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家を相続したとき、その家だけに相続税がかかるわけではありません。
相続税は、家単体ではなく、亡くなった人が残したすべての財産の合計に対してかかります。
家や土地といった不動産のほか、預貯金・株式・生命保険金なども合算し、そこから借入金や葬儀費用を差し引いた金額が課税の対象です。つまり「家の評価額がいくらか」だけでなく、他の財産と合わせていくらになるかで税額が決まります。
家の相続税を知るには、次の順序で進めるのがわかりやすいでしょう。
まず押さえたいのは、そもそも相続税がかからないケースも多いという点です。

相続税には基礎控除があり、遺産の合計がこの金額以下なら相続税はかかりません。
基礎控除額は、次の式で計算します。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
たとえば法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人なら、基礎控除は3,000万円+600万円×3人=4,800万円です。遺産の合計がこの4,800万円以下であれば、相続税はかからず、申告も原則不要です。
なお、法定相続人の数は、相続放棄をした人がいても放棄がなかったものとして数えます。養子は、実子がいれば1人まで、実子がいなければ2人まで人数に含められます。
遺産の中で大きな割合を占めやすいのが、家や土地といった不動産です。
そのため、家の評価額をいくらと見るかが、相続税がかかるかどうかの分かれ目になることも少なくありません。現金や預金は金額がそのままはっきりしていますが、不動産は「時価いくら」が一目ではわからず、独自のルールで評価額を計算します。
まずは、その家の評価額の出し方から見ていきましょう。
家は「土地」と「建物」に分けて、それぞれ別の方法で評価額を計算します。
家を相続するとき、多くの人がまず気になるのが「この家にいくら税金がかかるのか」という点です。そのためには、家の評価額を正しく出すことが出発点になります。現金のように金額がはっきりしていないぶん、土地と建物それぞれのルールを知っておくと安心です。
建物(家屋)の相続税評価額は、固定資産税評価額がそのまま使われます。
固定資産税評価額は、毎年届く固定資産税の納税通知書や、市区町村で取得できる固定資産評価証明書で確認できます。購入価格や建築費ではなく、この固定資産税評価額が基準になる点に注意しましょう。
一般に、固定資産税評価額は新築時の建築費の5〜7割程度とされ、築年数が経つほど下がっていきます。他人に貸している建物(貸家)の場合は、借家人の権利がある分、さらに一定割合を差し引いて評価します。
なお、相続が始まる前に増改築をしていて、その分が固定資産税評価額に反映されていないこともあります。その場合は、増改築部分を別途評価して加える必要があるため、リフォームの履歴がある家は注意しておきましょう。
土地の評価には、路線価方式と倍率方式の2つがあります。
路線価方式では、道路(路線)ごとに定められた1㎡あたりの価格(路線価)に土地の面積をかけて計算します。土地の形や奥行きに応じて補正するため、実際にはもう少し複雑になります。
倍率方式は、固定資産税評価額に一定の倍率をかけて計算します。路線価や倍率は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」で誰でも確認できます。
土地の評価額の調べ方は、次の記事でくわしく解説しています。
分譲マンション(居住用の区分所有財産)は、2024年1月1日以降の相続について評価方法が変わりました。
従来の評価額が実際の売買価格と大きく離れやすかったため、「区分所有補正率」をかけて調整するルールが導入されています。高層階の物件などでは、以前より評価額が上がるケースがあります。
一戸建てかマンションかで計算の考え方が変わるため、自宅がマンションの場合は、この新しいルールをふまえて評価する必要があります。
家を含む評価額が出たら、次の4ステップで相続税を計算します。
まず、家や土地の評価額に、預貯金・株式・生命保険金などをすべて足します。
そこから、借入金や未払いの税金、葬儀費用などを差し引きます。生命保険金や死亡退職金には「500万円×法定相続人の数」までの非課税枠があり、その分は差し引けます。
こうして出した金額を「課税価格」と呼びます。
課税価格から、先ほどの基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を引きます。
引いた結果がマイナスになれば、相続税はかかりません。プラスであれば、その残った金額(課税遺産総額)に対して税額を計算していきます。
相続税の総額は、実際の分け方ではなく、いったん法定相続分どおりに分けたものとして計算します。
各人の法定相続分に応じた税率をかけ、それぞれの税額を足したものが相続税の総額です。税率は、取得金額が大きいほど高くなる仕組みで、次の速算表を使います。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | ― |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
最後に、相続税の総額を、実際に財産を受け取った割合で分け直します。
家を相続した人は家の分を、預金を相続した人は預金の分を、それぞれの取得割合に応じて負担します。このステップで、後述する配偶者の税額軽減などの特例を適用し、一人ひとりの納税額が確定します。
流れをつかむために、仮の数字で計算してみましょう。
たとえば、亡くなった父の遺産が次のようなケースを考えます。
このまま合計すると7,000万円ですが、母が自宅を相続して小規模宅地等の特例(80%減)を使えると、土地は600万円として計算できます。すると課税価格は600万円+1,000万円+3,000万円=4,600万円です。
ここから基礎控除4,200万円を引くと、課税の対象は400万円まで下がります。税額は40万円ですが、母、子の個別の税額は、この税額を実際の財産取得割合で按分します。配偶者の税額軽減によって母の相続税は0円になり、実際の負担はごく小さく収まります。
このように、同じ遺産でも、誰がどう相続し、どの特例を使うかで税額は大きく変わります。
自宅の相続では、税額を大きく下げられる特例があります。使えるかどうかで負担が変わります。

自宅の土地は、一定の要件を満たすと330㎡までの部分について評価額を80%減額できます。
これが「小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)」です。たとえば評価額5,000万円の土地なら、条件を満たせば1,000万円として計算できるため、効果は非常に大きくなります。
誰が自宅を取得するかで、主な要件は次のように変わります。
「家なき子」は、相続開始前3年以内に自身や配偶者などが所有する家に住んでいないことなどが求められ、要件はやや厳しめです。なお、この特例を使って相続税が0円になる場合でも、相続税の申告そのものは必要です。
配偶者には、大きな税額軽減が用意されています。
配偶者が取得した遺産のうち、1億6,000万円か、配偶者の法定相続分のいずれか多い金額までは相続税がかかりません。多くのケースで、配偶者が自宅を相続しても相続税がかからずに済みます。
ただし、この軽減を使うには、原則として申告期限までに遺産分割を終え、相続税の申告をする必要があります。また、配偶者に多くを寄せると、次の二次相続で子の負担が重くなることがあるため、二次相続まで見据えた検討が欠かせません(くわしくは後述します)。
家を相続しても、手元の現金が少ないと、相続税の納税に困ることがあります。
相続税は、原則として申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)までに現金で一括納付します。家という資産はあっても現金が足りない、というケースでは、次の方法を検討します。
一度に払えないときは、延納(分割払い)を申請できます。
延納が認められる主な条件は、相続税額が10万円を超えていること、現金での一括納付が難しい事情があること、担保を提供することなどです。税額が100万円以下で延納期間が3年以下なら、担保は不要とされています。不動産などの割合に応じて、最長で20年まで分割できますが、期間中は利子税がかかる点に注意しましょう。
延納でも現金で納めるのが難しい場合には、物納(財産で納める方法)が認められることがあります。
相続した不動産などを、金銭の代わりに国に納める方法です。ただし物納には順位があり、不動産・国債・上場株式などが優先されます。境界がはっきりしない土地や、担保が付いている不動産などは物納できないため、誰でも自由に使えるわけではありません。
延納・物納のほかに、相続した家を売って、その代金から相続税を払う方法もあります。
住む予定のない実家などであれば、売却して現金化するのが現実的な選択になることも少なくありません。相続税の申告期限の翌日から3年以内に売れば、納めた相続税の一部を売却時の経費にできる特例(取得費加算の特例)を使える場合があります。また、相続した実家が一定の要件を満たす空き家であれば、売却益から最大3,000万円を差し引ける特例(空き家特例)を使えることもあり、売却時の税負担を抑えられる可能性があります。
どの方法が有利かは、家の価値・他の財産・住み続けたいかどうかで変わります。判断に迷うときは、早めに専門家に相談しておくと安心です。
計算そのもの以外にも、家の相続では見落としやすい注意点があります。
「とりあえず兄弟で家を共有名義にしておく」という分け方には注意が必要です。
共有にすると、売却や建て替えのたびに共有者全員の同意が必要になります。さらに次の世代へ相続が進むと共有者が増え、話し合いがまとまりにくくなります。相続税の負担を分け合う目的で安易に共有にすると、かえって将来のトラブルの種になりかねません。
目先の相続税を抑えることだけを考えると、かえって家族全体の負担が増えることがあります。
配偶者の税額軽減で配偶者に多く寄せると、その配偶者が亡くなる二次相続では軽減が使えず、子の税額が膨らむことがあります。一次相続と二次相続の合計で考えて、誰が自宅を相続するかを決めることが大切です。
相続税の申告と納税の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。
小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減は、原則としてこの期限までに遺産分割を終えて申告することが条件です。期限に間に合わないと特例が使えず、本来より高い税額になってしまうことがあります。
どうしても分割がまとまらないときは、申告期限までに「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておくと、後から分割が固まった段階で特例を適用できる場合があります。とはいえ手続きが増えるので、まずは期限内の分割を目指すのが基本です。何が相続財産にあたるかの確認も含め、早めに動き出しておきましょう。
必ずかかるわけではありません。
相続税は、遺産の合計が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた場合にかかります。家を含めても合計がこの金額以下なら、相続税はかからず、申告も原則不要です。
いいえ、特例を使って税額が0円になる場合でも、相続税の申告は必要です。
小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減は、申告することではじめて適用されるものです。「特例で0円になるから申告しなくてよい」と考えると、特例そのものが受けられなくなるおそれがあります。
土地の路線価や建物の固定資産税評価額は、自身で調べることができます。
路線価は国税庁の「路線価図・評価倍率表」、固定資産税評価額は納税通知書や評価証明書で確認できます。ただし、土地の形状に応じた補正や、小規模宅地等の特例の適用判断は複雑なため、正確な税額を知りたいときは税理士に確認すると安心です。
家の相続税は、家だけでなく、亡くなった人が残したすべての財産を合計し、基礎控除を引いたうえで計算します。家(不動産)の評価額は、建物は固定資産税評価額、土地は路線価方式か倍率方式で求めます。
自宅には、土地を最大8割減額できる小規模宅地等の特例や、配偶者の税額軽減といった大きな特例があり、使えるかどうかで税額は大きく変わります。現金で払えないときも、延納・物納・売却といった選択肢があります。
ただし、特例の適用要件や二次相続まで見据えた有利・不利の判断は複雑です。
家の評価額や使える特例で相続税がいくらになるのか、どう納めるのが有利かで迷ったときは、まずは一度、税理士への相談で、あなたのケースに沿った進め方を確認しておきましょう。
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VSG相続税理士法人溝の口オフィス代表税理士。実務の傍ら、執筆やセミナー講師を務める。東京地方税理士会所属。VSG相続税理士法人では、相続税申告において日本最大級の実績とノウハウにより、顧客の立場に立って一番有利な相続アドバイスを行う。グループの行政書士・司法書士・社会保険労務士法人と連携をとり、あらゆる相続の悩みに対応している。