営業職の経験を活かして、依頼者の話を丁寧に聞き取り、よりよい解決策を提案
京都府京都市下京区で「大西洋至法律事務所」を経営する大西洋至弁護士(京都弁護士会所属)に、事務所の理念や、相続案件に携わる上で心がけていることなどを伺いました。前職の営業経験を活かして依頼者の話を丁寧にヒアリングし、依頼者にとってよりよい解決を提案する大西弁護士。相続について弁護士に相談・依頼するメリットについても詳しく聞きました。
インタビュー
依頼者の話をしっかりと聞きながら必要な情報を整理し、よりよい解決策を提案
事務所の理念や大切にしていることを教えてください。
依頼者の話をしっかりと聞くことを大切にしています。その上で、法律の専門家として法的な視点を持ち、一歩引いた形でバランスを考えながら話を進め、解決へ導くことを心がけています。依頼者にとってよい結果をもたらすために、本人が気づいていない部分についてもアドバイスを行うことが大切だと考えています。
相談に来る方は、悩みを抱えていても、自身の問題を完全には把握していないことも多いです。中には、どうしても感情が先走り、冷静に考えられない状況にある場合もあります。そのため、まずは依頼者が抱えている思いをすべて話してもらうようにしています。
具体的には、時間に制約がある中でも、依頼者に自由に話してもらうことを大切にしています。感情的な話や、時には事案とは関係ない話が混ざることもありますが、多少の交通整理はしつつも、依頼者が思うままに話してもらいます。すべてを吐き出してスッキリした後に、話を整理し、法的なポイントを伝えるようにしています。
依頼者の話をよく聞く一方で、相手方の意向を考慮することも大切です。依頼者の話だけを聞いてその通りに進めると、思わぬ反論を受けて、依頼者の利益にならないことがあります。そのため、依頼者の話を踏まえた上で、一歩引いたところで相手の立場を想定し、依頼者の利益になる解決策を考えることを大切にしています。
相続案件に注力している理由を教えてください。
私は弁護士になる前に住宅メーカーの営業をしていました。相続分野は人間模様が色濃く出る分野の一つであり、営業時代に培った「聞く力」を活かせると感じています。
依頼者の感情をしっかりと聞き出し、その気持ちを整理しながらも、よい方向に話を進めることができる点で、自分の経験が適していると思い、相続分野に注力しています。
住宅メーカーの営業の経験が相続案件にどのように活かされていますか。
私が携わったのは注文住宅の営業だったのですが、お客様の希望をヒアリングし、設計担当と調整を行っていました。意見の異なる家族の希望を聞き、よりよい設計を提案する経験が、相続案件にも活かされています。
例えば、二世帯住宅では祖父母と子供夫婦の考え方が異なったり、単世帯でも夫婦間で意見が違ったりすることがよくありました。リビングを広くしたいという要望があったとしても、なぜ広くしたいのか、どのように使いたいのかを考え、お客様の生活スタイルを掘り下げると、単に広くするだけでは意味がなく、他の部分にスペースを割く方が合理的な場合もあります。
また、敷地や予算といった制約との兼ね合いも重要です。一度建てた家には何十年も住むことになるため、現在の希望だけでなく、将来を見据えて検討する必要もあります。
このように、お客様の希望を様々な角度から検討し、ただ話を聞くだけでなく、こちらから積極的に質問してよりよい提案を行う経験は、弁護士活動にも活かされています。
相続案件では、単に遺産の分け方を決めるだけでなく、根深い感情が絡んでいることが多くあります。例えば、過去の出来事に対するわだかまりや、特定の相手に伝えたい思いなどがあります。
このような感情面は法的解決には直接関係ないこともありますが、無視していては依頼者の納得のいく解決には繋がりません。一方で、依頼者の感情的な話をただ聞くだけでは対立が深まり、収拾がつかなくなります。依頼者の話をしっかりと聞きながら、解決に向けて必要な情報を整理し、よりよい解決策を提案するという点で、営業時代の経験が活きていると感じています。
税理士や司法書士と提携し、ワンストップで全体的な解決をサポート
相続について、よくある相談内容を教えてください。
相続人の一人が主導して決めた遺産分割協議案についての相談がよくあります。代表的なのは、長男が一方的に決めた内容が適切か、他の兄弟が相談に来るケースです。
家父長制の影響が残っている地域では、長男がすべてを相続し、他の兄弟にはほとんど分け与えられないケースがあります。
このようなケースで長男に交渉を試みると、法定相続分の話だけでなく、親の介護をしたことに対する寄与分や、他の相続人が以前に財産を譲り受けたことについての特別受益の話などが出てきて、争点が広がることがあります。こうなると弁護士の専門的な知識が必要です。場合によっては早めに調停を申し立てた方が早期解決に繋がることもあります。
ほかには、遺言書が残っているけれども、内容が不公平なので遺留分を請求したいという相談や、生前に遺言書を作成したいという相談も多くあります。
相続について弁護士に依頼するメリットを教えてください。
長年溜まった不安や疑問を吐き出せる相手がいるというのは大きなメリットです。
また、相続人が複数いる場合や遺産が多くて複雑な場合など、煩雑な相続手続きを全部任せられることもメリットといえます。例えば、戸籍を取得したり、各種解約手続きを行ったりするには手間がかかりますが、すべて一括して弁護士に依頼できます。
相続人が多い場合は、争いがない場合でも、弁護士に依頼するケースがよくあります。例えば、相続人に兄弟だけでなく、甥や姪まで含まれる場合には、相続人の住む場所が離れていて、遺産分割協議を行うこと自体が難しいこともあります。弁護士が間に入ることでスムーズに進められます。
さらに、当事務所の場合には、司法書士や税理士など、他の専門家と連携して全体的な解決を図ることができます。弁護士に依頼することで、ワンストップで他の専門家のサポートが受けられることもメリットの一つです。
早めに弁護士に相談した方がよい理由を教えてください。
最初から揉めることが予想されるようなケースだと、話し合いを試みても、結局嫌な思いをしたり、ストレスを抱えたりすることが多いです。こうした精神的な負担を最初から回避するという意味では、早めに弁護士に相談することが大切です。
また、手続き面でも早めに相談することをお勧めします。最初から弁護士に頼んだ方が結果的に少ない負担で済むからです。
少しでも揉めそう、大変そうだと感じたら、早めに弁護士にご相談ください。段取りを聞くだけでも気持ちが楽になると思います。
弁護士に話を聞いてもらうだけで気持ちが楽になることもある
これまで取り組んできた相続案件の中で、印象に残っているものはありますか。
30年ほど続いた相続争いに、途中から引き継いで関わった案件が印象に残っています。相続人が途中で亡くなり、二次相続が発生したり、最初から関わっていた弁護士も途中で亡くなったりするなど、時間の経過により当事者の関係も複雑になっていた案件でした。
相続人の1人から依頼を受けて私が引き継いだのは、遺産分割調停でした。その調停の前には、遺産分割の前提部分を決めるための調停や訴訟が約30年にわたって行われていました。私が参加したのは、それらを前提として遺産の分け方を決める最後の段階の調停でした。
大変だったのは、相続人同士で感情的な対立が多かったことです。長い争いの中で依頼者が高齢になったことや、長い歴史の中で形成された強い感情もあったことから、前に説明した話をすべて忘れられてしまうこともありました。そのような場合でも、粘り強く再度ゼロから説明するつもりで対応し、どうにか理解を得ることができました。
他の相続人にもそれぞれ弁護士がついていましたが、お互いに対立するのではなく、長期間の争いをどのように解決しようか知恵を出し合い、必要に応じてそれぞれの依頼者を説得するなど、案件を終わらせるために協力して取り組んだことが印象的でした。
相続のトラブルを抱えて弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
まずは1度ご相談ください。特に相続では、話を聞いてもらうだけで気持ちが楽になることが多いと思います。
まずは電話やメールでも構いません。勇気を出して、最初の一歩を踏み出してみてください。