相続トラブルを長引かせないために〜依頼者の「こだわり」を考慮した最適な解決策を提案

新潟県新潟市「新潟やすらぎ法律事務所」の吉田明恵弁護士(新潟県弁護士会所属)に相続分野の取り組みについて話を聞きました。依頼者の「こだわり」を大切に、一人ひとりの事情に適した解決策を立てるという吉田弁護士。依頼者がリラックスして話せる相談室など、事務所の特徴や相続分野における強みなどを聞きました。
インタビュー
約8年の実績を経て独立
事務所設立の経緯を教えてください。
2015年12月に弁護士登録。新潟県内の法律事務所に所属し、約8年間、分野を問わず数多くの法律実務に携わりました。多くの案件に取り組むことで、幅広い実務経験を積むことができたました。
そのなかで、次第に「依頼者一人ひとりとじっくり向き合いたい」という思いが強くなりました。そこで、独立を決意して、同じ事務所で働いていた上野弁護士と2024年4月に事務所を立ち上げたのです。
事務所名の「やすらぎ」は、「事務所を訪れる方が少しでも安心し、心が和らぐ場所でありたい」という思いを込めて名付けました。相談室には大きな窓があり、自然の光がたっぷりと入ります。
室内に多種多様な観葉植物を配置することで、緑あふれる空間を作りました。さらに、事務所の敷地内には様々な樹木のある庭が広がっており、事務所を訪れた方が少しでもリラックスできるような環境づくりを意識しています。
事務所の理念を教えてください。
法律事務所を訪れる方は、大きな悩みや不安を抱え、とにかく話をしたい、話を聞いてほしい、との気持ちを抱えています。ですから、まずは「しっかりと話を聞くこと」を心がけています。
お話をお聴きする際には、依頼者が何を一番に望んでいるのか、何を優先したいのか、何が大事で何が譲れないのか、じっくり聞き出すようにしています。
法的な問題の解決方法は一つではありません。相談者・依頼者の状況や優先事項をしっかり理解した上で、最適な解決方法を提案するようにしています。
相続分野に注力するのはどのような理由からですか。
以前の事務所で「相続チーム」に所属し、数多くの相続案件を担当してきたため、実務経験が豊富にあります。その経験を活かし、依頼者により良いサービスを提供できると考えたことが、相続分野に注力する大きな理由です。
相続は誰もが直面する可能性のある分野でありながら、家族関係や財産状況によって多種多様な紛争となります。これまでの経験で培った知識・経験とノウハウを活かして、依頼者それぞれの状況に合わせた解決策を提案しています。
どのような相談が寄せられますか。
相談の多くは、被相続人が死亡して相続が開始した後の遺産分割に関するものです。最近では、なるべく相続紛争が生じないように遺言書を作成するケースも増えています。また、借金を抱えて亡くなる方も多く、相続放棄の相談もみられます。
新潟の相続問題の特徴として、「子どもが親の面倒を見る」意識が高いためか、親の介護が関わるケースが多く見られます。例えば、長年にわたり親の介護を担ってきた相続人が「自分はこんなに大変な思いをしてきたのだから、その見返りがあって当然だ」と強い気持ちを持つことで紛争が過熱するケースなどです。
時間とコストを配慮した解決策の提案
遺産分割トラブルにはどのような方針で対応するのですか。
遺産分割の紛争解決は、交渉から始まり、家庭裁判所を利用して調停、調停が上手くいかなければ審判という流れになります。
しかし、徹底的に争うとなると、解決までにかなりの期間を要しますし、弁護士費用の負担も大きくなります。
そのため、「依頼者が何を一番大事にしたいのか」を最優先に考えながらもコストを意識して方針を決めることが大切です。じっくりとお話をお聴きして、最も良い選択をサポートすることを意識しています。
新潟県における相続問題の特徴や傾向はありますか。
新潟県における相続問題の特徴として、亡くなられる方の多くが自宅不動産を有しているものの、不動産の扱いをめぐって争いが生じやすいことが挙げられます。
例えば、不動産を相続する側としては、築年数が経過している不動産は「もらっても価値は低いし、維持費がかかる」と感じるでしょうが、不動産を相続しない側としては、「一定の評価額がついているのだから価値はある」と主張し、対立が深まることがあります。
また、自宅不動産の場所によっては、誰も引き取りたくないために押し付け合いになったりしますし、なかなか市場価値がつかないために売却処分が進まないケースも少なくありません。
こうした問題を解決するため、付き合いのある不動産業者に買い取りを打診したり、購入希望者がいないか探してもらう場合もあります。
相続案件を手がける上で心がけていることはありますか。
依頼者の気持ちを尊重しながらも、時間と費用のバランスを考えながら進めることです。
相続問題は、不動産や預金、有価証券といった財産の分割に加え、寄与分や生前贈与、さらには供養の方法まで、さまざまな論点が絡み合います。すべての問題を完璧に解決しようとすると、時間も費用もかかりすぎてしまい、かえって依頼者にとって大きな負担になってしまうこともあります。
そのため、「依頼者が本当に大切にしたいものは何か」「どこまで争うのか」を明確にしながら、最適な解決策を一緒に考えていきます。コミュニケーションを取りながら、適切なタイミングで的確な判断ができるようサポートすることを心がけています。
相続問題を弁護士に相談するメリットにはどのようなことがありますか。
相続問題には、生活歴や家族関係などが絡んでくることもあり、お気持ち的には、単なる財産の問題にとどまらない場合もあります。しかし、言いたいことを何でも間でも主張すると、交渉が長引き、解決までにかかる時間や費用が増えてしまうこともあります。
弁護士に相談することにより、相続全体の状況を客観的に把握し、どこに焦点を当てて主張すべきかを一緒に考えながら進めることができます。
その結果、より現実的な解決策を見つけやすくなるので、弁護士に相談するメリットは大きいです。
また、相続問題では、生前贈与や寄与分、遺留分といった法律的な論点を整理することが重要です。しかし、お一人でこれらの論点を正確に理解し、適切に主張するのは難しい場合が多いです。
弁護士が入ることで、法的な視点で論点を整理し、議論がスムーズに進めることが可能となります。それにより早期解決につながる可能性が高くなるので、この点からも弁護士に相談するメリットがあると言えます。
さらに、相続は家族間の問題であり、感情的になりやすいため、心理的な負担がとても大きいです。弁護士が代理人として前面に立つことで、そうした精神的な負担が大幅に軽減されるというメリットもあります。
依頼者が無理なく相談できるように土日祝日も対応
これまでの活動で印象に残ってる案件はありますか。
兄弟間の遺産分割協議の相談です。このケースでは、不動産の処分だけでなく、亡くなった親の供養の方法についても争いがありました。
まず、不動産の処分については、できるだけ高値で買い取ってもらえるように、不動産業者を探すお手伝いをしました。その結果、双方が納得できる価格で売却することができ、売買代金を兄弟間で公平に分けることができました。
調整が難航したのは供養の仕方でした。具体的には、仏壇やお墓の管理をどうするのか、大きな問題となりました。仏壇仕舞いを誰が行うのか、お墓を維持するのか、双方ともに強いこだわりがあり、話し合いは長引く可能性がありました。
どちらが主導して対応するのか、その費用をどう負担するのかという点について、依頼者と打ち合わせを重ね、交渉を進めていきました。
最終的には、将来の墓仕舞いを見据えて、その費用も含めた形で遺産分割の調整を行いました。
この案件で重要だったのは、どこまで時間とお金をかけるかという点です。依頼者の希望を尊重しながらも、時間とコストを考慮して、依頼者自身にも譲歩できるラインを考えてもらい、都度修正しながら交渉を進めました。その結果、調停には持ち込まず、交渉で合意に至ることができました。
依頼者から、「納得できる形で決めることができ、すっきりしました」と感謝の言葉をいただいたことがとても嬉しかったです。
相続分野における事務所の強みや特徴を教えてください。
以前の事務所で 「相続チーム」 に所属し、多数の相続案件を手がけてきました。そのため、遺産分割、相続放棄、遺言作成、生前対策など、相続に関するあらゆる問題に対応できる実務経験があります。
また、司法書士の資格も持っているので、登記手続きの知識もあります。そのため、不動産が絡む相続案件でより具体的なアドバイスができます。
税金の問題については、前の事務所からのお付き合いがある税理士の方がいますので、税理士が必要な案件についてはスムーズにご紹介することができます。
これは相続分野に限りませんが、新潟やすらぎ法律事務所は、土日・祝日も相談や打合せを受け付けています。依頼者が無理なく相談・打合せができる環境を整えることで、できるだけ早期解決に向けたサポートを行えるようにしています。
最後に、相続トラブルを抱えている方へメッセージをお願いします。
相続は、例えば遺言書などで、事前にしっかり準備しておけば、後々のトラブルを防ぐこともできます。すでに相続が発生してしまった場合でも、早めに相談することでスムーズな解決につながる可能性が高まります。
「こんなことで相談してもいいのかな?」と躊躇される方も多いですが、疑問や不安があるなら気軽にご相談ください。早い段階で方向性を決めることで、より良い解決策を見つけることができます。
当事務所では、一人ひとりの状況に合わせた丁寧なサポートを心がけています。どんな小さな不安や疑問でも、まずはお気軽にご相談ください。