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二次相続とは、最初の相続で財産を受け取った配偶者が亡くなり、子どもがその財産を相続する2回目の相続のことです。まずは言葉の意味と、なぜ二次相続が問題になるのかを整理しておきましょう。

たとえば、父・母・子どもの家庭で父が亡くなったとします。このとき、母と子どもが父の財産を相続します。これが「一次相続」です。
その後、母が亡くなり、子どもが母の財産(母がもともと持っていた財産+父から引き継いだ財産)を相続します。これが「二次相続」です。
つまり、父から子へ財産が渡るまでに、相続が2回起こることになります。一次相続で母が多くの財産を受け取っても、夫婦は同年代であることが多く、その財産は近いうちに二次相続で子どもへと引き継がれ、そこで改めて相続税がかかります。
一次相続と二次相続は、別々の相続として一つずつ手続きが必要です。一次相続のときに「二次相続まで含めてどう分けるか」を考えておくと、家族全体の負担を大きく減らせることがあります。
一次相続では、配偶者控除(配偶者の税額軽減)という強力な制度があり、配偶者は1億6,000万円または法定相続分まで相続税がかかりません。そのため「母に全部相続させれば税金は0円」と考えがちです。
しかし二次相続では、この配偶者控除が使えないうえ、相続人の人数が減るなど条件が不利になります。一次相続の税額だけを見て分け方を決めると、一次と二次を合わせたトータルで損をしてしまうことがあるのです。
二次相続で子どもの負担が重くなりやすいのには、主に次の6つの理由があります。
まず、一次相続と二次相続で条件がどう変わるのかを見てみましょう。
項目 | 一次相続(父の相続) | 二次相続(母の相続) |
|---|---|---|
相続人 | 母+子 | 子のみ(1人減る) |
配偶者の税額軽減 | 使える | 使えない |
基礎控除・非課税枠 | 相続人が多く大きい | 相続人が減り小さくなる |
相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」で計算します。二次相続では相続人が1人減るため、基礎控除が600万円分小さくなります。その分、課税される財産が増えます。
一次相続で使えた配偶者控除は、配偶者が受け取った財産のうち1億6,000万円または法定相続分まで相続税をゼロにできる、非常に大きな制度です。二次相続では配偶者がいないため、この軽減がまったく使えません。
一次相続で「配偶者控除があるから」と母に財産を寄せるほど、その財産が二次相続でまるごと課税される、という関係になります。ここが二次相続で税負担が跳ね上がる最大の要因です。
亡くなった人が加入していた生命保険金には、「500万円×法定相続人の人数」までの非課税枠があります。二次相続では相続人が1人減るため、この非課税枠も500万円分小さくなります。
自宅の土地の評価額を最大80%減らせる「小規模宅地等の特例」は、配偶者が相続する場合は無条件で使えます。しかし二次相続で子どもが使うには、同居していたなどの要件を満たす必要があり、ハードルが上がります。
二次相続では、母がもともと持っていた財産に、父から引き継いだ財産が上乗せされます。課税の対象になる財産そのものが大きくなりやすいのです。
相続税は、受け取る財産が多いほど税率が上がる累進課税です。上記の理由で課税対象が膨らむと、より高い税率の区分が適用されやすくなります。同じ財産でも、相続人が少ない二次相続のほうが高い税率で課税されやすい、というイメージです。
これら6つが重なることで、一次相続と二次相続を合計した税額が、かえって増えてしまうことがあります。とくに、一次相続で母にほとんどの財産を相続させたケースほど、この影響が大きく出ます。
言葉だけではイメージしにくいので、具体的な数字で見てみましょう。遺産が1億円、相続人が母と子ども1人のケースで比べます(母自身の財産はないものとします)。
まず前提として、一次相続の基礎控除は「3,000万円+600万円×2人=4,200万円」なので、課税対象は1億円から4,200万円を引いた5,800万円です。これを法定相続分で計算すると、一次相続の相続税の総額は770万円になります。この770万円を、実際にどう分けたかに応じて母と子で負担します。
一次相続で母が1億円をすべて相続すると、相続税の総額770万円は母に割り当てられますが、配偶者控除によって0円になります。つまり一次相続の税額は0円です。
一見、これがいちばん得に見えます。しかし問題は次の相続です。
二次相続では、子どもが1億円を1人で相続します。相続人が1人なので基礎控除は3,600万円まで下がり、差し引いた6,400万円に課税されて、相続税は1,220万円になります。配偶者控除も使えません。
一次と二次を合わせると、合計1,220万円です。
一方、一次相続で母と子どもが法定相続分どおりに5,000万円ずつ相続したとします。
一次相続では、総額770万円が385万円ずつに分かれ、母の分は配偶者控除で0円、子どもは385万円を納めます。
二次相続で子どもが相続するのは母の5,000万円だけなので、基礎控除3,600万円を引いた1,400万円に課税され、税額は160万円で済みます。
一次と二次を合わせると、合計545万円です。

2つの分け方を並べると、差は一目瞭然です。
税額 | 配偶者が全部(1億円)相続 | 法定相続分で分ける(各5,000万円) |
|---|---|---|
一次相続 | 0円 | 385万円 |
二次相続 | 1,220万円 | 160万円 |
合計 | 1,220万円 | 545万円 |
配偶者に全部相続させたほうが、トータルでは675万円も多く納める結果になりました。「一次相続で0円だから得」と考えると、家族全体では損をしてしまうことがあるのです。
※金額は前提によって変わるため、あくまで目安です。実際の税額は、財産の内容や配偶者自身の財産、遺産の総額によって変わります。とくに配偶者がもともと多くの財産を持っている場合は、二次相続の負担がさらに大きくなりやすい点に注意しましょう。
では、どう分ければよいのでしょうか。二次相続まで含めて考えるときの、一次相続の分け方のポイントを紹介します。
これから値上がりしそうな土地や、家賃収入を生む収益物件(アパートなど)は、一次相続で子どもが相続しておくと有利になりやすいです。
母がこれらを相続すると、値上がり分や貯まった家賃が母の財産に上乗せされ、二次相続の課税対象がふくらんでしまうためです。
たとえば家賃収入のあるアパートを母が相続すると、毎年入る家賃が母の預金として積み上がり、その分も二次相続で課税されます。逆に子どもが相続していれば、その家賃は二次相続の課税対象になりません。
自宅の土地は、小規模宅地等の特例を使えるかどうかで評価額が大きく変わります。誰が相続すれば特例を使えるかを確認したうえで分けると、一次・二次の両方で負担を抑えやすくなります。
たとえば被相続人と母、子どもが同居している場合、一次相続でその子どもが自宅を相続すれば特例を使えるため、子どもの納税額を抑えることができます。母が自宅を相続すると、配偶者控除により税額が軽減される母の財産額を圧縮することになります。
同居している子どもがいるかどうかなど、家庭の状況によって最適な分け方は変わるため、専門家に確認しながら決めると安心です。なお、小規模宅地等の特例も配偶者控除も、適用を受けるには相続税の申告が必要です。
配偶者居住権とは、配偶者が自宅に住み続ける権利だけを取得し、自宅の所有権は子どもが取得する、という分け方です。
配偶者は住まいを確保でき、二次相続のときには配偶者居住権が消滅して課税の対象にならないため、二次相続の負担を抑える方法として使われます。仕組みやメリットは、次の記事でくわしく確認できます。
一次相続の分け方が終わったあとでも、二次相続に向けてできる対策があります。
母が元気なうちに、子どもや孫へ少しずつ生前贈与をしておくと、二次相続で課税される財産を減らせる場合があります。贈与には1年間に110万円まで贈与税がかからない枠(暦年課税の基礎控除)があり、これを活用する方法が一般的です。
ただし、毎年同じ時期に同じ額を贈与すると、最初からまとまった額を贈与する約束だったとみなされ、全体に贈与税がかかることがあります。贈与のたびに贈与契約書を作る、金額や時期を固定しすぎない、といった進め方の工夫が必要です。
また、亡くなる前の一定期間内に受けた贈与は相続財産に加算され、相続税の対象になるルールもあります。この加算の対象期間は、2024年(令和6年)1月1日以後の贈与から段階的に延びていきます。2026年9月時点で相続が開始した場合の加算対象は「相続開始前3年以内」で、令和13年(2031年)1月1日以後に開始した相続で7年以内となります。延長された4年分については、合計100万円までは加算されないとされています。
早く始めるほど、このルールの影響を受けにくくなります。節税になるかどうかは状況によって変わるため、実行の前に税理士に相談すると安心です。
生命保険金には「500万円×法定相続人の人数」までの非課税枠があります。母が受け取った財産の一部を生命保険金に変えておくと、二次相続でこの非課税枠を使え、納税資金の準備にもなります。
生命保険金は、亡くなった人の財産とは別に受取人が受け取る「みなし相続財産」として扱われます。詳しいしくみは、次の記事も参考になります。
一次相続から10年以内に二次相続が起きた場合は、「相次相続控除」という制度で相続税の一部が軽くなることがあります。これは、短い間に相続が続くと同じ財産に相続税が二重にかかる負担を和らげるための制度で、一次相続から二次相続までの期間が短いほど控除できる額が大きくなります。
高齢のご夫婦で、一次相続から間もなく二次相続が起きたようなケースでは、適用できないか必ず確認しておきましょう。
二次相続は、相続税だけの問題ではありません。じつは、一次相続よりも兄弟姉妹の間でもめやすいという特徴があります。ここは税理士の視点から、特に注意してほしいポイントです。
一次相続では、残された母が「まあまあ」と子どもたちの間を取り持つことができます。しかし二次相続では、その母がいません。
子ども同士が直接向き合うことになり、それぞれの生活や事情もあって、意見がぶつかりやすくなります。親の介護をどれだけ担ったか(寄与分)、生前にどれだけ援助を受けたか(特別受益)といった主張が出て、話し合いがこじれることも少なくありません。
とくに、母と同居して介護をしてきた子どもと、遠方で暮らしていた子どもとの間では、「自宅を継ぎたい」「法定相続分どおりに現金でほしい」といった希望が食い違いやすく、二次相続をきっかけに関係が悪化してしまうこともあります。
さらに注意したいのが、一次相続の遺産分割を済ませないうちに、二次相続が起きてしまったケースです。
この場合、父の相続と母の相続が二重に重なり、相続人の数も増えて、手続きが非常に複雑になります。誰がどの財産をどの割合で相続するのかを一つずつ整理しなければならず、放置していると当事者が増えて解決がどんどん難しくなります。
たとえば、父の相続を済ませないうちに母が亡くなると、父の遺産分割協議には「母の相続人(子どもたち)」が母の立場を引き継いで参加することになります。もし子どもの誰かがすでに亡くなっていれば、その配偶者や孫まで加わり、話し合いの当事者がどんどん増えていきます。時間が経つほど関係者が増え、連絡を取ることすら難しくなっていくのです。
実際に、弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」にも「父の相続を済ませないうちに母が亡くなり、遺産分割協議書をどう作ればよいかわからない」という相談が寄せられています。
二次相続は、感情的な対立が起きやすく、放置するほど解決が難しくなります。話し合いがまとまりそうにないと感じたら、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士が間に入ることで、法的な根拠にもとづいて冷静に話し合いを進められます。話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所の調停に進むことになります。手続きの流れや進め方は、次の記事でくわしく解説しています。
はい。むしろ、二次相続対策は父母が元気なうちから始めるほど選べる手段が増えます。生前贈与や生命保険金の活用、遺言書の準備などは、早く動くほど効果が出やすくなります。
前の配偶者との間に子どもがいる場合、その子どもも、現在の配偶者との子どもと同じ順位の相続人になります。二次相続では、ふだん交流のない相手と遺産分割を話し合うことになり、もめやすい典型的なケースです。連絡先がわからなかったり、話し合いに応じてもらえなかったりすることもあります。早めに専門家に相談し、遺言書などで備えておくと安心です。
あります。子どものいない夫婦では、配偶者が亡くなると、その配偶者の親や兄弟姉妹が相続人になります。誰が相続人になるかがわかりにくく、思わぬ人との話し合いが必要になることもあるため、生前の対策が特に大切です。
二次相続とは、一次相続で財産を受け取った配偶者が亡くなり、子どもがその財産を相続する2回目の相続です。
二次相続では配偶者控除が使えず、基礎控除や生命保険金の非課税枠も小さくなるため、一次相続で配偶者に財産を集めすぎると、トータルの相続税がかえって高くなることがあります。
大切なのは、一次相続の税額だけで判断せず、二次相続まで見据えて分け方を考えることです。
そして二次相続は、親という調整役がいないぶん、兄弟姉妹の間でもめやすい相続でもあります。
税額の有利・不利のシミュレーションは税理士に、分け方でもめそうなときや一次相続が終わっていないうちに次の相続が起きたときは弁護士に、まずは一度相談してみましょう。早めに動くほど、選べる対策も、円満に解決できる可能性も広がります。
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VSG相続税理士法人溝の口オフィス代表税理士。実務の傍ら、執筆やセミナー講師を務める。東京地方税理士会所属。VSG相続税理士法人では、相続税申告において日本最大級の実績とノウハウにより、顧客の立場に立って一番有利な相続アドバイスを行う。グループの行政書士・司法書士・社会保険労務士法人と連携をとり、あらゆる相続の悩みに対応している。