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相続税
更新日:2026/09/02

不動産の相続税はいくら?評価方法・小規模宅地の特例と「分け方」の注意点を解説

監修者
高山弥生
東京都>中央区
VSG相続税理士法人
高山弥生
不動産の相続税はいくら?評価方法・小規模宅地の特例と「分け方」の注意点を解説
不動産の相続税は、まず土地・建物を決められた方法で評価し、ほかの財産と合算して計算します。この記事では、土地の路線価方式・倍率方式、建物の評価、小規模宅地等の特例による評価減をわかりやすく解説します。あわせて、不動産という「分けにくい財産」で起こりやすい分割のトラブルと備え方を解説します。
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不動産にかかる相続税の全体像をつかむ

不動産を含む相続税の計算の流れ

不動産は、多くの相続で財産の大きな割合を占めます。金額が大きいぶん相続税への影響も大きく、また現金のように単純に分けられないため、「評価」と「分け方」の両面で注意が必要な財産です。まずは全体像を押さえましょう。

不動産も「相続税評価額」で評価して合算する

相続税は、亡くなった人(被相続人)が残した財産の総額をもとに計算します。このとき不動産は、購入価格や売買相場そのものではなく、相続税の計算のために定められた「相続税評価額」で評価します。

土地と建物は、それぞれ別の方法で評価します。土地は路線価方式または倍率方式、建物は固定資産税評価額を使うのが基本です。こうして求めた不動産の評価額を、預貯金や株式などほかの財産と合算し、そこから借入金などの債務や葬式費用を差し引いて「正味の遺産総額」を出します。この総額が基礎控除を超えるかどうかで、相続税がかかるかどうかが決まります。

「評価・申告」は税理士、「分け方」は弁護士

不動産の相続では、専門家の役割を整理しておくと安心です。相続税評価額の算定や申告書の作成は税理士の得意分野であり、複雑な土地の評価や特例の適用は税理士に依頼するのが安心です。評価によっておさめる相続税にも大きな差が出ます。

一方、不動産を誰がどう相続するか(遺産分割)や、その過程での相続人間の対立は弁護士の領域です。不動産は分けにくいため、評価額や取得者をめぐって話がまとまらないことが少なくありません。この記事では評価・計算の基本を押さえたうえで、後半で「分け方」の注意点を弁護士の視点から解説します。

まずは税理士に相談すべきことと弁護士に相談すべきことを分けて考えることが、スムーズな相続への第一歩です。

土地の相続税評価額の求め方(路線価方式・倍率方式)

土地の相続税評価は、財産評価基準書で路線価の有無を確認し、路線価があれば路線価方式(路線価×補正率×面積)、なければ倍率方式(固定資産税評価額×倍率)で計算するという判定の流れと計算式を示した図

土地の評価は、不動産の相続税でもっとも重要で、税額を大きく左右するポイントです。評価方法は「路線価方式」と「倍率方式」の2つがあり、その土地がある地域によってどちらを使うかが決まっています。まずは、自分の土地がどちらにあたるかを確認するところから始めましょう。

まず確認:自分の土地は「路線価地域」か「倍率地域」か

土地の評価方法は、その土地が「路線価地域」か「倍率地域」かで決まります。どちらにあたるかは、国税庁の「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」で、土地の住所から調べられます。

道路ごとに価額(路線価)が定められている市街地は路線価方式、路線価が定められていない郊外や農村部などは倍率方式で評価します。路線価図で対象の道路に金額の記載があれば路線価地域、なければ評価倍率表を見て倍率を確認する、というのが大まかな見分け方です(倍率表の宅地欄に「路線」とある地域は、倍率地域でも路線価方式で評価します)。路線価図の細かな見方や調べ方は、土地の評価額をくわしく解説した記事でも紹介しています。

路線価方式:「路線価 × 補正率 × 面積」で計算する

市街地にある宅地の多くは、路線価方式で評価します。路線価とは、道路(路線)に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価額で、国税庁が毎年公表しています(路線価図には千円単位で表示され、たとえば「200」は20万円を表します)。

基本の計算式は、「1㎡あたりの路線価 × 補正率 × 面積(㎡)」です。たとえば、路線価が1㎡あたり20万円で、面積150㎡の使いやすい整形地(補正なし)であれば、20万円×150㎡=3,000万円が評価額の目安になります。補正率については、次の項目で説明します。

倍率方式:「固定資産税評価額 × 倍率」で計算する

路線価が定められていない地域の土地は、倍率方式で評価します。計算は、「固定資産税評価額 × 倍率」とシンプルです。

固定資産税評価額は、毎年市区町村から届く固定資産税の課税明細書や、役所で取得できる評価証明書で確認できます。かける倍率は、路線価と同じく国税庁の財産評価基準書(評価倍率表)に、地域・地目ごとに定められています。たとえば、固定資産税評価額1,000万円の土地で倍率が1.1なら、1,000万円×1.1=1,100万円が評価額です。

同じ面積でも、土地の形や条件で評価額は変わる(補正)

「隣の土地と同じ広さなのに評価額が違う」ということは珍しくありません。路線価方式では、土地の奥行きが極端に長い・短い、形がいびつ(不整形地)、間口が狭いといった使いにくさに応じて、評価額を下げる補正をするためです。反対に、2つ以上の道路に面する角地などの使い勝手のよい土地は、加算によって評価額が上がることもあります。

このほか、通行のために提供している私道部分や、一定の面積を超える「地積規模の大きな宅地」など、要件を満たせば評価額を下げられるケースもあります。こうした補正の判断は専門性が高く、適用の有無で評価額が大きく変わります。正確な補正は自分で判断せず、相続に強い税理士に確認するのが安心です。

貸している土地(貸宅地・貸家建付地)は評価が下がる

土地を他人に貸している場合は、自分で自由に使える土地(自用地)よりも評価額が下がります。利用に制約があるぶん、評価が調整されるためです。

他人に土地を貸して、その人が建物を建てている「貸宅地」は、おおむね「自用地としての評価額×(1−借地権割合)」で評価します。また、自分の土地にアパートなどを建てて貸している「貸家建付地」は、おおむね「自用地としての評価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」で評価し、借家人の権利があるぶん評価が下がります。

借地権割合は地域ごとに、借家権割合は全国一律30%と定められています。貸している不動産は評価が複雑になりやすいため、税理士に相談するとよいでしょう。

建物(家屋)の相続税評価額の求め方

土地に続いて、建物の評価方法を確認します。建物は土地より計算がシンプルです。

建物は固定資産税評価額がそのまま評価額

自宅など自分で使っている建物の相続税評価額は、原則として固定資産税評価額がそのまま評価額になります。倍率をかける必要はありません。固定資産税評価額は、固定資産税の課税明細書や役所の評価証明書で確認できます。

建築中の家屋など、固定資産税評価額がまだ付いていない場合は別の方法で評価しますが、完成した建物であれば固定資産税評価額を使うと覚えておけば十分です。

賃貸している建物(貸家)は評価が下がる

人に貸している建物(貸家)は、借りている人の権利があるぶん評価額が下がります。おおむね「固定資産税評価額×(1−借家権割合×賃貸割合)」で評価します。借家権割合は全国的に一定の割合が用いられ、賃貸割合はどれだけの部屋が実際に貸し出されているかを反映します。

アパートやマンションを賃貸しているケースでは、土地(貸家建付地)と建物(貸家)の両方で評価が下がるため、自宅だけの場合と比べて評価が複雑になります。こうした賃貸物件がある場合は、税理士に評価を依頼するのが安心です。

小規模宅地等の特例で評価額が大きく下がる

不動産の相続税を考えるうえで、もっとも影響が大きいのが「小規模宅地等の特例」です。要件を満たせば、土地の評価額を大幅に減額できます。

区分ごとの減額割合と限度面積(早見)

小規模宅地等の特例は、被相続人などが住んでいた土地や事業に使っていた土地について、一定の面積までの評価額を減額できる制度です。主な区分の減額割合と限度面積は、次のとおりです。

区分

主な用途

減額割合

限度面積

特定居住用宅地等

自宅の敷地

80%

330㎡

特定事業用宅地等

事業用の敷地

80%

400㎡

貸付事業用宅地等

賃貸用の敷地

50%

200㎡

たとえば自宅の敷地(特定居住用宅地等)なら、330㎡までの部分について評価額が80%も下がります。面積が330㎡以内で評価額5,000万円の土地であれば、条件を満たせば1,000万円まで下げられる計算で、相続税に与える影響は非常に大きいといえます。

用途で面積・割合が異なり、要件も複雑

この特例は減額幅が大きいぶん、適用要件がこまかく定められています。たとえば自宅の敷地では、配偶者が取得する場合、同居していた親族が取得して住み続ける場合など、誰が取得しどう使うかによって適用の可否が変わります。複数の区分を併用する場合には、限度面積の調整計算も必要です。

要件を満たすかどうかの判断は専門的で、適用を誤ると税額が大きく変わります。自分のケースで使えるかどうかは税理士に確認するとよいでしょう。特例の要件や具体的な計算については、小規模宅地等の特例をくわしく解説した記事もあわせてご覧ください。

不動産を含む相続税の計算の流れ

評価額が求められたら、不動産をほかの財産と合わせて相続税を計算します。ここでは全体の流れを簡単に確認します。

評価額を合算し、基礎控除を引いて課税遺産総額を求める

まず、不動産の評価額と預貯金・株式などを合算し、借入金などの債務や葬式費用を差し引いて「正味の遺産総額」を求めます。そこから「基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の人数)」を差し引いた残りが、実際に課税される「課税遺産総額」です。

正味の遺産総額が基礎控除以下であれば、原則として相続税はかかりません。不動産の評価額を正しく求め、使える特例を適用することが、税額を左右する重要なポイントになります。

総額を出して法定相続割合で按分し税率を掛ける

課税遺産総額が求められたら、いったん法定相続分で分けたものとして按分し、税率を掛けて税額を求めたあと、その税額を合算して相続税の総額を計算し、その総額を各人が実際に取得した財産の割合で按分します。誰がどの財産をどれだけ取得するかによって、各人の負担する税額が決まります。具体的な計算の手順は、相続税の計算方法をまとめた記事でくわしく解説しています。

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不動産の「4つの分け方」

不動産の分け方である現物分割・代償分割・換価分割・共有の4つについて、それぞれの特徴と、代償金・譲渡所得税・共有の紛争リスクといった注意点を比較して示した図

不動産の相続で本当に難しいのは、税額の計算よりも「誰がどう受け継ぐか(遺産分割)」であることが少なくありません。分けにくい不動産には、主に4つの分け方があります。

現物分割・代償分割・換価分割・共有の違い

不動産を含む遺産の主な分け方は、次の4つです。

  • 現物分割:不動産はそのまま特定の相続人が取得し、ほかの人は預貯金など別の財産を取得する方法。もっともシンプルですが、財産の構成によっては公平に分けにくいことがあります。
  • 代償分割:一人が不動産を取得し、その代わりにほかの相続人へ現金(代償金)を支払う方法。不動産を手放さずに済みますが、代償金を用意できる資力が必要です。
  • 換価分割:不動産を売却し、その代金を相続人で分ける方法。公平に分けやすい一方、売却益には譲渡所得税がかかる場合があります。
  • 共有:一つの不動産を複数の相続人が持ち分で共同所有する方法。その場では平等に見えますが、後述のとおり将来のリスクがあります。

どの方法が適しているかは、財産の内容や相続人の希望、納税資金の有無によって変わります。代償分割の代償金や換価分割の譲渡所得税など、税金がからむ部分は税理士にも確認しながら進めるとよいでしょう。

4つの分け方それぞれの手続きの流れや、名義変更にかかる費用・必要書類までは次の記事で確認できます。

安易な共有は将来の紛争リスクになる

一見公平に見える「共有」には、注意が必要です。不動産を共有にすると、売却や大規模な修繕、建て替えなどに共有者全員の同意が必要になり、一人でも反対すると身動きが取れなくなります。

さらに、共有者の誰かが亡くなると、その持ち分がその人の相続人へと引き継がれ、共有者がねずみ算式に増えていきます。世代が変わるほど関係が薄くなり、いざ売ろうとしても話がまとまらない、というトラブルに発展しがちです。目先の平等さだけで安易に共有を選ぶと、将来かえって深刻な紛争を招くことがあるため、慎重に検討する必要があります。

「とりあえず共有」を避けるために、話し合いの段階で押さえておきたい基本ルールはこちらにまとめています。

相続税評価額と、分割で使う「時価」は一致しないことがある

もう一つの落とし穴が、評価額の考え方の違いです。相続税を計算するときの「相続税評価額」(路線価など)と、遺産分割で不動産の価値をいくらとみるかの「時価(実勢価格)」は、必ずしも一致しません。一般に、路線価は実勢価格より低めに出る傾向があります。

たとえば、不動産を取得する人が「相続税評価額を基準にしたい」と考え、代償金を受け取る側は「実勢価格を基準にしたい」と考えると、同じ不動産でも取り分の認識が食い違い、対立の原因になります。どの評価を基準に分けるかは、相続人の話し合いで決めることになりますが、金額が大きいだけにもめやすいポイントです。

不動産の分け方でもめたときは弁護士へ

不動産の評価や取得者をめぐって話がまとまらないときは、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

依頼するとどこまで任せられるのか、費用は誰が負担するのかは、こちらで確認できます。

分割協議がまとまらないと、申告期限までに特例を使えないことがある

相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。ところが、遺産分割がまとまらないまま期限を迎えると、その時点では配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使えず、いったん本来より多い相続税を納めることになります。

ただし、申告のときに「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、その後3年以内に分割が確定した段階で特例を適用し、更正の請求によって払い過ぎた税金の還付を受けられます。とはいえ、余分な資金の立て替えや手続きの手間が生じるうえ、対立が長引くほど負担も重くなります。分け方を早くまとめることが、税金の面でも有利に働くのです(税務の手続きは税理士と連携して進めます)。

分け方は弁護士、評価・申告は税理士に分けて相談する

不動産の相続では、分け方の交渉や紛争の解決は弁護士、評価額の算定や申告は税理士、と役割を分けて相談するのが効率的です。弁護士が間に入ることで、感情的な対立を避けながら、法的な根拠にもとづいて分割を進めやすくなります。話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停に進みます。手続きの流れは、次の記事でくわしく解説しています。

不動産の具体的な分け方や必要書類については、次の記事も参考になります。

よくある質問

不動産だけで現金がない場合、相続税はどう払う?

相続財産の大半が不動産で、納税のための現金が足りないケースは少なくありません。この場合、不動産を売却して納税資金にあてる(換価分割)、生命保険金や手持ちの預貯金をあてる、といった方法が考えられます。どうしても一括で納められないときは、分割で納める延納や、一定の要件のもとで不動産などで納める物納という制度もあります。

ただし延納・物納には要件や手続きがあり、可否の判断は専門的なため、納税方法の詳細は税理士に相談しましょう。分け方の面では、売却して分ける方針をとるかどうかが、相続人間の話し合いのポイントになります。

不動産の評価は自分でもできる?

路線価方式や倍率方式の基本的な計算は、国税庁の資料を使えばご自身でおおよそを把握することも可能です。

ただし、土地の形状に応じた補正、貸宅地・貸家建付地の評価、小規模宅地等の特例の適用などは判断が難しく、評価を誤ると相続税を納めすぎたり、逆に過少申告を指摘されたりするおそれがあります。

正確な評価と申告は、相続税に強い税理士に依頼するのが安心です。

不動産を共有で相続してもよい?

共有は、その場では公平に見えますが、売却や活用に共有者全員の同意が必要になり、代替わりで共有者が増えて話がまとまりにくくなるなど、将来の紛争リスクが高い分け方です。

特別な事情がない限り、共有はできるだけ避け、現物分割・代償分割・換価分割での解決を検討することをおすすめします。共有を避ける分け方で意見が対立しそうなときは、早めに弁護士へ相談するとよいでしょう。

まとめ

不動産の相続税は、まず土地を路線価方式または倍率方式で、建物を固定資産税評価額で評価し、ほかの財産と合算して計算します。自宅の敷地などは小規模宅地等の特例で評価額が最大80%下がるため、使えるかどうかで税額が大きく変わります。評価や特例の適用、申告は、相続税に強い税理士に相談すると安心です。

一方で、不動産は「分けにくい財産」です。現物分割・代償分割・換価分割・共有という4つの分け方には、それぞれ代償金や譲渡所得税、共有の紛争リスクといった注意点があります。とくに相続税評価額と実勢価格(時価)の違いは、取り分の認識のずれを生み、もめる原因になりがちです。

分け方でもめると、正確な申告や特例の適用にも支障が出て、税負担の面でも不利になりかねません。分け方の交渉や紛争の解決は弁護士、評価・申告は税理士と、相談先を分けて考えましょう。不動産の分け方で対立しそうなときは、まずは一度、弁護士の初回相談で進め方を確認しておくと安心です。

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高山弥生
東京都>中央区
VSG相続税理士法人
高山弥生(東京地方税理士会所属)
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