話しやすい雰囲気づくりを心がけ、相続問題を抱える依頼者の不安や悩みを解消
神奈川県座間市にある「今西法律事務所」の今西隆彦弁護士(神奈川県弁護士会所属)に話を聞きました。「フラットな姿勢」と「丁寧な説明」を信条に、地域に根ざした法律サービスの提供に尽力してきた今西弁護士。相続問題を扱う際に心がけていることや、相談することで得られるメリットについて詳しく伺いました。
インタビュー
弁護士事務所が存在しないエリアでの開業
事務所設立の経緯を教えてください。
弁護士登録後、横浜の法律事務所に就職しました。そこで2年間経験を積み、3年目に独立しました。
独立当初は相模大野に事務所を構えていましたが、6〜7年が経過した頃、事務所が入っている建物の取り壊しが決まり、移転を余儀なくされました。その際、新たな拠点として選んだのが座間市です。
当時、人口約13万人を抱える座間市には、弁護士事務所が存在しませんでした。そのため、地域の方々にとっては司法へのアクセスが不便な状況でした。そこで、地域の皆様のお役に立ちたいと考えて、座間市で活動を始めることにしたのです。
事務所の理念を教えてください。
「敷居を高くしない」ことを意識しています。これは弁護士になりたての頃から意識してきたことです。
私が駆け出しの頃、一部のベテラン弁護士の中には、依頼者を叱りつけるような態度を取る方もいました。しかし、私はそうした姿勢は好ましくないと感じていました。法律問題で悩む方々は、不安や緊張を抱えています。そこにさらなるプレッシャーを加えるのではなく、安心して相談できる環境を作ることが重要です。
そのためには、依頼者とフランクに接することが大切だと考えています。知人からは「弁護士らしくない」と言われることもありますし、依頼者からも「話しやすかった」という言葉をいただくことがあります。依頼者が安心して相談できる関係を築くことが、私がもっとも大事にしていることです。
相続分野に注力しているのはどのような理由からですか。
相続分野は遺言書作成のような生前の相談から、相続が発生した後の相談まで幅広く、非常にニーズの高い分野だと感じています。
また、家族の問題であることから、依頼者には精神的負担が伴います。そのため、法的な知識だけでなく、依頼者とのコミュニケーション能力など、弁護士としての力量が試される分野でもあります。
相続は人生のなかで避けては通れない問題です。だからこそ、依頼者の不安を少しでも軽減し、円滑な解決に導くことは、弁護士にとって重要な役割だと考えています。
フラットな姿勢で話しやすい雰囲気をつくる
最近の相談の特徴や傾向などはありますか。
遺言書の解釈に困っているケースが多いです。例えば、「遺言書にはこう書かれているけれど、この資産は相続財産に含まれるのでしょうか」といった質問をよく受けます。このような場合、相続人同士が対立しているというよりも、解釈の仕方がわからずに互いに困っているというケースが多いです。
また、遺留分に関する相談も頻繁にあります。しかし、遺留分そのものに関する相談よりも、相続財産の評価や把握に関する質問が多いです。相手方が相続財産を開示しなかったり、想像よりも少ないと感じた依頼者が「実際はもっとあるはず」と疑念を抱くケースが目立ちます。
財産の全体額が変われば、遺留分として取得する額も変わります。そのため、正確な財産状況を把握するために、弁護士に調査を依頼する方が増えています。
さらに、法律以前の問題として、相手方との接触を避けたいという理由で、仲介役を依頼されるケースもあります。
感情の対立から生じるトラブルもありますか。
特に目立つのは、日頃の付き合いが薄い家族間での対立です。具体的には、前妻の子どもと後妻との間や、長年疎遠になっている兄弟間でのトラブルなどが挙げられます。
例えば、前妻の子どもが後妻に対して、「なぜ後から来た人が財産の2分の1ももらえるのか」と不満を抱くケースがあります。
これらの問題が目立つようになった背景には、核家族化など、時代とともに家族の形態が変化してきたことが影響していると感じます。また、かつての家督相続の風習が失われ、個人の権利意識が高まってきたことも要因の一つだと思います。
そのようなトラブルにはどんな方針で対応しているのですか。
私たち弁護士は、法律を基準に対応せざるを得ません。そのため、法律上の解釈を丁寧に説明し、判例なども交えながら正確な見通しを依頼者に伝えることが基本的な方針です。
依頼者が感情的になっている状況でも、客観的に事実を見つめられるのが弁護士です。そして、その客観的な視点を前提にサポートすることが、依頼者にとって最善の解決に繋がると考えています。
相続案件を扱う上で心がけていることを教えて下さい。
依頼者に対してフラットな姿勢で接することです。相続は家族の問題であり、他人には話しづらいことも多々あると思います。そのため、依頼者が話しやすい環境を作ることが大切です。
また、相続分野に限ったことではありませんが、「法律は誰かを懲らしめるための道具ではない」ということを依頼者に理解していただけるよう努めています。
「相手を訴えてやる」という気持ちで相談に来る方もいますが、相手方が弁護士を立てれば、訴訟を起こしても直接的な関与は必要なくなります。つまり、訴訟を起こすことが必ずしも相手方に精神的苦痛を与えることにはならないのです。
法律や弁護士の役割は、あくまでも公平で適切な問題解決を図ることです。相手を追い詰めたり、懲らしめることが目的ではありません。むしろ、そのような感情的な対応は問題をこじらせる原因になりかねません。
ですから、依頼者が冷静に状況を見つめ、感情的にならずに問題解決に向けて取り組めるようにサポートすることが、弁護士の重要な役割だと考えています。
遺産分割調停よりも直接交渉を重視する
相続問題を弁護士に相談するメリットにはどのようなことがありますか。
相続法は複雑で、一般の方にはわかりにくい点が多いと思います。専門家に相談することで、相続に関する不明点や疑問点を解消できることがメリットだと思います。
相手方に弁護士がついている場合、法律用語を並べ立てられて、理解できないままに合意してしまうことがあります。しかし、そのような状況であっても、弁護士に相談すれば、本来主張できる権利を見逃すことなく、適切に対応することができます。
さらに、相続に関する複雑な手続きや相手方との交渉を自分で行う必要がなくなるため、不要なストレスから解放されるのも大きな利点です。
問題解決において、直接交渉と調停とどちらを重視していますか。
交渉を重視しています。調停の場合、相手方にも弁護士がついていることが一般的です。その場合、相手方から攻撃的な文書が提出され、依頼者の感情を逆なでするケースも少なくありません。
そうなると、本来の争点とは関係のない感情的な対立が始まってしまい、解決までに時間がかかってしまうのです。
一方、直接交渉の場合は、私が相手方の言葉を和らげるクッションの役割を果たすことができます。当事者同士で話し合いができなくなっているケースでも、私が介入することで不要な対立を避け、話し合いをスムーズに進められるのです。
相手方が私を信用してくれているときには、依頼者には直接話せないことを話してくれる場合があります。そのような会話の中に解決のヒントが隠されているケースもあります。ですから、依頼者はもちろん、相手方との信頼関係も非常に重要だと考えています。
最後に、相続トラブルを抱えている方へメッセージをお願いします。
もし将来的に自分の子どもや家族間で揉め事が起きないようにしたいと考えている方には、遺言書の作成をお勧めします。たとえ法定相続分通りの内容であっても、遺言書を残しておくことには大きな意味があります。
なぜなら、「親がこのように考えていた」という明確な意思表示があることで、相続人もそれに従おうという気持ちになりやすいからです。遺言書は、単なる財産分与の指示書ではなく、故人の最後の意思表示として大きな重みを持ちます。
相続発生後に問題が起きた場合は、できるだけ早く専門家に相談することをお勧めします。相続問題は時間が経つほど複雑化する傾向があります。また、法的な期限が設けられているものもありますので、早めの対応が重要です。
相続は避けては通れない問題です。しかし、適切な準備と対応があれば、家族の絆を損なうことなく解決することも可能です。ぜひお気軽にご相談ください。