地域に根ざした身近な法律事務所。多彩な資格と各専門家との連携で相続問題をワンストップ解決
山梨県甲府市で「永淵総合法律事務所」を経営する永淵智弁護士に、相続の対応方針や事務所の強みなどを聞きました(山梨県弁護士会所属)。司法書士資格も有する永淵弁護士は、事務所内外の専門家(税理士・司法書士・不動産鑑定士・宅地建物取引士など)と共にワンストップで相続問題を解決しています。
インタビュー
地域の方々にとって身近な存在として問題解決に貢献
山梨で法律事務所を開設した経緯を教えてください。
私はもともと兵庫県出身です。大阪大学を卒業後、2001年に司法書士となりました。その後、2010年に弁護士登録をしましたが、当初は東京で働いていました。3年ほど東京で働いたあと、山梨の魅力に惹かれて移住し、山梨の法律事務所に勤務した次第です。その後、山梨で独立しました。
山梨に惹かれた理由は、圧倒的な自然環境の良さです。のどかな景色、温泉、ワインや食など、魅力的な要素が多く、移住する前から何度も観光で訪れていました。癒される場所であり、お気に入りの場所だったんです。東京から近いこともあり、山梨で働くことに決めました。
山梨ならではの特徴としては、都会よりも人と人との距離感が近いことが挙げられます。そのため、相続で言えば財産額など、プライベートなことを話したり相談したりすると、「親しい人にバレてしまうのでは」と不安を感じる方もいるようです。中には、県外出身の私だからこそ、「気軽に相談しやすい」と依頼してくださる方もいらっしゃいます。
事務所の理念は何ですか?
地域に根ざし、地域の問題解決に貢献することです。
地元企業との顧問契約においても、単なるビジネスの法的なバックアップに留まらず、業務支援を通じて従業員の生活を良くしたり、取引先にも良い影響を与えたりできるように心がけています。私自身、弁護士資格だけではなく社会保険労務士や司法書士を含む複数の資格を持っており、対応できる業務の幅が広いことが強みです。
また、地域に貢献するためには、地域の皆さまとより深くつながり、身近な存在でいる必要があると考えています。そのためセミナーを開催したり、無尽など地域の飲み会や交流会に参加したりして、周りの皆さまと繋がるようにしています。もともとこのような場に出ていくのが好きなので、私自身も楽しみながら参加させてもらっています。
依頼者の意思を尊重することがモットー
相続分野に注力することになった理由は何ですか?
相続における不動産の名義変更(相続登記)は、そのほとんどを司法書士が担当している仕事です。以前、司法書士として働いており、もともと相続の実務経験が豊富だったため、弁護士となったあとも自然と多くのご相談を受けるようになりました。
当事務所では、登記が完了していない不動産を持った高齢者からのご相談が多いです。地方で問題になりがちな「価値の低い土地」は、相続の対応が後回しになってしまうことがよくあります。また専門家の数が少ないため、弁護士を探しづらかったり、相談しづらかったりする背景もあるのではないでしょうか。
相続の対応方針を教えてください。
当事者同士の話し合いでは解決の見込みがなく、依頼者にとって納得できない状況が続いているときは、積極的に調停などの裁判所の手続きを活用しています。弁護士が入ったうえで裁判所の手続きを活用した方が、相手方にも弁護士がつくなど状況が変わる可能性が高く、そうなれば解決までのスピードは格段に上がってメリットが大きいからです。
もちろん交渉で解決を目指す場合もありますが、どのような進め方を採用するにせよ、依頼者への丁寧な説明は欠かせません。当事務所では相続に限らず、依頼者の意思を「尊重すること」をモットーとしており、依頼者自身が納得した状態で解決を目指すことが重要だと考えているからです。
具体的には、解決策の選択肢を提示したうえで、「今日決めなくても大丈夫」「家族とも話してみてください」と伝えます。決して弁護士の考えを押し付けるのではなく、依頼者自身に決めていただくのです。また弁護士選びも依頼者の自由ですから、「他の弁護士にも意見を聞いて依頼する人を決めて問題ないですよ」とお伝えしています。
依頼者との対応で心がけていることはありますか?
依頼者からのご連絡には、当日または翌日中に何かしらのアクションをするようにしています。依頼したあとの進行状況がわからないと、不安につながってしまうからです。事務所内の弁護士とも分担しながら、こまめに連絡するようにしています。
特に相続の場合は高齢の依頼者が多いため、会える距離ならば、電話ではなく会って話すことが多いですね。実際、依頼者が、相続人となる予定のお子様を事務所に連れてきてくださり、「遺言執行(亡くなったあとに遺言の内容を実現する手続き)を担当するのはこの先生」と生前からご紹介いただくこともあります。実際に会うことで、家族全員の安心につながるようです。
また初回相談ではホワイトボードを使って図示するなど、わかりやすい説明を心がけています。専門用語を控えて、簡単な言葉で話すようにしています。
多彩な資格と経験を活かしたサポート
貴事務所ならではの強みや、他の事務所との違いを教えてください。
山梨県で唯一の弁護士・司法書士・社会保険労務士の資格を持つ弁護士が在籍する事務所として、登記も税務もワンストップで対応できることが強みです。私自身は認知症ライフパートナーの資格も持っています。遺言書作成の際に重要となる、遺言能力(遺言書を作成できる能力)の有無(認知症かどうか、など)を判断したうえでの対応も可能です。
また相続に特化した税理士(税務署OB)、宅地建物取引士、不動産鑑定士など専門家とのネットワークがあります。相続税の問題や、不動産の査定や売却、年金の手続きまで総合的にサポート可能です。
事務所内外の有資格者とは、すぐに連絡を取れる関係性を築いています。法律相談の最中に他の専門家の説明が必要だと思えば、その場で相談の場に呼んだり電話でつないだりすることも珍しくありません。これは依頼者の安心感につながっていると思います。
印象的に残っているご依頼はありますか?
資産価値のある土地が相続の対象となったご依頼が印象に残っています。揉めている状況だったため、交渉(遺産分割協議)では解決できず、裁判所の手続き(遺産分割調停)を踏まないと「東京都心の資産価値の高い土地」の処分ができない状況でした。しかし、それでは解決までにものすごく時間がかかってしまいます。そこで、先に土地だけを遺産分割して、いったん他の財産は残すことを提案しました。
相続人が高齢であればあるほど、すぐにお金が手元に入った方がメリットがあるため、資産価値の高い土地だけでも売却することが最善と判断したのです。寝たきりになってしまったら行けない海外旅行も、「一番若い日」である今日、お金が入れば、行けるかもしれませんよね。
結果として、何年もかかりそうだった問題が1年程度で土地の売却だけは完了し、依頼者は早く高額のお金を受け取れました。
そもそも相続した土地は相続登記をしていなければ、売却できません。売却に必要な相続登記の可否を判断できる、司法書士としての経験があったからこそ、可能なご提案だったと思います。また、一般的な弁護士だと不動産登記の実務に携わる機会が少ないため、「一部の土地のみを先に遺産分割する」という判断を思いつかなかったかもしれません。
教科書通りの対応をしていたら、相続全体を一括で解決することを優先して、このような方法は取れなかったと思います。
心のケアも重視し、誠実に対応します
最後に、相続のトラブルを抱えて弁護士への相談を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
相続が発生したばかりの方は、葬儀や四十九日の準備を進める中で、今まさに心が落ち込んでいる時期だと思います。悩みを抱えていても、家族だから言えないこともありますよね。
そのような状況だからこそ、まずは弁護士に相談して、心の悩みや負担をほどいてみてはいかがでしょうか。実際に依頼するかどうかは、あとから決めて問題ありません。話を伺って、当事者同士の話し合いでも問題がなさそうであれば「このまま進めて大丈夫ですよ」とお伝えしますし、弁護士が介入した方がよければ具体的にアドバイスしますので、ご安心ください。
ただし、弁護士が介入すると親族関係が決裂してしまう可能性は高いです。墓参りや三回忌は別々で行うことになってしまうかもしれません。そのような未来を想定しても、ご自身にとって納得できる話し合いが難しいなら、最終手段として弁護士に依頼するのは良い選択だと思います。
重い気持ちだと法律事務所に行くのがつらいと思いますので、ぜひ「少し話を聞いてみよう」と気軽な気持ちで弊所にお越しください。