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家族信託(民事信託)
更新日:2026/10/20

民事信託とは?家族信託との違いと費用、向いている人を解説

監修者
馬場亨二
東京都>港区
馬場亨二法律事務所
馬場亨二
民事信託とは?家族信託との違いと費用、向いている人を解説
財産管理を家族に任せる方法として、民事信託を調べていませんか。民事信託は、営利を目的とせず信頼できる家族などに財産管理を託す仕組みで、家族に託すものは家族信託とも呼ばれます。家族信託との違いや活用例、費用を解説します。弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」に寄せられた相談105件の傾向も紹介します。
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民事信託とは?

「民事信託」とは、委託者の家族などが受託者となって、委託者の財産を代わりに管理する仕組みです。信託銀行などが業務として行う「商事信託」と対比されます。

「委託者」は「受託者」に対して、自分の財産を信託譲渡します。「受託者」は信託財産の所有権を取得しますが、信託契約などの内容に従って、「受益者」のためにその財産を管理しなければなりません。

「受益者」は、「委託者」と同じ人にすることもできますし、違う人にすることもできます。

  • 委託者:財産を受託者に預ける(信託譲渡する)人
  • 受託者:信託契約などに従って、受益者のために財産を管理する人
  • 受益者:財産から利益を得る人

民事信託の仕組みは、相続対策として幅広く活用されています。被相続人となる人が「委託者」となり、財産を相続させたい人を「受益者」に指定した上で、信頼できる家族に「受託者」として財産を管理してもらいます。

【データで見る】民事信託・家族信託の相談の6割は不動産がからむ

弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」に寄せられた民事信託・家族信託の相談105件のうち、不動産に触れた相談は64件で61%、認知症や判断能力の低下に触れた相談は39件で37%

弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」に寄せられた相続の相談30,302件のうち、民事信託・家族信託に触れた相談は105件でした。相談の中で使われている言葉は「家族信託」が98件と大半で、「民事信託」は8件です(両方の言葉を使った相談もあります)。

内容を見ると、自宅や土地などの不動産に触れた相談が64件(61%)、親の認知症や判断能力の低下に触れた相談が39件(37%)ありました(1件の相談が複数の内容にあてはまる場合があります)。

不動産の管理や、将来判断能力が落ちたときへの備えとして、元気なうちに検討されることが多い仕組みといえます(2021年4月1日~2026年7月8日に投稿された相談。当社調べ、n=30,302)。

民事信託と家族信託の違い

相続対策としての民事信託は、「家族信託」と呼ばれることもあります。民事信託と家族信託は実質的に同義であり、明確な意味の違いはありません。

「家族信託」については、一般社団法人家族信託普及協会が商標登録を受けています。同協会は、「“信頼できる家族”に財産の管理処分を任せる信託」という意味で家族信託を用いています。

民事信託についても、相続対策の目的で家族を受託者とするものは、家族信託とほぼ同様の意味です。したがって、民事信託と家族信託の違いを意識する必要はないでしょう。

相続対策としての民事信託の活用例

民事信託は、相続対策として幅広く活用されています。以下に挙げるのは、相続対策としての民事信託の代表的な活用例です。

  • 将来の認知症に備える
  • 幼い孫に財産を残す
  • 財産の活用方法を細かく指定できる
  • 不動産の相続をスムーズに行う

将来の認知症に備える

高齢になればなるほど、認知症を発症するリスクが高まります。認知症になってしまうと、判断能力の低下が原因で詐欺被害に遭ったり、財産を浪費してしまったりするおそれがあります。

将来の認知症によるリスクを未然に防ぐためには、民事信託を設定することが効果的な対策の一つです。信頼できる家族をあらかじめ受託者に指定しておけば、自分が認知症を発症した際にも、その受託者に財産を管理してもらうことができます。

弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」には、「認知症の症状が疑われる親の財産を、家族信託で管理するか、成年後見人をつけて管理するかで迷っている」という相談が寄せられています。

Q
親の資産を家族信託にするか、後見人をつけて管理するか
相談者の疑問
【相談の背景】 親の資産を家族信託か後見人つけて管理するかで迷っています。 親は軽く認知症かなと思います、診断はされていないです。 介護度1です。 意思疎通はできますが、記憶力があまりよくないです。 あまり分かっていないため、質問が多くなってしまい申し訳ございません。 質問追加 ⑤司法書士に家族信託の依頼は本人と受託者(私)と司法書士で打ち合わせを行い、銀行へも本人と私がいけばいいですか? ⑥家族信託を司法書士に頼むと親の口座を全て確認しますか? 【質問1】 質問 ①後見人(司法書士)を付けると親の全ての口座は確認しますか? もし申告忘れていた口座があった場合は後見人(司法書士)が自由に各銀行口座を調べる権限はありますか? 【質問2】 ②親の資産は不動産だけだと思いますが、司法書士への報酬は不動産を現金にした後でも支払い可能ですか?(後見人でも家族信託でも) 【質問3】 ③後見人(司法書士)は親が完全に認知症になった後でも付けることは可能ですか? 【質問4】 ④口座を調査の結果、どの口座にいくら入ってるか、取引明細などは私に教えてきたり他の親族が聞いてきたら教えたりしますか?
弁護士の回答
杉浦 太一郎 弁護士
質問1 ①後見人(司法書士)を付けると親の全ての口座は確認しますか? 回答1 認知症かも?くらいでは成年後見人は選任されません。 親が認知症等により判断能力が低下しているなら、その程度によって成年後見人、保佐人、補助人のいずれかを家庭裁判所に選任してもらうことになります。 なお、成年後見人等は司法書士が選任されるとは限りません。弁護士や税理士等の専門家や、親族が選任される可能性もあります。 質問2 もし申告忘れていた口座があった場合は後見人(司法書士)が自由に各銀行口座を調べる権限はありますか? 回答2 仮に成年後見人等が選任された後にまだ財産がある可能性があるなら、成年後見人等が調査する可能性はあります。 質問3 ②親の資産は不動産だけだと思いますが、司法書士への報酬は不動産を現金にした後でも支払い可能ですか?(後見人でも家族信託でも) 回答3 成年後見人等が選任された場合、報酬は本人の財産から支払われます。家族信託の場合は弁護士等との契約の内容等にもよると思います。 質問4 ③後見人(司法書士)は親が完全に認知症になった後でも付けることは可能ですか? 回答4 むしろ、成年後見人等をつけるなら、親が認知症等により判断能力が低下している必要があります。そうでないなら、家族信託や財産管理契約により対応することになります。 質問5 ④口座を調査の結果、どの口座にいくら入ってるか、取引明細などは私に教えてきたり他の親族が聞いてきたら教えたりしますか? 回答5 基本的には教えないことが多いと思います。 質問6 ⑤司法書士に家族信託の依頼は本人と受託者(私)と司法書士で打ち合わせを行い、銀行へも本人と私がいけばいいですか? 回答6 家族信託は司法書士に依頼するのが必須ではありません。弁護士の方が無難かと思います。 司法書士にはどこまで依頼するかにもよりますが、家族信託の公正証書化や金融機関での手続きに必須とは限りません。 質問7 ⑥家族信託を司法書士に頼むと親の口座を全て確認しますか? 回答7 専門家が権限により調査するわけではないですが、基本的には確認すると思います。 質問8 今は親自信で年金下ろして自由 に使ってたりしますが、この程度では付けれないと考えた方がいいのでしょうか? 回答8 判断能力に問題がないなら成年後見人等は選任されません。
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幼い孫に財産を残す

配偶者や子どもだけでなく、幼い孫にも財産を残したいと考える方はたくさんいらっしゃいます。孫は原則として相続人ではないため(代襲相続人や養子である場合は例外)、財産を残すには何らかの相続対策が必要です。

遺言書を作成すれば、幼い孫に遺産を与えることはできます。しかし、孫が相続した遺産を法定代理人が使い込んでしまい、孫のために使われないケースも少なくありません。

このような事態を防ぐためには、民事信託の仕組みを活用することが効果的です。孫が成人するまで、信頼できる受託者に財産の管理を託すことができます。

なお、孫に遺産を残す方法やよくある失敗は、次の記事でくわしく解説しています。

財産の活用方法を細かく指定できる

民事信託では、受託者が信託財産を管理する際のルールを細かく指定できます。

財産の使い道や受益者に渡すタイミングなども指定できるため、本人(委託者)の意思を相続に反映させやすい点が、民事信託の大きな特徴です。

不動産の相続をスムーズに行う

民事信託は、不動産を共同相続する際の弊害に対する解決策にもなり得ます。

たとえば、遺産に含まれる不動産の収益を、複数の相続人の間に分け与えたいとします。

真っ先に思いつく方法は、不動産を複数の相続人に共同で相続させることです。この場合、不動産は相続人の共有となり、共有持分に応じて収益が分配されます。

しかし、共有不動産の売却や賃貸を行う際には、共有者間における意思決定が必要です。共有者の意見が食い違うと、不動産をスムーズに活用できない場合があります。

このような弊害を避けるためには、民事信託を活用することが有力な選択肢の一つです。

具体的には、不動産を管理する1人を受託者とした上で、収益を分け与えたい相続人は受益者に指定します。そうすれば、受託者単独の判断でスムーズに不動産を活用できる一方で、収益については複数の相続人間で分配することが可能です。

賃貸住宅の家賃収入がある高齢の親について、遺言とあわせて家族信託も考えたほうがよいか迷う声も、「みんなの法律相談」に届いています。

Q
賃貸住宅の家族信託について
相談者の疑問
【相談の背景】 要介護レベル二の80歳の母親の相談です。50代姉と三人で暮らしています。家賃収入があり姉と私が管理をしています。今後、遺言と合わせて家族信託を考えた方が良いケースでしょうか? 【質問1】 家族信託は弁護士や司法書士に依頼すると良いのでしょうか。
弁護士の回答
黒岩 英一 弁護士
大前提は本人の意思です。 本人がどのような意思を有しているかによります。 希望する状況や心配事があるなら、それらに合わせた手続きを取れば良いでしょう。 本人の意思確認や今後の対応も含めて、弁護士に直接相談されることをお勧めします。
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相続対策としての民事信託のメリット

民事信託の大きなメリットは、相続対策としての活用範囲が幅広い点です。

民事信託の受託者が財産を管理する際のルールは、信託契約などで柔軟に定めることができます。つまり、本人(委託者)の意向に沿って適切に民事信託を設計すれば、望み通りの形で財産を相続させることが可能となります。

これまで述べたとおり、認知症対策や細かい相続条件の指定、不動産の相続など、さまざまな目的に民事信託は活用できます。

また、信頼できる受託者を選んで財産の管理を任せられる点も、民事信託のメリットの一つといえるでしょう。

遺贈や贈与によって単に財産を与えるだけでは、その財産がどのように使われるかまではコントロールできません。ギャンブルや浪費などに回されて、財産が無駄になってしまうリスクもあります。

民事信託を設定すれば、親族の中でも信頼できる人に財産の管理を任せられるため、このようなリスクは最小限に抑えることができます。

相続対策としての民事信託のデメリット

民事信託のデメリットの一つは、設定する際に費用がかかる点です。

民事信託を設定する際には、弁護士や司法書士に依頼するのが一般的です。民事信託は複雑な仕組みであるため、一般的な遺言書の作成などに比べて、依頼費用は多額となる傾向にあります。信託財産の金額などによりますが、50万円から100万円程度はかかるケースが多いでしょう。

また、受託者による横領のリスクも、民事信託のデメリットの一つといえます。信頼できる受託者を選んだはずが見込み違いで、受託者が信託財産を横領してしまうケースも散見されます。民事信託を設定する際には、受託者選びを慎重に行いましょう。

受託者とのトラブルでは、受託者になった弟が契約で決めた帳簿の報告を一度もしないまま、親の家財を処分したり実家を売りに出したりしているとして、契約違反や無効を主張できないか悩む相談が「みんなの法律相談」に寄せられています。

Q
家族信託契約後受託者は一度も経費帳簿を提出せず、その他も好き勝手で契約違反または無効にできないか?
相談者の疑問
【相談の背景】 公証役場を通さず弟が家族信託の話を持ってきて、 父と母の家族信託を契約して2年近くになります。 ・契約締結時、父母や私には司法書士から事前説明がないまま、 契約時司法書士から受託者が財産を管理する程度の説明で、 特に母はよくわからないままサイン。 未だに「自分のお金は?」「家族信託なんて知らない」と時々言います。 ・父母は契約1ヶ月前に施設入居。 ・家族信託の委託者(受益者)父、母各々、受託者は弟。 ・父は契約1年後に死亡。 ・父死亡後受託者は知らない間に業者に依頼し家財道具を処分し 半年前に実家売却(まだ売れず)。 業者に処分依頼、その他墓石を買ったり、けっこう経費を使っているはずです。 【契約書内容】 ---------------------------- 第6条(受託者の権限及び義務) 4.受託者は、本件信託開始後速やかに、 (ア)信託財産目録、(イ)信託財産に関する帳簿等を作成し、 本契約期間中はいつでも受益者の請求に応じて閲覧に供することができるように保管するものとする。 5.受託者は、受益者に対し、1年ごとに前項記載の(ア)(イ)の他信託事務に関する事項について 書面又は電磁的記録をもって報告するほか、受益者の請求がある時は、いつでも速やかにその求められた事項につき同様に報告をするものとする。 ---------------------------- 【質問1】 契約書第6条 4,5ですが 受託者は一度も帳簿等を提出していません(使途、残高不明) 母から弟に請求するよう言っても気を使ってか言いません 年一すら提出しない場合、契約違反にならないのですか?処罰は? 【質問2】 母は施設に入る2ヶ月前におかしくなり精神病院に10日入院させ、 その時施設への医療診療情報には「アルツハイマー型認知症」と記載あり。 家族信託自体無効にならないのでしょうか?(無効にできないか?) 【質問3】 弟は司法書士と契約書作成前に私にLINEで父、母の相続の配分は 現金は私100% 不動産、父名義分●%は(遺言書通り)私に と書いたにも関わらず実際は違いその後母100%と変更。 LINEの話は無効?
弁護士の回答
岩田 修一 弁護士
【質問1】 契約書の他の文言も全般に見る必要があります。 少なくとも、報告をしない契約違反はありそうですが、委託した本人であるお母様が認知症だと、契約解除をすることはほぼ不可能と思います(質問2を除く)。また契約違反だから契約が無効になるわけではありませんし、処罰=刑事罰を受けるようなこともありません。 【質問2】 契約前にアルツハイマー型認知症だったと診断されていれば、契約無効の主張が認められる可能性はあります。しかし、認知症の程度次第です。おそらく、訴訟等で争われる点になると思います。 【質問3】 遺言書があるのでしょうか。そうであれば、その後いくらLINEでやりとりしようが関係なく遺言書の通りの相続となります。遺言書がなければ、LINEは関係なく法定相続となります。 全体的に見るに、信託の無効を争うより、お母様の成年後見申し立てをした方がいいと思います。 ここでの相談で解決できるものでは全然ないので、時間をかけて法律相談を受けられて、弁護士に依頼することをお勧めします。
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さらに民事信託については、贈与税の課税や税務申告(信託の計算書の提出など)の問題が生じることもあります。必要に応じて税理士のアドバイスを受けながら、民事信託の課税上の取り扱いを正しく理解しておきましょう。

家族信託で実際に起きているトラブルと、後悔しないために知っておくべきことは、次の記事でくわしく解説しています。

まとめ

民事信託は家族信託とほぼ同義であり、相続対策として幅広く活用されています。 民事信託は柔軟性が高いため、ご本人のニーズに応じてさまざまな目的に活用可能です。相続に関する活用例としては、認知症対策や細かい相続条件の指定、不動産の相続などが挙げられます。

民事信託は複雑な仕組みなので、設定する際には専門家のアドバイスを求めましょう。信託の設計および信託契約書の作成については弁護士、税務上の取り扱いについては税理士に相談することをおすすめします。弁護士に相談すれば、連携のある税理士を紹介してもらえるケースが多いです。

相続対策として民事信託に関心がある方は、弁護士にご相談ください。

【次に読む】使うと決めたあとの費用とトラブル

呼び方が整理できても、使うかどうかは別です。契約までにいくらかかるのか、開始後の負担は続くのか、実際にどんなトラブルが起きているのか。信託銀行に頼む遺言信託という選び方もあります。費用と実例は、次の記事であわせて確認してください。

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この記事の監修者
馬場亨二
東京都>港区
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