

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な職務を行う者です。遺言書に基づいて選任される場合と、利害関係人の請求に基づいて家庭裁判所が選任する場合があります。
遺言執行者が必要になるケースや、誰に頼むかの選び方は、次の記事でくわしく解説しています。
遺言執行者の選任は必須ではありませんが、選任すれば相続手続きをスムーズに進められる点が大きなメリットです。
相続手続きは、相続人全員で行うのが原則です。しかし、相続人間でのスケジュール調整などに手間がかかります。
遺言執行者が選任されれば、遺言内容に基づく相続手続きを単独で行うことができます。相続人間でのスケジュール調整などが不要となるため、相続手続きをスムーズかつ着実に進めることができ、相続人の負担は大幅に軽減されます。
遺言執行者が行うべき業務は、以下のとおりです。
3の相続財産目録の書き方は、記載例つきの次の記事が参考になります。
弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」に寄せられた相続の相談30,302件のうち、遺言執行に関する相談は787件で、そのうち報酬や費用に触れた相談は112件でした。
内容別に見ると、報酬や費用の金額・相場に触れたものが51件(45.5%)と最も多く、次いで誰が払うか・負担のしかたに関するものが23件(20.5%)でした(2021年4月1日〜2026年7月8日に投稿された相談。当社調べ、n=112)。
遺言執行者には、未成年者または破産者以外の人であれば就任できます(民法1009条)。特別な資格は必要ありません。
実際には、以下のいずれかの者が遺言執行者に就任するケースが多いです。
相続手続きを取りまとめてもらい、単独で必要な手続きを行うことができるように、相続人のうち1人を遺言執行者に指定することがあります。遺言執行者報酬は無償または低額とされるケースが多く、コストを抑えたい場合は有力な選択肢です。
遺言書の作成を専門家に依頼した場合は、その専門家を遺言執行者に指定するケースが多いです。遺言執行業務に精通した専門家を選任すれば、スムーズかつ適切に遺言を執行してもらえるでしょう。
遺言書の作成を専門家に頼む場合の費用の目安は、次の記事で確認できます。
信託銀行などの金融機関では、遺言書の作成・保管・執行をサポートする「遺言信託」のサービスを提供しています。遺言信託を利用する場合は、金融機関を遺言執行者に指定するのが一般的です。
遺言執行者は、遺言書の定めまたは家庭裁判所の決定に従って報酬を受けることができます(民法1018条1項)。
遺言書に遺言執行者報酬の定めがある場合は、その規定に従って報酬が決まります。具体的には以下のように、定額や割合で報酬を定める場合があります。
報酬の定め方を含め、遺言書全体の書き方は、見本と例文をまとめた次の記事で確認できます。
これに対して、遺言書に定めがない場合は、家庭裁判所に報酬付与の申立てを行うことができます。家庭裁判所は、相続財産の金額や遺言執行の内容などを考慮して、遺言執行者報酬の金額を決定します。
弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」には、「遺言に報酬の定めがないのに、遺言執行者になったきょうだいが報酬を求めてきた。払う必要はあるのか」という相談が寄せられています。
遺言執行者報酬の金額相場は、遺言執行者が相続人・専門家・金融機関のいずれであるかによって異なります。
遺言執行者が相続人である場合、遺言執行者報酬は無償もしくは低額と定めるか、または特に定めないケースが多いです。
遺言において定めがない場合、遺言執行者である相続人は、家庭裁判所に対して報酬の付与を申し立てることができます。この場合、遺言執行者報酬は相続財産の1%から3%程度とされるのが標準です。
なお、遺言において定められた遺言執行者報酬が割に合わないと感じた場合には、遺言執行者に指定された相続人は就任を拒否することもできます。
弁護士などの専門家を遺言執行者に指定する場合は、遺言書において報酬額を明記するケースが多いです。その場合、具体的な報酬額は依頼先によって異なります。
たとえば弁護士は、「日本弁護士連合会弁護士報酬基準」(現在は廃止)を参考に遺言執行者報酬の金額を決めている例がよく見られます。同基準によれば、弁護士の遺言執行者報酬の金額(目安)は以下のとおりです。
対象財産額 | 弁護士報酬 |
|---|---|
300万円以下 | 33万円 |
300万円超~3,000万円以下 | 対象財産額の2.2%+26万4000円 |
3,000万円超~3億円以下 | 対象財産額の1.1%+59万4000円 |
3億円超 | 対象財産額の0.55%+224万4000円 |
司法書士・税理士・行政書士に依頼する場合の遺言執行者報酬は、上記よりも若干安い傾向にありますが、依頼先によって異なるので一概に言えません。遺言書において専門家を遺言執行者に指定する際には、複数の専門家から見積もりを取得することをおすすめします。
相続弁護士ドットコム掲載事務所の料金表681件のうち、遺言執行の料金を載せている43事務所について、遺産が少ない場合の料金(最低額)を集計すると、中央値は33万円でした。
33万円としている事務所が27件(63%)と最も多く、30万円・33万円・34.1万円のいずれかとしている事務所が38件(88%)でした。また、43事務所のうち36事務所(84%)は、遺産の額に応じて割合(%)で加算する料金体系でした。
各事務所が料金表に記載した最低額を集計したもので、遺産の額や執行の内容によって実際の費用は異なります(2026年7月時点・当社調べ、n=43)。
遺言執行以外も含めて、相続を弁護士に頼むときの費用の相場は、次の記事で解説しています。
金融機関の遺言信託サービスを利用する場合には、遺言執行の手数料として相続財産額の0.22%から2.20%程度がかかります。相続財産が少額の場合は手数料率が高くなり、多額の場合は手数料率が低くなる傾向にあります。
なお、遺言執行の手数料については、最低額を設定している金融機関が多いです(110万円から165万円程度)。
金融機関が提供する遺言信託サービスの費用やメリット・デメリットは、次の記事でくわしく解説しています。
遺言執行者報酬は、遺言の執行に関する費用として相続財産が負担します(民法1021条)。したがって、特定の相続人だけではなく、遺言執行の対象となる財産を相続する人全員で遺言執行者報酬を負担することになります。
実務上は、遺言執行者が相続人に対して相続財産を移転する際に、遺言執行者報酬を控除するのが一般的です。他には、遺言の執行が完了した後、各相続人に対して相続分に応じた遺言執行者報酬を請求する方法もあります。
相続財産3億円の相続で、遺言執行者の弁護士から報酬を自身だけに全額請求されそうだとして、相場や負担のしかたを尋ねる相談も、弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」に寄せられています。
相続で弁護士に払う費用を誰が負担するかは、次の記事でも整理しています。
遺言執行者報酬は、遺言書の定めまたは家庭裁判所の決定に従って決まります。
専門家または金融機関を遺言執行者に指定する場合は、遺言書において報酬を定めるのが一般的です。具体的な報酬額は依頼先によって異なるので、複数の専門家や金融機関の見積もりを比較しましょう。
遺言執行者を選任すると、その権限に基づいてスムーズに相続手続きを進めることができます。相続人に負担をかけたくなければ、遺言書において遺言執行者を指定するのがよいでしょう。
特に、相続発生後に何らかのトラブルが懸念される場合には、弁護士を遺言執行者に指定することをおすすめします。遺言書による相続対策をご検討中の方は、弁護士へご相談ください。

大阪弁護士会所属。元国税職員の弁護士が、法務と税務の両面から相続問題の解決をサポートします。相続税に配慮した遺言書の作成や事業承継にも対応しております。相続問題や事業承継について不安や疑問のある方は、お一人で悩まずに、お気軽にご相談ください。