生前対策からトラブル解決までお任せください。調停委員や相続財産清算人を経験、不動産処分にも強み
東京都新宿区で法律事務所 穂(みのり)を経営する五十嵐康之弁護士(第一東京弁護士会)に、相続案件の相談で心がけていることや強みについて聞きました。家事調停委員を3期経験し、相続財産清算人(相続財産管理人)の豊富な実績もある五十嵐弁護士。相続で問題になりやすい不動産の処分についてもノウハウがあり、「不動産が多いものの現預金が少ないという方はぜひご相談ください」と呼びかけています。
インタビュー
調停委員を3期経験、裁判官の考え方を熟知
事務所設立の経緯を教えてください。
1999年に弁護士になり、2024年で弁護士歴25年を迎えます。これまでずっと同じ事務所に所属していたのですが、2022年11月に「法律事務所 穂(みのり)」を設立しました。
事務所名には、個人や会社のお客様を支えることで、お客様が大きく繁栄・成長(実る)ように、そして弊事務所も一緒に成長するようにという願いをこめています。現在は、中小企業の顧問業務、事業承継・M&A、そして生前対策や相続トラブルの解決などの相続案件に注力しています。
相続ではどのようなご相談が多いですか。
遺産分割協議で折り合いがつかずに来られる方が多いです。まずは交渉から入りますが、相続人間で言い分が対立していると交渉だけで解決することは少ないので、調停を見越すことが多いですね。
2012年から東京家庭裁判所の家事調停委員を3期経験されたとのことですが、調停委員を経験して感じたことはありますか。
相続人それぞれで見ているものは違うということです。例えば、一方は「自分が面倒を見たんだから、自分が財産を多くもらって当然だろう」と考えていても、もう一方は「あの兄弟は親の財産を隠しているんじゃないか」と考えていることもあります。
弁護士は、一方の当事者である依頼者を中心に話を聞いていきます。先方の主張は調停委員づてに聞くことが多く、「依頼者の主張を妨げるようなことを言っている」と思いがちですが、それぞれに自分の正義や言い分があります。
調停委員は早期解決を目指しており、遺産分割調停の流れは相続人の確定、遺産の確定、遺産の評価、遺産の分割方法と決まっています。自分の主張を押し通してもなかなか前に進みません。依頼者の方には、調停委員や裁判官がどのように考えるか、なぜこういったシステムになっているのかを丁寧にご説明するようにしています。
遺言書や不動産売買…最適な生前対策をご提案します
相続財産の中に不動産があると揉めやすいと聞きます。どのように進めていきますか。
たしかに、相続財産の中に不動産があると、争いが深刻になる可能性があります。まずは、依頼者が不動産が欲しいのか、それとも代償金としてもらえれば良いのか、ご意向を確認していきます。
不動産は預貯金のように均等に分割すれば解決するわけではありません。大きな土地を半分にすれば、面積自体は平等になるかもしれませんが、接道(敷地に面している道路)次第では価値が全く変わることもあります。
例えば、大きな道路に接している方は坪当たり100万円でも、細い道路しかない方は坪当たり10万円に落ちるということもあります。普段から不動産の絡む相続をよく扱っていますので、こうした細かいところまで考えていきます。
生前対策にも力を入れているとのことですが、どのようなことをするのでしょうか。
遺言書の作成や家族信託、不動産売買、保険加入、生前贈与、任意後見など取れる対策は豊富にあります。まずはお話を伺った上で、それぞれの方にどのような対策が必要かをご提案していますので、ご安心ください。
遺言書では遺留分対策をすることが重要です。仮に遺産を一人に相続させたい場合、遺言書でそのように書くことは可能ですが、その一人の相続人が後々紛争に巻き込まれる可能性があります。ですので、遺留分を侵害するのかしないのかはとても大切です。仮に遺留分侵害額請求をされた場合に、もらった側がすぐに払えるくらいの現預金を用意しておくという方法もあります。
親の立場から「子どもたちは仲が良いから大丈夫」だと思っていても、親が亡くなり親の重しが外れた時には、兄弟間の思惑は露骨に出るものです。そこで初めて「兄は何々をしてもらっていたのに、私は何もしてもらえなかった」などと争いが表面化することがあります。
遺言書を作ればそれで終わりではなく、普段から「こういうふうに自分の財産は分けることにするよ」と子どもたちに説明しておくことも大切です。
兄弟間で明らかに差がある遺言の執行をしたことがありますが、もらえない側の方が「親がこう言っていたからそれでいい」と納得されていたことがありました。何も言わないで遺言を作った場合に比べて、子どもたちが納得する割合が高いのではないかと思います。
これまで取り組んできた相続案件の中で、印象に残っているものはありますか。
母が亡くなり兄と妹が相続人となったケースで、兄側の代理人を務めました。妹は母の近くに住んでおり、財産は全て妹が管理していました。遺言があったのですが、その内容がほとんどを妹に相続するという内容でしたので、遺留分減殺請求(現在は遺留分侵害額請求)をおこないました。
遺言は公正証書遺言だったのですが、実際には遺言に書かれている建物と実際の建物に大きな食い違いがあるなど、現状と遺言の内容があっていない不可解な状態でした。その食い違っている部分を主張することで、結果的には遺留分よりも多く財産を獲得することができました。依頼者からは大変に喜ばれたため、とても印象に残っています。
相続財産清算人の実績、不動産処分の経験が豊富です
相続案件を手掛ける上で、心がけていることを教えてください。
解決方法をこちらで決めつけるのではなく、依頼者が最終的にどういう解決をしたいのかを大切にしています。
もちろん依頼者の方から「どうしたらいいですか」と聞かれたら、「こういう方法があります」とご説明しています。事件が進行するうちに状況も変わっていきますので、絶えずご意向を聞くようにしています。
また、ご依頼者の心情面については、全てではないですが、なるべく工夫をして調停委員や裁判所に伝えるようにしています。
相続について弁護士に相談するメリットを教えてください。
紛争になりかねないケースでは、最初から弁護士にご相談いただくことをお勧めします。弁護士は紛争解決のプロですし、たとえ揉めていなくても、相続においてどういうところが揉めそうかを熟知しています。
仮に税理士の先生にご相談した場合、相続税が安くなる分け方を中心にアドバイスがもらえるかと思います。ただ、それで相続人全員が納得するかどうかは別ですし、合意できなかった場合には、再度弁護士に依頼しなおすことになってしまいます。
また、司法書士や行政書士の先生ですと、既に遺産分割の内容が決まっていてその協議書を作ってもらうような場合は良いですが、そもそも他の相続人と交渉することができません。
弊事務所では他士業の先生とも連携していますので、必要に応じて紹介することができます。相続税申告の可能性がある場合には、面談に税理士を同席してもらうこともできますので、お気軽にご相談ください。
先生の事務所ならではの強みや、他の事務所との違いはどんなところでしょうか。
これまで相続財産清算人(相続財産管理人)の実績が40件以上あり、その中で相続人がいない不動産の処分を何度も経験してきました。そのため、大手から中小までさまざまな不動産会社とのお付き合いがあります。
大手は都心部の広い土地や接道がきちんとしているような綺麗な不動産を高く売ることに長けていますが、山間部にあるような安い不動産はあまり扱っていません。その不動産にあった会社をご紹介することができますので、不動産売却をお考えの方はお任せください。
相続のトラブルを抱えて弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
相続人同士で感情の対立が激しくなっているが故に、本来の問題ではないところで揉めてしまい、遺産分割がなかなか進まなくなることがあります。
まずは相談だけでも問題ありませんので、ぜひ一度事務所にご相談にいらっしゃってください。丁寧にご意向を伺った上で、解決まで全力でサポートいたします。