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「贈与をもらったら確定申告」と検索している方は多いのですが、正確には少し違います。
もらった財産にかかるのは贈与税で、その手続きは所得税の確定申告とは別の「贈与税の申告」です。名前が似ているので混同しやすいところですが、まずここを整理しておきましょう。
ふだん「確定申告」と呼ばれているのは、1年間のもうけ(所得)にかかる所得税を計算して申告・納税する手続きです。
会社員の給料、個人事業主の事業のもうけ、株の利益などが対象になります。つまり「働いたり運用したりして得た収入」に対する税金の手続きです。
一方、贈与でもらった財産は、自身が働いて稼いだ「所得」ではありません。
もらった財産には所得税はかからず、代わりに贈与税がかかる——これが出発点です。だから、もらった財産を所得税の確定申告書に書くことはありません。書く場所も、使う申告書も、所得税とはまったく別だと考えてください。
個人事業主などで毎年所得税の確定申告をしている方も、贈与でもらった分を確定申告書に一緒に書くわけではありません。
贈与税は、贈与税の申告書で別に申告します。 提出先はどちらも税務署ですが、書類も申告期間も別ものです。所得税の申告に足し込む必要はありません。
会社員の方は、ふだんの所得税は勤務先の年末調整で精算されるため、自身で確定申告をした経験がない方も多いはずです。
ただ、贈与税は年末調整では処理されません。贈与を受けて申告が必要になった場合は、会社員でも自身で贈与税の申告書を作って税務署に出すことになります。勤務先が代わりに手続きしてくれるものではありません。
「申告したら住民税や社会保険料が上がるのでは」と心配される方がいますが、贈与税の申告をしても、そのことで住民税や国民健康保険料が上がることはありません。
住民税や国保の保険料は所得(もうけ)をもとに計算されますが、贈与でもらった財産は所得ではないためです。会社員の方が気にされる「勤務先に知られるのでは」という点も、贈与税の申告自体が勤務先に通知されるしくみはありません。

贈与税の申告が必要かどうかは、「もらった金額」と「使う制度」で決まります。
まず、申告が必要になる代表的なケースを見ていきましょう。
贈与税には、1年間(1月1日〜12月31日)にもらった財産の合計から差し引ける基礎控除110万円があります(暦年課税)。
暦年課税とは、1年ごとにもらった財産を合計して贈与税を計算する原則的な方法をいいます。1年間の合計が110万円を超えた人は、超えた分について贈与税の申告が必要です。もらった相手が複数いても、合計で判断します。
相続時精算課税とは、60歳以上の親や祖父母などから、18歳以上の子や孫が贈与を受けるときに選べる制度で、まとまった額を贈与しても2,500万円までは贈与税がかからない代わりに、相続のときにまとめて精算するしくみです。
この制度を使うには、選ぶ最初の年に「相続時精算課税選択届出書」を申告書と一緒に出す必要があります。
2024年(令和6年)以降は、この制度にも年110万円の基礎控除が設けられ、選んだ翌年以降は、その年の贈与が110万円以下なら申告はいりません。一度選ぶと暦年課税には戻せないなど注意点も多いため、選択は慎重に判断しましょう。
おしどり贈与(贈与税の配偶者控除)とは、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、住むための自宅や自宅の購入資金を贈与したときに、基礎控除110万円とは別に最高2,000万円までを控除できる特例です。
この特例を使えば税額がゼロになることもありますが、特例を使うには申告が必要です。だまっていて自動で適用されるものではありません。
親や祖父母から住宅の購入・新築・増改築のための資金をもらった場合、一定額まで贈与税が非課税になる特例があります(住宅取得等資金の非課税)。
非課税の限度額は住宅の性能や契約の時期によって変わります。この特例も、適用を受けるには期限内の申告が必要です。
ここが特に間違えやすいところです。おしどり贈与・住宅取得等資金の非課税や、相続時精算課税の2,500万円の特別控除は、税額がゼロでも、申告しなければ特例そのものが使えません(相続時精算課税で年110万円の基礎控除の範囲に収まる分は、選んだ翌年以降は申告不要です)。
「非課税だから申告しなくていい」と思って期限を過ぎると、特例が適用されず、あとから贈与税を求められることがあります。 税金がかからない場合でも、特例を使うなら必ず申告する、と覚えておきましょう。
実際に、弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」にも「住宅資金を親から援助してもらい、確定申告のときに贈与の申告をするよう言われたが、どう申告すればよいか戸惑っている」という相談が寄せられています。
一方で、申告がいらないケースもあります。
1年間にもらった財産が110万円以下なら、暦年課税では申告は不要です。また、親などから受け取る生活費や教育費(必要な都度、通常必要な範囲のもの)、常識的な範囲のお祝い金・香典・お見舞いなどは、そもそも贈与税がかからず申告もいりません。
ここからは、実際に申告するときの流れを順番に見ていきます。
税額の計算そのものは制度が複雑なため、ここでは全体像をつかむことを優先します。
申告の前に、まず「その贈与が本当に成立しているか」を確かめておきましょう。
贈与は、あげる人と「あげます・もらいます」という双方の合意があって初めて成立します。よくつまずくのが、親が子ども名義の口座にお金を入れていただけで、子どもがその口座を管理も使用もしていないケースです。
こうしたお金は名義預金と呼ばれ、贈与とは認められず、名義人ではなく元のお金を出した人の財産のままと扱われることがあります。
のちの相続の際に税務調査で問題になったり、相続人どうしの争いの火種になったりもします。贈与契約書を作る/もらう側の口座で本人が管理するといった形を整えておくことが大切です。
実際に、弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」にも「相続を見据えて妻へ生前贈与したいが、妻名義の口座に移した名義預金が贈与とみなされるのか、税務署の判断が不安」という相談が寄せられています。
次に、その年の1月1日から12月31日までにもらった財産をすべて洗い出します。
現金だけでなく、不動産・株式・自動車なども贈与の対象です。もらった相手が複数いる場合は、すべて合計して判断します。
洗い出した財産の合計から基礎控除などを差し引き、税率をかけて税額を計算します。
贈与税の税率は、もらった額が大きいほど高くなり、親子・祖父母孫の間の贈与かどうかでも変わります。具体的な税率や計算方法は複雑なので、国税庁のタックスアンサーや税理士に確認しながら進めると安心です。
税額の見当がついたら、贈与税の申告書と、使う制度に応じた添付書類をそろえます。
どの申告書を使うか、何を添付するかは、暦年課税か相続時精算課税か、特例を使うかで変わります。くわしくは後の見出しで説明します。
最後に、申告書を税務署に提出し、期限までに贈与税を納めます。
申告と納税はどちらも同じ期限までに済ませる必要があります。提出先は、もらった人(受贈者)の住所地を管轄する税務署です。
110万円を少し超えただけの現金の贈与など、内容がシンプルなケースは、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば自身で申告できることも多いです。
一方で、不動産の贈与、相続時精算課税や各種特例を使う場合、金額が大きい場合は、評価や書類が複雑になり、判断を誤ると税額が変わってしまいます。こうしたケースは、無理をせず早めに税理士に相談すると安心です。
相談先の選び方(弁護士・司法書士・税理士の違い)は、次の記事でくわしく解説しています。
(確認用:遺産相続の相談先はどこ?誰に頼む?弁護士・司法書士・税理士の違いと費用)

贈与税の申告には、はっきりとした期限があります。
所得税の確定申告とは期間が少しずれるので、注意しましょう。
贈与税の申告期間は、財産をもらった年の翌年の2月1日から3月15日までです。
たとえば2025年中にもらった贈与は、2026年2月1日〜3月15日が申告期間になります。所得税の確定申告(2月16日ごろから)より少し早く始まる点に気をつけてください。
贈与税を納める期限も、申告期限と同じ3月15日までです。
申告だけ済ませて納税を忘れると延滞税がかかることがあります。うっかり忘れを防ぐため、申告と納税は同じタイミングで済ませておきましょう。
3月15日が土曜・日曜・祝日にあたる年は、期限が次の平日にずれます。
ただ、ぎりぎりを狙うと書類の不備に対応しきれないこともあるため、日付の余裕をもって準備を進めるのがおすすめです。
贈与税を一度に現金で納めるのが難しいときは、分割して納める延納という方法があります。
延納を使うには、贈与税額が10万円を超えていること、担保を用意することなどの条件があり、期限までに申請が必要です。利子税が別にかかるため、使えるかどうかも含めて税務署や税理士に確認しましょう。
贈与税の申告書は、使う制度によって書く用紙や添える書類が変わります。
代表的な組み合わせを見ておきましょう。
贈与税の申告書は、主に次の3つを使い分けます。
暦年課税だけなら第一表、特例を使う場合はそれぞれ対応する用紙を組み合わせます。記入の細かな方法は国税庁の手引きにゆずりますが、「どの用紙を使うか」をまず押さえておくと迷いません。
どのケースでも共通して、本人確認書類(マイナンバーカードなど)が必要になります。
暦年課税で現金をもらっただけのシンプルなケースなら、基本的には申告書と本人確認書類でそろいます。
相続時精算課税を選ぶ最初の年は、申告書に加えて「相続時精算課税選択届出書」を提出します。
あわせて、贈与をする人・受ける人の関係や年齢が要件を満たすことを確認できる戸籍関係の書類などが必要になります。
おしどり贈与を使うときは、婚姻期間が20年以上あることや、対象の不動産に住んでいることなどを示す書類が必要です。
具体的には戸籍謄本や登記事項証明書などをそろえることになります。婚姻期間の要件を満たすことを示す書類は忘れやすいので注意しましょう。
住宅取得等資金の非課税を使うときは、購入・新築した住宅の契約書や登記事項証明書など、住宅にお金を使ったことを示す書類が必要です。
対象になる住宅の要件もあるため、契約前に条件を確認しておくと安心です。
土地や建物などの不動産をもらった場合は、その不動産の評価額を計算するための書類(登記事項証明書、固定資産税の課税明細書など)が必要になります。
不動産の評価は専門的で、金額も大きくなりやすいため、税理士に相談しながら進めるのが安心です。
申告書ができたら、提出と納税をします。
それぞれ複数の方法があるので、自身に合うやり方を選びましょう。
申告書の出し方は、大きく次の3つです。
自身の住所地を管轄する税務署が提出先です。混み合う時期を避けたい方には、e-Taxや郵送が使いやすいでしょう。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使うと、画面の案内に沿って入力するだけで申告書を作成でき、そのままe-Taxで送信できます。
マイナンバーカードとスマホがあれば、税務署に行かずに手続きを完結できることも多いです。手書きが不安な方は、まず作成コーナーを試してみるとよいでしょう。
申告書は、提出して終わりではなく控えを手元に残しておくと安心です。
住宅ローンやその後の税務の場面で、申告した内容の確認を求められることがあるためです。e-Taxで申告した場合は、送信後に受信通知やデータを保存しておきましょう。紙で出す場合は、控え用のコピーも用意しておくと確実です。
贈与税の納め方にはいくつかの選択肢があります。
金融機関や税務署の窓口での現金納付、口座振替(ダイレクト納付)、クレジットカード納付、スマホアプリ納付などです。方法によって手数料や利用できる上限額が異なるため、金額に合った方法を選びましょう。いずれの方法でも、期限内に納めることが大切です。
申告や納税が期限に遅れると、本来の贈与税にペナルティの税金が上乗せされます。
どんなときに何が増えるのかを知っておきましょう。
申告が必要なのに期限までにしなかった場合、本来の贈与税に加えて無申告加算税がかかることがあります。
税率は納める税額の大きさなどによって変わります。ただし、税務署の調査を受ける前に自身で気づいて申告すれば、加算税が軽くなる扱いがあります。遅れに気づいたら、放置せず早めに申告するのが有利です。
納税が期限に遅れると、遅れた日数に応じて延滞税がかかります。
延滞税は納期限の翌日から日割りで計算され、遅れるほど負担が増えていきます。申告はできても納税が遅れると延滞税がつくため、納付も忘れずに期限内に済ませましょう。
財産を意図的に隠したり、事実を偽ったりして申告しなかった場合は、無申告加算税に代えて、より重い重加算税が課されることがあります。
悪質と判断されると負担は大きくなります。「少しくらい黙っていても」という考えは、かえって高くつくと理解しておきましょう。
うっかり期限を過ぎてしまっても、気づいた時点でできるだけ早く申告・納税することが大切です。
前述のとおり、調査を受ける前の自主的な申告なら加算税が軽くなる扱いがあります。「過ぎてしまったからもういい」ではなく、早く動くほど上乗せを抑えられます。
申告した後で計算の誤りに気づくこともあります。
税額が少なすぎた場合は「修正申告」で正しい額に直します。反対に税額を多く納めすぎていた場合は「更正の請求」で還付を受けられることがあります。誤りに気づいたら、こちらも早めに手続きしましょう。
贈与でもらった財産の申告は、所得税の確定申告とは別の「贈与税の申告」です。
1年間にもらった額が110万円を超えた人や、相続時精算課税・おしどり贈与・住宅取得等資金の非課税を使う人は申告が必要で、これらの特例は税額がゼロでも申告しないと使えません。
申告と納税の期限は、もらった年の翌年の2月1日から3月15日まで。遅れると加算税や延滞税が上乗せされるので、早めの準備が安心です。
贈与税は、税額の計算や特例の適用、不動産の評価などが複雑で、判断を誤ると納める税額が変わってしまう分野です。
とくに不動産をもらった・金額が大きい・複数の特例を使うといったケースや、名義預金など「そもそも贈与が成立しているか」に不安がある場合は、迷ったまま進めないことが大切です。
まずは一度、税理士への初回相談で、自身のケースで申告が必要か、どの特例をどう使えば有利かを確認しておきましょう。期限が近いときほど、早めに相談することが、余計な税負担を防ぐことにつながります。
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VSG相続税理士法人溝の口オフィス代表税理士。実務の傍ら、執筆やセミナー講師を務める。東京地方税理士会所属。VSG相続税理士法人では、相続税申告において日本最大級の実績とノウハウにより、顧客の立場に立って一番有利な相続アドバイスを行う。グループの行政書士・司法書士・社会保険労務士法人と連携をとり、あらゆる相続の悩みに対応している。