資産税評価額など税法上の評価方法を用います。
場面 | 主に使われる評価 | 目的 |
|---|---|---|
遺産分割 | 実勢価格、不動産会社の査定、不動産鑑定士の評価など | 相続人間で公平に分けるため |
相続税申告 | 路線価方式、倍率方式、固定資産税評価額など | 相続税を計算するため |
相続登記 | 固定資産税評価額 | 登録免許税を計算するため |
不動産の相続には、以下の費用がかかることがあります。
費用の種類 | 内容 |
|---|---|
税金 | 相続税、登録免許税、固定資産税など |
弁護士費用 | 遺産分割協議・調停・審判を依頼する費用 |
司法書士費用 | 相続登記を依頼する費用 |
売却関連費用 | 換価分割をする場合の仲介手数料、測量費など |
相続した不動産には、以下の税金が課されることがあります。
相続による所有権移転登記の登録免許税は、原則として不動産の価額の1000分の4、つまり0.4%です。
税金 | ポイント |
|---|---|
相続税 | 基礎控除額を超える場合に申告・納付が必要 |
登録免許税 | 相続登記時に必要。原則0.4% |
不動産取得税 | 相続人が相続で取得する場合は原則非課税 |
固定資産税 | 毎年1月1日時点の所有者に課税される |
遺産分割協議・調停・審判への対応を弁護士に依頼する際には、弁護士費用がかかります。具体的な金額は依頼先の弁護士によって異なるので、依頼前に必ず確認しましょう。
「日本弁護士連合会弁護士報酬基準」(現在は廃止)に基づき、遺産分割に関する弁護士費用の目安額を紹介します。
経済的利益の額 | 着手金の目安 |
|---|---|
経済的利益の額が300万円以下の場合 | 経済的利益の額の8.8% |
300万円を超え3000万円以下の場合 | 経済的利益の額の5.5%+9万9,000円 |
3000万円を超え3億円以下の場合 | 経済的利益の額の3.3%+75万9,000円 |
3億円を超える場合 | 経済的利益の額の2.2%+405万9,000円 |
※最低11万円、争いのない部分については相続分の時価の3分の1
経済的利益の額 | 報酬金の目安 |
|---|---|
経済的利益の額が300万円以下の場合 | 経済的利益の額の17.6% |
300万円を超え3000万円以下の場合 | 経済的利益の額の11%+19万8000円 |
3000万円を超え3億円以下の場合 | 経済的利益の額の6.6%+151万8000円 |
3億円を超える場合 | 経済的利益の額の4.4%+811万8000円 |
※争いのない部分については相続分の時価の3分の1
不動産の相続登記の手続きを司法書士に依頼する場合は、司法書士費用がかかります。具体的な金額は依頼先の司法書士によって異なりますが、登記1件当たり5万円から15万円程度が標準的です(登録免許税などは別途)。
不動産の相続に当たっては、主に相続登記の手続きにおいて、以下の書類を揃える必要があります。
必要書類は、遺言に基づく相続登記なのか、遺産分割協議に基づく相続登記なのか、法定相続分どおりの登記なのかによって異なります。
登記の原因 | 特に必要になる書類 |
|---|---|
遺言に基づく場合 | 遺言書、検認調書など |
遺産分割協議に基づく場合 | 遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書など |
法定相続分に従う場合 | 相続関係を証明する戸籍一式など |
不動産の遺産分割では、分け方や登記の期限、共有名義のリスクについて多くの疑問が生じます。よくある質問を確認しておきましょう。
できます。相続人全員が合意すれば、相続人の1人が不動産を単独で取得する内容の遺産分割協議をすることが可能です。
ただし、不動産を取得しない相続人との公平を図るため、代償金の支払いが必要になることがあります。代償分割をする場合は、遺産分割協議書に代償金の金額・支払期限・支払方法を明記しましょう。
はい。不動産を売却し、売却代金を相続人で分ける方法を換価分割といいます。
誰も不動産に住む予定がない場合や、代償金を支払える相続人がいない場合には、換価分割が有効です。ただし、売却価格、売却時期、仲介手数料や税金の負担について、相続人間で合意しておく必要があります。
相続人同士の話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。調停でも合意できない場合は、審判に移行し、家庭裁判所が分割方法を判断します。
不動産の評価額や取得希望者をめぐって対立している場合は、査定書や鑑定評価書などの資料を準備しておくと、話し合いを進めやすくなります。
共有名義は、将来の売却・賃貸・修繕・建替えなどで共有者間の合意が必要になり、トラブルが起こりやすい方法です。
また、共有者の1人が亡くなると、その持分がさらに相続され、共有者が増えて権利関係が複雑になることがあります。共有分割を選ぶ場合は、将来的に売却するのか、誰が管理費や固定資産税を負担するのかまで決めておくことが大切です。
遺産分割によって不動産を取得した場合は、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた相続登記を申請する必要があります。
相続登記をしないまま放置すると、不動産を売却しにくくなるだけでなく、正当な理由なく義務に違反した場合に過料の対象となることがあります。遺産分割協議が成立したら、早めに相続登記の準備を進めましょう。
不動産を相続する際には、遺産分割や相続登記をはじめとして、さまざまな手続きを行う必要があります。トラブルなくスムーズに不動産を相続するためには、弁護士にサポートを依頼しましょう。
不動産の遺産分割では、現物分割・代償分割・換価分割・共有分割のどれを選ぶかが重要です。特に共有分割は将来の管理や売却でトラブルになりやすいため、安易に選ばず、他の方法も含めて検討しましょう。
また、遺産分割で不動産を取得した場合は、遺産分割成立日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。不動産の評価、遺産分割協議書の作成、相続登記、相続税申告などで迷う場合は、弁護士に相談しましょう。
