裁判官の経験を活かしてよりよい解決を目指す〜抗告事件など複雑な相続案件も多数経験

京都府京都市「富士パートナーズ法律事務所」の赤西芳文弁護士(京都弁護士会所属)に相続分野の取り組みを聞きました。裁判官を長く務めた経験から裁判所の考えを熟知しており、公平な立場での解決を心がけているという赤西弁護士。相続案件を扱う上で心がけていることや弁護士に相談するメリットについて聞きました。
インタビュー
裁判官から弁護士への転身
事務所に入所した経緯を教えてください。
「富士パートナーズ法律事務所」は、前田貴史弁護士と藤井哲也弁護士が2019年に設立したものです。私は2021年から参画しました。
私はもともと裁判官を務めており、定年後はロースクールの教授や民事調停員として活動していました。しかし、法律を教えたり調停に関わったりする中で、具体的な事案に触れたいという思いが強くなりました。
困っている方々の悩みを直接聞き、その問題の解決に向けて自分の力を尽くす。そのような仕事に携わりたいと考えるようになったのです。
裁判官は法に則った判断を下すことが役割ですが、弁護士はより自由な立場で依頼者のために動くことができます。弁護士という自由な立場で社会に貢献するような活動をしたいと思い、弁護士への転身を決意して、富士パートナーズ法律事務所に入所しました。
事務所の理念を教えてください。
当事務所の理念は、「最善かつ正当な利益を実現する」ことです。これは、単に法律の枠内での正解を探すのではなく、依頼者の立場や気持ちを深く理解し、その状況を大局的に見極めた上で、最善といえる解決策を追求することを意味しています。
私はこれまで裁判官や調停委員として、多くの法律問題に関わってきました。その経験を活かし、依頼者の声にしっかりと耳を傾けることを何よりも大切にしています。依頼者が一番困っていることは何かを丁寧に探り、具体的な事実関係を踏まえた解決策を提案することにこだわっています。
また、法律に関する知識を広く共有することにも力を入れています。2025年2月には、『最新事例にみる 婚姻関係の破綻原因─モラルハラスメント、別居、有責配偶者からの離婚請求など』という著書を出版しました。
法律の専門家として培ってきた知識と経験を、1人でも多くの方の役に立てたい。その思いを胸に、依頼者に寄り添いながら、最善の解決へ導くことに尽力しています。
円満な相続の実現を目指す
相続分野に注力しているのはどのような理由からですか。
日本社会にとって相続が非常に重要かつ深刻な課題になっていると実感しているからです。
高齢化が進む中で、相続の件数は年々増えています。また、相続は円満に過ごしていた親族の間に深刻な亀裂を生むことがあり、関係者の人生に深い影響を及ぼします。私は裁判官や調停委員として、その現実を数多く目にしてきました。
相続は非常に複雑な問題をはらんでいます。事実関係ひとつをとっても、相続人それぞれの立場によって見え方が異なり、それが争いの火種となることも少なくありません。さらに、相続に関する法律は改正が続いており、最新の法制度を踏まえた適切な対応が求められます。
そのような問題に弁護士として関わることに大きな意義を感じています。依頼者が将来に向けて納得のいく解決を得られるよう、法的なサポートだけでなく、円満な相続の実現に向けたアドバイスを提供していきたいと思っています。
どのような相談が寄せられますか。
相談の中で特に多いのは、遺産分割をめぐる相続人間のトラブルです。
典型的なケースとして、兄弟姉妹の間での争いがあります。例えば、一方の子どもが被相続人である父や母と同居し、財産管理を一手に引き受ける状況になることがあります。そのようなケースで、別居している相続人が気づかないうちに不利な遺言が作成されていたり、財産が特定の相続人に使われていたりということがあります。
相続発生後にこうした状況に気づき、「どうしたらよいのか」と相談に来られる方が少なくありません。親と同居していた相続人と別居していた相続人の間での認識の違いや情報格差が、深刻な家族間の対立に発展するケースが目立ちます。
遺産分割トラブルはどのような方針で解決していますか。
相続人それぞれに言い分があり、立場によって見方が異なります。そのため、まずは公平な視点を持ち、それぞれの主張に耳を傾けることが重要だと考えています。
解決にあたっては、感情的な対立を抜きにし、客観的な事実関係を明確にすることから始めます。「これは間違いない」と言える事実を確定させ、その上で矛盾のないように事実をつなげながら、真実を見極めることを心がけています。
「知らない間に財産が使われていた」というケースの場合には、預金の引き出し履歴など詳細な事実関係を確認します。相手方が生前贈与を主張するのであれば、それが正当な贈与と言えるのかどうかを丹念に検討します。
私の方針は、できるだけお互いにとって正当な利益を確保することです。裁判官としての経験を活かし、客観的な視点から公平性を保ちながら、当事者全員にとって納得のいく解決策を見出すよう心がけています。
抗告事件など複雑な事案に対応した経験が強み
相続案件を扱う際に心がけていることはありますか。
客観的な事実関係を徹底的に検討することと、当事者の心情に十分配慮することです。
相続は単なる財産の分配にとどまらず、それまでの家族の歴史や人間関係が深く絡み合っています。被相続人との関係、相続人同士の関係、これらの背景があるからこそ、遺産分割が感情的な対立を生み、解決が難しくなります。
だからこそ、法的な観点だけでなく、依頼者が抱える思いや事情を慎重に見極めることを心がけています。単に財産をどう分けるかだけでなく、相続人の方々が今後の人生をどう歩んでいけるかまで配慮した解決を目指すことが重要だと考えています。
相続問題を弁護士に相談するメリットにはどのようなことがありますか。
法的な専門知識を活用できること です。
相続には、遺言書の確認や相続人の特定、遺産分割協議、相続放棄など、複雑な手続きが数多くあります。これらは一般の方にとってわかりにくく、対応が難しいものばかりです。弁護士に相談することで、そうした煩雑な手続きを任せられ、法的に適切な方法で相続を進めることができます。
また、相続問題は精神的な負担も大きいものです。親族間の意見が対立したり、財産の取り扱いについて悩んだりすることも少なくありません。しかし、専門家の助言を受けながら進めることで、 客観的な視点を持ちながら冷静に判断できるようになります。
弁護士とともに問題を整理し、最適な道筋を考えることで、安心して次のステップに進めること。それが、弁護士に相談する大きなメリットだと考えています。
相続分野における強みや特徴を教えてください。
裁判官や調停委員としての豊富な経験を活かし、公平な視点で事案を見極められることです。
裁判官時代には、高等裁判所の「家事抗告部」で多くの抗告事件を担当していました。そこでは、相続に関する極めて難しい事案や、前例のないような案件にも取り組んできました。その経験を通じて、相続問題の本質を深く理解し、複雑な事案に対しても適切な見通しを立てる力を培ってきたと自負しています。
また、裁判官としての経験があるからこそ、感情的な対立を超えて、客観的な視点から解決策を導く力には自信があります。相続問題は、単に法律の知識だけでは解決できないことも多く、家族間の関係性や感情の動きを慎重に見極めることが不可欠です。その点において、公平な立場で事実を整理し、依頼者にとって最善の解決策を提案できると考えています。
最後に、相続問題で悩まれている方へメッセージをお願いいたします。
相続問題で弁護士への相談を考えている方は、すでに大きな悩みを抱えておられることと思います。しかし、その悩みを1人で抱え込む必要はありません。
「これは正しいのか、間違っているのか」といった答えをすぐに求めるのではなく、まずは ご自身がどこに悩んでいるのかを整理することが大切です。そのためにも、ぜひ気軽にご相談ください。
私は弁護士として、法的な観点からのアドバイスをするだけでなく、これまでの経験を活かし、相続の背景にある事情や家族関係も踏まえた総合的な解決策を一緒に考えることを大切にしています。
相続の問題は、早めに対応することで円満に解決できるケースも多くあります。まずは、お話をお聞かせください。一緒に最善の道を見つけていきましょう。