

相続放棄申述受理証明書とは、家庭裁判所が「あなたの相続放棄を正式に受理しました」と公的に証明してくれる書類です。相続放棄は、家庭裁判所に申述(申し立て)をして受理されることで法律上の効力が生じます。その「受理された事実」を、第三者に対してはっきり示すための証明書だと考えるとわかりやすいでしょう。
相続放棄をすると、その人ははじめから相続人ではなかったものとみなされます。そのため、相続人として亡くなった人(被相続人)の借金を引き継ぐことはありません。
ところが、放棄したこと自体は、口頭で伝えても相手は信用してくれないことがほとんどです。そこで、債権者や他の相続人、法務局などに対して、放棄が認められた事実を客観的に示す書類として証明書が使われます。
ここでいう「申述(しんじゅつ)」とは、家庭裁判所に対して相続放棄を申し立てる手続きのことです。申述が受理されると相続放棄が成立し、その「受理された」という事実を後から書面で示すのが証明書、という関係になります。
相続放棄が受理されても、証明書が自動で送られてくるわけではありません。必要になったときに、自身(または利害関係人)が家庭裁判所へ申請して取得します。
なお、証明書は受理された直後だけでなく、家庭裁判所に記録が保存されている間であれば、しばらく時間が経ってから申請することもできます。たとえば、相続放棄から数か月後に債権者から連絡が来た、といった場合でも、家庭裁判所に記録が残っている間は申請が可能です。
「すぐに使う予定がないから取らなかった」というケースでも、後から必要になったときに取得できるので慌てる必要はありません。
(2021年4月1日〜2026年7月8日に投稿された相談。当社調べ、n=30,302)

相続放棄が受理されると、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書という書類が届きます。名前がよく似ているため証明書と混同されがちですが、役割が異なります。
通知書は、受理されたことを知らせる「お知らせ」です。申請しなくても、受理されると自動的に1通だけ送られてきます。一方の証明書は、こちらから申請して取得する公的な「証明書」で、家庭裁判所に記録が保存されている限り、必要な通数を申請できます。
項目 | 受理通知書 | 受理証明書 |
|---|---|---|
受け取り方 | 受理されると自動で届く | 家庭裁判所へ申請が必要 |
発行できる通数 | 原則1通のみ | 必要な通数を取得できる |
費用 | 無料 | 1通150円(収入印紙) |
再発行 | 原則できない | 記録保存期間中は申請できる |
主な使い道 | 受理の事実を本人が確認 | 債権者・法務局・金融機関への提出 |
提出先によっては通知書のコピーで足りることもありますが、「証明書を提出してください」と指定された場合は通知書では代用できません。また、通知書は基本的に再発行されないため、紛失が心配なときや複数の提出先があるときは、証明書を取得しておくと安心です。
証明書は、いつも必要になるわけではありません。第三者に「相続放棄した事実」を正式に示す必要がある場面で使います。代表的なケースは次のとおりです。
最後のケースは少しわかりにくいので補足します。相続放棄をすると、その人は最初から相続人でなかった扱いになり、その結果として次順位の人が相続人になることがあります。
たとえば子が全員放棄すると、次順位の直系尊属(父母・祖父母など)が相続人となり、直系尊属がいない場合には兄弟姉妹が相続人になります。配偶者は常に相続人になるため、配偶者がいる場合は、配偶者とあわせて相続人になります。
そのため、次順位にあたる人は、先順位者が本当に放棄したのかを証明書で確かめてから、自身も放棄するかどうかを判断することがあります。
たとえば、亡くなった親に借金があり、相続放棄をしたのに金融機関やカード会社から請求書が届くことがあります。このとき、相手に証明書を提示すれば、自身には返済義務がないことをはっきり示せます。口頭で「放棄しました」と伝えるだけでは督促が止まらないことも多いため、書面で示せる証明書が役立ちます。
不動産の相続登記も同じで、提出先が証明書を求めることが多い場面です。求められたら早めに取得しましょう。
もし通知書を失くしてしまっても、相続放棄が受理された事実そのものが消えるわけではありません。通知書の代わりに証明書を取得すれば、放棄したことを証明できます。
提出先や相手から求められる書類は、ケースによって変わります。あわせて確認しておきたいのは次の3点です。
証明書を申請できるのは、相続放棄した本人(申述人)と、利害関係人です。誰でも自由に取れるわけではなく、利害関係人の場合は利害関係があることを証明する書類が必要になります。
申請できる人 | 必要になる主な追加書類 |
|---|---|
申述人本人(放棄した人) | 本人確認書類など(下記参照) |
利害関係人(共同相続人・次順位の相続人・被相続人の債権者など) | 利害関係を示す書類(戸籍謄本など続柄がわかるもの、債権者は契約書など) |
「みんなの法律相談」にも、相続放棄をした甥や姪の代わりに、相続人となった申請者本人が証明書を申請できるかを尋ねる相談が寄せられています。
(確認用URL:https://bbs.bengo4.com/questions/1475160/)
「利害関係人」とは、その相続放棄によって権利義務に影響を受ける立場の人を指します。たとえば、先順位の相続人が放棄したことで新たに相続人になる兄弟姉妹や、被相続人にお金を貸していた債権者などが当てはまります。
逆に言えば、相続とまったく関係のない第三者は取得できません。利害関係人として申請するときは、戸籍謄本で被相続人との続柄を示したり、債権者であれば契約書や借用書などで関係を説明したりして、「自身がこの相続に関わる立場だ」と示す資料を添えるのが基本です。
なお、すでに相続放棄をした人は、放棄によってはじめから相続人でなかったものとみなされるため、他の人の証明書を利害関係人として申請することは原則できません。
また、利害関係人が申請する場合で事件番号や受理日がわからないときは、先に「相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会」という手続きが必要になります。これは、対象の人が本当に相続放棄をしているのかを家庭裁判所に確認するための照会で、証明書の申請より一段階前の手続きにあたります。
この照会をすませているかどうかで、添付する書類が変わることがあります。
東京家庭裁判所では、直近1年以内に照会をしていれば申請書と検索結果のコピーで足り、していない場合は申請書に加えて、利害関係を証明する資料と申請者の住民票(本籍地表示)が必要と案内されています(申請書と説明の掲載ページは後述します)。
証明書は、相続放棄の申述を受理した家庭裁判所に申請します。提出先はどこの家庭裁判所でもよいわけではなく、被相続人の最後の住所地を管轄し、実際に申述を受理した家庭裁判所に限られます。
どこの家庭裁判所に申述したか忘れてしまった場合は、受理通知書の差出人欄を見れば確認できます。通知書には、受理した裁判所名と事件番号が記載されているためです。手元に通知書がないときは、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に問い合わせると案内を受けられます。
遠方に住んでいる場合や来庁が難しい場合は、郵送で取り寄せるのが便利です。申請では、通知書に記載された事件番号(「○年(家)第○号」の形式)がわかると手続きがスムーズです。
窓口で申請する場合は、開いている時間に裁判所へ行き、申請書を提出します。ただし、申請したその日には受け取れないことがあります。東京家庭裁判所は、証明書の交付に裁判官の許可が必要なため、申請日当日の交付は行っていないと案内しています。
急いでいて確実に受け取りたいときは、事前に電話で持ち物と受け取り方法を確認しておくとスムーズです。
なお、本人や利害関係人に代わって、代理人が申請することも可能です。その場合は委任状など、代理権を示す書類が別途必要になります。家族が代わりに行く場合でも、申請者本人との関係や代理権を確認する書類が求められることがあるため、代理で申請するときは事前に必要書類を確認しておきましょう。
照会先は申述をした家庭裁判所で、相続人や債権者などの利害関係人が申請できます。通知書をなくして事件番号が確認できないときは、ここから始めます。
名古屋家庭裁判所の案内では、被相続人の住民票除票のコピー、相続人であることがわかる戸籍のコピー、本人確認書類のコピー、切手を貼った返信用封筒が必要で、照会そのものに手数料はかかりません。
回答で受理の有無と事件番号がわかったら、あらためて証明書を申請します。
出典:名古屋家庭裁判所「相続放棄・限定承認の申述の受理の有無の照会」

郵送での取り寄せは、次の流れで進めます。提出先・通数・収入印紙の貼り忘れに注意すれば、難しい手続きではありません。
申請から証明書が届くまでの日数は裁判所や時期によって異なります。急いでいる場合は、事前に管轄の家庭裁判所へ目安を電話で確認しておくと確実です。
郵送で気をつけたいのは、書類に不備があると受理されず、返送されてしまう点です。収入印紙の貼り忘れ、返信用封筒の切手不足、事件番号の記入漏れなどがあると、その分だけ取得が遅れます。送る前に、申請書・収入印紙・本人確認書類・返信用封筒の4点がそろっているかを必ず見直しましょう。
相続放棄の手続き自体をこれから自身で進める人は、次の記事が参考になります。
必要書類は、申述人本人が申請するか、利害関係人が申請するかで変わります。費用は共通で、証明書1通につき収入印紙150円です。郵送の場合は、これに加えて返信用の郵便切手が必要になります。
書類・費用 | 申述人本人 | 利害関係人 |
|---|---|---|
交付申請書 | 必要 | 必要 |
収入印紙(1通150円) | 必要 | 必要 |
本人確認書類 | 必要 | 必要 |
受理通知書(事件番号の確認用) | あれば用意 | 写しを用意 |
利害関係を示す書類 | 不要 | 必要 |
返信用封筒・切手(郵送時) | 必要 | 必要 |
収入印紙は、郵便局や法務局のほか、一部のコンビニでも購入できます。本人確認書類は、運転免許証やマイナンバーカード表面などのコピーが一般的です。マイナンバーが記載された面は提出しないよう注意しましょう。
郵送のときの返信用封筒は、証明書の通数によって重さが変わるため、切手は少し余裕をもって貼るか、必要額を裁判所に確認しておくと安心です。
提出先が複数あるときは、必要な通数をまとめて申請しておくと、あとから取り直す手間がかかりません。証明書自体に有効期限の定めはなく、提出先から期限を指定された場合は、その提出先の案内に従います。
証明書は、家庭裁判所に事件記録が保存されている間なら何度でも申請できます。逆に、保存期間が過ぎて記録が廃棄されると発行してもらえません。
「みんなの法律相談」には、40年前の相続放棄について記録の保管期限が過ぎており、証明書を発行してもらえなかったという相談も届いています。受理通知書は再発行されないため、手元の通知書は捨てずに保管しておきましょう。
照会を挟む場合は、その分だけ日数が上乗せされます。利害関係人の申請は、早めに動き出すのがおすすめです。
申請書(交付申請書)は、「申述人用」と「利害関係人用」の2種類があります。自身の立場に合った様式を使いましょう。様式と記載例(見本)は、管轄する家庭裁判所の公式サイトからダウンロードできます。多くの裁判所で、記入の見本もあわせて掲載されています。
主な家庭裁判所の掲載ページは次のとおりです。様式のファイル形式は裁判所によって異なります。
・東京家庭裁判所(PDF/申請書・記載例・説明)
・大阪家庭裁判所(Excel・PDF/利害関係人用の申請書・記載例)
・仙台家庭裁判所(Excel・PDF/申述人本人用・利害関係人用)
・高松家庭裁判所(Excel/申述人用・利害関係人用)
・静岡家庭裁判所(PDF/申請書・記載例)

受理通知書に書かれた「令和○年(家)第○○○○号」を、そのまま転記します。元号(令和・平成)のチェック欄も忘れずに入れましょう。
記入例:令和8年(家)第1234号
「1 交付」を○で囲みます。郵送で受け取るときも「交付」です。「2 送達」は別の手続きで使う欄なので、ここでは使いません。
表の1行目「1 相続 放棄/限定承認 申述受理証明書」で、行番号の1と「放棄」の2か所を○で囲みます。限定承認ではないので「限定承認」は囲みません。
提出先の数に合わせて記入します。通数分の収入印紙が必要になるので、何通いるかを提出先に先に確認しておくとむだがありません。
記入例:2通(提出先=法務局・銀行)→ 収入印紙は300円分
申請する日を書き、申述人本人が署名します。日中に連絡がつく電話番号も書いておくと、書類に不備があったときに裁判所から連絡が届きます。
記入例:令和8年9月7日/弁護 太郎(署名)/TEL 03-1234-5678
このほか、収入印紙(1通150円)は指定の欄に貼り、郵送のときは返信用の110円切手を同封します。金額欄と備考欄は裁判所側が記入します。
様式によっては、被相続人の氏名・本籍や申述人の氏名を書く欄もあります。その場合は受理通知書を見ながら転記します。
様式の選び方は単純で、放棄した本人が申請するなら申述人用、それ以外の人が申請するなら利害関係人用を使います。申請書への押印は不要とされる場合もありますが、扱いは裁判所や様式によって異なることがあるため、印鑑が必要かどうかは申請先に確認しておくと確実です。
書き方で最も間違えやすいのが事件番号の転記ミスです。番号が違うと確認に時間がかかったり、証明書を発行できなかったりするため、通知書を見ながら一字ずつ確認しましょう。
また、収入印紙は申請書に貼るだけで、自身で消印(割印)はしません。貼り忘れや金額不足があると受け付けてもらえないので、出す前に確かめましょう。
相続放棄申述受理証明書は、相続放棄が受理された事実を公的に証明する書類です。自動で届く通知書とは異なり、必要なときに自身で家庭裁判所へ申請して取得します。
この記事の要点を整理します。
提出先から「証明書を出してほしい」と言われたら証明書、「通知書のコピーでよい」と言われたら通知書。迷ったら提出先に確認するのが近道です。
一方で、証明書を出しても債権者からの督促が止まらない、次順位の親族から手続きへの協力を強く求められている、そもそも相続放棄が認められるか不安、といった場合もあります。
こうしたときは、まずは弁護士への初回相談で、どこまで対応する必要があるのか、債権者への回答をどう返すのかを確認しておくと安心です。期限のある手続きと関わることもあるため、迷ったら一人で抱え込まず、早めに相談してみましょう。

鳥取県出身。明治大学法学部を卒業後、中央大学法科大学院を修了し、2018年に弁護士登録。上級相続診断士の資格を有し、専門的知見から高度な支援を行うほか、裁判所から成年後見人や相続財産清算人に選任されて裁判所案件の業務も行う。相続分野では遺産分割協議をはじめ、遺留分侵害額請求、遺言書作成、事業承継など様々な事案に対応。依頼者の気持ちに寄り添い、丁寧なヒアリングを通して最善の解決策を提案する。趣味はクロスバイクと猫カフェ巡り。