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相続税の申告を税理士に依頼することは決めていても、どの税理士を選ぶかで結果は変わってきます。まずは、なぜ税理士選びが大切なのかを押さえましょう。
税理士と一口にいっても、実は専門分野が分かれています。ふだんは会社の顧問や法人の決算、個人の確定申告を中心に扱っていて、相続税の申告はあまり経験がない、という税理士も少なくありません。相続税は、財産の評価や特例の適用など専門性の高い分野で、扱う件数によって知識や経験に差が出やすいのが実情です。
医師にたとえるなら、「内科の先生に外科手術をお願いしない」のと同じです。同じ税理士でも、法人税と相続税では求められる知識や経験が大きく異なります。ふだんお世話になっている顧問税理士がいる場合でも、相続税については「相続をどれくらい扱っているか」を確認してみることが大切です。
相続税は、同じ財産でも、土地の評価や特例の適用をどう判断するかによって、納める税額が変わることがあります。相続税に強い税理士であれば、適切な評価や特例の適用によって、払いすぎを防げる場合があります。反対に、相続に不慣れな税理士だと、特例の適用もれなどが起きることもあります。だからこそ、「依頼するかどうか」だけでなく「どう選ぶか」が大切なのです。なお、そもそも税理士に依頼すべきかどうかは、別の記事でくわしく解説しています。

では、相続税に強い税理士は、どう見分ければよいのでしょうか。主なチェックポイントを紹介します。
まず確認したいのが、相続税申告の実績・件数です。年間でどれくらいの相続税申告を扱っているかは、経験の目安になります。事務所のウェブサイトに実績が掲載されていることも多いので、参考にしましょう。件数が多いほど、さまざまなケースに対応してきた経験があると考えられます。
相続税を専門的に、または重点的に扱っているかも重要です。相続専門をうたっている事務所や、相続に関する書籍・情報発信を行っている事務所は、相続分野に力を入れている一つの目安になります。ホームページの記載だけでなく、相談時のやり取りからも、相続にくわしいかどうかは見えてきます。
報酬体系が明確かどうかも、失敗しないための大切なポイントです。基本報酬と加算報酬の内訳がはっきりしていて、依頼前に見積もりを示してくれる事務所は安心です。
反対に、料金の説明があいまいだったり、あとから想定外の費用が加わったりする事務所には注意が必要です。費用の相場や内訳については、別の記事でくわしく解説しています。
相続税の申告後に、税務署から調査(税務調査)が入ることがあります。税務調査を意識した、根拠の明確な申告をしてくれるかも一つの目安です。税理士が申告内容について意見を述べる「書面添付制度」に対応している事務所もあります。
ただし、書面添付は税務調査が必ず来なくなる・減ることを保証するものではありません。過度な宣伝文句に頼らず、ていねいで根拠のある申告をしてくれるかを見るとよいでしょう。
相続税の申告は、財産の内容を確認しながら数か月かけて進めます。そのため、担当者の説明がわかりやすいか、連絡へのレスポンスが早いかといった相性も、実は大切なポイントです。専門的な内容をかみくだいて説明してくれるか、質問にていねいに答えてくれるかは、相談時のやり取りから見えてきます。ここまでのチェックポイントを、依頼前に次のように整理して確認するとよいでしょう。

税理士を選ぶうえで、当サイトがとくにおすすめしたいのが、他の専門家と連携できるかという視点です。
相続では、相続税の申告(税理士)だけでなく、遺産の分け方(弁護士)や、不動産の名義変更である相続登記(司法書士)など、複数の手続きが並行して進みます。それぞれ担当する専門家が異なるため、専門家どうしが連携できると、手続きがスムーズに進みます。
弁護士や司法書士と日ごろから連携している税理士なら、必要なときにほかの専門家を紹介してもらえるなど、ワンストップで進めやすくなります。
とくに、遺産の分け方でもめている、あるいはもめそうなケースでは、弁護士との連携が重要になります。分け方の対立は弁護士が担当する分野で、税理士が解決できるものではありません。
もめている場合は、まず弁護士に相談し、税務については弁護士と連携できる税理士に任せる、という進め方が心強いといえます。「もめているのに、まず税理士に」ではなく、分け方の窓口は弁護士、税務は税理士、と分けて考え、その両者が連携できる体制を選ぶとよいでしょう。
税理士選びで後悔しないために、いくつか注意しておきたい点があります。
報酬が相場よりも極端に安い場合や、独特な料金体系の場合は、その理由を確認しておくと安心です。安さには、対応の範囲が限られている、経験の浅い担当者がつく、といった背景があることもあります。安さだけで選ぶのではなく、対応の中身とあわせて判断しましょう。料金の説明を求めたときに、ていねいに答えてくれるかどうかも見極めのポイントです。
「税務署から指摘されない申告」が、必ずしもよい申告とは限りません。本来使えるはずの特例を使わず、多めに納税してしまえば、税務署からは指摘されませんが、相続人にとっては損です。反対に、無理に評価を下げすぎると、あとで指摘を受けるリスクがあります。指摘されないことだけを目的にするのではなく、適正な評価と特例の適用によって、正しく・払いすぎずに申告してくれる税理士を選ぶことが大切です。
なお、税務調査の実施率をアピールする事務所もありますが、その数え方は事務所によってまちまちで、単純に比較できるものではない点にも注意しましょう。
税理士費用を比べるときは、報酬の金額だけでなく、最終的に納める相続税もあわせたトータルで考えるとよいでしょう。報酬が多少高くても、適切な評価や特例の適用によって相続税を抑えられれば、結果的に得になることもあります。目先の報酬の安さだけでなく、トータルでどうかという視点をもちましょう。
いったん依頼した後でも、説明に納得できない、連絡が遅いなど不安が続く場合は、税理士の変更やセカンドオピニオン(別の税理士の意見を聞くこと)を検討できます。依頼先を変えることに気兼ねを感じる方も多いのですが、相続税の申告は一度きりの大きな手続きです。違和感をかかえたまま進めるより、早めに立ち止まるほうが結果的に安心です。
また、すでに申告を終えた場合でも、土地の評価などを見直した結果、払いすぎがあれば、更正の請求(原則として申告期限から5年以内)によって取り戻せることがあります。「あの申告でよかったのか」と不安なときは、相続税に強い別の税理士に見直しを相談する方法もあります。
税理士に依頼するタイミングと、進め方についても押さえておきましょう。
相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。財産の評価や書類の準備には時間がかかるため、期限に余裕をもって、早めに相談するのがおすすめです。期限間際になると、対応できる税理士が限られたり、急ぎの対応で費用が上がったりすることもあります。相続税がかかりそうだと分かったら、早めに動き始めましょう。
目安としては、四十九日の法要がすんだころから探し始める方が多いとされています。気持ちや手続きが少し落ち着き、それでいて期限までの時間も十分に残っているタイミングです。逆に、申告期限まで3か月を切ってからの依頼は、急ぎ対応の加算報酬がかかる事務所も多いため、避けられるなら早めに動きましょう。
一つの事務所だけで決めず、複数の税理士に見積もりを取り、面談をして比較すると、費用や対応の中身を見極めやすくなります。多くの事務所が初回の相談や見積もりを無料で受け付けています。面談では、実際に担当してくれる人と話し、相続にくわしいか、質問にていねいに答えてくれるか、レスポンスは早いかといった点を確認するとよいでしょう。面談で何を聞けばよいか迷ったら、次の質問リストを参考にしてください。
面談で聞きたい質問 | 確認できること |
年間の相続税申告の件数は? | 事務所としての経験・実績 |
実際の担当者は誰か?(税理士資格・相続の経験) | 「面談は所長、担当は新人」のミスマッチ防止 |
土地など評価が難しい財産の対応経験は? | 評価力(税額に直結しやすい) |
二次相続まで見すえた提案はあるか? | 目先の税額だけでない提案力 |
報酬の内訳と、追加費用が発生する条件は? | 料金の透明性・あとからのトラブル防止 |
書面添付制度には対応しているか? | 税務調査を意識した申告への姿勢 |
財産が現金・預貯金・上場株式などに限られ、基礎控除を明らかに下回るなら、ご自身で申告できることもあります。一方、土地や非上場株式のように評価の判断がいる財産がある場合や、小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減を使って税額を0円にする場合は、申告そのものが適用の要件になるため、税理士に依頼するのが安心です。
必ずしも近さで選ぶ必要はありません。現在は、オンライン面談や郵送でのやり取りに対応する事務所が増えており、遠方の相続専門事務所に依頼することも十分可能です。「近所だから」という理由だけで相続の経験が少ない事務所を選ぶと、かえって損をすることもあります。
一方で、対面でじっくり相談したい方にとっては、通いやすさも安心材料の一つです。専門性を第一に、そのうえで自分に合った相談のしやすさを考える、という順番で選ぶとよいでしょう。
税理士費用は、基本報酬と加算報酬でできており、財産の内容や事務所によって変わります。相場の目安や内訳、誰が払うのかといった費用の詳しい話は、この記事とは別に、税理士費用をまとめた記事でくわしく解説していますので、そちらをご覧ください。
遺産の分け方でもめている場合は、まず弁護士に相談するのが適しています。分け方の対立や交渉は弁護士の担当分野で、税理士が解決できるものではありません。税務(相続税の申告)については、弁護士と連携できる税理士に任せると、スムーズに進めやすくなります。誰に何を頼めばよいか迷ったときは、専門家ごとの業務を整理した記事も参考になります。
相続税の申告を税理士に頼むなら、相続税に強い税理士を選ぶことが大切です。見分けるポイントは、相続税申告の実績・件数、相続税を専門的に扱っているか、報酬体系が明確か、税務調査を意識した根拠のある申告をしてくれるか、などです。報酬が安すぎる場合は理由を確認し、費用は「報酬+納める相続税」のトータルで考えましょう。
当サイトがとくにおすすめしたいのは、弁護士など他の専門家と連携できる税理士を選ぶという視点です。相続は税務だけでなく、分け方(弁護士)や登記(司法書士)もからみます。とくにもめている・もめそうなときは、分け方の窓口は弁護士、税務は税理士、と分けて考え、両者が連携できる体制が心強いといえます。
税理士選びに迷ったら、この記事のチェックポイントを手元に、複数の事務所で初回相談を受けてみてください。相続税に強い税理士かどうかは、面談で聞けば見えてきます。
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VSG相続税理士法人溝の口オフィス代表税理士。実務の傍ら、執筆やセミナー講師を務める。東京地方税理士会所属。VSG相続税理士法人では、相続税申告において日本最大級の実績とノウハウにより、顧客の立場に立って一番有利な相続アドバイスを行う。グループの行政書士・司法書士・社会保険労務士法人と連携をとり、あらゆる相続の悩みに対応している。