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遺産相続の期限はいつまで?期限が過ぎた場合にどうなるかも解説

一部の遺産相続の手続きには期限が設けられており、期限が過ぎると不利益を受けるおそれがあります。スケジュールを立てて、計画的に相続手続きを進めましょう。この記事では相続手続きの期限について、期限のある手続きと期限のない手続き、期限が過ぎたらどうなるのかなどを解説します。

遺産相続に期限はある?

遺産相続の手続きには、期限があるものとないものがあります。

特に期限のある相続手続きについては、期限を経過すると大きな不利益を受けるおそれがあるので注意が必要です。また、期限のない相続手続きについても、期限のある相続手続きの前提として必要なものが多いので、早めに行うに越したことはありません。

どの手続きをいつまでに行うべきかをあらかじめ整理して、期限に間に合うように対応しましょう。
遺産相続期限

期限のある遺産相続手続き

期限のある相続手続きのうち、主なものは以下のとおりです。

相続手続きの種類 概要 期限
相続放棄 相続財産を一切相続しない旨の意思表示。借金などの債務を相続せずに済み、遺産分割への参加が不要となる。家庭裁判所に対して申述書を提出して行う。 自己のために相続が開始したことを知った時から3か月以内
所得税の準確定申告 被相続人が亡くなった年に得た所得の確定申告。税務署に対して申告書を提出して行う。 相続の開始を知った日の翌日から4か月以内
相続税の申告 相続財産等に対して課される相続税の申告。税務署に対して申告書を提出して行う。 相続の開始を知った日の翌日から10か月以内
遺留分侵害額請求 相続等によって取得した財産が遺留分に満たない場合に、不足額に相当する金銭の支払いを求める請求。遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められている。相続・遺贈・生前贈与によって多くの財産を取得した人に対して、交渉や訴訟を通じて行う。 相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈を知った時から1年以内
不動産の相続登記 相続または遺贈によって取得した不動産の名義変更手続き。不動産の所在地の法務局または地方法務局に対して、登記申請書と添付情報を提出して申請する。 相続の開始および不動産の所有権の取得を知った日から3年以内
※遺産分割によって不動産を取得した場合は、遺産分割の成立日から3年以内
※2024年4月1日以降に義務化。義務化より前に不動産の所有権を取得した場合の期限は2027年4月1日

期限のない遺産相続手続き

すべての相続手続きに期限が設けられているわけではありません。たとえば、以下の相続手続きについては期限がありません。

相続財産の調査

被相続人が死亡時に保有していた財産および債務の調査です。遺産分割の対象となる財産を特定するために行う必要があります。財産・債務の種類によって方法が異なります。

相続人の調査

誰が相続人であるかを把握するための調査です。遺産分割の参加者を特定するために行う必要があります。市区町村役場から取得できる戸籍謄本類を確認して調査します。

遺言書の有無の確認

被相続人が遺言書を残していないかどうかの確認です。遺言書があれば、原則としてその内容に従って遺産を分けるので、遺産分割に先立って遺言書の有無を確認する必要があります。被相続人の遺品等を探した上で、公証役場や遺言書保管所(法務局・地方法務局)に保管されていないかどうかも確認します。

遺産分割

相続人の間で、相続財産を分割する手続きです。原則として、相続人同士で話し合って相続財産の分け方を決めます(=遺産分割協議)。協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停・審判を通じて相続財産の分け方を決定します。

関連記事:遺産分割協議書は自分で作成できる!書き方・文例集【ひな形つき】

金融機関の相続手続き

遺言書または遺産分割の結果に従い、被相続人が保有していた預貯金や有価証券(株式・投資信託など)を相続人・受遺者に対して移転する手続きです。被相続人口座のある金融機関に対し、金融機関が指定する必要書類を提出して申請します。

自動車の名義変更

遺言書または遺産分割の結果に従い、被相続人が所有していた自動車の登録名義を変更する手続きです。新たに車を使用する住所を管轄する運輸支局(軽自動車の場合は軽自動車検査協会)に必要書類を提出して申請します。

自動車は登録名義を変更する必要があります

相続財産・相続人の調査や遺言書の有無の確認は、遺産分割に先立って行うべきものであるため、早い段階で対応すべきです。

また、遺産分割が完了しなければ、最終的な相続税額が確定しません。相続税の申告期限までに遺産分割が完了しない場合は、暫定的に法定相続分に従って申告を行った上で、後に更正の請求または修正申告によって税額を修正することになります。

二度手間になることを防ぐため、相続税の申告期限までに遺産分割を完了することが望ましいでしょう

さらに、遺産分割が完了しなければ、相続財産をスムーズに活用することができません。相続人の共有状態が長く続けば、相続財産の管理についてトラブルが生じるリスクが高まります。

相続財産に関するトラブルを予防する観点からも、遺産分割は早い段階で完了することが望ましいです

このように、期限のない相続手続きについても、対応せずに放置すると不利益が生じるおそれがあります。期限のある相続手続きと同様に、スケジュールを立てて計画的に対応しましょう。

遺産相続手続きの期限を過ぎたらどうなる?

期限のある相続手続きについては、その期限を過ぎると以下の不利益を被るおそれがあります。各期限に間に合うように、計画的に相続手続きを進めましょう。

相続手続きの種類 期限を過ぎた場合の不利益
相続放棄 法定単純承認が成立し、相続放棄が認められなくなる(民法921条2号)
※手続きが遅れた理由によっては、期限経過後の相続放棄が認められることもある
所得税の準確定申告 税務調査を経た後、本税に加えて延滞税および無申告加算税または重加算税が課される
相続税の申告 税務調査を経た後、本税に加えて延滞税および無申告加算税または重加算税が課される
遺留分侵害額請求 遺留分侵害額請求権の消滅時効が完成し、遺留分を確保できなくなる(民法1048条)
不動産の相続登記 10万円以下の過料に処される(改正不動産登記法76条の2第1項、第2項、164条)。
また、相続登記を経なければ、不動産の所有権を第三者に対抗できず(民法177条)、原則として不動産の売却や賃貸もできない。

相続放棄の期限を過ぎてしまった場合の対処法については、以下の記事でくわしく解説しているので、あわせてお読みください。

関連記事:相続放棄できる期間は3か月!期限を延長する方法はある?期限を過ぎてしまった場合の対処法も解説

まとめ

相続手続きの中には、相続放棄・所得税の準確定申告・相続税の申告・遺留分侵害額請求・不動産の相続登記(2024年4月1日以降)など期限が設けられているものがあります。

相続手続きの期限に遅れると、手続きの種類に応じてさまざまな不利益を受けるおそれがあるので、スケジュールを立てて、計画的に相続手続きを進めましょう。

ただ、相続手続きは期限のないものも含めて多岐にわたります。ご自身で相続手続きの対応を行うのが難しければ、専門家に依頼しましょう。特に弁護士には、相続人同士のトラブルへの対応も含めて、幅広い相続手続きへの対応を依頼できます

相続手続きの進め方について分からないことや不安がある方は、弁護士にご相談ください。

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田中伸明弁護士
監修者の所属事務所
旭合同法律事務所

愛知県弁護士会所属。相談者様・依頼者様から丁寧にご事情をお伺いして、それぞれのご家庭にとって望ましい解決策を真摯に検討・ご提案いたします。当事者だけでは解決が難しい相続問題も、弁護士が法的に整理して対応すれば解決できます。

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