- 公開日
- (更新日
相続関係説明図とは?使用する場面や書き方、法定相続情報一覧図との違いを解説
- 監修者の名前
- 川村勝之弁護士
- 監修者の所属事務所
- リフト法律事務所
相続関係説明図は、不動産の相続登記手続きをする際に予め用意しておくと便利な書類です。この記事では、相続関係説明図の用途や作成方法、法定相続情報一覧図との違いを詳しく解説します。
目次
相続関係説明図とは
相続関係説明図とは、相続人が誰か一目で分かるように図式化した、家系図のような書類です。
相続手続きを行う上で、必ず作成しなければならないものではありませんが、主に相続登記手続きの場面で、戸籍謄本を返却してもらうために、作成しておくと便利です。
相続関係説明図を使用する場面
相続関係説明図は、主に不動産の相続登記手続きで使用します。
遺産に不動産が含まれる場合には、その不動産の登記名義を相続人に変更するために、不動産の所在地を管轄する法務局に戸籍謄本を提出します。その際に、原本還付を希望して、戸籍謄本とあわせて相続人関係図を提出すれば、戸籍謄本を返してもらえます。返還された戸籍謄本は、別の相続手続きに利用することが可能です。
※相続人関係図の代わりに戸籍謄本のコピーを提出しても原本還付を受けることは可能です。
法定相続情報一覧図との違いは?
相続関係説明図と似た書類に、法定相続情報一覧図があります。法定相続情報一覧図とは、法定相続人の関係を証明書として法務局が発行する書類です。
法定相続情報一覧図は、戸籍謄本の代わりの書類として、相続登記手続きに限らず、預貯金や車の名義変更などの相続手続きに広く使用できます。法定相続情報一覧図を提出することで、戸籍謄本の提出は不要になります。
一方で、相続関係説明図は戸籍謄本の代わりにはなりません。あくまでも、戸籍謄本の原本還付を受ける際に、戸籍謄本のコピーの提出を省略するために用いられるもので、法定相続情報一覧図とは異なります。
相続関係説明図と法定相続情報一覧図のどちらを作成すればよい?
法定相続情報一覧図を使用すると、相続関係説明図と異なり、戸籍謄本そのものの提出を不要にできます。また、法定相続情報一覧図を使用できる手続きの範囲は、相続関係説明図より広いです。
そのため、提出書類が多く必要書類の準備の負担を減らしたい場合には、法定相続情報一覧図の作成を検討してもよいかもしれません。法定相続情報一覧図を作成するためには、法定相続情報一覧図の元となる図を自分で作成し、戸籍謄本とともに法務局に提出する必要があります。
相続関係説明図の書き方
相続関係説明図を作成するには、まず必要書類を用意します。その後、法務局で公開されている法定相続情報一覧図のテンプレートを利用すると便利です。
先ほど説明したとおり、基本的には法定相続情報一覧図の作成をおすすめします。相続関係説明図に記載する内容と、法定相続情報一覧図に記載する内容はほとんど同じなので、テンプレートを利用して、法定相続情報一覧図を作成するとよいでしょう。
相続関係説明図の作成に必要な書類
相続関係説明図を作成する前に、まずは次の書類を取得しましょう。相続関係説明図に記載する相続人を確認し、被相続人と相続人の続柄や氏名、住所などを把握するためです。
- 被相続人の出生から死亡するまでの連続する戸籍謄本等
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票(法定相続情報一覧図に住所の記載は任意)
戸籍謄本を取得する方法は2種類あります。1つは、被相続人の本籍地の市区町村役所へ申請する方法です。郵送でも申請できます。
被相続人が結婚と離婚を繰り返していたり、転居をしたりなどで本籍地の変更が何度もある場合には、以前の本籍地のある市区町村役場にも戸籍謄本の取得を申請しなければなりません。
こうした戸籍取得の時間や手間を短縮するため、2024年3月1日から、全国どこの市区町村役場でも一括してすべての戸籍謄本を取得できるようになりました(広域交付)。取得したい戸籍謄本が複数の市区町村役場に存在する場合でも、一つの市区町村役場でまとめて申請できます。
ただし、郵送はできず、代理申請もできないため、本人が窓口に行く必要があります。また、戸籍の附票は広域交付の制度は利用できません。自身の取得したい戸籍謄本が広域交付で取得できるか気になる場合は、詳しくは最寄りの市区町村役場に問い合わせましょう。
戸籍謄本の集め方がわからない場合や、ご自身で集めるのが大変な場合は、弁護士へのご相談をおすすめします。
住民票は、住民登録のある市区町村役場で取得できます。窓口で申請するほかに、郵送や、マイナンバーを利用したコンビニ申請もあります。
法務局の「法定相続情報一覧図」テンプレートを使う
(alt:法務省のテンプレートを元に作成した相続関係説明図)
相続関係説明図を作成する場合には、法務局が公開している法定相続情報一覧図のテンプレートを利用すると便利です。
法務局のテンプレートと記載例はこちらから取得できます。
相続人が誰かによって、異なるテンプレートが用意されているので、自身の状況に合ったものを選びましょう。
紙はA4用紙、縦書きです。下から5cmの範囲には、法務局の認証文が入るので、何も記載しないようにしましょう。
まとめ
相続関係説明図は、相続人が誰か一目で分かるように図式化した、家系図のような書類で、相続登記の際に戸籍謄本の原本還付を受けるために作成します。作成時には、法務局が公開している法定相続情報一覧図のテンプレートを利用すると便利です。相続関係説明図を事前に用意して、相続登記手続きをスムーズに進めましょう。
- 監修者の名前
- 川村勝之弁護士
- 監修者の所属事務所
- リフト法律事務所
千葉県、関東を中心として全国の相続のご相談に対応、相続対応実績多数。相続人・相続財産調査、不動産の売買・名義変更、相続税申告、争いがある相続まで、相続発生直後からチームで相続サポートをしています。
相続ガイド
生涯独身の「おひとりさま」が相続に向けてやっておくと良いこと7選、弁護士が徹底解説
生涯独身の「おひとりさま」が増えています。親族が誰もいない、もしくは疎遠になっている場合、自分が亡くなったあとの財産はどうなるのでしょうか。相続問題に詳しい田中伸顕弁護士に、おひとりさまが相続に向けてやっておくと良いことを聞きました。
「実家放置」の大きすぎる賠償リスク!4月から変わる相続登記のルール、注意すべきポイント
2024年4月1日に改正不動産登記法が施行され、相続登記が義務化されます。土地問題に詳しい荒井達也弁護士は「相続登記義務化をきっかけに、空き家などの不動産を放置したままにするリスクについて改めて考えてほしい」と話します。
相続や遺産分割の弁護士費用の相場はいくら?誰が払う?費用を抑える方法も解説
相続や遺産分割を弁護士に依頼した場合、費用がどのくらいかかるか不安な人もいるでしょう。この記事では、相続や遺産分割を依頼した場合の弁護士費用の内訳や相場を詳しく解説します。費用が払えない場合の対処法や弁護士の選び方についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
遺産を独り占めした人の末路は?そんなことできる?ケース別対処法を解説
相続する際、遺産を独り占めしたいと企む相続人も中にはいるでしょう。「遺産をすべて相続したい」と主張したり、遺産を隠したり使い込んだりするような場合です。また、「一人の相続人に全財産を譲る」という遺言が残されているケースもあります。このような場合でも、他の相続人には自身の相続分を主張する権利があります。この記事では、遺産の独り占めへの対処法を詳しく解説します。
寄与分とは?介護したらもらえる?認められる要件や相場、計算方法を解説
被相続人の生前に、介護や家業の手伝いなどの援助をしていた場合、相続する際に相続の取り分を増やしてほしいと考える相続人もいるでしょう。このようなケースでは、「寄与分」という形で相続分の増額を主張できる可能性があります。 寄与分が認められるのはどのような場合なのか、どの程度の増額が見込まれるのか、といった点について詳しく解説します。