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更新日:2026/03/12

「スマホの中身」が原因で相続が泥沼に|デジタル遺産トラブルの最前線と埋蔵金にしないための対策を弁護士が解説

「スマホの中身」が原因で相続が泥沼に|デジタル遺産トラブルの最前線と埋蔵金にしないための対策を弁護士が解説
デジタル社会の進展に伴い、暗号資産(仮想通貨)やネット銀行・ネット証券の口座、電子マネーといったデジタル遺産は急速に身近なものとなりました。しかし、これらは不動産や預貯金と異なり実体がないため、相続発生後に家族が存在に気づかず、埋蔵金となってしまうケースが少なくありません。デジタル遺産特有の法的リスクと、後世に引き継ぐためにやっておきたい生前対策について、虎ノ門法律経済事務所の亀井 瑞邑弁護士に聞きました。

あなたのスマホの中身も遺産になる?デジタル遺産の範囲

スマートフォンやパソコンなどが普及した現代社会ならではの遺産として、「デジタル遺産」があります。デジタル遺産とは、スマートフォンやパソコンの中にデジタルデータとして存在するデータやインターネットサービスのアカウントなどをいいます。

具体的には、被相続人が開設したネット銀行やネット証券の口座、仮想通貨、インターネットサービスのアカウントなどを指します。また、スマホ決済の残高や、マイル・ポイント類も、規約によってはデジタル遺産として相続の対象になる場合があります。

デジタル遺産は、その性質から、「オフラインのデジタル遺産」と「オンラインのデジタル遺産」とに分けることができます。オフラインのデジタル遺産とは、パソコンやスマホなどのデジタル機器に保存されたデータであり、オンラインのデジタル遺産とはインターネットサービスのアカウントなどが考えられます。

デジタル社会の発展に伴い、ネット上に銀行口座や証券口座を開設する人は今後さらに増え、新しい仮想通貨もどんどん出てくるでしょう。2024(令和6)年11月20日、独立行政法人国民生活センターは「デジタル遺品」のトラブル事例とともに「デジタル終活」を推奨する旨の発表を行いました(※)。特に、現在50〜60代でデジタルに慣れている方が亡くなる頃には、デジタル遺産の問題はいよいよ本格化することが予想されます。

※参考:独立行政法人 国民生活センター「今から考えておきたい「デジタル終活」-スマホの中の“見えない契約”で遺された家族が困らないために-

デジタル遺産が「埋蔵金」化するワケ

預貯金や不動産などと同様に、デジタル遺産も相続の対象となることがあります。しかし、実体がないため、家族が存在に気づかないまま永遠に失われてしまうケースは少なくありません

また、「親が生前、仮想通貨やネット銀行を利用していると話していたが、具体的な金融機関名やID・パスワードが分からない」というケースもよくあります。手がかりを探そうにも、スマートフォンやパソコン自体のロックが解除できず、調査が頓挫することも珍しくありません。専門業者にロック解除を依頼することも可能ですが、多額の費用と時間がかかります。

口座情報やパスワードが不明な場合、一般の方が自力で遺産の所在を特定するのはかなり難しいといえます。弁護士であっても税務署のような強力な調査権限は有していないため、専門家が介入しても解明できず、全容が不明なまま「埋蔵金」となっているデジタル遺産は少なくないと思われます。

一方で、マイナスの遺産が増え続けるリスクがあるのもデジタル遺産の怖いところです。動画配信や会員制のサブスクリプションサービスなどは、本人以外が契約の存在に気づきにくく、死後もクレジットカードから引き落としが続いてしまう可能性があるため、注意が必要です。

今すぐ始められる!デジタル遺産の相続対策

相続発生後、家族がゼロからデジタル遺産を探し出すことは極めて困難です。したがって、所有者自身が生前にデジタル遺産に関する情報を整理し、誰にどれだけ渡したいか・ログインパスワードなどを遺言書やエンディングノートに記載しておくことが不可欠であり、それがこれからの時代におけるマナーといえます。

デジタル遺産のトラブルを防ぐための、具体的なアクションを紹介します。

情報の「見える化」が重要。サービス名称やログイン情報をリストアップ

デジタル遺産は「見えない」ことが最大のリスクなので、「見える化」することが重要です。デジタル遺産に関する以下のような情報をリストアップし、遺言書やエンディングノート、手帳などに記録しておくとよいでしょう。

  • 利用しているネット銀行やネット証券、サブスクリプションサービスなどの名称
  • 仮想通貨取引所の名称
  • ログイン用のIDとパスワード
  • スマートフォンやパソコンの二段階認証を解除する方法

また、デジタル遺産に関する情報をまとめてUSBメモリに移し、「私が死んだら、パソコンやスマホの中身は見なくていい(処分していい)から、このUSBだけ確認してほしい」と伝えておくのも1つの方法です。

「誰に何を渡すか」を明確に。遺言書作成のススメ

デジタル遺産の情報を整理することに加えて、「誰に何を渡すか」を遺言書で指定しておきましょう。特に仮想通貨やネット証券は、分割方法で揉めることが多い遺産です。法的な効力を持つ遺言書があれば、相続人はそこに記載された通りに遺産を分ければよく、手続きがスムーズに進みます。

その際に、「オフラインのデジタル遺産」と「オンラインのデジタル遺産」との違いに注意する必要があります。パソコン内のデジタルデータそれ自体(オフラインのデジタル遺産)は、単なるデータ情報であって民法上の「有体物」(民法85条)とは言い難く、所有権が認められていません。したがって、データそれ自体の相続・引継ぎを希望する場合には、そのデータが保存されているパソコンやスマホなどのデジタル機器自体を相続する必要があります。

反面、オンラインのデジタル遺産の場合には、本人(被相続人)とサービス提供者との契約の問題になることが多く、利用規約などを確認のうえで引継ぎの可否を検討する必要があります。

デジタル遺産の相続対策をしないことによる3つのリスクーー徒労感・家族関係の悪化・お金と時間の喪失

相続対策と聞くと「面倒だな」と感じて、後回しにしてしまう方もいるでしょう。ただ、デジタル遺産について何も対策をしなかった場合、残された家族にかかる負担は決して小さくありません。

そうであれば、現時点で対策を講じるのが一番コストパフォーマンスがいいのではないでしょうか。

残された家族にとって最も大きな負担は、存在するかどうかわからない遺産を探すストレスです。「どこかに多額の資産があるかもしれない」という不確かな情報を頼りに、実在するか定かではない遺産を延々と探し続ける徒労感は計り知れません。結局何も見つからなければ、調査費用と時間が無駄になるだけでなく、「誰かが隠したんじゃないか?」と、疑心暗鬼になり、残された相続人間で争いに発展するリスクがあります。

さらに、調査のために専門業者へ支払う高額な端末ロック解除費用や、調査が難航したことによる相続税申告の遅れ、あるいは後から資産が発覚したことによる過少申告加算税などのペナルティが発生し、本来得られるはずだった資産を目減りさせてしまうリスクも考えられます。デジタル遺産は比較的新しい問題で、法整備が追いついていないのが現状です。一度トラブルが発生すると、解決までに少なくない金額と時間を費やすことになる可能性があります。

トラブルの種を残さないために、遺言書を作成し、遺産の情報と、「自分としては、こういう形で遺産を引き継いでほしい」という思いを記載しておく。このような備えが、大切な家族を将来のトラブルから守ることにつながります。

スマホやパソコンの中身が遺産になる時代、今から準備を

これからの時代、ネット銀行での取引や仮想通貨の運用、クラウド上でのデータ保存などをする人はますます増えていくでしょう。デジタル遺産の相続は、誰にとっても見過ごせないテーマになると私は考えています。

デジタル遺産も他の遺産と同様、根本的に重要なのは、「家族に残したいか、残したくないか」という本人の意思です。残したくないなら、それはそれで1つの考え方であって、咎められるものではありません。

一方で、もし家族に残したいと思うなら、デジタル遺産に関する情報をリスト化し、誰に何をどのくらい渡すのかを遺言書に書いておきましょう。デジタル遺産は所在がわかりにくく、本人が準備しない限り他の人が調べることは困難なので、事前の対策は必須です。

自分だけで対策をすることが不安な場合は、ぜひ専門家に相談してみてください。弁護士や司法書士、税理士、銀行など誰でもよいので、ご自身が信頼できる専門家に相談することで、個別の事情を踏まえて、遺産をスムーズに引き継ぐための方法についてアドバイスを受けられます。

最も大切なのは、元気なうちに行動することです。後回しにして、その間に認知症が進んでしまったりすると対策が難しくなるため、早めの準備を心がけましょう。

【取材協力弁護士】

亀井 瑞邑弁護士/虎ノ門法律経済事務所 西宮支店

兵庫県宝塚市出身。関西大学法学部卒業、大阪大学法科大学院修了。

虎ノ門法律経済事務所の東京本店にて多様な実務経験を積み、現在は西宮支店長を務める。

特に中小企業法務、不動産、相続、高齢者問題などの分野に精通。「弁護士への相談はハードルが高い」という不安を払拭し、地元・阪神地区の身近な相談相手として、最良の解決策を提案している。

趣味は旅行、音楽鑑賞のほか、オーケストラでチェロを担当するなど多彩な一面も持つ。

登録番号:60317(兵庫県弁護士会)

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