複雑な相続問題にもチームで対応〜問題の本質を見極めて将来を見据えた解決策を提案する
広島県福山市「弁護士法人山下江法律事務所福山支部」の檜上芙雪弁護士(広島弁護士会所属)に相続分野の取り組みについて話を聞きました。相続は「法律と一般の方の考えとにズレが生じるため、専門家の力が必要」と話す檜上弁護士。相続問題を弁護士に相談するメリットや事務所の特徴などについて聞きました。
インタビュー
広島最大級の法律事務所
事務所について教えてください。
山下江法律事務所の設立は1995年になります。その後、広島県を中心に支部を展開し、2018年に福山支部が開設されました。
私は弁護士登録後、他の法律事務所に就職しましたが、2024年に山下江法律事務所に移籍しました。この事務所を選んだ理由は、支部が多く、弁護士の人数が多いという点です。規模が大きいことにより、取り扱う事件の種類や分野が非常に幅広くなることに魅力を感じました。
また、弁護士が多数在籍していることで、専門チームを編成できる点も魅力でした。各弁護士が得意分野に特化しながら、チームとして高度な法的サービスを提供しています。
事務所の理念を教えてください。
相続分野は、過去の因縁や親族とのちょっとしたすれ違いなどが、依頼者にとって重大な悩みの原因となることがあります。法的な問題のみを解決しても、これらの要因を解決しない限り、真の解決には至りません。依頼者と一緒に問題の本質に向き合い、最適な解決策を共に考えることを重視しています。
当事務所では、初回相談を無料で提供しており、相談時には依頼者とコミュニケーションを図りながら、トラブルの経緯や背景事情を詳細に把握することを心がけています。そして、法的な解決に留まらず、依頼者が前向きになれるようなサポートに努めています。
相続分野に注力しているのはどのような理由からですか。
相続分野は法律と一般の方の感覚との間に大きなズレがあり、専門家の知識が欠かせない場面が非常に多いためです。
例えば、被相続人の身の回りの世話を献身的にしてきた相続人が「自分は他の相続人より多くの遺産を受け取れるはずだ」と考えることがあります。しかし、実際の法制度では、介護などの貢献が必ずしも遺産分割に直接反映される仕組みにはなっていないのです。このような貢献を遺産分割に適切に反映させるためには、法的な主張をきちんと組み立てる必要があります。
また、相続問題の難しさは、純粋な法律問題だけでなく、長年の親族関係から生じる感情的な要素が複雑に絡み合う点にあります。当事者同士では、この感情の壁に阻まれて話し合いが行き詰まってしまうことも少なくありません。
専門知識を持つ第三者である弁護士が介入することで、そのような問題に対して適切な着地点を見出すことができます。その役割を果たすことに、弁護士の意義があると考えています。
長期的に見て最善な解決を目指す
相続分野ではどのような相談が多いですか?
相談の中で一番多いのは、遺言書が存在しない相続です。被相続人が遺言を残していない場合、法定相続人同士で話し合って財産を分ける必要があるのですが、この話し合いの過程でしばしば深刻な対立が生じます。
例えば、「自分が最期まで親の面倒を見ていた」という思いを持つ相続人と、諸事情で離れて暮らしていた相続人との間で、遺産分割の話し合いが平行線をたどってしまうことがあります。
また、被相続人と同居していた相続人に対して、離れて暮らしていた相続人から「財産を使い込んでいるのではないか」という疑いの目が向けられるケースもあります。
相続問題は、家族間での感情的な対立が絡みやすく、揉め事が発生しやすい分野だと感じています。こうした問題において、法的な視点で冷静に状況を整理し、公平で納得感のある解決を目指すことが私たち弁護士の役割だと思っています。
相続案件を扱う上で心がけていることはありますか。
依頼者のお困りごとの本質がどこにあるのかを見極めることです。相続問題は感情面が大きく影響することが多く、必ずしも法的な問題だけが課題とは限りません。依頼者が本当に抱えている問題が法的な部分なのか、それとも家族関係や感情面のしがらみなのかを慎重に判断することが大切だと考えています。
また、解決策を模索する際は、目先のことだけでなく、依頼者やご家族にとってどのような解決が最善かを長期的な視点で捉えるようにしています。一時的な感情に流されず、将来も見据えた解決策を考えることが重要だと思っています。
さらに、依頼者との信頼関係を築くことは当然のこととして、相手方に対しても丁寧に接するよう心がけています。弁護士の関与が問題解決を遠ざけてしまうことがあってはなりません。依頼者側だけでなく相手方にも配慮したコミュニケーションを心がけることで、全体の調和を図るようにしています。
相続問題を弁護士に相談するメリットにはどのようなことがありますか。
一般的にトラブルが発生してから相談に来られる方が多いのですが、予防的な観点からの相談にも大きな価値があります。
例えば、遺言の作成について事前に相談いただければ、その後の争いを防ぐための適切な書き方をアドバイスすることができます。遺言は、ご本人の意思を確実に実現するために、法律に則った内容である必要があります。法的な観点からチェックし、最適な遺言書を作成することで紛争を防げることは、大きなメリットだと思います。
もちろん、相続が発生した後の相談でも、メリットはあります。例えば、被相続人に多額の借金があるような場合は、相続放棄を検討することがありますが、相続放棄には期限があることをご存じない方も多いです。また、相続財産を使用してしまうと、相続放棄ができなくなる場合があります。こうした条件や期限を事前に把握し、適切な手続きを進められるのも弁護士に相談するメリットです。
紛争状態にある場合も、第三者である弁護士が介入することで、解決の糸口を見つけ出せる可能性が高まります。
相続チームを設けることで困難な案件にも対応できる
これまで携わった相続案件で印象に残っているものはありますか。
被相続人の内縁の妻と前妻の子どもたちとの間で争いが起きたケースがあります。この案件は、遺言書の作成から執行まで一貫して関わり、法的な問題解決だけでなく、感情面での和解にまで至ることができた事案でした。
被相続人は生前に、「すべての財産を内縁の妻に残したい」とおっしゃっていました。しかし、私はその選択がかえって内縁の妻を苦しめる結果になりかねないと考えました。
「奥様に十分な財産を残すことはもちろん大切ですが、それ以上に大切なのは、その後の人間関係なのではないでしょうか」とアドバイスをさせていただき、最終的には前妻の子どもたちにも一定の財産を残す内容の遺言書を作成することになりました。
しかし、依頼者が亡くなった後、子どもたちから強い反発がありました。「なぜよそ者に財産を渡すのか」という感情的な反応です。内縁の妻は、夫を亡くした悲しみに加え、子どもたちからの嫌がらせまで受け、精神的に追い詰められていました。
そこで私は、被相続人の真意を子どもたちに伝えることにしたのです。父親は決して子どもたちをないがしろにしたわけではなく、内縁の妻の生活を案じての決断だったのだと。
丁寧に説明を重ねたことで、最終的には子どもたちも理解を示してくれました。子どもたちが抱えていた問題の本質は、財産そのものではなく、「自分たちよりも内縁の妻の方が大事にされているのではないか」という不満だったのです。
結果として、遺言の内容に沿った遺産分割が実現しただけでなく、内縁の妻と子どもたちの関係性も、以前と比べて改善されました。
相続問題の解決には、法的な整理と感情面でのケア、そして将来を見据えた調整が不可欠です。一時的な解決ではなく、その後の人間関係まで考慮に入れた解決策を模索することが、私たち弁護士の重要な役割なのだと改めて感じました。
相続分野における事務所の強みや特徴を教えてください。
大きな特徴として、チーム制を採用している点が挙げられます。相続分野についても専用のチームが組まれており、チーム内での情報共有や勉強会といった取り組みを行っています。
チーム制の大きな利点は、個々の弁護士の経験を越えた情報交換にあります。私自身が経験したことのない特殊な案件であっても、チーム内に同様の案件を扱った経験のある弁護士がいれば、具体的なアドバイスを得られます。
1人の弁護士の知識や経験に限定されることなく、組織全体の知見を活用できるのが、当事務所の強みです。
最後に、法律トラブルを抱える方へメッセージをお願いします。
相続に関する法律は非常に複雑で、知識の有無によって結論が大きく変わることがあります。ですから、悩みがあるときは専門家に相談していただきたいと思います。
多くの方は、トラブルが起きてから相談に来られるのですが、まだ問題が深刻化していない段階でご相談いただけるほうが、選択の幅が広がる場合が多いです。早い段階で弁護士に相談することで、取れる手段が増え、より良い解決策を検討することが可能になります。
「こんなことでも相談して良いのかな?」と思うようなことでも、ぜひお気軽にお話しください。当事務所では初回相談を無料で行っていますので、「とりあえず話だけでも聞いてみよう」という感覚でお越しいただければと思います。