弁護士として20年以上。非常勤裁判官の経験も生かして相続トラブルの予防と解決に尽力します
兵庫県神戸市中央区元町通で「矢形法律事務所」を経営する矢形幸之助(やかた こうのすけ)弁護士に、遺産相続案件を手掛ける上での心構えや事務所の強みなどを伺いました。矢方先生は弁護士として20年以上のキャリアとともに、神戸簡易裁判所非常勤裁判官や兵庫県弁護士会副会長を務めた経験もお持ちです。相続案件を手掛ける上で心がけていることなどもお話いただきました。(兵庫県弁護士会所属)
インタビュー
長いキャリアの中で、非常勤裁判官や弁護士会副会長も経験
これまでのご経歴について教えてください。
2003年に弁護士となり、兵庫県内の法律事務所に所属した後、2009年に当事務所を開設しました。弁護士は私1人で、初回相談から解決まで、私が責任を持って対応いたします。また2011年から4年間、神戸簡易裁判所非常勤裁判官も務め、2019年度兵庫県弁護士会副会長も務めました。
非常勤裁判官というのは、どういったお仕事なのでしょうか?
普段は弁護士の仕事をしながら、週1日裁判所に行って民事調停または家事調停に関する裁判官の仕事をするんです。元々裁判官が担当していた仕事を、一部弁護士が担当するというイメージですね。任期は最長4年で、私は4年間民事調停を担当していました。交通事故や工事に関する紛争を多く担当し、事実関係が複雑な案件や難しい問題が絡む案件などを解決してきました。
弁護士として仕事をする上で、どういったことを大切にされていますか?
すべて弁護士任せではなく、依頼者と弁護士が協働してこそ、いい解決につながると考えています。もちろん弁護士は法律の専門家ですから、弁護士にしかできないことはあります。他方、どういうことがあったか、どういう証拠があるかということは、依頼者に聞かなければわかりません。また、弁護士はあくまでも代理人ですから、最終的な判断は依頼者にしていただく必要があります。
弁護士として、依頼者の怒りや悲しみを理解して寄り添うことは大切です。しかし、ただ一緒になって怒ったり悲しんだりするだけでは解決できませんから、法的に適切な方向を示して導く存在でありたいと思っています。
相続争いが起きてしまった場合も、争いを起こさないための予防も、何でもご相談ください
相続について、どのような相談が多いでしょうか?
多いのは、遺産分割全般です。以前から相続人同士の仲が悪く、話もしたくないし顔も見たくないという状態の方からご相談いただくことが多いです。また、相続人同士で話し合ってみたけれど、感情的になってしまって折り合いがつかず、弁護士に入ってほしいということで相談に来る方もいます。
財産をお持ちの方から、遺言書作成の相談を受けることもよくあります。大切な家族が遺産争いに巻き込まれないようにするために、遺言書でご自身の意思を示しておくことは非常に有効です。
時折、自分で便箋などに書く方がいらっしゃいますが、遺言書は法律的にきちんと形式を整えないと無効になってしまいます。せっかくご自身の意思を遺したのに、無効になってしまうのは非常にもったいないです。すでに遺言の内容を決めている場合はもちろん、どういう内容にしようか迷っている方も、弁護士に相談することで法的に正しいものを作れます。
相談者の男女比や年代などはいかがでしょうか。
男女比は半々くらいです。父母・祖父母の相続で相談に来られるので、40代〜70代の方が多くいらっしゃいます。
相続の分野に注力している理由を教えてください。
弁護士になった当初から、皆さんの身近な法的問題を取り扱ってきました。そして相続トラブルは、誰にでも起こりうる問題です。「私には争うほどの財産はないから」とおっしゃる方もいますが、相続トラブルは財産の多い少ないに関係なく起こるものです。
日本は高齢化社会で相続が多く発生しますし、法的に難しい問題も絡みます。さらに相続人同士の長年にわたる不満が爆発して感情的な対立も起きやすいので、弁護士がお役に立てる部分が非常に大きい分野の一つです。そういった理由から、一貫して注力しています。
相続案件のやりがいはどういったところでしょうか?
相続に限りませんが、弁護士が解決のお手伝いをして、依頼者の心の重しが取れたときに「弁護士をやっていてよかった」と思います。相続に関していえば、一度は争った相続人同士が、仲直りというか、少しでも話し合える関係になったら嬉しいですね。
非常勤裁判官の経験も生かし、多面的な視点から早期解決を目指します
先生の事務所ならではの強みや、他の事務所との違いはどういったところでしょうか。
1つは、非常勤裁判官の経験があることです。普段の弁護士業務では、依頼者の代理人として依頼者の話を聴きます。一方、非常勤裁判官として調停に臨む場合は、申立人・相手方双方の話を公平・中立な立場で聴きます。そうすることで、1つの事実を両面から見ることができます。
同じ事実なのに双方の認識が全く違うことも多いですし、お互いが重視している部分が全く違ったりもします。そういった経験が、物事を多面的に見ることや、こう主張をすると相手はこう反応するだろうという予測にも良い影響を与えてくれました。
あとは20年以上弁護士をやっていますから、見通しの正確さだったり、依頼者からの安心感・信頼感というのは年々上がっているように思います。
相続案件を手掛ける上で心がけていることを教えてください。
1つは、法律に従って粛々と進めていくことです。これは、型にはまったやり方で事務的・機械的に対応するという意味ではなく、冷静かつ中立的な立場で進めていくことを指します。
弁護士に依頼される案件の多くは、すでに揉めています。人間関係が悪化していることも多いので、弁護士が一緒になって感情的になっていたら話が進みません。冷静さを欠くと方針を見誤る可能性もあるため、弁護士は弁護士として、依頼者と同化しすぎないように気をつけています。
もう1つは、できるだけ話合いで早期に解決することです。依頼者の中には、怒りのあまり「徹底的に闘ってください」と希望する方もいます。しかし親族は親族ですから、今後、法事などで顔を合わせることもあるでしょう。仲良くとまでは言いませんが、必要以上に関係を悪くするのは望ましくないと思っています。
ですから、依頼者から相手の人柄などを聞いて、ある程度話ができそうであれば裁判ではなく話合いでの解決を試みて、お互い譲歩できるところは譲歩して解決するように心がけています。もちろん争うべきときは争いますし、話合いで解決できない場合は裁判手続きを使うしかないこともありますが、なるべく関係性を崩さないために話合いでの解決を第一に考えています。
相続が「争続」にならないよう、早めにご相談ください
弁護士に相談するか迷っている方もいらっしゃると思いますが、相談するメリットはどういったところでしょうか?
弁護士は法律の専門家ですから、専門的なアドバイスを受けたり、見通しを立てられるところは大きなメリットです。
たとえばこれから相続人同士で話合いを始めようという場合でも、法定相続分もわからない、どういう点に気をつければいいかもわからないという状態では、無用なトラブルを招きかねません。そういうときに一度弁護士に相談して、基本的な知識や見通しを知るだけでも随分違いますよ。
少しでも不安なことがあれば、とりあえず相談してみてください。弁護士と話すうちに問題が整理できますから、それだけでも大きな前進です。
相談後、依頼していただいた場合には、弁護士が代理人として一切の窓口になります。相手との交渉も代行しますし、調停などにも同席します。法的に正しい解決ができるのはもちろん、直接相手と話す必要がなくなるのは心理的にも大きなメリットです。
早めに相談するメリットと、相談が遅れることによるデメリットを教えてください。
やはり、ご自身でなんとかしようとして揉めに揉めて手に負えなくなってから相談に来られると、どうしても解決に時間と労力がかかってしまいます。多くのケースで、早めにご相談いただくことで打てる手は多くなります。また、相談が遅れてしまうと、時効にかかって権利が消滅することもあるのでご注意ください。
相談したらすぐに依頼しなければならないわけではありませんので、「とにかく早めに、相談だけでもしてみる」という意識を持っていただくと良いと思います。
先生に相談したい場合は、どのようにすれば良いでしょうか?
事務所までお電話いただき、予約をお取りください。相談は基本的には平日9時から17時30分の間で承っていますが、土日祝や夜間でもできる限り対応します。
相続について悩み、弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
弁護士に相談するのは敷居が高いと思う方もいらっしゃると思いますが、相続を「争続」にしないために遺言書を作ったり、関係が決定的に悪くなる前にご相談いただくことは大切です。法的にできること・難しいことをきちんと整理して、できるだけ円満に解決できれば、それに越したことはありません。ぜひお気軽にご相談ください。