高齢化率の高い葛飾区で相続問題に取り組む〜スピード感を重視して依頼者の利益を守る
東京都葛飾区「弁護士法人葛飾総合法律事務所」の代表である角学弁護士(東京弁護士会所属)に、相続分野の取り組みについて話を聞きました。葛飾区は東京23区の中でも特に高齢者人口が多い反面、弁護士数が23区で最も少ない地域であることから、弁護士需要に応えるべく葛飾地域で相続分野に力を入れているという角弁護士。相続案件を扱う上で心がけていることや事務所の強みについて聞きました。
インタビュー
相続分野に注力することで地域のニーズに応える
事務所の設立の経緯を教えてください。
2018年に現在の事務所を開設しました。それ以前は、虎ノ門法律経済事務所という相続案件を多く扱う事務所で1年半ほど勤務弁護士として働き、その後、半年間ほど葛飾区は堀切の法律事務所を間借りしながら独立の準備を進めていました。
葛飾区に事務所を構えた理由は、葛飾区は東京23区の中でも特に高齢者人口が多い反面、弁護士数が23区で最も少ない地域でリーガルサービスを必要とする地域であったからです。また、私が育った千葉県松戸市と隣接しており、馴染みが深い場所でもありました。
独立当初は私1人でしたが、相談件数の増加にともない人数を増やし、現在は3名の弁護士と5名の事務職員が所属しています。葛飾区内では最大の法律事務所となりました。
事務所の理念を教えてください。
事務所の理念は大きくは3つです。
1つ目は、依頼者の真の利益の実現を使命とし、地域に根差した弁護活動を通じてファンの連鎖を産み、選ばれる法律事務所になる。
2つ目は、様々な分野で法令・判例・実務の研究に努め、ご依頼者のご要望を見極め、正確な見通しを丁寧に分かりやすくお伝えし、柔軟な思考を基に定まった目標に迅速・適切・確実にお応えする魅力溢れる法務サービスを提供する。
3つ目は、労使相互信頼を基本に、個人の能力と集団の強みを最大限に高める事務所風土をつくる。
この理念は、所属する弁護士や事務員全員にも共有しています。
相続分野に注力しているのはどのような理由からですか。
私が大学院在学中、友人から「存命の祖母の将来の遺産を巡り親族間で揉めている」という相談を受けました。そのときの私はまだ弁護士ではなかったので、友人の話をただ聞くことしかできませんでした。
その後、友人の祖母は、弁護士の指導のもと遺言書を作成し、親族間の揉め事も弁護士が間に入ることで適切に解決することができました。当時の私は法律を学んでいながら友人に何も手を差し伸べることができず、憤りを感じました。
この経験以降、私は自分の「身近な人」を救える弁護士になりたいと強く思うようになりました。
友人はのちに私に「弁護士に相談したい気持ちはかねてあったものの、敷居が高く最初は相談しに行きづらかった」と話しました。
シニア世代は、「リーガルサービスを欲しているものの、どうしていいか分からない、弁護士は敷居が高い」と感じている人が多いと感じ、その障壁を少しでもなくし、リーガルサービスを欲する人に正しく手を差し伸べられる弁護士、すなわち、適切な司法需要に応える弁護士になりたいと強く考えました。
超高齢者社会を迎える日本において、シニア向けに良質なサービスを提供できる弁護士は必須であり、その一翼を担う弁護士に私はなりたいと考え、シニア向けの終活法務や相続・それに伴う不動産法務等を多く扱う前職の事務所(虎ノ門法律経済事務所)に所属いたしました。
同事務所で、相続分野を集中的に多く扱っていたことが、特に専門性をもって相続分野に取り組むことになったきっかけです。
同事務所には、元公証人や元裁判官、さらには現役の職務経験裁判官も当時は所属しており、多様な事件を通じて研鑽を積みました。その経験を通じて、相続に関する知識とスキルを深めていきました。
葛飾区内で独立後も、相続分野の司法需要は極めて高く、複数の相続関係の事案のご相談・ご依頼を通じて、経験を積んで参りました。
さきほど申し上げましたとおり、葛飾区は東京23区の中でも特に高齢者人口の多い地域です。弁護士の数が23区で最も少ないうえに高齢者の方々が多く住んでいることから、相続に関するニーズが非常に高いと感じています。地域のニーズ・司法需要に応えるためにも、相続分野に注力することが重要だと考えました。
スピードを重視して問題解決に取り組む
具体的にはどのような相談が多いですか。
当事務所で最も多い相続に関する相談は「遺産分割」の相談です。相続人同士で話しがまとまらないために、相談に来るというケースが多く見られます。また、紛争という点でいうと、「遺留分」を巡るトラブルも多いです。
「遺産分割」のケースでの解決方針としては、まず受任した時点で依頼者ご本人が相手方と直接やり取りするのではなく、代理人である弁護士が対応する形にします。交渉での解決が難しい場合には、裁判所の調停手続を利用し、それでも解決しない場合は、最終的に審判という形で裁判官に判断してもらい解決を図ります。事案によっては、交渉を飛ばして、いきなり調停から開始するケースも少なくありません。
多くの場合、弁護士に相談する段階で、すでに当事者同士の話し合いが進行しており、話がまとまらない状況に直面しています。そのため、弁護士が介入しても、すぐにまとまるケースは少なく、調停や裁判所での手続きによって解決することが割合としては多いです。
「遺留分」に関しては、そもそも遺産として何があったのかを確認するところから始めます。相手方がこちらの求めに応じて預貯金の額などを提示してくれれば、提示された財産の内容が正しいかどうかを検証するだけで済みます。
しかし、相続財産の名義変更や口座の引き出しが相手方によってすでに行われていたり、こちらの開示要求に応じてもらえず、財産の全容がわからないケースもあります。そのような場合には、弁護士の職権等も必要に応じて活用した財産調査が必要になります。
財産調査はどのようにして進めるのですか。
まずは、意外かもしれませんが、財産を保管している相手方に直接話を聞くということも重要です。依頼者が直接聞いて教えてもらえない場合でも、弁護士が介入し、書面で開示を要請することで教えてくれるケースもあります。まずは聞いてみるということが大切です。
特に、遺留分侵害額請求の事案では、遺言書が作成されていることが大半です。遺言書に遺言執行者の記載があれば、民法上、遺言執行者は財産目録の作成・開示の義務がありますので、その規定を通じて開示を要請することも多いです。
任意で相手方が開示をしてくれない場合もありますので、その際は、依頼者本人にも、より細かく話を伺います。「被相続人は◯◯銀行を使っていたと思う」といったレベルの情報をもとに、該当する銀行口座をなどを調べていきます。
それでも分からない場合は、メガバンクなど、多くの人が口座を持っていそうな金融機関を当たっていきます。また、被相続人が住んでいた場所の近くにある信用金庫や信用組合なども、地域に根ざした金融機関に口座がある可能性も高いため、調査対象に含めることがあります。証券保管振替機構(いわゆるほふり)等の機関に照会をかける等、さまざまな手法を使いながら調べていきます。
ただし、闇雲に調査するわけではありません。調査には費用と時間がかかるため、依頼者の負担にもなりかねません。そのため、依頼者とよく相談しながら、どこまで調査するかを決めて進めていくこととなります。
相続案件を手掛けるうえで心がけていることはありますか。
最も大切にしているのは「スピード」です。相続分野は、他の分野と比べて解決までに比較的時間がかかります。
相続人調査のために戸籍を集めるだけでも時間がかかりますし、遺産の範囲を特定するのにも時間がかかります。さらに、遺産の評価をするために査定や鑑定を必要とする場合もあります。
依頼者へのレスポンスをはじめ、一つ一つの作業を迅速に進めることで、少しでも早く問題解決ができるように心がけています。
相続問題を弁護士に相談するメリットにはどのようなことがありますか。
様々なメリットがあります。
まず、手続きが遅延しないよう配慮しながら、迅速かつ確実に進めることができます。相続は複雑な手続きが多いですが、弁護士が関与することでスムーズに進行します。
また、弁護士が代理で相手方と交渉を行うため、依頼者が直接やり取りをする必要がなくなり、精神的な負担が軽減されます。
さらに、遺産分割や遺留分といった複雑な問題について、弁護士がわかりやすく説明しながら進めていくので、納得しながら手続きを進めることができます。
相続は、法的知識を持っているかどうかによって、最終的な取得金額が変わることがあります。適切な金額で相続を行うためにも、弁護士に相談することが重要です。
相続分野限定で年間150件を超える相談件数
相続分野における事務所の強みや特徴を教えてください。
相談件数と解決件数が多いという点が挙げられます。年間で相続分野に限定しても150件ほどの相談があり、そのうち約50件を受任して、解決に導いています。当事務所くらいの規模で、年間150件の相談を受けている事務所は、それほど多くないと思います。
また、私個人としては、相続に関する書籍を出版したり、税理士・会計士向けのセミナーを開催したりしています。書籍の執筆やセミナーの準備を通じて、自分の知識を深める機会が増え、専門性を高めることができました。こうした取り組みから、相続分野においては一定の専門性を持っていると自負しています。
さらに、当事務所では毎週1回、弁護士の勉強会を開催しています。各弁護士が担当している案件や研究している内容を共有し、事務所全体で知識を深めています。
このように、多くの案件を経験しながら継続的に勉強する環境が整っていることが、事務所の特徴だと思います。弁護士同士が知識や経験を共有し、研鑽を積むことで、より質の高いサービスを提供できる体制を整えています。
今後の展開を聞かせてください。
今後も引き続き、紛争性のある問題を中心に扱うことになると思います。特に、遺産分割のトラブルや遺留分の問題は非常に相談が多く、これらの紛争解決に注力していきたいです。
一方で、高齢化が進む日本社会においては、遺言書の作成など「終活」に関する依頼も増えていくのではないかと考えています。
私は東京弁護士会の終活部会に所属しているのですが、高齢者向けのセミナーなどで終活の重要性について話すなどの活動をしています。そうした活動を通じて、高齢者の方々が抱える相続の不安や悩みをサポートしていきたいです。
最後に、相続問題で悩みを抱えている方へメッセージをお願いします。
紛争性がある問題でお悩みの方に伝えたいのは、決して1人で抱え込まないでほしいということです。こうした問題は、心身に大きな負担をかけることがあります。ですから、少しでも「誰かに話を聞いてほしい」という気持ちが芽生えたら、ぜひ一度ご連絡ください。
また、紛争を将来的に起こさせないために今できることをお考えの方、あるいは、相続人に将来的になられる方も終活について一緒に考える機会をもてればと思いますので、お気軽にお問い合わせをいただければと思います。
弁護士に相談することで、その問題・精神的負担を専門家に肩代わりさせることができ、お気持ちが軽くなるはずです。この点は、専門的知識に基づく合理的な解決に加えて、平穏に日々を過ごしていただくためにもとても大切なことだと思いますので、まずは気軽にご相談ください。