

相続の相談先には、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など複数の選択肢があり、それぞれ得意分野も費用も異なります。間違った窓口を選ぶと、たらい回しにされたり、費用が二重にかかるリスクもあります。
相続の相談先選びで最も大切なのは、「今のあなたの状況」に合った専門家を選ぶことです。
状況 | 最適な相談先 | 理由 |
|---|---|---|
親族と揉めている・交渉を任せたい | 弁護士 | 代理交渉が可能な唯一の専門家 |
不動産の名義変更(登記)が必要 | 司法書士 | 登記手続きの専門家 |
相続税の申告が必要・節税したい | 税理士 | 税務申告と節税の専門家 |
まずは書類作成だけ安く済ませたい | 行政書士 | 書類作成に特化、費用が安い |
何から始めればいいかわからない | 市役所・弁護士の無料相談 | 状況整理と方向性の見極め |

まずはお金をかけずに話を聞いてもらいたい——相続には、無料で相談できる公的な窓口がいくつもあります。
弁護士や司法書士が無料で相談に乗ってくれる日を設けている自治体も多く、「何から始めればいいかわからない」段階に向いています。
ただし、一般的なアドバイスにとどまることが多く、最終的には専門家につなぐ場として使うのがおすすめです。相談日・時間・予約方法は自治体ごとに違うので、広報紙やホームページで確認してから出向きましょう。
法テラス(日本司法支援センター)は、経済的に余裕がない人向けに無料法律相談や弁護士費用の立て替えを行っている公的機関です。単身者なら、手取りの月収20万200円以下(東京23区・大阪市など。その他の地域は18万2000円以下)、資産180万円以下が目安です。
相談は1回30分で、同一の問題につき3回までです。3回分をまとめて1回で相談することはできません。基準額は家族の人数で変わるので、詳しくは公式サイトで確認してください。
相談料は弁護士会ごとに違います。 日本弁護士連合会がまとめている遺言・相続の相談窓口一覧では、30分5500円(税込)としている会のほか、無料の電話相談を設けている会も並んでいます。料金・時間・予約の要否は利用する弁護士会の案内で確認してください。
揉めそうな気配があるなら、この窓口が近道です。相談した弁護士にそのまま依頼できる場合もあり、一から説明し直す手間がかかりません。
相続税に関する一般的な相談は、国税局の電話相談センターで受け付けています。書類の確認が必要な個別の相談は最寄りの税務署で、事前に電話で予約して行きます。
聞けるのは申告が必要かどうかや書き方といった話までで、どの特例をどう使うと有利かという判断は税理士の領域です。
法務局の「登記手続案内」では、登記申請書の作成に必要な情報を教えてもらえます。完全予約制で、1回あたり20分以内です。
ただし、法務局が申請書を代わりに作ってくれるわけではありません。法務局も、自分で登記手続きをするのが難しい場合は司法書士に依頼するよう案内しています。
無料の窓口はどれも「話を聞いて方向を示す」ところまでです。次のような状況では、無料相談だけで終わらせると、かえって時間とお金を失います。
期限がある手続きは、迷っている間に選択肢そのものが消えます。「専門家に頼んだ方がよい」と言われたら、その日のうちに動きましょう。
どこまで自分でできて、どこから専門家に任せるべきかは、次の記事で線引きを確認できます。
専門家 | できること | できないこと |
|---|---|---|
弁護士 | 代理交渉、調停・裁判、全ての法律事務 | なし(全てカバー可能) |
司法書士 | 相続登記、口座解約、遺産整理業務 | 代理交渉、調停・裁判 |
税理士 | 相続税申告、税務調査対応、節税対策 | 代理交渉、登記手続き |
行政書士 | 書類作成(協議書・戸籍収集等) | 代理交渉、登記、税務申告 |
弁護士は、他の士業では扱えない「揉め事の解決」「調停・裁判」を全て一任できる最強のカードです。
着手金と報酬金がそれぞれいくらになるのか、掲載事務所681件の実際の料金表から出した相場を次の記事にまとめています。
司法書士は、登記手続きの専門家として、正確さとスピードに強みがあります。
義務化された相続登記をいつまでにやるべきか、放置したときのペナルティは次の記事で確認できます。
税理士は、相続税の申告と節税対策の専門家です。
そもそも自分に相続税の申告が必要なのか迷っている方は、判断の基準を先に押さえておくと相談が早く進みます。
行政書士は、権利義務に関する書類作成の専門家です。
銀行の無料相談は、口座凍結の解除などの手続きと並行して相談できる点が便利です。ただし、相談は無料でも遺産整理業務などを依頼すると高額な費用がかかることがあります。
知っておきたいのは、銀行は相続登記や相続税の申告そのものを行えないという点です。これらは司法書士・弁護士や税理士だけができる業務のため、銀行は提携する専門家に取り次ぐかたちになります。
窓口が一本化される安心感と引き換えに、銀行の手数料と、実際に動く専門家の報酬が重なる構造です。見積もりは士業への報酬を含んだ金額かどうかを確かめてください。
口座が凍結されたあとの解除に何が必要かは、次の記事で手順を追って確認できます。

相談先を間違えると、時間とお金を無駄にするだけでなく、取り返しのつかない事態に陥ることもあります。
各専門家には法律で定められた業務範囲があります。その範囲を超えた問題が発生すると、対応できずに別の専門家を紹介されることになります。
特に、「最初は平和的だったのに途中で揉め始めた」というケースでは、一から別の専門家に状況説明をし直す手間とコストが発生します。
弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」には、亡くなった弟の子どもと連絡を取る必要があるが、間に入ってもらうのは弁護士か司法書士か行政書士か決めきれない、という相談が寄せられています。
こうした場面で、費用の安い行政書士に書類作成だけを頼むのは、けっして間違った選択ではありません。最後まで揉めずに終われば、それがいちばん安く済みます。問題は、途中で揉めたときです。行政書士も司法書士も、相続人の間に入って交渉することはできません。話がこじれた時点で、弁護士に依頼し直すことになります。
例えば、行政書士に書類作成を依頼(5万円)→途中で揉めて弁護士に依頼(着手金22万円)となると、合計27万円です。司法書士に遺産整理業務を頼んだあとで揉めて弁護士へ移る場合も同じです。先に払った報酬は戻らないため、その分がまるごと上乗せになります。
「安い」という理由だけで選ぶと、結果的に高くつくリスクがあることを覚えておきましょう。
費用を抑えるために自力で戸籍集め等をしているうちに時間が経ち、重要な期限に間に合わなくなるリスクがあります。
3ヶ月の期限がいつから数えられるのか、間に合わないときに延長できるのかは、次の記事で詳しく解説しています。
専門家を選ぶ際、資格を持っているだけでは十分ではありません。
資格を持っているからといって、誰でも相続に詳しいわけではありません。
ホームページの「相続に強い」という表記だけで判断せず、初回相談で「自分と同じ種類の案件を何件扱ったか」をそのまま聞いてみてください。遺産分割の交渉なのか、相続放棄なのか、不動産の分け方なのかで、必要な経験は変わります。
「後から追加請求されないか」という不安は、相談をためらう最大の理由の一つです。
優良な事務所は、無料相談の段階で総額の見積もりを明確に提示してくれます。曖昧な回答しかもらえない事務所は、避けた方が無難です。
見積もりを見るときは、報酬のほかに実費が含まれているかも確かめましょう。戸籍の取り寄せ費用、収入印紙代、郵便切手代、調停を申し立てるときの費用などは、報酬とは別に必要になります。精算の方法は事務所ごとに違うので、実費まで含めた総額かどうかを見積書で確認してください。
前述の「たらい回しリスク」を避けるため、弁護士・税理士・司法書士が提携して窓口が1つで済む事務所を選ぶと安心です。
「上から目線で話す」「専門用語ばかり使う」担当者は、避けて構いません。
相談は無料で受けられる事務所が多いので、複数の事務所に相談して、あなたが最も信頼できると感じた先を選んでください。

手ぶらで行っても相談は受けられますが、資料が1つあるだけで話が進む距離はまったく変わります。
資料 | どこで手に入る | 持っていくと何がわかる |
|---|---|---|
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 | 本籍地の市区町村。広域交付なら最寄りの窓口でも | 相続人が誰か確定できる |
固定資産税の納税通知書 | 毎年春ごろに自宅へ届く | 不動産の規模と、登記が必要かがわかる |
預貯金の通帳、残高がわかるもの | 手元の通帳、取引のある金融機関 | 遺産の総額と、相続税がかかりそうかがわかる |
相続の話は、誰が相続人なのかが決まらないと前に進みません。必要になるのは、亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と、相続人それぞれの戸籍謄本です。
2024年3月から始まった広域交付を使えば、本籍地が全国に散らばっていても最寄りの窓口1か所で請求できます。ただし対象は本人・配偶者・父母や祖父母・子や孫の戸籍に限られ、兄弟姉妹の戸籍は取れません。郵送や代理人による請求もできません。
戸籍の集め方でつまずきやすい点は、広域交付が使えるケースとあわせて次の記事にまとめています。
金額が正確でなくても構いません。不動産は固定資産税の納税通知書、預貯金は通帳、株式や投資信託は証券会社からの取引報告書が手がかりになります。
借金がありそうな場合は、督促状や請求書も捨てずに持っていってください。プラスの財産より借金が多ければ、相続放棄という選択肢が出てきます。
財産の全体像がまったくつかめない場合は、調べ方の手順から確認しておくと動きやすくなります。
資料と同じくらい大事なのが、何を聞きたいのかを1〜2行で書き出しておくことです。「兄は実家に住み続けたいが、自分は現金がほしい」——このくらい具体的だと、限られた時間で答えにたどり着けます。
そして、資料が完璧にそろうまで相談を待つ必要はありません。相続放棄のように期限がある手続きでは、資料をそろえている間に3ヶ月が過ぎてしまう方が問題です。足りない書類の集め方からアドバイスするのが専門家の仕事です。
特に「親族との揉め事」や「精神的な負担」に悩んでいる方には、弁護士への相談を強くおすすめします。
弁護士が間に入ることで、あなたはもう直接話す必要はありません。
知識がないゆえに、「親と同居していた長男が全て相続する」といった相手の都合の良い主張に押し切られるケースは少なくありません。
弁護士に依頼すれば、法律に基づいた正当な権利(本来あなたが受け取れるはずの財産)を確保できます。
弁護士に任せると具体的に何をしてもらえるのか、費用は誰が負担するのかは、次の記事で整理しています。
多くの弁護士事務所が、初回相談を無料で実施しています。まずは無料相談で現在の状況をお伺いし、解決の糸口と明確な費用目安をお伝えします。
弁護士ドットコムが保有する「みんなの法律相談」に寄せられた相続の相談30,302件のうち、「誰に相談すればよいか」「どこに頼めばよいか」と相談先そのものに触れた相談は183件でした。
内訳は、手続きや書類の進め方で迷っているものが58件、費用が心配というものが53件、親族と揉めているものが27件です。
(2021年4月1日〜2026年7月8日に投稿された相談。当社調べ、n=30,302)
「みんなの法律相談」にも、高齢の父の相続に備えて手続きを頼んでおきたいが、税理士と弁護士のどちらに頼めばよいのかわからない、という相談が寄せられています。
まずは「弁護士の初回無料相談」をおすすめします。弁護士は全ての法律事務を扱えるため、お話を伺った上で「これは税理士の領域ですね」「司法書士で対応可能です」といった適切な交通整理が可能です。
はい、セカンドオピニオンとして複数の事務所に相談するのは一般的です。
費用感や担当者との相性を比較した上で、あなたが最も信頼できると感じた先を選んでください。
A: はい、大丈夫です。
現在はオンラインや郵送で手続きが進められるため、あなたが密にコミュニケーションを取れる、お住まい近くの事務所に依頼することをおすすめします。
相続の相談先は、親族と揉めているかどうかでほぼ決まります。揉めている、あるいは揉めそうなら弁護士。話し合いが済んでいて登記だけなら司法書士、相続税の申告が必要なら税理士です。
何から手をつけるかわからない段階なら、市区町村役場や法テラス、弁護士会の無料相談で状況を整理するところから始めれば十分です。安さだけで選んで途中から対応できなくなり、費用が二重にかかることだけは避けましょう。
相続人の一人でも話し合いに応じてくれない、相続放棄の3ヶ月や相続税の10ヶ月が迫っている——こうした場面では、先延ばしにするほど選べる道が狭くなります。
相続弁護士ドットコム掲載事務所で料金表を公開している681事務所のうち、初回相談の記載がある680事務所を見ると、初回相談を無料としているのは439事務所(64.6%)です。まずは弁護士への初回相談で、あなたのケースで遺産分割をどう進めるべきか、期限内に間に合う手続きはどれかを確認しましょう。

中央大学法学部、慶應義塾大学法科大学院を卒業後、LINEヤフー株式会社の法務部や都内法律事務所での勤務を経て、2023年に地元である静岡で同事務所を開設した。女性ならではの柔軟な視点を活かして問題解決に取り組む。相続では、遺産分割や遺留分減殺といった典型的な案件に加え、寄与分や遺言無効確認などの複雑な案件の実績も豊富。依頼者との信頼関係を重視し、丁寧かつ迅速な対応で解決をサポートしている。登録番号55919(静岡県弁護士会)