相続放棄とは、被相続人が残した遺産を引き継ぎたくない場合に、相続する権利を放棄することです。相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継ぐことができなくなります。
相続放棄の手続きは単独で行えます。そのため、相続人が兄弟姉妹の場合、それぞれが各自の判断で相続放棄の手続きができます。
相続放棄をした場合、相続放棄をした人は最初から相続人でなかったことになり、他の相続人の相続分が増えたり、新たに相続人となる人が生じたりすることがあります。
そのため、他の相続人にとっては、知らない間に相続割合や相続税の負担が増えたり、相続人になってしまうことになります。借金などのマイナス財産があることを理由に相続放棄をする場合は、他の相続人にも伝えてあげるとよいでしょう。
相続で兄弟姉妹の相続放棄が生じるケースとしては、被相続人の兄弟姉妹が相続人となるケースと、被相続人に複数人子どもがいるケースがありますが、どちらの場合でもまとめて相続放棄できます。これ以降の解説では、「兄弟姉妹」という言葉が出てきたら、両方のケースを指しているとご理解ください。
兄弟姉妹が全員で相続放棄をする場合、1人が他の兄弟姉妹の分もまとめて手続きできます。兄弟姉妹がまとめて相続放棄をすると、必要書類を減らせるというメリットがあります。
兄弟姉妹がまとめて相続放棄する場合、次の費用がかかります。ただし、兄弟姉妹で共通する書類は1通のみで構いません。
共通する書類と取得費用は次のとおりです。
相続人が各自で用意する書類と取得費用は次のとおりです。
兄弟姉妹の人数や、必要な戸籍謄本の通数にもよりますが、3000円〜5000円程度を見込んでおくとよいでしょう。
相続放棄の手続きを弁護士に依頼した場合には、別途弁護士費用がかかります。
兄弟姉妹が相続放棄する場合の必要書類は次のとおりです。その際、相続放棄の申述書は、兄弟それぞれが作成したものを提出する必要があります。
一方、同じ内容の書類は、1通あればよいということになっています。たとえば、「被相続人の住民票の除票または戸籍の附票」「被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本」などは1通で足ります。
さらに、被相続人の配偶者と子以外の方が相続放棄をする場合、自身が相続人であることを証明する書類の提出が必要になります。
たとえば、親が死亡して代襲相続人となった、被相続人の孫が相続放棄をする場合は、親が死亡した旨の記載がある戸籍謄本、除籍謄本または改製原戸籍謄本を提出します。
相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続できなくなります。一部の財産のみを放棄することはできません。
兄弟姉妹の一部のみが相続放棄をした場合、他の兄弟姉妹の相続割合が均等に増えることになります。たとえば、兄弟姉妹4人のみが相続人でそのうち一人が相続放棄をした場合、それぞれの相続分は1/4から1/3に増えます。
兄弟姉妹の全員が相続放棄をした場合、次順位の相続人に相続権が移ります。
具体的には、被相続人に複数の子がいて、その子たちが全員相続放棄をした場合、相続権は被相続人の父母へ移ります。
次順位の相続人は、自身で相続手続きに対応する必要があります。もし、次順位の相続人が遺産の取得を望まない場合には、その相続人も相続放棄をする必要があります。
一方で、被相続人の兄弟姉妹が全員相続放棄をした場合には、次順位はないので、相続人が存在しないということになります。相続人がいない場合、遺産は最終的には国庫に帰属します。
相続放棄をしても代襲相続は起こらないため、甥や姪が相続することはありません。
相続人が被相続人の生命保険金や死亡退職金を受け取った場合、相続税が課せられますが、それぞれ「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があります。
相続放棄をした場合でも、生命保険金や死亡退職金を受け取ることはできますが、相続人ではなくなるため、相続税の非課税枠が使えなくなります。
そのため、相続放棄をした場合でも、生命保険金や死亡退職金を受け取ることで、相続税の支払いが発生してしまう可能性があります。
相続放棄は、一度手続きすると原則として撤回できません。事前に慎重に判断しましょう。
兄弟姉妹がまとめて相続放棄をすることができます。まとめて相続放棄をすると、共通する提出書類を1通で済ませることができ、その分の書類取得費用を抑えられるメリットがあります。相続放棄をすべきかどうか、手続きをどのように進めるべきか悩む場合には、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。